9月長官会見要旨

最終更新日:2025年9月30日

                                   日時:2025年9月17日(水)16:15~16:45
                                         場所:国土交通省会見室

冒頭発言

(訪日外国人旅行者数(2025年8月)について)
本年8月の訪日外国人旅行者数は約343万人となり、8月として過去最高の人数となりました。昨年同月と比べた伸び率は17%です。
本年8月の出国日本人数は約165万人となりました。昨年同月と比べた伸び率は15%です。

(本日の交通政策審議会観光分科会(第52回)について)
2点目は、本日午前中に開催された第52回交通政策審議会の観光分科会についての報告です。
観光庁で取り組んでいる観光立国推進基本計画については、本年度末までの策定に向け、これまでに4回観光分科会を開催し、議論を進めているところです。
本日の観光分科会では、2030年の政府目標の達成に向け、観光や交通等の各分野におけるボトルネックを解消するために必要な対応策を幅広く整理し、委員の皆様から有意義なご議論をいただきました。
必要な対応策の整理にあたっては、基本的な考え方として、インバウンドの受け入れを我が国の経済成長や地域活性化に繋げていくことの意義に加え、更なる受け入れに向けた国民の理解を得ることが重要であり、そのためにインバウンドの受け入れと国民生活の両立のための施策の徹底や、地方誘客のより一層の促進等により、観光の持続可能性を高める必要があることなどを提示させていただき、議論をいただいたところです。
引き続き本年度末までの新たな基本計画の策定に向けて、しっかりと検討を深めてまいりたいと考えております。

(ツーリズムEXPOジャパン2025愛知・中部北陸の開催について)
3点目は、ツーリズムEXPOジャパン2025愛知中部北陸の開催についてです。
世界最大級の旅の祭典であるツーリズムEXPOジャパン2025愛知・中部北陸は、今月の25日から4日間、愛知県にて初めて開催され、私も出席する予定です。
今回は、「旅は“知”の再発見」をテーマに開催されまして、旅は常に新たな出会いの連続であり、その体験から様々なことが学べるという観点から、日本各地および世界の約80の国と地域から、約1,000の出展が見込まれています。
このEXPOにおいては、国内外の観光事業者等によるブースの出展、国内外のバイヤーやセラーが集うインバウンド商談会に加え、開催地の愛知県を含む中部・北陸9県による共同ブースの初出展、また日本各地で新たに広がる新しい旅のかたちの紹介のほか、昨年に続き、能登半島地震からの復興を応援するコーナー等も設けられており、充実した内容となっております。
このEXPOに国内外から多くの方々が来場され、魅力を存分に感じていただくことで、より一層のインバウンド・アウトバウンド双方向の交流拡大や地方誘客のきっかけに繋がる機会となることを期待しています。

質疑応答

(問)8月の訪日客数の受け止めについてお願いします。
(答)
冒頭申し上げたとおり、本年8月の訪日外国人旅行者数は約343万人となりまして、前年同月よりも17%増加し、8月として過去最高となっています。
昨年2月から19か月連続で同月の過去最高となっております。
地域別で見ますと、インバウンドの約8割を占めるアジア諸国が前年同月比で16%、欧米豪中東諸国につきましては前年同月比で18%増加しています。
堅調な訪日需要と航空便の回復等によりまして、インバウンドは好調な状況が続いており、力強い成長軌道に乗っているものと受け止めております。
観光庁としましては、引き続き戦略的な訪日プロモーションと地方誘客を積極的に進めてまいりたいと考えております。

(問)今月は中国からの訪日客数がかなり好調で、1月から8月で累計671万人に達していると思います。中国からのインバウンド客あるいはツアーの特徴の分析と、今後継続的に来訪してもらうための取組についてお伺いします。
(答)
本年1月から8月までの中国からの訪日客数は、対前年同期比で約46%増の671万人となり、全ての市場の中で最も多いです。
航空便の座席数の増加、あるいは円安といった要因が寄与していると考えております。
中国からの訪日客の特徴としては、20代から40代の若年層や家族層の旅行需要が高いということ、また自己手配旅行が多いということです。
訪日の理由としては、日本食、自然・景勝地観光、繁華街の街歩き、ショッピングといったことを挙げられている方が多いという状況です。
これらの特徴を踏まえ、引き続き20代から40代をメインターゲットに、リピーターや高所得者層の訪日、そして地方誘客を推進するべく、戦略的な訪日プロモーションを積極的に進めてまいりたいと考えております。

(問)本年3月末時点の消費税免税店数の速報値が発表されました。買い物消費の動向など都市部でも減速感が取り上げられる中で、免税店数の動きをどう捉えていますか。また、今後のインバウンド消費の拡大に向けて、長官の所感をお伺いします。
(答)
2025年3月末時点での全国の免税店数は6万店を超えました。そのうち地方部での免税店数は2万店を超えていまして、この10年間で3倍以上の規模に成長しています。
これはインバウンド数の増加を商機と捉えて、地方部も含めてインバウンド消費を取り込もうとする事業者が増えたということを意味しており、地域経済の活性化に大いに寄与するものと理解しています。
観光庁で行っているインバウンド消費動向調査によると、2024年の訪日外国人による買い物消費は約2.4兆円の市場規模となっておりますので、消費税の免税制度はこの買い物消費を下支えする重要な制度であります。
実際にJNTOの現地事務所などへのヒアリングにおいても、この免税制度に関する問い合わせや免税制度が訪日旅行を後押ししているといった声も聞かれております。
また訪日客による買い物を通して知名度が上がった小売店が海外に新たに店を開くといった話も聞いておるところです。
引き続き消費税免税制度を活かしながら地方部でのインバウンド消費の一層の拡大に取り組んでまいりたいと考えております。

(問)訪日数について、先月、先々月の訪日客数は7月に日本で災害が起きるとされたSNS上での噂が影響して数字は低調でした。8月はそれと比べると回復しているように見受けられますが、噂の影響をどう分析されておりますでしょうか。今後の見通しも含めて教えてください。
(答)
冒頭申し上げたとおり、8月の訪日客数としては過去最高です。
堅調な訪日需要と航空便の回復等により、インバウンドは好調な状況であり、力強い成長軌道に乗っていると受け止めております。
香港につきましては、7月5日に日本で大地震が起こるという噂がSNS等により広がったことにより、旅行商品のキャンセルや航空便の減便などが生じたところであります。
こうしたことから、6月、7月の香港からの訪日者数は、前年同月比で30%以上減少していたところでありますが、8月は8%の減少ということでかなり改善した状況と思っております。
インバウンドは様々な要素の影響を受けることから、今後の見通しについて申し上げることは差し控えたいと思いますが、引き続き訪日数の動向については注視してまいりたいと考えております。

(問)訪日客などがホテルや空港にスーツケースを放置する問題について、大阪観光局の調査によると8割超の宿泊事業者が「問題になっている」と回答したそうです。このようなマナー違反行為について、観光庁はどのように考えておられますでしょうか。令和8年度予算の概算要求では国際観光旅客税収を700億円と見込んでいますが、マナー違反行為のさらなる防止や抑制策の取組や検討課題を教えてください。
(答)
大阪観光局が宿泊客によるスーツケース放置などの課題について、賛助会員向けにアンケート調査を行ったことは承知しております。
スーツケースは、保管にあたってスペースが必要となるほか、保管後に廃棄する場合には廃棄物としての処理費用が生じるために、利用規約等に基づいてスーツケースを放置しないよう求めている宿泊施設もあると認識しております。
観光庁としましては、こうしたルールも含め、ルールを適切に理解した上で観光を楽しんでいただけるよう、地域におけるマナー啓発に必要な予算の獲得に努めてまいりたいと考えております。

(問)予算概算要求についてお伺いします。特に前年比約6倍となっている人手不足対策や免税関連施策、そのほか、新規の能登半島地震からの復興に関する予算への所感をお伺いします。
(答)
観光産業の人手不足の解消に向けては、特に受け皿となる宿泊産業の人手不足の解消が急務と考えております。
今後更なる増加が見込まれるインバウンド需要を着実に取り込むために、宿泊業への人材活用の高度化に向けた設備投資支援や外国人材の採用活動支援など、あらゆるフェーズの対策を総合的に実施するために、必要な予算の確保を目指したいと考えております。
消費税免税制度のリファンド方式への移行関係の予算については、リファンド方式は来年の秋から実施ということで決まっておりますので、これまで免税店への周知等のための事業を実施しているところです。
令和8年度は、旅行者への効果的な注意喚起等を行うために、日本全国の国際空港等での周知が必要になってきますので、そのために必要な予算の確保を目指したいと考えております。
能登半島の予算については、能登半島地震からの更なる復旧にあたり、経営の高度化に向けた計画策定や、復旧後の誘客促進を図るためのコンテンツ造成などを支援する事業を令和6年度の補正予算で措置したところです。
令和8年度の当初予算として引き続き要求することで、能登半島地域に対するきめ細かな対応を続けていくことを目指しております。
観光庁におきましては、このように令和8年度予算においても引き続き必要な観光施策を進めるための予算をしっかり確保できるよう、あらゆる機会を捉えて予算の確保に取り組んでまいりたいと考えております。

(問)下半期の中国市場について、2025年の上半期はコロナ前を上回っている状況で国慶節も控えています。下半期の今後の中国市場についての所感をお伺いします。
(答)
中国市場の8月までの数字は先ほど申し上げたとおりですが、中国では今後10月に中秋節あるいは国慶節といった長期休暇を控えているということで、例年この時期には多くの中国人の方が日本を訪れていると承知をしております。
インバウンドは様々な要素の影響を受けることから、中国市場の今後の見通しについて申し上げることは差し控えたいと思いますが、引き続き中国市場を含め、戦略的な訪日プロモーションと地方誘客を積極的に進めてまいりたいと思います。

(問)能登半島の復興支援に関連して、先日4日に石川県の金沢で開催された日本旅館協会主催の観光金融懇談会に長官も出席されましたが、この中で能登の復興応援割引の可能性についても言及されていました。応援割の実施時期について、具体的な実施要件などについて教えてください。例えば復興の度合いがどれぐらいになったらどういったものを展開するといったものがもし現時点であればお伺いできればと思います。
(答)
今月4日、石川県の金沢市で開催された宿泊業界における観光と金融に関する全国懇談会に出席をしました。
私自身もその前後で、和倉温泉や輪島地域も視察させていただきましたけれども、復興に向けてはまだまだ道半ばであるといった厳しい状況をお伺いし、しっかりと支援を継続していかなければならないという思いを改めて強くしたところです。
その上で、ご質問の能登地域を対象とした復興応援割については、被災地の復興状況の進捗状況を踏まえ、さらには地元のご意見をよく伺いながら、検討してまいりたいと考えております。

(問)8月のインバウンド数について、シンガポールが2桁の減少となっています。一部では、シンガポールで日本国内がとても暑く旅行しづらいというような報道もあったと聞きますが、シンガポールが減少した要因と、また、日本が近年、非常に暑くなっていることがインバウンドにどのような影響を及ぼしているかについての所感もお伺いします。
(答)
シンガポールの訪日数は、17%の減少となっています。
これの要因としては、スクールホリデーの休暇が昨年と比較して移動したこと、またジェットスターアジアの撤退が7月末にあり、こういったことによる航空便の減少が主な要因であると分析をしているところです。
日本の猛暑の影響については、定量的な数字は把握できておりませんが、日本国内でもあまり暑すぎると少し外出を控えようかなという傾向はないとは言えませんので、多少影響しているかもしれません。全般としては、先ほど申し上げたように他の国では増えておりますので、そういった声があっても、そこまで大きな影響にはなっていないのかと考えております。

(問)香港の訪日客数について、減少幅自体は小さくなったということで、いわゆる噂のようなものがあったが、時間が経ってきたということかと思います。長官として香港からの訪日数の減少が8月も続いていることへの所感をお伺いします。
(答)
一般的には、6月から8月に噂の影響というものがあり、訪日旅行を見送った人が一定程度いるということです。しかし、実際に噂に過ぎなかったのでやはり日本に行こうと思っても、海外旅行に行くには日程の調整や、航空便・宿の確保などがあり、すぐに行くことは難しいと思います。
今後の見通しについては、確たることは申し上げられませんが、来月の状況などを見極めていく必要があると考えております。

(問)アウトバウンドに関して、「もっと!海外へ 宣言」発出から半年ほどが経過しましたが、年度内にこの宣言に関する新たな取り組みがあるのか教えてください。また旅行振興に関して7月に参事官(旅行振興)を新設されましたが何か数値的な目標があるのか教えてください。
(答)
本年3月に観光庁、外務省及び日本旅行業協会の3者で「もっと!海外へ宣言」を発出しました。
それに基づき、観光庁においては、引き続き若者の国際交流の促進に向けて「海外旅行のプログラム開発事業」に取り組んでおります。外務省では、偽造・変造対策を大幅に強化した「2025年旅券」の周知のほか、日本旅行業協会では各旅行会社や空港によるキャンペーン等の取りまとめを実施しているところです。
中長期的な観点から更なるアウトバウンドの促進に向けては、例えば、若者や地方を対象とした海外旅行の需要喚起に向けた機運醸成等が必要と考えております。
7月に設置した参事官(旅行振興)では、現行の観光立国推進基本計画の目標が出国日本人数2,000万人ですので、まずはこの目標に向けて今申し上げた施策をしっかりやってまいります。

(問)先日OTAのエクスペディアと意見交換をしたと思うが、内容は単に意見交換だったのか、もしくは何か具体的な取組を開始する予定があるのか教えてください。
(答)
新たな取組というよりも、エクスペディアの幹部に、インバウンドやアウトバウンドに関する観光庁の考えを説明し、エクスペディア社の取組や考えを聞きました。
互いに連携し、様々な施策に取り組んでいくことが大切だという認識を共有したところです。

以上

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