髙橋長官会見要旨

最終更新日:2023年7月24日

日 時:2023年7月19日(水)16:15~16:40
場所:国土交通省会見室

冒頭発言

(2023年6月の訪日外国人旅行者数について)
  • 本年6月の訪日外国人旅行者数等について報告があります。
  • 本年6月の訪日外国人旅行者数は、207万3,300人となりました。
  • 単月で200万人を超えたのは、3年5ヶ月ぶりです。
  • また、1月から6月の累計では1,071万2,000人と1,000万人を超えました。
  • コロナ前の2019年6月と比べると、72%まで回復しました。
  • 本年6月の出国日本人数は、70万3,300人となりました。
  • 昨年6月と比べて約4倍、コロナ前の2019年6月と比べると46%の回復ですが、少しずつ回復傾向が見られます。
 
(訪日外国人消費動向調査の結果(2023年4-6月期1次速報)について)
  • 2点目は、訪日外国人消費動向調査についてです。
  • 本年4-6月期の訪日外国人消費動向調査1次速報の結果について報告いたします。
  • 2023年4-6月期の訪日外国人旅行消費額は、1兆2,052億円と推計され、コロナ前の2019年同期比で約95%まで回復しました。
  • 訪日外国人1人当たり旅行支出は、20万5千円、2019年同期比32%増となりました。
  • これは、平均泊数が2泊伸びたこと等が全体の単価を押し上げたものと考えられます。
  • また、観光・レジャー目的に絞ってみると、平均泊数が約1泊伸びたこと等から、1人当たり旅行支出は20万1千円、2019年同期比30%増となりました。
  • 観光庁としては、引き続き、訪日外国人の消費額拡大に取り組んでまいります。

質疑応答

(問)就任後初の記者会見ということで、就任にあたって、改めて抱負や特に注力したい施策などがございましたら、お願いします。
(答)
  • 私が観光庁で課長職を務めておりましたのは、平成25年から28年でございます。
  • その当時は、アジアをはじめ急成長する世界経済の成長力を、観光を通して日本に呼び込んでいく、全国津々浦々に、インバウンド消費と交流を生み出して、観光が、我が国経済の柱となり、地域の誇りになる、ということを実感させていただいた3年間でございました。
  • 令和元年、次長として戻り、ほどなくして、新型コロナの流行によりまして、観光もビジネスも、国内外の人流が一斉に止まり、各地で観光に携わる方々の事業継続と雇用の維持が危ぶまれる未曾有の危機に直面をいたしました。
  • 当時、何とか人の動きを生み出し、観光需要を取り戻さなければとの一心で、GoToトラベル事業を始め、ポストコロナを見据えた取り組みへの支援事業を起こして、観光庁を辞しました。
  • それから2年が経ちまして、観光需要も本格的に回復しつつあると承知をしております。
  • この2年間、和田前長官が、コロナ禍からの回復と観光の再始動、これらに向けた歩みを大きく進めていただきましたので、まずは観光立国推進基本計画や、新時代のインバウンド拡大アクションプランなど、和田長官のもとに決定した観光立国の復活に向けた大きな方針を、しっかりと具体の形にできるよう、関係の皆様と議論を行いつつ取り組んでまいりたいと思っております。
  • その際、観光庁の大きな任務の一つは、持続可能な形で観光立国を復活させるべく、地域経済を支える皆様を様々な形で応援させていただくことだと思っております。
  • 地域社会経済に好循環を生む持続可能な観光地域作りを全国各地で推進し、成功事例を創出できるように取り組んでまいりたいと思っております。
  • 日常を離れて、知らない場所を訪れたい、旅をして新たなものに出会ってみたい、巡り会ってみたいという気持ちは、人間の根源的欲求であって、私は観光の持つ揺るぎないポテンシャルや底力を信じております。
  • そのような確信のもと、全国各地で観光振興を担っておられる方々、また、観光産業に従事される皆様が、未来に希望を持ち、心豊かに、一層の誇りを持って取り組みを進めていただけるよう、そのお声に耳を傾けながら、観光行政に全力を尽くしてまいりたいと考えております。
 
(問)コロナ禍に入ってから、初めて単月で200万人を超えたということで、その受け止めと、また、中国がまだ団体旅行を解禁していないのに、香港を超えて、前月比7万人増えた背景等をどのように見ていらっしゃるか教えて下さい。
(答)                                 
  • 繰り返しになりますが、冒頭申し上げました通り、本年6月の訪日外国人旅行者数は、単月で207万3,300人となっております。
  • 単月として3年5ヶ月ぶりに200万人を超え、1月から6月の累計で1,000万人を超えたところです。
  • 訪日旅行者数につきましては、個人旅行を解禁した昨年10月以降、毎月の2019年比回復率は毎月増加をしており、堅調に回復してきていると受け止めております。
  • また、国・地域別では、コロナ前から中国に次いで訪日旅行者数の多かった韓国からの訪日が、昨年10月以降、一貫して最多となっておりますほか、海外旅行先として日本をはじめアジアが人気となっておりますアメリカは、コロナ前を大幅に上回っているところです。
  • 一方、コロナ前の訪日旅行者数が最大であった中国につきましては、海外団体旅行の取り扱い禁止措置が継続されていることなどにより、コロナ前と比較して、24%の回復率にとどまっているところです。
  • しかしながら、中国からの個人での観光客は増えているものと考えております。
  • その主な要因として考えますのは、両国を結ぶ航空便の継続的な増便でありまして、夏ダイヤに切り替えられた3月第4週と比べて6月第4週には約3倍となっており、これにより多くの方々が来日されたと認識しています。
  • 本年3月に閣議決定をいたしました新たな観光立国推進基本計画では、2025年に向けたインバウンドの目標として、訪日旅行者数の2019年水準超え、これに加えまして、質の向上を図る観点から、旅行消費額、地方宿泊数の増大を目標としています。
  • 観光庁といたしましては、基本計画に定めた施策を着実に実施いたしまして、インバウンドの回復拡大をさらに加速するよう、しっかりと取り組んでまいりたいと考えております。
 
(問)インバウンドの回復が望ましいというようなお話もありましたけど、一方で観光産業業界の場合は人手不足というのが生じているかと思います。夏休みをいよいよ本格的に迎えるにあたって、傾向も強まる懸念が見られますけれども、観光庁としての人手不足についての現状認識、それから対応についてお聞かせください。
(答)
  • ご指摘のように、宿泊事業者をはじめとする観光産業においては、観光需要の回復に伴いまして、人手不足が顕著となっていると認識しています。
  • こうした人手不足に対しましては、短期的には何よりも、官民連携して賃金の水準をはじめとした従業員の方々の待遇向上を図って、人材確保のための環境を改善していくことが重要であると考えています。
  • このため、観光庁といたしましては、観光地の再生高付加価値化、あるいは観光DXの推進による生産性、収益性の向上を図りますとともに、例えば、このような事業によります支援に際して、賃金水準の引き上げを求める、お願いするということなどによって、従業員の方々の待遇向上が図られるよう取り組んでいるところです。
  • こうした取り組みにより、今後、宿泊業における人材確保のための環境の改善が進むものと期待をしています。
  • この他、国内人材の担い手確保をしっかり進めつつ、それでもなお足りない部分につきましては、関係業界と連携をして、外国人材の活用にも取り組んでまいりたいと考えています。

(問)先ほどの質問とも少し関係するのですが、夏の旅行シーズンが始まります。これだけ需要が伸びているところもありますけれども、夏の旅行需要自体の受け止めといいますか、どれぐらい推移するかと、ご覧になっているかというところをまず伺いたいです。それに加えて、二つ目が、一部の地域でのオーバーツーリズムといった影響ですね、かなり観光客が集まったりですとか、そういう懸念について長官はどのようにお考えか改めて伺えますでしょうか。
(答)
  • 2点お受けいたしました。
  • まず1点目、今年は5月に新型コロナウイルス感染症が5類の感染症に移行して初めての夏休みとなります。
  • 大手旅行会社の予測によりますと、国内旅行人数は、昨年2022年と比較すると1.2倍程度となりまして、コロナ前の2019年水準まで回復するという見込みをされています。
  • また、同じく大手旅行会社の予測では、海外旅行人数、アウトバウンドは2019年比4割にとどまるものの、2022年、昨年と比較すると2倍程度となる見込みでありまして、回復基調にあると考えています。
  • 多くの観光地において昨年よりもたくさんの旅行者の方々賑わうものと考えています。
  • 観光を通じた交流の活性化による地域経済の活性化、また、これまで厳しい環境に置かれていた観光業界の経営状況の改善などが一層期待できるものと考えています。
  • 2点目、国内外の観光需要の回復に伴いまして、多くの観光地が賑わいを取り戻しつつあります。
  • その中で、一部の観光地におきましては、混雑あるいはマナー違反による地域の住民の方々の生活への影響や、旅行者の方々の満足度の低下への懸念が生じていると認識をしています。
  • こうした地域において、まず地域の取り組みについてお話を申し上げます。
  • 混雑状況を可視化することで、比較的空いている時間や場所に観光客を誘導する取り組み、あるいは街中の掲示やSNSなどを通じたマナー啓発の取り組みが実施されており、観光庁としてもこうした取り組みを促進してまいったところです。
  • 令和5年度においては、こうしたオーバーツーリズム回避のための地域の対策について、広く支援を行うこととしています。
  • また、観光庁としては、地域の関係者が一体となって、「住んで良し、訪れて良し」の持続可能な観光地域づくりを行うためのツールとして、日本版持続可能な観光ガイドライン、この実践、普及を推進しています。
  • 混雑の回避対策としましては、地域の取り組みへの支援に加えて、旅行者に対する旅行需要の分散を働きかける取り組みも重要であると考えています。
  • 旅行の多くは、ご案内のように週末、お盆休みなどの大型連休に集中することから、旅行需要の平日への分散、平準化を図るために、観光関連事業者の方々の協力によって、平日にお得な旅行商品を造成して、官民で発信する平日にもう一泊キャンペーンを実施しているところであります。
  • 併せて、日本の地方、たくさんいいところがあります。
  • 日本の地方に存在する様々な観光資源の発信を通じて、インバウンド旅行者の方々の地方への誘客を促進することも大変重要であると思っております。
  • そのため、地方を中心にインバウンド旅行者を強力に誘引する特別な体験を創出するなど、日本各地の魅力を全世界に発信する観光再始動事業、あるいは外国人富裕層の方々の地方への誘客に向けた高付加価値なインバウンド観光地づくり、また、日本政府観光局による地方誘客の重点プロモーションなど、このような取組を集中的に行ってまいりたいと思っております。
  • 「住んで良し、訪れて良し」を実現するべく、持続可能な観光地域づくりと観光需要の分散、これらに資する観光政策をしっかり進めてまいりたいと思います。
 
(問)インバウンドの全体的な成長についてお聞き致します。インバウンドの水準について、いつ頃までにコロナ禍前まで戻るとお考えでいらっしゃいますでしょうか。見通しがあれば教えてください。
(答)
  • 訪日旅行者数につきましては、個人旅行を解禁した昨年10月以降、毎月の2019年比の回復率は、毎月増加しているところでございます。
  • 繰り返しになりますが、単月では初めて200万人を超え、堅調に回復をしてきていると認識をしています。
  • 他方、コロナ前の訪日旅行者数が最大でありました中国につきましては、海外団体旅行の取り扱い禁止措置がいつ解除されることとなるかなど、観光庁におきまして、主体的に決定できない要素もございます。
  • このようなことから、訪日旅行者数の回復時期について具体に予想を立てていくことは難しい状況にあると考えています。
  • いずれにしましても、本年3月に閣議決定を致しました新たな観光立国推進基本計画におきましては、2025年までに訪日旅行者数が2019年水準を超えること、これを目標としています。
  • 観光庁といたしましては、訪日旅行者数はもとより、消費額や地方宿泊者数など、あらゆるデータ、状況を注視しながら、基本計画に定めた政策を着実に進め、インバウンドの回復と消費額の拡大、地方への誘客をさらに加速するようしっかりと取り組んでまいりたいと思っております。
 
(問)昨年4月の知床遊覧船沈没事故からまもなく1年3ヶ月となります。知床地域はこれから観光シーズンを迎えますが、知床地域の観光振興にどのように取り組むお考えでしょうか。前海事局長として事故の原因究明や再発防止にあたったお立場からお聞かせください。
(答)
  • 1年の月日が経ちましても、毎日、事故のことを思うたびに胸を強くギュッと掴まれる想いがいたします。
  • 改めて、お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りするとともに、事故に遭遇された方、あるいはそのご家族の皆様に心からお見舞い申し上げます。
  • このような事故を絶対に繰り返させてはならない、強い決意のもとで必要な安全対策は全てやり切る、前職でそのことをお誓い申し上げてまいりました。
  • 知床の観光振興についてお話を申し上げます。
  • 知床地区は知床遊覧船事故の影響もありまして、観光需要が回復していないという、こういったお声を伺っております。
  • 知床は世界自然遺産にも登録され、豊かな自然や生態系が残る、誰もが訪れたい魅力的な観光地であります。
  • そのため、観光庁としても、昨年度は、観光地、観光産業の再生高付加価値化事業により、ウトロ温泉の宿泊施設の改修などへの支援、また地域の稼げる看板商品の創出事業によりまして、自然体験のアクティビティ造成の支援などを行っているところであります。
  • そして、本年3月には、知床を含む東北海道地域について、外国人の富裕層の方々の誘致促進を目指すモデル観光地として、指定させていただいたところでありまして、今後、複数年にわたって集中的な支援を実施していく予定としています。
  • 観光庁としては、知床ならではの魅力をさらに高め、内外に発信をし、また、高付加価値化を推進していけるよう地域の皆様に寄り添って取り組みを進め、知床観光の早期回復に努めてまいりたいと考えております。
 
以 上

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