国土交通省
 高濃度アルコール含有燃料によるトラブル・事故防止の
 ための注意喚起について
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平成14年10月3日
経済産業省
国土交通省
<問い合わせ先>
自動車交通局技術安全部
 審査課

(内線42353)

 環境課

(内線42523)

TEL:03-5253-8111(代表)

 

  1. プレスリリースの趣旨
     経済産業省及び国土交通省は、10月3日に「高濃度アルコール含有燃料に関する安全性等調査委員会(以下、「調査委員会」という。)」において出された最終評価を踏まえ、消費者保護及び事故の未然防止の観点から、両省の判断として、自動車ユーザーに対して当該燃料によるトラブル・事故防止のための注意喚起を行うこととしました。

  2. 調査委員会における安全性評価結果
     調査委員会においては、昨年9月から高濃度アルコール含有燃料をガソリン自動車に使用する場合の科学的安全性検証を実施し、10月3日の第7回調査委員会の審議を経て、最終的な安全性評価を行いました。最終評価にあたり、評価のポイントとした点は以下の通りです(詳細については、別添「高濃度アルコール含有燃料の安全性に関する最終評価」参照)。

    (1) 市販されている高濃度アルコール含有燃料のサンプリング・燃料性状分析調査結果
    (2) 自動車燃料系統部品材料の浸漬試験結果
    (3) 高濃度アルコール含有燃料製造業者等へのヒアリング調査結果
    (4) 海外の高濃度アルコール含有燃料に関わる調査結果

     これらの調査結果を踏まえ、以下の最終評価に至りました。

     これまでの調査を通して、市販されている高濃度アルコール含有燃料に含まれている各アルコール成分は自動車の燃料系統部品に一般的に使用されているアルミニウムを腐食させることが確認された。さらに、市販されている高濃度アルコール含有燃料のうち、最もアルコール成分量の少ない実燃料サンプルでもアルミニウムの腐食が確認された。また、高濃度アルコール含有燃料に含まれているアルコール成分はゴム・樹脂に膨潤等の物性低下及びゴム部品の機能低下をもたらすため、ガソリン使用時と比較して燃料耐性等が低下する可能性が明らかになった。
     また、高濃度アルコール含有燃料の製造・輸入業者からは高濃度アルコール含有燃料をガソリン自動車に使用することの安全性について説明を受けたが、これらの製造・輸入業者において安全性が十分に検証されていないことが明らかになった。
     なお、海外では、低濃度のアルコール成分をガソリン規格として認めている国が存在するが、我が国で市販されている高濃度アルコール含有燃料のような高いアルコール濃度レベルを認めている国は皆無である。
     以上の調査結果から、アルコールの使用が想定されていないガソリン用自動車に高濃度アルコール含有燃料を使用することは、自動車の燃料系統部品を腐食・劣化させる危険性が存在し、安全上問題であると結論づけられる。

  3. 高濃度アルコール含有燃料をガソリン自動車に使用する際の注意等について
     調査委員会による最終評価を踏まえ、両省としては、消費者保護及び事故の未然防止の観点から、高濃度アルコール含有燃料をガソリン自動車に使用した場合に安全上問題があることについて注意喚起をするとともに、ガソリン自動車各車の取扱説明書等で指定されている燃料を適正に使用する必要性を改めて周知すべきとの判断に至りましたので、別紙のとおり注意喚起を行うこととします。

  4. その他
     調査委員会の最終評価を踏まえ、経済産業省及び国土交通省は、今回のような事例の再発防止のため、安全性能や環境性能の低下を招く不適正な組成・性状の自動車用燃料の法的規制に関し、使用上問題のない新たな自動車用燃料が市場に参入する道が閉ざされないよう十分配慮して検討を開始します。


(別紙)

自動車ユーザーの皆様へ(注意)

 高濃度アルコール含有燃料をガソリン自動車に使用した場合に、安全上問題があることが判明しております。

〜高濃度アルコール含有燃料によるトラブル・事故を防ぐために〜


(各自動車メーカー問い合わせ窓口)
いすゞ自動車(株) お客様相談部 0120−119−113
カワサキ・モータース・ジャパン お客様相談室

 

[明石]078−925−2003
[東京]03−3595−0563
スズキ(株) お客様相談室 0120−40−2253
ダイハツ工業(株) お客様関連室 0070−800−874040
トヨタ自動車(株) お客様相談センター 0070−800−778899
日産自動車(株) お客様相談室 0120−315−232
日本ゼネラルモーターズ(株)
 カスタマーアシスタンスセンター
03−5424−2800
富士重工業(株) お客様相談部 0120−05−2215
本田技研工業(株) お客様相談センター

 

[二輪車]0120−086819
[四輪車]0120−112010
マツダ(株) マツダコールセンター 0120−386−919
三菱自動車工業(株) お客様相談センター

 

[乗用車]0120−324−860
[トラック・バス]0120−324−230
ヤマハ発動機(株) お客様相談室 0120−090−819
 
(行政側問い合わせ窓口)
経済産業省 製造産業局 自動車課 03−3501−1690
資源エネルギー庁 石油精製備蓄課 03−3501−1993
資源エネルギー庁 石油流通課 03−3501−1320
国土交通省 自動車交通局 審査課 03−5253−8597
自動車交通局 環境課 03−5253−8604


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(別添:第7回高濃度アルコール燃料に関する安全性等調査委員会資料)

資料11

高濃度アルコール含有燃料の安全性に関する最終評価

 高濃度アルコール含有燃料をガソリン自動車に使用した場合の安全性を評価するため、市販されている高濃度アルコール含有燃料のサンプリング・燃料性状分析調査、自動車の燃料系統部品に使用されている金属およびゴム・樹脂の浸漬試験調査、高濃度アルコール含有燃料製造業者等へのヒアリング調査、および海外の高濃度アルコール含有燃料に係わる調査を実施してきた。最終評価として、各調査結果および調査結果から導き出される結論を、以下に記す。

1調査結果の概要
(1)市販されている高濃度アルコール含有燃料のサンプリング・燃料性状分析調査結果
 全国の燃料給油施設(サービスステーション)および国内貯蔵タンクから高濃度アルコール含有燃料をサンプリングし、燃料性状分析を行った。その結果、実際に市販されている高濃度アルコール含有燃料には、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール、ノルマルブタノール、イソブタノールのアルコール成分が含まれていることが判明した。
 また、本調査委員会のサンプリング・燃料性状分析調査結果が発表された4月以降、任意で採取できたサンプルの分析結果とも比較したところ、燃料性状に大きな変化が生じていると考えられるような組成及び成分比の変化はなかった。

(2)自動車燃料系統部品材料の浸漬試験結果

(イ)金属腐食性試験結果
 自動車の使用実態を考慮した試験条件において、市販されている高濃度アルコール含有燃料に含有される各アルコール成分は、市販されている高濃度アルコール含有燃料の全アルコール含有率の平均値に相当するアルコール濃度において、全てアルミニウムを腐食させる性質を示した。さらに、市販されている高濃度アルコール含有燃料のうち、最もアルコール成分量の少ない実燃料サンプルを用いて同様の試験を行った場合においても、全ての燃料サンプルでアルミニウムに対する腐食性が示された。
(ロ)ゴム・樹脂浸漬試験結果
 市販されている高濃度アルコール含有燃料に含有される各アルコール成分は、膨潤等のゴム・樹脂の物性低下や燃料ホース抜け圧力低下等のゴム部品の機能低下を引き起こし、ガソリン使用時と比較して燃料耐性等が低下する可能性が示された。

(3)高濃度アルコール含有燃料製造業者等へのヒアリング調査
 高濃度アルコール含有燃料製造・輸入業者からは、高濃度アルコール含有燃料をガソリン自動車に使用することの安全性について浸漬・市場調査等を通して十分確認を行っているとの説明を受けたものの、試験条件が自動車の使用実態を踏まえたものになっていないなど、高濃度アルコール含有燃料製造・輸入業者からは、十分な安全性を立証する説明はなされなかった。
 また、自動車側から検証を行った結果、燃料漏れを起こした実車のデリバリーパイプ端部からアルコール成分とアルミニウムの反応生成物と考えられる物質が検出されるとともに、ガソリンを用いた際には燃料漏れ発生車のような腐食は見られなかったことからも、燃料漏れの原因は、アルコール成分に起因する腐食である可能性が高いことが判明した。

(4)海外の高濃度アルコール含有燃料に係わる調査
 アメリカ、EU、ブラジル、韓国においては、ガソリン自動車用の燃料規格が定められており、その中にアルコール成分を含むことは認められているものの、その含有量については、含酸素率や成分含有率によりアルコール成分の添加量の上限が低濃度に制限されており、我が国で市販されているような高濃度のアルコール含有燃料は認められていなかった。
 また、ブラジルや米国では、現在、ガソリン車に耐アルコール部材を使用しているため自動車の故障等の問題はないが、米国では1970年代にガソホールの使用により燃料系統部品に係わるトラブルが発生したこと、ブラジルにおいてもアルコール燃料導入初期の頃はゴムの劣化トラブルが発生したことが判明した。

2高濃度アルコール含有燃料のガソリン自動車に対する安全性に関する最終評価
 これまでの調査を通して、市販されている高濃度アルコール含有燃料に含まれている各アルコール成分は自動車の燃料系統部品に一般的に使用されているアルミニウムを腐食させることが確認された。さらに、市販されている高濃度アルコール含有燃料のうち、最もアルコール成分量の少ない実燃料サンプルでもアルミニウムの腐食が確認された。また、高濃度アルコール含有燃料に含まれているアルコール成分はゴム・樹脂に膨潤等の物性低下及びゴム部品の機能低下をもたらすため、ガソリン使用時と比較して燃料耐性等が低下する可能性が明らかになった。
 また、高濃度アルコール含有燃料の製造・輸入業者からは高濃度アルコール含有燃料をガソリン自動車に使用することの安全性について説明を受けたが、これらの製造・輸入業者において安全性が十分に検証されていないことが明らかになった。
 なお、海外では、低濃度のアルコール成分をガソリン規格として認めている国が存在するが、我が国で市販されている高濃度アルコール含有燃料のような高いアルコール濃度レベルを認めている国は皆無である。
 以上の調査結果から、アルコールの使用が想定されていないガソリン用自動車に高濃度アルコール含有燃料を使用することは、自動車の燃料系統部品を腐食・劣化させる危険性が存在し、安全上問題であると結論づけられる。

3高濃度アルコール含有燃料が問題となった背景
 高濃度アルコール含有燃料をガソリン車に使用することに関する安全性については、先述のとおりであるが、今回の調査結果は、自動車の燃料の総合的な安全性確保を図り、消費者保護を達成するために活用されてこそ十分な意味を発揮すると考えられる。つまり、今回の事例を教訓とし、このような問題が発生した原因についても分析を加え、再発防止策が施されるべきである。
 以上のような考えのもと、高濃度アルコール含有燃料が問題となった背景・原因について推察を加えたところ、以下のような点が主な背景・原因として考えられる。

4結語
(1)第3次安全性評価の位置付け
 本調査委員会では、市販されている高濃度アルコール含有燃料をガソリン車に使用することの安全性を包括的に検証するために、自動車燃料供給系統等の部材調査や当該燃料製造業者等へのヒアリング等を実施し、問題となっている部分について実態状況の精査から行っており、さらに、これらを的確に検証するための調査方法・実験方法についてもその妥当性を検証し、現段階で考えられ得る最も科学的かつ合理的な検証方法を採用していると考えられる。
 今般、このような検証方法に基づく一連の調査・実験を行った結果、市販されている高濃度アルコール含有燃料をガソリン自動車に使用することの安全上の問題が明らかとなった。他方、これらの科学的に検証された事実に対して、これを科学的観点から反証するような説明は、高濃度アルコール含有燃料製造者等からはなされていない。
 このような状況を踏まえると、ガソリン自動車に高濃度アルコール含有燃料を使用することは、安全上問題であるという点で検証は尽されており、更に検証を要する論点は残されていないと考えられる。なお、将来的に、高濃度アルコール含有燃料専用車が開発された場合には、当該燃料を安全に使用できる可能性が残されているものの、これは自動車と燃料を組み合わせて検証を行う必要があり、高濃度アルコール含有燃料専用車が開発されていない現段階において行うことは不可能である。
 したがって、この第3次安全性評価をもって、市販されている高濃度アルコール含有燃料をガソリン自動車に使用する場合の安全性評価の最終評価とすることが適当である。

(2)安全性評価に関する留意点
 本評価は、「高濃度アルコール含有燃料」を「そもそも高濃度アルコール含有燃料の使用を想定した設計がなされていないガソリン自動車」に使用した場合の安全性評価であることに留意すべきである。すなわち、高濃度アルコール含有燃料をガソリン自動車の燃料以外の別の用途に活用する余地や、高濃度アルコール含有燃料とは異なる新たなガソリン自動車用燃料を開発する余地を否定するものではない。
 特に、厳格化された環境基準への対応やエネルギーセキュリティー確保の観点から、石油系の燃料に代わる新エネルギーの出現が待たれる状況にあることを踏まえ、新エネルギーそのものの内容はもちろん、その用途も考慮に入れて安全性等を評価し、新エネルギーの導入を抑制することにならないように配慮すべきである。

(3)再発防止のための取り組み
 今回の一連の安全性評価結果及び高濃度アルコール含有燃料が問題となった背景を踏まえ、同様の事例の再発を防止する観点から、以下の取り組みが必要と考える。

 1
 安全性能や環境性能の低下を招く不適正な組成・性状の自動車用燃料を法的に規制すること。
 2
 新たな組成・性状の自動車用燃料については、事前に、安全性能や環境性能その他自動車として必要な各種性能に与える影響を客観的に確認されるスキームを導入し、使用上問題のない新たな自動車用燃料として市場参入する道が閉ざされないように配慮すること。

 なお、上述の取り組みを透明なプロセスで十分検討し、必要最小限度のものとするとともに、可及的速やかに実施されるよう要望する。

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