11月長官会見要旨

最終更新日:2025年12月3日

                                    日時:2025年11月18日(火)16:15~16:50
                                                                                                                                                                     場所:国土交通省会見室

冒頭発言

(訪日外国人旅行者数(2025年10月)について)
本年10月の訪日外国人旅行者数は、約390万人となり、10月として過去最高となりました。昨年同月と比べた伸び率は18%です。
本年10月の出国日本人数は約124万人となりました。昨年同月と比べた伸び率は8%です。

(旅行・観光消費動向調査2025年7-9月期(1次速報)について)
2点目は、旅行・観光消費動向調査の2025年7月から9月期の速報について報告します。この調査は日本人の国内旅行を対象としています。
2025年7月から9月期の日本人国内延べ旅行者数については、約1.6億人で前年同期比で4.6%の増となっております。
また日本人国内旅行の一人1回当たりの旅行支出は約5万円となりまして、前年同期比で約4.2%の増となっております。
これらを掛け合わせました日本人の国内旅行消費額は、約8.1兆円、前年同期比で約9%の増となりまして、四半期としては過去最高の数字となっております。
なお、過去の実績から考えますとこの日本人の国内旅行消費がもたらす波及効果は、国内旅行消費額のおおむね2倍程度ということで推移しており、これを踏まえますと7月から9月期は約16兆円程度であったと推測ができます。

質疑応答

(問)本日発表された10月までの訪日外国人者数について、対前年同月比で増えていますが、今年の見通しとこの背景をどのように分析されているか改めてお伺いします。
(答)
今年の10月の実績でありますけれども、冒頭申し上げました通り、10月の訪日外国人旅行者数は約390万人となりまして、前年同月よりも18%増加して、10月としては過去最高の数字となっております。
地域別で見ますとインバウンドの約7割を占めるアジア諸国が前年同月比で16%の増加、また欧米豪・中東諸国については前年同月比で21%の増加ということになっております。
堅調な訪日需要と、航空便の増加等によりまして、インバウンドは好調な状況であり、引き続き力強い成長軌道に乗っているものと受け止めております。
観光庁としては引き続き、戦略的な訪日プロモーションと地方誘客を積極的に進めてまいりたいというふうに考えております
今後の見通しでございますけれども、インバウンドの市場につきましては様々な要素の影響を受けることから、見通しを述べることは差し控えたいと思っております。

(問)足元では日中関係が今いろいろ複雑になってきております。観光に関しても、お互いの行き来に不透明感が漂っています。これについて、観光庁長官としてどのようにお考えになっているのか、どのような見通しになっているのか、どれくらいの影響があると考えておりますでしょうか。
(答)
中国政府は14日に中国の国民に対しまして当面の間、日本への渡航を避けるよう厳重に注意喚起をすると発表したと承知をしております。
これに関しましては現在、外交ルートで様々なやり取りが行われていると承知をしておりまして、今般の渡航自粛の呼びかけが中国人旅行者の訪日旅行にどのような影響を与えるかにつきましては、現時点で予断をもって申し上げることは差し控えたいと思っております。
影響につきましてもこれから引き続き、中国からのインバウンドの動向につきまして、注視をしてまいるということに尽きると思っております。

(問)先月27日に第53回観光分科会で、第5次観光立国推進基本計画の改定について議論されたと思います。こちらの施策の方向性や施策の柱が提示されたと思いますが、現時点の長官のご所感をお聞かせください。特にこれまでの検討や意見の中で重要に感じられた点や、新たな目標数値設定の考え方についてお願いいたします。
(答)
前回の分科会におきましては観光庁より、新たな基本計画の柱立て、目標、主な施策の方向性をお示しして議論いただきました。 
これまでの観光分科会の議論の中では、都市部を中心とした一部地域に訪日客が偏在している傾向があること、あるいは一部観光地における過度の混雑やマナー違反による地域住民の生活への影響等が生じているといった状況を踏まえまして、オーバーツーリズム対策や、地方誘客を通じて観光客の集中を分散させることが重要とされており、これらは観光庁としても喫緊の課題と考えております。
こうした観点から、新たな基本計画の柱の一つとして、インバウンドの受入れと住民生活の質の確保との両立を位置づける案をお示ししました。
また目標の方向性の一つとして、訪日外国人や日本人の地方部における延べ宿泊者数を設定する案をお示しして、概ねご了承いただいたと認識をしております。
引き続き今年度末までの次期基本計画の策定に向けて、検討を深めてまいりたいと思っております。

(問)今月4日に高市総理から国土交通大臣に向けて、国際観光旅客税の拡充や、観光客の過度な集中の防止と地方分散の推進、またマナー違反等のオーバーツーリズム対策の強化や、各種民泊の適切な運営確保に向けて、具体的な対応策の検討を進めるよう指示があったと思うのですが、こちらの観光庁の受け止めをお聞かせください。
(答)
今月4日に開催されました「外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議」におきまして、総理から国土交通大臣に対しまして、今ご指摘がありましたように、国際観光旅客税の拡充、観光客の過度な集中の防止と地方分散の推進、マナー違反等のオーバーツーリズム対策の強化、各種民泊の適切な運営確保等に向けて検討を進めるよう、ご指示がありました。
このうち国際観光旅客税、いわゆる旅客税の拡充につきましては、今後、税制改正プロセスにおきまして議論がされるものと承知をしておりますが、総理からのご指示等も踏まえまして、施策の実施に必要な財源の確保ができるように努めてまいりたいと思います。
オーバーツーリズム対策と地方分散につきましては、インバウンドの受入れと住民生活の質の確保が両立できるよう、過度の混雑やマナー違反への対応、地方部への交通ネットワークの機能強化など、地域の実情に応じた取組を一層支援してまいりたいと思います。
また、民泊につきましては、例えば民泊制度運営システムと仲介サイトをデータ連携させることで、仲介サイトから違法民泊を排するということができないか等、こういったことについて、関係省庁と連携して対策を検討してまいりたいと思います。
引き続き、政府全体での検討状況を踏まえまして、外国人の受入れ・秩序ある共生社会の実現に向けて、適切に対応してまいりたいと思います。

(問)今ご説明いただいた国際観光旅客税の拡充に関して、具体的な指示の中に、日本人出国者に配慮しつつ進めるようにということが明記されていたかと思いますが、こちらについてはどういうお考えでしょうか。
(答)
11月4日の関係閣僚会議において、総理から国土交通大臣に対する指示の中では、国際観光旅客税を引き上げた場合の日本人出国者への配慮についてもご指示があったところでございます。
国際観光旅客税につきましては、現在も日本人旅客に配慮し、例えば、円滑な出入国の環境整備等にも充てられているところであります。
さらに、11月13日の自民党の観光立国調査会においても、国際観光旅客税の引上げ等について決議がされておりますが、こうした点について様々な議論が行われたものと承知をしております。
今後の国際観光旅客税の取扱いについては、税制改正プロセスにおいて議論がされると承知をしておりますが、その使途につきましては、こうした状況も十分勘案した上で、予算編成過程において、政府部内で議論していくということになろうかと思っております。

(問)中国の渡航自粛の呼びかけや、日本行きの航空券のキャンセル料が無料といった動きも出ているかと思います。このような動きがある中で、まず観光庁としての受け止めをお伺いさせてください。
(答)
繰り返しになりますが、この問題につきましては、現在外交ルートで様々なやり取りが行われていると承知しております。
今般の中国側の渡航自粛の呼びかけが中国人旅行者の訪日旅行にどのような影響を与えるかについて、現時点で、予断を持って申し上げることは差し控えたいと思っております。
引き続き中国からの訪日旅行者の動向について、影響も含めて注視してまいりたいと思います。

(問)現在、全国各地でクマが出没しており、観光地で出没するケースもあり、訪日旅行者からも不安の声が上がっているということを聞いております。イギリス政府が訪日旅行者に注意喚起をしたとの報道もあり、風評被害でインバウンドの減少や、国内の動きについても様々な要素が懸念されると思っております。観光庁として、情報発信の今後の取組など、今後何か決まっていることがあれば教えてください。
(答)
ご指摘のクマによる人的被害でありますが、こちらにつきましてはインバウンドを含む観光客、あるいは観光従事者にも及んでいるということで、クマ被害につきましては観光業にも影響を与えている状況であると承知しております。
こういったことを踏まえまして、11月14日に政府において決定いたしました「クマ被害対策パッケージ」におきましては、関係省庁とも連携しながら、観光客の安全確保対策を講じるということが盛り込まれたところであります。
その一環として、正確な情報発信ということが極めて重要であると考えておりまして、関係省庁や自治体等とも連携しつつ、インバウンドを含む観光客に対し、クマへの注意喚起や出没状況等についての多言語による情報発信を行っているところであります。
今後とも、風評被害による訪日旅行への影響や、地域における宿泊者数の動向などにも注視しつつ、観光客等の安全確保に向けた地域の取組を支援してまいりたいと考えておりまして、関係省庁とも連携して必要な対策を講じてまいります。

(問)総理の指示に、オーバーツーリズムの対策の強化が含まれていると思いますが、観光庁において、これまでの対策の取組と、今後予定しているものがあれば教えてください。
(答)
観光庁におきましては、一昨年に取りまとめられた対策パッケージがありまして、これに基づいて補正予算等を活用しながら、各地域のオーバーツーリズム対策の取組を支援してきたというところであります。
他方、力強い観光需要を背景に、依然として、都市部を中心とした地域への偏在傾向が見られること、また、一部の場所や時間帯によっては、過度の混雑やマナー違反により、住民生活に支障が及んでいるものと承知しております。
こういったことから、今般の総理からのご指示も踏まえまして、今後は各地域が継続的かつ計画的に対策を講じていけるよう、過度の混雑やマナー違反対策、そして地方分散の推進に必要となる様々な基盤整備など、このオーバーツーリズム対策をより一層強化するべく、国際観光旅客税の拡充も含めて、検討してまいります。
このような取組によりまして、観光客の受入れと住民生活の質の確保の両立を図り、持続可能な観光の実現を図ってまいりたいと考えております。

(問)日中関係が緊張しているところがありますが、先月の国慶節について、中国企業の分析では国慶節の人気旅行先として日本が挙げられることも多かったようです。実際の中国からの訪日客数を踏まえ、国慶節期間の動向や、その影響について所感をお聞かせください。
(答)
国慶節期間の動向ということでありますが、国慶節期間中には、多くの中国の方々にお越し頂いたこともありまして、10月の中国からの訪日客数につきましては約72万人となりまして、前年同月よりも約23%の増加になっております。
これは引き続き好調な状況が続いているということで、力強い成長軌道に乗っていたと受け止めております。
お話ありましたように、複数の中国の旅行会社が発表した今年の国慶節における旅行者の動向レポートによりますと、中国人旅行者の海外人気渡航先では、いずれも日本が上位に位置していると承知しております。
また国慶節における中国からの訪日旅行者数の動向につきましては、JNTOから中国現地の旅行会社に対してヒアリングを実施したところ、ゴールデンルートを中心とした旅行商品に加えて、地方向け旅行商品の需要が拡大したということ、また、ものづくりや文化体験等、親子で楽しめるコンテンツが人気だったということ、また、少人数グループやオーダーメイド型旅行の販売が好調であったこと、こういった傾向があるといった報告を受けております。

(問)韓国側が中国人団体観光客に対してビザを免除しておりまして、今年の国慶節では、韓国行きの航空券の需要も大幅に高まったようです。そこで、現在の日中関係の政治的な緊張を除いた場合、日本のインバウンド市場にとって、競合となる国々の動向による訪日旅行への影響や、日本が旅行先として選ばれ続けるために必要なことについて、所感をお聞かせください。
(答)
今般の韓国政府によるビザ免除の措置が中国からの訪日旅行に与える影響につきまして、JNTOから、中国現地の旅行会社に対してヒアリングを実施したところ、韓国旅行に関する問い合わせや予約件数が増えたという声もありますし、それから訪日全体に大きな影響は出ていないといった声もありまして、様々な見解があるという状況であると承知しております。
それぞれの国や地域がそれぞれの魅力を生かして観光振興に取り組んでいる状況でありまして、我が国といたしましては、諸外国の取組も注視しつつ、風光明媚な景観や町並み、それから地場産業、そして食文化、こういった日本特有の魅力ある観光資源を活用したプロモーション、また観光地域作りなどに取り組んでいくと考えております。

(問)訪日中国人旅行者の動向を注視するとのことですが、既に報道では国内のホテルや航空便などに影響があるという企業の声も出ています。渡航自粛の注意喚起が長期化するか否かは分からないが、観光庁としても早期の対応を探るなかで、具体的な調査を早急に始める考えはあるでしょうか。注視とは注意関心を払うという意味であるが、既に情報収集を始めているなど、そのような動きがあるのであれば教えてください。
(答)
報道機関によっていろいろな取材をされて、テレビや新聞等で様々な声を伝えていただいているということについても承知しております。
観光庁としては、このような影響がどのような範囲でどのような形で出ていくかということについては、これからしっかりと把握をして参ります。それですので、今日の時点で、一定の傾向について申し上げる段階ではないと考えています。

(問)分析を申し上げる段階ではないが調査についてはこれからしっかりやっていこうと思っているということでしょうか。
(答)
はい。ヒアリング等を含めて、状況の把握をしっかりとやっていくということです。

(問)中国に関連してですが、当然中国向けや韓国向けなど国別のプロモーションがあると思いますが、現時点で観光庁として、中国向けのプロモーション、つまり中国からもお客さんを呼ぶためのプロモーションということについて、何か変化があるのか、それともあえて今まで通りやっていくのか、そのあたりのスタンスを教えてください。
(答)
基本的には、観光庁としては中国を含む世界各国からのインバウンドにつきまして、重要と考えておりますので、引き続き従来の方針を継続してまいりたいと考えております。
中国につきましては、中国からの旅行客の動向や実績を当然注視しつつ、また様々な諸般の事情もこれからどうなっていくのかというところも見極めながら、基本的には訪日プロモーション活動を始め必要な取組を進めてまいりたいと思います。

(問)現時点で何かプロモーションの形を変えるとかそういう方向ではないということでしょうか。
(答)
現時点で今何かそういったことを決めているわけでありません。

(問)今回の中国側の措置を受けてむしろオーバーツーリズムの解消には役に立つのではないのかというような現実もあるわけです。確かにオーバーツーリズムで中国人の問題というのは十年来言われてきていますが、例えばこれを機会に1回考えるタイミング、冷静になれるタイミングかもしれません。そういった現実についての受け止めや、今回を機にということで何かお考えがあれば教えてください。
(答)
繰り返しになりますが、この問題は現在外交ルートで様々なやり取りが行われておると承知しておりますので、この渡航自粛の呼びかけによる影響について、現時点で予断をもって申し上げることは差し控えたいと思います。
その上で、私どもとしてはこの観光客の受入れ増加ということと、それから国民生活の質の確保との両立を図っていくということが観光政策上重要な課題であると考えておりまして、国土交通省としては、この重要な課題の解決にしっかりと取り組むと、こういったことを続けてまいりたいと考えています。

(問)今回のこれを受けて何かというわけではないですね。
(答)
先ほどから申し上げておりますように、観光客の受入れということと、住民生活あるいは国民生活の確保ということの両立をやっていくというのが我々の仕事だと思っています。

(問)国際観光旅客税について、先般の自民党の観光立国調査会の決議がありました。決議に関して、観光庁としての受け止めをお伺いできればと思います。
(答)
この問題については、まず、オーバーツーリズム対策と地方分散の推進のため、自民党の観光立国調査会地方誘客・オーバーツーリズム対策PTでご議論されて、それを観光立国調査会で提言いただいたものと承知しています。そのための財源として、国際観光旅客税の引上げという形で決議をいただいていると受け止めております。
そうしたものをもとに、これから税制改正プロセスに入っていくということですので、与党の議論、それから政府としてもそういったものに適切に対応しながら、年末まで議論を続けていくものと考えています。

(問)10年パスポートの手数料引き下げという一部報道がありましたが、事実関係と政府間でどのような話があるのかお伺いします。
(答)
高市総理からの国際観光旅客税の拡充についての指示の中でも日本人出国者への配慮についてもご指示があり、また自民党の観光立国調査会でも様々な議論があったということです。
旅客税については先ほど申し上げましたように、現在も日本人旅客に配慮して円滑な出入国の環境整備等に充てられているところでありますが、使途についてはこうした議論の状況を踏まえて、今後の予算編成の過程において、政府内で十分議論を行っていくということに尽きると思います。

(問)個別の国の評価ということになりますが、韓国や中国が我が国の観光のインバウンドの上位ですが、中国の位置づけということについて改めて伺いたい。過去10年でいろいろあって上がったり下がったりしていますが、長官自身、中国という市場や国をどう捉えているのか教えてください。
(答)
我が国のインバウンド市場の中で中国が大きな位置を占めていることは、紛れもない事実であり、それに尽きるかなと思っております。

(問)クマに関する被害について、11月10日の段階で被害防止の一環として、旅館とホテルの露天風呂に設置する柵の費用の半額を補助するという方針を固められていたかと思うのですが、その後、これについては進められてるのでしょうか。
(答)
政府全体のクマ対策のパッケージという中では、緩衝帯や強固な柵の整備あるいは電気柵の防護強化ということについても、政府全体として取り組むということになっておりますので、そういった中で関係省庁と連携して対応していくということになろうと思います。

以上

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