国土交通省
 歌登町下水道ディスポーザー社会実験
 中間取りまとめについて

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平成14年5月29日
国土交通省
国土技術政策総合研究所
北海道
歌登町
<問い合わせ先>

都市・地域整備局下水道部

 下水道企画課(内線34132)

電話:03-5253-8111(代表)


 

 国土交通省、北海道および歌登町は、平成12年度から4年間の予定で、下水道におけるディスポーザーの利用についての社会実験を共同で行っている。2年が経過したこのたび、社会実験の中間取りまとめを公表する。あわせて、国土交通省では、本社会実験から明らかになった知見等を基に「ディスポーザー普及時の影響判定の考え方(案)」を作成したので公表する。
 この「考え方(案)」は、下水道管理者である地方自治体がディスポーザーの下水道への接続の可否について判断する際の検討の一助として、ディスポーザーが普及した場合の総合的な影響、効果の判定手法の考え方を示す技術資料(案)である。
 社会実験は平成15年度まで継続する予定であり、今後は社会実験で得られた知見や、他の調査における結果等を基に、「考え方(案)」の成案をまとめることとしている。

  1. 社会実験の概要
     社会実験は、北海道枝幸郡歌登町を調査対象都市(モデル都市)として、ディスポーザーと下水道の組み合わせにより、粉砕した生ゴミと汚水を一体的に下水道管きょで収集し、下水処理場で処理し、さらに有効利用するといった方法により、コスト削減・エネルギー消費抑制を目的とした効率的なシステムの構築について、ライフサイクルアセスメント等環境の観点も踏まえて検討することを目的として行なっている。また、ディスポーザーの使用による下水道施設や公共用水域への影響について調査、検討することを目的としている。
     平成12年度から国土交通省、北海道、歌登町で共同実験を開始しており、平成15年度まで行う予定である。町営住宅300世帯(下水道接続世帯の約4割に相当)にディスポーザーを試験的に導入し、主に、下水道への影響検討、ゴミ収集・処理への影響検討、汚水・廃棄物処理システムの効率性検討の3項目の調査を行っている。

  2. 社会実験から得られた知見
    (1)下水道への影響検討
    1負荷量原単位
     汚濁負荷量原単位(一人あたりの排出される汚濁物質量)は、ディスポーザーを導入することにより、20%〜50%程度増加することが推計された。
    2管きょ調査
    1.  ディスポーザーの設置後に、設置地区下流の管きょ約400mまでの区間を調査したところ、設置前には確認されなかった堆積物が調査区間の10%程度の範囲で確認され、ディスポーザーの設置により堆積物は明らかに増加していた。
    2.  堆積物中には卵殻や貝殻様の物体が多く含まれており、また管内にはスライム状の有機性付着物が多数発生していた。
    3.  粉砕された生ゴミを多く含む下水ほど、硫化物の発生量が多いことが確認された。
    3処理場調査
     ディスポーザーを、下水道に接続している世帯の約15%に導入した段階では、処理水質、発生汚泥の変化等の処理場への影響はほとんど認められなかった。引き続きディスポーザー設置世帯が増加した段階での調査を継続する。

    (2)ゴミ収集・処理への影響検討
     ディスポーザー設置地区においてゴミ回収に出される生ゴミ量を調査したところ、ディスポーザー設置後には設置前に比較して、重量が約半分に減少した。

    (3)汚水・廃棄物処理システムの効率性検討
    1ディスポーザーの利用者の意識調査
     利用者へのアンケートの結果、ゴミ出し労働の軽減、台所の衛生面の改善(臭い・蝿などの発生の低減)などの面でディスポーザーを肯定的に感じる人は約8割であった。
    2費用便益分析
    1.  ディスポーザー導入による費用・便益について下記の仮定をすることによりシミュレーションした結果、歌登町ではゴミ収集、処理が小規模でそのコスト低減が十分期待できないため、下水道への負荷増加に伴う下水道事業の費用増加が、可燃ゴミの削減に伴う清掃事業の費用削減を上回った。ただしこの結果は一例を示すものであり、仮定条件により数字・傾向は異なる。
    2.  ディスポーザー利用者の支払い意志額(利便性便益)を調査した結果、町全体で年間1千万円余の便益が見込まれる結果となった。

    [主な仮定条件]

    • ディスポーザーを歌登町の下水道に接続している全世帯(約800世帯、約1,800人)に導入。
    • 生ごみは全てディスポーザーを使用して処理。
    • 発生汚泥等は最終処分場で埋立処分。可燃ゴミは焼却後最終処分場で埋立処分。
    • ディスポーザーは町が購入して設置。
    • 下水処理場施設の改造は考慮しない。
    • 可燃ゴミ収集の容積減少に応じて収集車の走行距離を減少。収集車自体や人件費等の削減等は見込んでいない。

    図1 歌登町における費用便益評価

  3. 「ディスポーザー普及時の影響判定の考え方(案)」の概要について
     下水道へのディスポーザーの接続については、下水道管理者である地方公共団体が個々の下水道施設の構造、処理能力等の特性を踏まえて判断しているところであるが、その判断にあたっては下水道施設への影響、公共用水域への影響への配慮に加えて、近年の地球環境保全、ライフサイクルアセスメント等の新たな環境の観点を踏まえ、効率的な都市の汚水・廃棄物収集システムをどのように構築するかについて検討することが求められている。このため、歌登町における2年間の調査結果をはじめ、これまでの知見や今回の結果をもとに行った試算等を取りまとめ、「ディスポーザー普及時の影響判定の考え方(案)」を作成した。
     この「考え方(案)」は、ディスポーザーの普及によって、下水道施設にどのような影響が及ぶかを判定する手法を示すとともに、合流式下水道越流水による水環境への影響、住民の利便性向上の評価手法、ゴミ収集・処理システムと下水道システム双方のエネルギー収支や温室効果ガス発生量に関する総合的な評価手法などを示し、地方自治体においてディスポーザーが普及した場合の総合的な影響、効果を判定する考え方を示す技術的資料案である。

    主な内容

    1.  ディスポーザーによって増加する厨芥(生ごみ)由来の汚濁物質の量を推定。
    2.  卵殻、貝殻などに由来する管渠内堆積物は増加。このため、管渠の勾配や老朽化による管渠の弛みなど処理区の特性を考慮しつつ、管渠の通水阻害、腐食を防ぐため点検・清掃頻度を上げることが必要。
    3.  合流式下水道の区域では、雨天時の越流汚濁負荷量が増加することが予想されるため、十分な合流改善対策が図られていない状態でのディスポーザーの導入を控えることを推奨。
    4.  下水処理場における汚泥発生量の増加が予想されるが、工場排水の割合など処理区の特性、下水処理場の処理方式、余裕率によってその影響の度合いは一様ではない。このため、個々の処理場の条件に合わせた影響度合いの判定方法を例示。
    5.  ディスポーザー普及時の、下水道、ゴミ事業の総合的な費用対効果分析評価の手法を提示。
    6.  ディスポーザーの利便性を、ディスポーザー利用者の支払い意志額で評価する手法を提示。
    7.  ディスポーザー普及時の影響を環境面から評価するため、建設段階、供用段階、更新・廃棄段階を含めた総合的評価(ライフサイクルアセスメント)手法を提示。(参考資料4を参照)

  4. 今後の予定
     各種調査の精度向上のため、引き続き下水道への影響調査、ゴミ収集・処理への影響調査、汚水・廃棄物処理システムの効率性の検討、費用負担のあり方の検討などを行い、平成15年度に最終報告書をとりまとめることとしている。

 

参考資料1<ディスポーザーとは>

参考資料2<歌登町について>
参考資料3<社会実験体制>PDF形式

参考資料4<総合的評価(ライフサイクルアセスメント)手法による試算例>

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参考資料1<ディスポーザーとは>
 ディスポーザーとは、厨芥(生ごみ)を粉砕し、排水と一緒に排水管に投入する装置である。ディスポーザーの種類は、直接投入型(単体)と処理槽付に大別される。この社会実験では直接投入型(単体)ディスポーザーを対象としている。
 近年、このディスポーザーについて、社会的な関心が高まっている。高齢化社会におけるゴミ出し労働の軽減など利便性・快適性の向上やゴミ減量化への期待が高まる一方、下水道への影響、環境負荷の増大を懸念する声も強く、賛否両論がある。
 下水道へのディスポーザーの接続については、下水道管理者である地方公共団体が、個々の下水道施設の構造、処理能力等の特性を踏まえて判断してきたところであるが、下水道施設への影響への懸念等から、慎重な取り扱いをしている場合が多い。

参考資料2<歌登町について>
 北海道枝幸郡歌登町は、旭川より150kmのオホーツク海寄りの北緯45°に位置する町である。14年3月末での行政人口約2,550人、下水道の処理開始区域内人口は約2千人、下水道処理人口普及率は約78%である。
 冬季にはゴミステーションが雪に埋もれ、住民のゴミ出し・行政のゴミ回収がきわめて困難な作業となっている。この対策として、家庭ゴミのかなりの部分を占める生ゴミをディスポーザー導入により下水道で受け入れることによるゴミの減量化を図り、住民のゴミ出し作業の軽減、行政のゴミ収集の効率化を進めることが有効な選択肢の一つと考えられる。
 また、分流式下水道を採用しており、社会実験により雨天時に公共用水域へ汚濁物が流出して水質汚濁を引き起こすおそれがない。

参考資料4<総合的評価(ライフサイクルアセスメント)手法による試算例>
 人口約17万人の都市をモデルとして、エネルギー消費量と温室効果ガス排出量を試算した結果、下水処理場にエネルギー回収(消化ガス発電)施設を設置することにより、ディスポーザーの普及によってエネルギー消費量と温室効果ガス排出量を総合的に減少させることができる結果となった。ただしこの結果は一例を示すものであり、仮定条件により数字・傾向は異なる。

[ライフサイクルアセスメント試算における主な仮定条件]

  •  ディスポーザーの普及状態が、「普及なし」、「50%」、「100%」の3ケースについて、エネルギー消費量と温室効果ガス排出量を比較。
  •  ディスポーザーを導入した家庭等では生ごみは全てディスポーザーを利用して処理。
  •  可燃ゴミ収集の重量減少に応じて収集車の走行距離を減少。収集車自体や人件費等の削減等は見込んでいない。
  •  焼却施設等から排出されるCH4、N2OについてもCO2に換算。
  •  ゴミ発電、下水汚泥消化ガス発電による電力回収を考慮。

図2.1 検討ケース別の試算結果
図2.2 温室効果ガス排出量の試算結果(「普及なし」に対する増減)

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