国土交通省
 長寿命木造住宅整備指針の策定について
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平成14年9月4日
<問い合わせ先>

住宅局住宅生産課
 木造住宅振興室

(内線39427、39454)
TEL:03-5253-8111(代表)

 

  1. 長寿命木造住宅整備指針の趣旨・目的
     木造住宅への国民のニーズは依然として極めて高く、また、循環型社会形成の観点からも、木造住宅の振興が求められています。
     近年では、地球温暖化、資源の濫用、廃棄物の累積等の環境問題が先鋭化し、建築活動も地球規模の環境問題との関係でとらえることが必要となっており、この点から、わが国の住宅の寿命が欧米諸国に比較してきわめて短いことは重大な問題です。また、長期使用可能な資産価値の高い住宅ストックを築くことは、豊かな住生活を確保するための礎となるものです。
     このため、一般的な人工林の再生サイクル以上に使い続けられるような木造住宅の整備を推進するため、木造住宅の物理的、社会的な耐久性の向上に向けての配慮事項をとりまとめ、本日付けで「長寿命木造住宅整備指針」として定めましたので、お知らせします。

    (備考)検討の経緯
    平成13年4月
    長寿命木造住宅推進方策検討委員会(委員長:坂本功東京大学教授)において調査検討を開始
    (以降、2回にわたり審議)
    平成14年9月
    検討成果を踏まえ「長寿木造住宅整備指針」として策定、通知

  2. 長寿命木造住宅整備指針の概要
     木造住宅の長寿命化を図るために、とりまとめた配慮すべき事項は以下のとおりです。

    (1)継承性・持続性の確保
     地域において世代を超えて使い続けられる木造住宅とするため、地域の風土の文脈と調和した工法等の採用や、長期間にわたり住宅が機能し続けるための居住面積・居住性能の確保等を行う。

    (2)物理的長期耐用性の確保
     雨水、結露、地面からの湿気等に起因する木材の腐朽や蟻害、金物の錆、基礎コンクリートの中性化等による構造躯体等の劣化を軽減するため、長期にわたる物理的耐用性の確保に配慮した材料の選択、湿気処理、工法上の工夫などを行う。

    (3)維持保全性・更新の容易性の確保
     維持保全や部品の更新が容易に行えるようにするとともに、そのための経費の節減を図るため、耐用年数の異なる部品・部材同士の独立・分離や、部材寸法・規格の統一、適切な修繕・保守点検計画の策定、維持管理等に必要な情報の保存などを行う。

    (4)可変性の確保
     家族構成の変化等に対応して、大規模な改修等を伴うことなく、部屋の使用形態の変更、間取りの変更等が容易に行えるようにするため、入居世帯の家族構成・生活様式等の変化に柔軟に対応できる間仕切壁等のインフィルシステムの採用などを行う。

    (5)その他
     上記の事項のほか、木造住宅の長寿命化に関連して、住まい手の意識の啓発や廃棄物の削減、資源の有効活用等を行うよう努めること。

  3. 国土交通省としての対応
     平成14年9月3日付けで、住宅局長より、地方整備局長、都道府県知事、公庫、公団等の関係団体・機関の長宛に通知し、国民への周知等を依頼しました。
     国土交通省としても、引き続きその普及に取り組んでまいります。


(別紙)

長寿命木造住宅整備指針

  1. 指針の目的
     木造住宅は世論調査で9割が希望するなどきわめて国民のニーズが高い。また、木材は再生産可能な加工に要するエネルギーが少ない素材であり、国内森林に係る適正な森林整備と林産物利用の必要性の高まりもあいまって、循環型社会形成の観点からも木造住宅の振興が求められている。
     地球温暖化、資源の濫用、廃棄物の累積等の環境問題が先鋭化し、循環型社会形成が国内外の喫緊の課題となっている中、建築活動も地球規模の環境問題との関係でとらえることが必要不可欠となっている。こうした視点からみても、わが国の住宅の寿命が欧米諸国に比較してきわめて短いことは、重大な問題である。また、当然ながら、長期にわたって使用できる資産価値の高い住宅ストックを築くことは、豊かで安定した住生活を確保するための礎となるものである。
     このため、世代を超えて一般的な人工林の再生サイクル以上に使い続けられるような木造住宅の整備を推進し、国民の住宅に対する信頼の確保と住生活の向上を図るとともに、あわせて、地球温暖化防止のための二酸化炭素の放出量削減と固定量拡大、木くずをはじめとする建設廃棄物排出量の削減等を図ることが重要である。
     この指針は、このような認識のもとに、木造住宅の長寿命化を推進するため、その物理的、社会的な耐久性の向上に向けて配慮すべき事項を定めるものである。

  2. 適用範囲等
     この指針は、木造住宅を対象に、主に新築する場合を想定して、物理的、社会的な耐久性の向上に向けて配慮すべき事項を幅広く示すものである。
     各地域で実際の木造住宅の整備においてこの指針を利用するにあたっては、その地域の風土上の特性をはじめ、永住を想定するか住み替えを想定するかの別等に応じて、配慮すべき事項を適宜取捨選択し、あるいは必要に応じて追加するなど、柔軟に運用されるべきものである。
     なお、この指針は住宅をめぐる経済社会情勢の変化や技術の進展等を踏まえ、必要に応じ見直すものとする。

  3. 長寿命木造住宅の整備に向けて配慮すべき事項
    (1)継承性・持続性の確保
     地域において世代を超えて使い続けられる木造住宅とするため、以下のような継承性・持続性の確保に関する措置を講じること。
    イ 地域の風土の文脈と調和した工法等の採用
    •  地域の気候、地形、地質、生活様式等に即し、長期にわたり良好な居住環境が維持され、経年とともに風格が備わっていくような住宅配置、環境共生技術、工法、間取り、材料等を採用すること。
    •  伝統的な街並みと調和した外観、時が経過しても飽きのこない外観など、良好な景観形成に配慮した形態、意匠、配列等とすること。

    ロ 長寿命木造住宅に用いられる技術・技能が継承される仕組みの構築

    •  地域において長寿命木造住宅の標準仕様の策定、モデル住宅の建設等を行い、設計者、工務店、部品・部材供給業者等のつくり手の間で、長寿命木造住宅の整備に関するノウハウの共有化やネットワークの形成を促すこと。
    •  長寿命木造住宅の整備を担う技能者を継続的に育成すること。
    •  住まい手に対して長寿命木造住宅に関する情報の提供を促進することにより、地域において長寿命木造住宅の新築、リフォーム、メンテナンス等の需要が継続的に発生し、つくり手の経営基盤の強化や部品・部材の充実が図られる環境を整備すること。

    ハ 長期間にわたり住宅が機能し続けるための居住面積・居住性能の確保

    •  入居世帯の家族構成、生活様式等の変化に対応できるゆとりのある居住面積、設備容量等を確保すること。
    •  地震、風圧、積雪、火災等に対する安全性、快適に住み続けるための温熱環境、空気環境等に関する性能等を確保すること。
    •  身体機能が低下した場合においても移動や介助がしやすいように、間取り、浴室・便所・寝室の面積、廊下・出入口の幅員、階段の安全性等に配慮すること。

    (2)物理的長期耐用性の確保
     雨水、結露、地面からの湿気等に起因する木材の腐朽や蟻害、金物の錆、基礎コンクリートの中性化等による構造躯体等の劣化を軽減するため、長期にわたる物理的耐用性の確保に配慮した材料の選択、湿気処理、構法上の工夫等を行うこと。
     その場合において、住宅性能表示制度における「劣化の軽減に関すること」に係る評価基準を参考にすること。

    (3)維持保全性・更新の容易性の確保
     維持保全や部品の更新が容易に行えるようにするとともに、そのための経費の節減を図るため、以下のような維持保全性・更新の容易性の確保に関する措置を講じること。
    イ 耐用年数の異なる部品・部材同士の独立・分離、接続方法の工夫等

    •  耐用年数の長い部品・部材を損傷することなく、耐用年数の短い部品・部材の交換、補修等が容易に行えるように、部品・部材同士を独立・分離させるとともに、納まりや取り付け方法を工夫すること。
    •  構造躯体に影響を及ぼすことなく、設備配管の交換、補修、清掃等が容易に行えるように、構造躯体と設備配管との分離、点検口や清掃口の設置等を行うこと。
       その場合において、住宅性能表示制度における「維持管理への配慮に関すること」に係る評価基準を参考にすること。

    ロ 一般流通しているもしくは地域で供給可能な部品・部材の活用
     将来の部品・部材の交換、補修等に際し、代替部品や必要な材料が容易に入手できるように、一般流通品や地域材活用品を採用すること。

    ハ 部材寸法・規格の統一
     設計・施工の効率化、将来における部品・部材の交換の円滑化等を図るため、モデュラーコーディネーション(住宅の各部の寸法がモデュール(基準寸法)に当てはまるようにすることをいう。)を工夫すること。

    ニ 適切な修繕・保守点検計画の策定
     各部品・部材の耐用年数に応じた適切な修繕・保守点検計画をあらかじめ策定し、竣工後の住まい手等による計画的な維持管理等が図られやすい環境を整備すること。

    ホ 維持管理等に必要な情報の保存
     竣工時の設計図書、竣工後の点検・補修・交換等の履歴を記録した図書など、適切な維持管理等に必要な情報を保存すること。

    (4)可変性の確保
     家族構成の変化等に対応して、大規模な改修等を伴うことなく、部屋の使用形態の変更、間取りの変更等が容易に行えるようにするため、以下のような可変性の確保に関する措置を講じること。
    イ 入居世帯の家族構成・生活様式等の変化に伴う使用形態の変更や改修などに容易に対応可能な平面・断面・構造計画等の採用

    •  平面あるいは階高の上でゆとりのある大きな空間の確保、続き間にみられるような複数の部屋の一体利用を可能とする工夫等を行うこと。
    •  将来の用途変更等が想定される場合には、それに伴う荷重の増加を見込んだ構造計画を採用すること。

    ロ 入居世帯の家族構成・生活様式等の変化に柔軟に対応できる間仕切壁等のインフィルシステムの採用

    •  間仕切壁等の移設による間取りの変更が容易なように、天井・床と間仕切り壁等の納まりを天井・床勝ちとするとともに、部品化された間仕切りユニットや収容ユニットを適宜活用すること。
    •  間仕切壁等の移設に際して構造躯体や設備配管が障害とならないようにしておくとともに、移設予定先への補強用下地の設置、天井高の統一等に留意すること。
    •  共同住宅等においては、住戸間の界壁を移動して間取りを変更することが容易に行えるような工夫も必要に応じ検討すること。

    (5)その他配慮することが望ましい事項
     上記の事項のほか、木造住宅の長寿命化に関連して、以下のような措置を講じるよう努めること。
    イ 住まい手の意識の啓発

    •  住まい手の長寿命木造住宅に対する理解と愛着を深めるため、勉強会やワークショップの開催、住まい手による部分的施工や現場チェックなど、参加型の住まいづくりの工夫を行うこと。
    •  木造住宅の長寿命化に不可欠な点検・清掃等の維持管理のポイント、湿気対策等の住まい方のポイントなどについて、住まい手向けにわかりやすく情報提供すること。

    ロ 廃棄物の削減、資源の有効活用

    •  建設段階、維持管理段階及び将来の解体段階に生じる廃棄物の削減を図るため、使用材料の製品寸法と整合したモデュールの採用、交換・補修の際に他の部品を破損しないような部品取り付け方法上の工夫、リユース・リサイクルが容易となるような部材の断面寸法・接続方法上の工夫等行うこと。
    •  環境問題への対応の観点から、建設段階及び維持管理段階において、可能な限り、間伐材を含む地域材や古材・リサイクル材の活用を図ること。

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