国土交通省
 海賊対策に関する「海事政策当局等による専門家会合」の
 検討概要について

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平成14年3月13日
<問い合わせ先>
海事局外航課

(内線43302)

TEL:03-5253-8111(代表)

 

  1. 会合概要

     3月12日(火)及び13日(水)の両日、東京において、国土交通省海事局の主催により、アジアの15の国の海事政策当局及び民間の海事関係者並びに国際海事機関(IMO)及び国際海事局(IMB)の関係者が一同に会し、海賊対策に関する「海事政策当局等による専門家会合」が開催された。
     同会合においては、依然として東南アジアを中心として海賊及び武装強盗事件が多発していることにがんがみ、会合参加者により、関係諸国において講じられてきた対策等についての意見交換が行われるとともに、それぞれが持つ知見の共有化が促進され、更なる海賊対策の拡充が検討された。
    (議長) 慶応義塾大学 栗林忠男法学部教授
    (参加国等) バングラディシュ、ブルネイ、カンボディア、中国、インド、インドネシア、日本、韓国、ラオス、マレイシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム、IMO、IMB

  2. 検討概要

    (1)海賊の現状把握
     IMO及びIMBの関係者から、最近の海賊事件の傾向等に関して、東南アジアを中心とした地域での多発状況及び身代金目当ての事件等の凶悪事件の発生が報告され、今次会合の参加者は、今後とも、アジア全体の問題として、海賊の根絶に向けて取り組むべきとの認識で一致した。

    (2)各国における取組み状況の報告
     今次会合参加各国により、「海賊対策モデルアクションプラン」の履行状況等について報告され、参加者は、海賊に対する自主警備策が有効であり、また、今後とも自主警備策を拡充すべきであるとの認識で一致した。

    (3)アジア地域の海事政策当局等が協力して取り組むべき具体的対策
    今次会合の出席者は、アジア地域の海事政策当局等による協力について検討した結果、以下の認識で一致した。

    イ 国際協力の継続
     各国が講じている効果的な対策についての意見交換や計画されている対策を実行に移すための具体的措置の検討などについて、関係国間の協力の強化・改善を進める。

    ロ 海賊情報の充実
     自主警備策の向上のため、船舶に対する情報提供に実績のあるIMBと協力しつつ、海賊情報の充実に向けて、更に検討を深める。 一方、海賊情報の充実のためには、船舶からの的確な情報提供が必要であり、このため、船舶からの報告を容易にする報告様式の策定に向けて検討を進める。

    ハ 最近の海賊被害の動向を踏まえた対応
     最近の海賊事件の傾向として身代金目当ての事件が発生していることから、各国国内において、自国民保護という観点から、関係当局に対する注意喚起といった働きかけを行う。

    ニ 海上における保安の向上
     船舶又は船社が講じる対策として、海賊対策とテロ対策に共通点があることから、目下、進行中のIMOにおける海事分野のテロ対策の検討に積極的に参画する。

    ※ 詳細については、別添の議長総括を参照。

海賊対策に関する「海事政策当局等による専門家会合」議長総括(仮訳)
(2002年3月12・13日 於東京)

 

   2002年3月12日及び13日、東京において、海事政策当局等の専門家による会合を開催し、依然として東南アジアを中心とした海域に海賊及び武装強盗事件(以下、「海賊」という。)が多発している事態を憂慮し、海賊の発生状況及び更なる効果的な海賊対策について、意見及び情報の交換を行った。
 その会合の概要は、次のとおりである。

  1. 海賊の現状把握
     今次会合の参加者は、IMO(国際海事機関)及びIMB(国際海事局)の海賊事件の発生状況に関する報告に留意した。
    参加者は、関係国及び関係団体並びに関係者間においてこれまで講じられてきた真摯かつ前向きな対応が着実に海賊対策に貢献していることを評価しつつも、特に東南アジアの海域においてなお海賊事件が多発していること、また、その中でもハイジャック事件、身代金目当ての事件のような残忍かつ悪質な事件が発生していること、について深い懸念を示した。
     参加者は、今後とも、海賊はアジア地域全体に対する重大な脅威であり、また、海賊事件の根絶に向けてこの問題に対処している必要があるとの認識で一致した。

  2. 各国における海賊対策への取組み状況の報告
     今次会合の参加者は、2年前東京で開催された「海賊対策国際会議」で採択された「海賊対策モデルアクションプラン」の履行状況等に関する各国からの報告に留意した。参加者は、アジアの海事政策当局及び民間海事関係者が、海賊に対する自主警備策が海賊対策として有効かつ効果的であることを十分に認識し、積極的に船舶における自主警備策を実施していることを高く評価した。
     参加者は、それぞれの職務に応じて、船舶における自主警備策を拡充していくことが重要であるとの認識で一致した。

  3. アジア地域の海事政策当局及び民間関係者が協力して取り組むべき具体的 対策についての意見交換
     今次会合の参加者は、アジア地域の海事政策当局及び民間関係者による協力について検討し、議論した結果、次の認識で一致した。
    (1)国際協力の継続
     アジアにおいてこれまで講じられてきた国際的な協力やイニシアティブを評価し、また、船員の能力を向上させることが重要であることを認識しつつ、特に、次の分野において、関係国間の協力と関係をより強化し、改善することが不可欠であることが確認された。
    a 各国において講じられている効果のある措置及び対策に関する意見交換
    b 講じるべきとされている対策を実行に移すための具体的な措置の検討

    (2)海賊情報の充実
     IMBが船舶に対して海賊情報を提供していることを評価し、また、海賊情報の充実は船舶における自主警備策の実施及び向上のために効果的かつ有益であると認識して、IMBに協力しつつ、このような海賊情報の充実及び拡充についての検討をすることもまた、不可欠であることが確認された。
     同時に、このような海賊情報の充実のためには、海賊被害に遭った船舶から的確に情報提供がなされるようにすべきであることを認識し、また、船上の船員の負担を考慮しつつ、このための何らかの対策が講じられるべきであると考えて、参加者は、船舶からの報告が、事件後短時間に、かつ、簡易に処理できるようにするため、MSC回章623改訂2に基づき、海賊の事後報告のための様式を定めるため検討をすることとする。

    (3)最近の海賊被害の動向を踏まえた対応
     最近の海賊事件の傾向として身代金目当ての事件が発生していることに留意し、また、各国におけるこれまでの取組みに加え、自国民保護という観点からの対応が必要であると認識して、参加者は、この種の事件の防止を図るため、各国国内において必要があると判断される場合には、関係当局に対する注意喚起といった働きかけを行うべきであると考えた。

    (4)海上における保安の向上
     その動機に基本的な違いがあることは別として、海賊対策とテロ対策のために講じられる対策については、共通点があるということを認識し、また、米国のテロ事件を契機として海事分野におけるテロ対策がIMOにおいて検討されていることを想起し、IMOで検討されているテロ対策は海賊の抑圧にも効果がありうるという問題意識をもって、当該検討に積極的に参加することを検討することもまた、不可欠であることが確認された。
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