髙橋長官会見要旨

最終更新日:2023年10月20日

日時:2023年10月18日(水)16:15~16:43
場所:国土交通省会見室

冒頭発言

(2023年9月の訪日外国人旅行者数について)
  • 本年9月の訪日外国人旅行者数などについて報告があります。
  • 本年9月の訪日外国人旅行者数は、218万4,300人となり、4ヶ月連続で、単月200万人を超えました。
  • コロナ前の2019年9月と比べると、単月で96%と足元ではコロナ前の水準を概ね回復しました。
  • 本年9月の出国日本人数は、100万4,700人となりました。
  • コロナ前の2019年9月と比べると57%の回復であり、改善傾向が続いています。
 
(訪日外国人消費動向調査2023年7-9月期(1次速報)について)
  • 2点目は、訪日外国人消費動向調査についてです。
  • 本年7-9月期の訪日外国人消費動向調査1次速報の結果について報告します。
  • 本年7-9月期の訪日外国人旅行消費額は、1兆3,904億円と推計され、2019年同期比で17.7%増となり、四半期ベースではコロナ前の水準を初めて上回りました。
  • 訪日外国人1人当たり旅行支出は、21万1千円、2019年同期比で29.4%増となりました。
  • また、観光・レジャー目的で絞ってみると、1人当たり旅行支出は19万8千円、2019年同期比で26.2%増となりました。
 
(オーバーツーリズム対策会議について)
  • 本日(15時より)、第21回観光立国推進閣僚会議が開催され、「オーバーツーリズムの未然防止・抑制に向けた対策パッケージ」が決定されました。
  • いわゆるオーバーツーリズム対策については、今年8月、岸田総理が、「オーバーツーリズムへの懸念について、この秋にも対策をとりまとめていきたい」とご発言されたことを受けて、私が議長を務める対策会議を設置し、関係省庁等の協力を得て、議論を進めてきたものです。
  • これまで、3回にわたって対策会議を開催し、地域の関係者からのヒアリングも行いながら、大きく3つの柱、つまり[1]観光客の集中による過度の混雑やマナー違反への対応、[2]地方部への誘客の推進、[3]地域の観光を担う自治体やDMOと、地域住民の方々の協働による観光振興の取組について、関係省庁が行う施策の案を取りとめました。
  • これについて、本日の閣僚会議において決定を頂いたものです。

質疑応答

(問)中国の国慶節に絡む大型連休によって、訪日中国客数に変化は見られましたでしょうか。また、団体旅行の解禁と東京電力福島第一原発の処理水の放出は、大型連休の訪日中国人客の動向にどのような影響を与えたとみていますか。
(答)
  • 日中間の航空便数の回復については引き続き遅れが見られます中、今ご指摘ありましたが、8月10日からの中国における日本への団体旅行解禁の効果もあり、9月の中国からの訪日者数は約33万人となって、コロナ前、2019年の同じ月からの回復率につきましても、9月は約40%と前月8月の約36%を、また、前々月7月の約30%を上回っておりまして、今年の初めより回復傾向が順調に継続しているところであると考えています。
  • 先月も同様のご報告を申し上げましたけれど、そのアップデートということでご説明申し上げます。
  • 観光庁におきまして、JNTO(日本政府観光局)を通して、現地の旅行会社に対する中秋節、国慶節の期間の実績について聞き取りを実施しました。
  • 旅行会社の中には、一定程度のキャンセルが発生したと回答するケースがある一方、高級ツアー、あるいはそのインセンティブ旅行などがその会社のメインであって、予定通り実行できたと回答されるケース、また、実施した旅行の件数が2019年の同時期の件数を超えたと回答するケースなど様々ございました。
  • またさらに、訪日中国人の旅行形態の約7割を占める個人旅行について申し上げれば、主に個人旅行客向けの商品を扱う旅行会社からは、中秋節、国慶節の期間中、キャンセルが相次ぐ状況にはなく、変わらず安定した予約数を維持していたと聞いています。
  • 以上を踏まえ、現時点では先月と同様、アルプス処理水の海洋放出の影響は限定的であったと捉えています。
  • また、日系の航空会社の日中間を結ぶ路線では、中秋節、国慶節期間の前後におきまして、ほぼ満席状態の便が多かったと聞いており、8月10日からの団体旅行解禁に加えて今回の大型連休により、中国からの訪日旅行者数回復へ一定の弾みがついたものと捉えています。
  • なお一般に、中秋節、国慶節といった大型連休の後は、例年オフシーズンに入る傾向にあり、また、日中間の航空便数の回復の遅れと、これに影響を受ける航空運賃の高さが客足の伸びに影響を与えているとの声も聞こえており、訪日旅行者数には様々な要因が作用することが想定されます。
  • 引き続き、中国からの旅行客の動向、実績を注視しつつ、訪日プロモーションをしっかりと進めてまいりたいと考えています。
 
(問)宿泊予約サイトBooking.comのことについて、2つほど質問をさせてください。Booking.comに関しましては、今年の7月頃から施設側への未払いの問題が、現在までおよそ3ヶ月発生しています。観光庁としてこの事態の把握に向けて聞き取り調査などを行っているのか、その結果どういったことが分かっているのか教えてください。我々も取材を続けており、現時点でもこの問題が継続していると取材で分かっています。そうすると、従業員の給与であったり、社会保険料が支払えない、旅館を畳もうか、そういった方もいらっしゃいます。ですから、観光庁として今後対応するならば、どういったことが考えられるのか、この2点をお願いします。
(答)
  • Booking.Com社による支払い遅延の問題に関しまして、Booking.Com社に対して事実確認を行いました。
  • その結果、原因としては、本年7月のシステムメンテナンスの不具合により、取引のある全世界の宿泊事業者への送金がストップしたことによるものとの説明でした。
  • 8月16日からシステムが復旧し、全ての取引相手の送金操作を済ませ、大半は既に着金済みですが、ただ、国際送金の際の金融機関同士の情報連携上のトラブルなどの技術的な問題により、ご指摘いただいたように、一部事業者の方々へ未着金となっており、現在、緊急に対応を急いでいるという状況という説明を受けています。
  • ご指摘の、観光庁としてどういうふうにするのかということにつきまして、まず8月22日にBooking.Com社に対して、宿泊事業者に対して丁寧な状況の説明と迅速な対応を私どもから指示をしたところですが、引き続き、支払い遅延の状況が続いていることから、私どもとして、10月11日、同社に対し改めて、今私が申し上げた指示への対応の徹底を求めたところです。
 
(問)それに対する返答はあったのでしょうか。10月11日の段階で改善が見られたのかどうかなど。
(答)
  • 同社からの、全ての取引相手への送金操作を済ませているものの、それぞれの国、それぞれの相手方の事業者の相手方との間で、国際送金の際、色々な金融機関の間に挟まりますので、その金融機関間の情報連携上のトラブルなど、技術的な問題を一つ一つクリアしているということなので、それを至急進めるように、それに対し、取り組みます、というやり取りがありました。
 
(問)施設側としても、1ヶ月単位ですと本当に生活に関わる額で、どこにすがったらいいのかということで、我々の部に情報を寄せてくださる方もいらっしゃって、そういった点では、今後改善が見られない場合は、より強い措置といいますか、そういったことも考え得るのでしょうか。
(答)
  • 宿泊事業者の皆様が、やはり今、コロナ禍からやっと回復され、あるいはまだまだ厳しい状況に置かれている方もたくさんおられると思っています。
  • そういう方々は日夜頑張って営業されていますので、資金繰り、あるいは日々の経営が大変な中、こういう問題が長引かないように、私どもとしても、Booking.Com社の対応というのはしっかりフォローしていきたいと思いますし、必要に応じてまた色々な指示出しを行っていきたいと思っています。
 
(問)外客数に関して、主に中国関連なのですが、率で見ますと今回9月に関しては19年同月比で8月よりも回復しているということでしたが、数で見ますと約4万人ぐらい減っているのかなと。実際、団体旅行を解禁したけれども数としてはちょっと減ってしまった、この要因と所感を教えていただきたいです。もう1点、冬ダイヤがこれから始まってくると思うのですが、日中路線の復便の今後の見通しについて教えていただきたいです。
(答)
  • 一般に、訪日のインバウンド旅行は、やはり6月から7月、8月に増えていき、9月、10月、11月あたりは少し落ち着いてくるものですから、私は、先ほどご指摘のように、日中間、8月から9月と、数字そのものがちょっと減っているということはありますけれども、やはりコロナ前の同月の数字からの回復率というのを、非常に今注視をしています。
  • 申し上げたように一般的なトレンドからいきますと、回復率がしっかり堅調に回復しているということを、私は評価させていただいているところです。
  • ご指摘の、これから冬ダイヤを迎えるわけですが、やはりインバウンド、もちろんアウトバウンドにとっても、両国間の航空路線の回復、復便ということが非常に重要な要素でありますので、日中間の回復傾向が順調に繋げてきているところ、航空路線の復便もやっていただけるよう期待をしているところです。
  • 我々としても色々な環境整備に努めているところですが、しっかり日中間の往来が堅調に回復していくように、力を尽くしていきたいと思います。
 
(問)もし分かればなのですが、実際、例えば冬ダイヤでコロナ前と比べて、どれくらいの水準まで戻りそうかとか、そういったものはありますか。
(答)
  • データがございませんので、もし何か分かりましたらご報告申し上げるようにします。
 
(問)今日の官邸で開かれたオーバーツーリズム対策の会合の中で岸田総理から、対策の内容を経済対策に反映して、持続的な観光地づくりに向けて戦略的に取り組んでもらいたいというようなお話があったと思います。この、経済対策に反映させる内容ですけれども、政策パッケージの中身が幅広く、どのあたりを念頭に置かれているのか、長官にご説明いただければと思います。
(答)
  • まず、今日開催された観光立国推進閣僚会議において、対策パッケージを決定したわけですが、その際、総理から、斉藤国土交通大臣を中心に関係大臣におかれては、対策の内容を経済対策に反映し、住んでよし、訪れてよし、受け入れてよしの持続可能な観光地づくりに向けて、政府一丸となり精力的に取り組んでくださいというご指示を頂戴したところです。
  • このご指示もふまえ、対策パッケージについても適切な形で、経済対策への反映を図ってまいりたいと思っていますが、補正予算につきましては、現段階で色々な調整を行っているところで、具体にどの項目ということを申し上げるのは少し早いかなと思いますので、適切な形で経済対策への反映をしっかり行っていくというような対応を、現時点ではさせていただきたいと思います。

(問)オーバーツーリズム対策についてですけれども、率直に感じたのは、どちらかというと真新しさというよりは、これまでの施策に関して、色々な自治体に広げていくという形が多かったなと思います。オーバーツーリズム対策に関しては、コロナ前から地域によっては積年の課題であった部分もあるかと思うので、どう国が主導して新しい形で抜本的に変えていくのかというのが、地域によっては求められる形だと思います。その辺り、どう実効性を担保していくのかについて、長官のお考えを聞かせていただけますか。
(答)
  • オーバーツーリズムへの懸念というのは、コロナ前から、事象として一部の地域、あるいは一部の時期、時間帯等にあったと思います。
  • ただ、そのことがこれだけ意識されてきたというのは、コロナ禍で人流が一時期止まってしまって、そこから水際対策の緩和、色々な関係者の皆様の努力で、急速に国内外の観光需要が戻ってきておりますので、その急速な回復に色々な対応が求められている中での、今回、オーバーツーリズムの未然防止・抑制という課題への対策だったと思っています。
  • 私どもが昨日ご説明した事項の中で、例えば、観光スポットへの急行バスの導入促進という場合、これは京都などを念頭に置いたものですが、現行制度では、バス事業者は旅客の運賃料金の上限を定める、あるいは変更する際に、大臣の認可を受けていただくのですけれども、観光スポットに急行バスが運行するような運賃につきましては、届出制と改めることによって、機動的で柔軟な運賃設定を可能とさせていただくとか、また環境省中心の取組ですが、富士山につきましても、軽装による登山、あるいはゴミの投棄といった問題について、地域の協議会を開催し正面からこれらの課題解決に取り組もうというのは、私は大変大きな動きだと思っています。
  • 地域の皆様方がそれぞれの地域の実情に応じて、どういうふうに観光客を受け入れ、呼び込み、住民の方々の暮らしの質との両立をどう図っていくのか、それぞれの実情に応じてお考えいただき実施していくということですが、まずは20地域ぐらいの先進的な取組事例、例えば都会とか、スノーリゾートとか、離島とか、色々な地域の特性に応じていくつかよい先進事例を作っていき、それらを総合的にしっかり関係省庁一丸となって支援し、全国各地に広げていきたいということでやっておりますので、政府一丸となり地域の皆さんの色々な課題について包括的にご支援するという意味では、このパッケージは非常に新しいものではないかと自負しております。
  • 地域において観光の現場も日々変わっていきますので、住民の方々にご迷惑がかかっているとすれば、それがどのような状況か、あるいは観光客の利便が損なわれていればどういう状況か、私どもとしてもしっかりフォローしながら必要な対策を打ち、必要であれば新たなものも考えていくと、こういう包括的なパッケージとしては、これからが始まりとしてしっかりやらせていただきたいと考えています。
 
(問)あくまでスタートだということですか。
(答)
  • 包括的な対策としてはスタートで、今まで、例えば混雑の見える化とか、一つ一つの対策を地域がやっていただくときに、国としても支援をして一緒にやってきたことが色々な領域や分野にありますので、包括的に関係省庁一丸となって地域を支援する、パッケージでやるということについては、新しい取組だなと思っています。
 
(問)誘客数の関係で、まもなくコロナ前の水準を超えるくらい回復してきているかと思うのですが、今後の見通しについて、水準としてどのぐらい行きそうかというお話があれば教えてください。
(答)
  • 今年一年、12月の段階で、何百、何千、何百万人まで行くのだろうかということを、今この場で申し上げるのは尚早かなと思っています。
  • 繰り返しにはなりますが、本年9月の訪日外国人旅行者数は218万4300人となり、4ヶ月連続で単月200万人を超えています。
  • コロナ前2019年9月と比べると、単月の比較値として96%と、足元ではコロナ前の水準を概ね回復をしたと考えています。
  • 訪日旅行者数につきましては、我が国、政府が個人旅行を解禁した昨年10月以降、単月の回復率は、毎月増加をしていまして、堅調に回復してきていると受け止めています。
  • これを国地域別に見ていきますと、中国市場につきましては、アルプス処理水の海洋放出の影響が現時点では限定的であり、8月10日からの団体旅行解禁に加え、中秋節、国慶節による大型連休によって、訪日旅行者数回復への一定の弾みがついたものと認識していますが、大型連休の後は例年オフシーズンに入る傾向にあり、また、航空便数の回復の遅れと、これに影響を受ける航空運賃の高さが客足の伸びに影響を与えているとの声も聞かれるところ、引き続き状況を注視しつつ訪日プロモーションをしっかりと進めてまいります。
  • 韓国、あるいはアメリカなどからの訪日旅行者数が9月として過去最高を記録するなど、継続して好調である中、本年9月の全市場からの足元の訪日旅行者数の合計は、コロナ前の水準を概ね回復しているところであり、受入環境整備の充実や、オーバーツーリズムの未然防止抑制に努めるとともに、限りないポテンシャルを有する地方への誘客、また、付加価値の高い体験消費の拡大などを進め、政府目標である外国人旅行消費額5兆円の早期達成に向けて力を尽くしてまいりたいと思っています。
  • ご質問の、どれぐらいになるのかという数字については、私から申し上げるのは尚早ですので、しっかり今後の状況を注視してまたお答え申し上げます。
 
(問)冒頭ご説明いただいた消費額について、関係閣僚会議で配られた資料等では、1-9月期の累計数3.6兆円、仮に19年並みの観光客数が10月から12月にかけて来るようですと、さらに1.6兆円積み上がり累計年間通して、5.2兆円の観光消費が見込めるという試算が出ていました。ここまで消費が好調な要因としては、円安・物価高等が考えられますが、長官のお考えはいかがでしょうか。
(答)
  • 本年1-9月期の訪日外国人旅行消費額は累計3兆6326億円と、年5兆円の政府目標達成も視野に入る勢いとなり、順調に回復しているものと受け止めています。
  • これらの背景には、外国人旅行者が日本にお泊りになる平均泊数が伸びたことのほか、円安、物価上昇等の影響もあると考えています。
  • 私どもとしては、地方部への誘客を強力に推進するとともに、11モデル地域における高付加価値なインバウンド観光地づくりや、全国各地での特別な体験の創出と、世界への発信を進め、更なる消費の拡大に力を尽くしてまいりたいと考えています。
 
 
以 上

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