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  冬柴大臣会見要旨(平成18年11月17日)
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平成18年11月17日(金)
9:34〜9:51
国土交通省会見室
冬柴鐵三

 

   

閣議・閣僚懇

 本日の閣議は、一般案件が1件、国会提出案件が12件、条約公布の決定が1件、法律公布の決定が1件、政令の決定が2件と人事案件です。当省に関係するもので特にご報告することはありません。私からは以上です。


質疑応答

 
(問) 耐震偽装事件から今日で1年を迎えるわけですけれども、この間に関係法令の見直しが進んだり、建て替えに時間がかかっているという面もあるわけですが、現状認識と今後残された課題についてどのようにお考えになっているのかと、併せて国交省として新しい対策などを考えていらっしゃったらお願いします。
(答) 思いもかけない意外なことが起こりまして、極めて深刻な事態だというように考えました。有資格者がその倫理感というものを放てきをして利に走ったといいますか、その結果大変多くの方々に迷惑をかけたばかりではなく、国民の専門家に対する、あるいは建物に対する信頼すら揺らいだという1年であったというように考えています。この事件を受けて、我々としてはどのようなところに問題点があったのか、どのように改善しなければならないのかという検討とともに、このような事例が他にもあるかないかということの広範な調査を実施してきました。できれば今日1年を迎えるまでにその結論を出して、国民の皆様方にも安全ですということを申し上げて、そのような不信感というものを払拭をしたかったけれども、着手してみると件数も多いし、サンプルも多いものですから、なかなか今日までには結論を出してご安心くださいというようなことを申し上げるところまでいっていないのは残念ですが、慌てて中途半端なことをしてはいけないと私は思っています。急がず急ぐというような事案であると思います。引き続いて各地方公共団体、特定行政庁とも督励をしながら1日も早く結論を出して、皆様方に安心をしていただけるようなことにしたいと思っています。この問題について、何処に問題があったのかということを踏まえ、通常国会では建築基準法の改正を行い、建築確認に際しては一定の建物についてはダブルチェックをしようということを実現したほか、今まで罰金ということで刑罰が軽かったわけですが、それに懲役刑等も加えるという罰則強化ということも含め、法律を成立させていただきました。今国会では、過日趣旨説明はさせていただきましたが、まだ審議に入っていませんが、建築士自体についての制度を大幅に改正しようということで着手をしています。内容は皆さん方ご存知ですから詳しくは申し上げませんけれども、最近非常に大きな建物が作られるようになりました。東京の空を見ても、本当にビルが林立しているという状況があります。構造計算書を私は見せてもらったけれど、大変複雑です。したがいまして、一級建築士の資格を取れば誰もがそういう計算をしてもよいという従来の方向を変えまして、やはり一定の実務経験を持った、学識的にも構造計算の勉強をした、一定の研修を受けた人にのみ、一定の建物については構造計算を行わせると。またそれをきちんとチェックをするというような制度。設備につきましても、建物が非常に大きくなりますと、エレベーターとか換気、排気等々いろいろな設備がありますので、そういうものについても同じように専門性を高めようということで、現在立法作業に入っているわけです。残っているのは民法上の瑕疵担保責任。従来は隠れたる瑕疵であっても、引き渡し後1年で除斥期間というのは決められているわけですけれども、これを10年に延ばしました。しかしその10年の間に売主が倒産をしてしまうとか、資力がなくなってしまった場合には、絵に描いた餅になってしまうわけです。したがってそのようなものについて、どのような制度、例えば保険制度とか基金制度とかいろいろな問題があろうと思いますけれども、そういう問題について、来年の通常国会には是非これを成立させることにより、姉歯の事件が提起した問題について対処していきたいというように考えているところです。
 
(問) 福島、和歌山に続いて宮崎県でも官製談合の疑いがあるということが判明しました。国土交通省においても、北陸地方整備局管内の職員が、価格を漏洩したという疑いで解雇されたという事案もあります。建設業を監督する立場として、今のご所感を伺いたいのですけれども。
(答) 大変残念な話です。地方のことについては発注者が地方であり、今ご指摘のような問題が起こったということについては甚だ遺憾であり、綱紀粛正、あるいはそれをどうしたら防げるかということについては、真剣に考えていかなければならないと思います。地方につきまして、トップが2人も逮捕されるということは衝撃的な事件ですし、競売入札妨害罪ということになりますと、入札制度そのものに対する国民の不信が非常に高まっているわけでして、我々が地方公共団体発注のものについてどうこうするということはできないにしても、国土交通省の発注については、例えば一般競争入札を2億円以上のものに拡大するとか、総合評価制度を導入するとか、あるいは一部の地方整備局ですけれども、ボンド制度を試みに採用して、それを将来は拡げていこうとか、いろいろな工夫をしております。地方もそういうものに準じてやっていただきたいなと、そのように考えているものであります。
 
(問) 総合評価制度についてなのですけれども、これは一方では競争性を低めるのではないかという懸念もあると思います。発注者側が技術的なこと等、価格以外のことで判断・評価するということなのですけれども、そうすると官製談合がこれだけ問題になっている中で、逆に官製談合みたいなことを助長するようなことになりかねはしないかという懸念も生じると思うのですが、その点いかがでしょうか。
(答) そういう点についても十分注意しながら、しかしながら価格だけでやって非常に低価格の人が自動的に落札をする、それによっていわゆるダンピング、赤字受注というものがそこに紛れ込むということになれば、そこに手抜き工事だとか下請けいじめということが起こりかねないわけでありまして、それは価格とともに品質も保証されなければならないという大きな命題があります。しかしながら、仰るような問題点があるとするならば、そういうものについてどう対処するかという工夫も必要であると思います。
 
(問) 耐震偽装の関係で、従来から制度の不備はあったけれども、それについての国の法的な責任はまだ判断できないということだと思うのですけれども、国にも責任があるのではないかという話を住民やホテルのオーナー等から聞くのですが、改めて国の責任ということについての大臣のご所感を教えてください。
(答) 非常に難しい法律判断を伴うものだと思います。この姉歯始め一連の事件を通じて司法判断が示されておりますけれども、そういう考え方も一方にあります。しかし被害を受けた住民から見ればそれでいいのだろうか、というご意見もあるのは当然の話だと思います。そこを追求していけば今日明日に結論の出る話ではないのではないかと思います。我々としては、出来るだけこういう問題で被害を受けた住民の方々の立場に立って、その損害を出来るだけ軽くする方策をいろいろな現行の制度とかを使いながら、例えば建替えについて、そのご負担を酷なものにならないようにするにはどうしたらいいのかというようなことを考えながら、これを実行しているわけでありまして、言い換えればそれが国の果たすべき責任ではないかと。ギリギリとこれは不法行為なのか刑罰法令のどれに触れるのかというような議論をしだしますと、これは非常に専門的な議論になってしまいまして、しかもその結論は分かれるのではないかと思います。そういうことよりもむしろ、1日も早く建替えが実現するように被害者の立場に立って考える、現在の制度の中でどういうことができるかということを考えていくべきではないかと思います。ただ、それを全額負担するということになれば、その負担は全部国民の税金です。また、そこからいろいろなご批判も出てくるだろうと思います。したがいまして、どこで線を引くのか、どういう制度を使うのかということについては、被害者の方も納得され、また、税金を負担する一般国民も納得していただくことができるのかという問題だろうというように私は考えています。
 
(問) 関連しまして、今回制度改正をいくつかやっていますけれども、それは裏返せば制度に不備があったということです。制度の不備があった場合、国が制度を創るわけですから、国がそこを誤ったりすると、こういうことが起きてしまうということだと思うのです。制度の不備に対する責任の取り方はどうあるべきだとお考えですか。
(答) 制度の不備と言いましても、神の目でやるわけではありませんので、1つの法律を創るにしても、その企画・立案、そしてまたその法案作成、そしてまた国会での議論というものを通じて、多くの人の意思というものがそこには入って、そして制度というものは創り上げられてくるわけです。したがいまして、その時点ではそれが最良のものではありますけれども、客観的に後からこういう問題があったときに、それで良かったのかということを判断したときには、やはりここのところはこうした方がいいのではないかという、また新しい考え方がそこに盛り込まれてくるわけでして、それがそのときにそうしなかったことが不備で、それは責任があるのではないかという議論は、若干違うのではないかと私は思います。
 
(問) 結果論で批判するということだけではなくて、例えば制度が形骸化しているのではないかとか、そういった指摘は、別にここまで大きな問題が顕在化する前にあると思うのですが。それを定期的に検証するような仕組みも含めてやっていかないと、これは姉歯のもので言えば平成8年頃からですから10年くらい見過ごされているようなことというのは、さすがにちょっとおかしいのではないかなと思うわけですけれども、その点についてどう考えますか。
(答) 姉歯事案が起こるまでに、例えば皆様方の報道でもそういう問題があるのではないかといった指摘はなされたのでしょうか。私は専門家がやっている問題について、それはそれなりにきちんとやっているのではないかという判断の下に、国民生活は組み立てられていたのではないかと思います。しかし、一度こういう問題が起こりますと、遡ってあの時点ではこうだったのではないかということに気がつきます。したがいまして、それを遺憾な部分は遺憾として、遺憾の意を表しながら、それを将来に向かって改めていく、それも早急に改めていくという努力を通じて、その問題についての責任というものを履行することになるのではないかと思います。

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