国土交通省
 我が国航空市場競争環境整備プログラム
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平成14年9月17日
<問い合わせ先>
航空局監理部航空事業課

(内線48502)

TEL:03-5253-8111(代表)


 

  1. 基本的考え方
     国土交通省としては、航空市場における航空運送事業者間の競争を通じて利用者利便の向上を図ることが重要であるとの認識に立ち、これまで国内航空運送事業について需給調整規制の撤廃、運賃の事前届出制への移行等の規制緩和を実施するとともに、航空輸送サービスを提供する上で基盤となる混雑飛行場における発着枠の配分に当たっては、新規航空会社を優遇する措置をとってきたところである。これによって、新規航空会社の参入等を通じて、主要路線における運賃の低下、利用可能な航空会社数・便数の増大等、目に見える形で多くの利用者に競争促進の効果が及んでおり、これまでの競争促進策は一定の成果を上げているところである。一方で、平成14年6月のエアドゥによる民事再生手続きの申立て、平成14年8月の新規航空会社であるスカイネット・アジア航空の運航開始、平成14年9月のスカイマークエアラインによる増便計画の発表等、新規航空会社において新たな動きがあったほか、既存航空会社においても平成14年10月に日本航空と日本エアシステムが経営統合を行うなど、我が国航空市場は、新たな局面を迎えているところである。これらの動きを踏まえ、今般、上記基本的認識に立ちつつ、新規参入等による成果をさらに確固たるものとするため、我が国航空市場における競争環境のさらなる整備を行うこととする。このため、以下の措置を講じ、より一層の利用者利便の向上を図ることとする。

  2. 個別プログラム
    (1)羽田空港発着枠
     我が国航空市場における競争促進を通じて利用者利便の向上を図るため、航空サービスの展開に当たって貴重な資源である羽田空港の発着枠について、以下の措置を実施し、新規航空会社の参入促進及び事業拡大を支援することとしたところである。

    •  平成14年10月の日本航空及び日本エアシステムの経営統合に伴い返却される9便分の発着枠については、「競争促進枠」として、新規航空会社が事業拡大を行う場合に使用する枠とする。平成17年2月の発着枠の再配分の前に「競争促進枠」が不足する場合には、さらに3便分の発着枠を回収し、「競争促進枠」に繰り入れる。

    •  平成17年2月の発着枠の再配分の前に発着枠の増加が可能となる場合には、新規航空会社の参入促進又は事業拡大に優先的に配分を行うこととする。

    •  平成17年2月には、今後の新規航空会社の事業拡大のため、大手航空会社が使用している発着枠を抜本的に見直して「競争促進枠」を拡充する。

    (2)空港施設の利用
     航空会社間の適正な競争を通じて利用者利便の向上を図るためには、航空会社に対して競争機会が十分に与えられる必要がある。このような観点から羽田空港等混雑飛行場における発着枠の配分において新規航空会社を優先的に取り扱ってきたところである。しかしながら、与えられた競争の機会を十全に活用するためには、空港施設の利用条件において各航空会社間で均衡を失しないように配慮する必要がある。このような観点から、新規航空会社と大手航空会社との間の競争条件の均衡を図るため、空港施設の利用について以下の措置を講じることとする。

    •  空港の固定スポットの割り当てについては、平成15年より、機材、路線ごとの固定スポットの使用率等を総合的に勘案して、各航空会社が同様の使用状況となるよう必要な調整を行うこととする。特に、羽田空港においては、新規航空会社と大手航空会社との間の競争をより実効的なものとする観点から、原則として、新規航空会社に対して6便分まで優先的に固定スポット(使用機材等のため固定スポットの使用が合理的でない等の事情から固定スポットの提供が困難な場合にあっては、旅客の利便に配慮したオープンスポットを含む。)を提供すべく、必要な調整を行うこととする。なお、機材、路線ごとの固定スポットの使用率については、データの公表を行うこととする。

    •  カウンター・スペース、事務室等、空港ターミナルビルの利用に関する協議ルールを設け、新規航空会社、大手航空会社等関係者間の空港ターミナルビルの利用に関する協議の早期決着を促すこととする。

    •  平成14年10月の「競争促進枠」の創設に当たり、大手航空会社が未使用の「競争促進枠」を暫定使用する場合には、新規航空会社に対して、チェックイン・カウンター、搭乗橋等の使用を認めることを条件としたところである。

      ※この結果、スカイマーク・エアラインは、本年10月以降、北ウイング側で全日空との並びに専用チェックイン・カウンターを設置し、3便分搭乗橋の使用が可能となる。
       また、エアドゥは、本年10月以降、南ウイング側で3便分搭乗橋の使用が可能となる。さらに、全日空との提携の中で、来年2月以降、全日空との並びに専用チェックイン・カウンターを設置するほか、全日空カウンターにおいてもチェックインが可能となる。また、あわせて搭乗橋も北ウイング側に移転する予定。

    •  平成14年8月に運航を開始したスカイネット・アジア航空については、本年9月1日より羽田空港においてターミナルビル直近のオープンスポットを提供した。また、平成14年11月1日より、宮崎空港において現在オープンスポットを使用している早朝始発便及び最終到着便について搭乗橋を提供することとする。

    •  機体整備、地上支援業務等の各種業務については、新規航空会社が航空運送事業に参入、継続するに際して、支援及び受託が必要な場合には、引き続き、大手航空会社に対し、協力を要請することとする。

    •  新規航空会社が希望する施設で、空港内に必要であると判断できるもの(格納庫用地等)は、可能な範囲で確保に努める。

    (3)航空従事者等の技能の再活用
     航空運送事業を行うには操縦士、整備士等の資格を有する航空従事者や航空工学についての知見を有する者(以下「航空従事者等」という。)の雇用が必要不可欠である。しかしながら、航空従事者等を自社で育成するには相当の時間を要することから、新規航空会社が新規参入又は事業拡大を行うに際しては、航空従事者等を外部から採用することが必須となる。一方、航空従事者等の技能は、機種等に特化した特殊な技能であるため、航空運送事業以外の退職後の再就職機会が広く存在しないのが実情である。このため、以下の措置をとり、航空従事者等の技能の再活用と新規航空会社等による航空従事者等の採用機会の増大を図ることとする。

    •  航空従事者等の再就職を支援するため、平成15年より(社)全日本航空事業連合会に新規航空会社等の求人情報を集約し大手航空会社に提供することとする。

    •  現在63歳未満に制限されている加齢乗員の年齢要件等の見直しについて、国際的動向、医学的見地等を踏まえ検討する。

    (4)融資
     現在航空分野においては、航空機輸入の保証のほか、コミューター航空輸送及び3大都市圏における空港施設整備に限り、政策金融の対象となっているところである。一方で、新規航空会社は、航空機を海外からのリースで調達を行っているため、航空機輸入の保証のメリットを享受することができない状況にある。また、新たな路線展開に当たっては、運航管理、整備、地上業務等の航空輸送をサポートする部門における設備投資等多額の資金が必要となる。航空事業は、投資回収までの期間に長期を要する分野であり、今後、航空会社間の競争の促進を図るためには、現在、政策金融の対象となっていない航空機の海外からのリースを政策金融の対象として加えるほか、既存の制度では視野に入っていない運航管理、整備、地上業務等の航空輸送をサポートする部門における設備投資等を政策金融の対象として加え、既存の制度を補完する必要がある。

    •  新規航空会社の参入、事業拡大等に際し、日本政策投資銀行が設備の取得等のため必要となる資金の50%(政策金利V)について融資を行う制度を要求したところである。 

    (5)運賃
     新規航空会社が低運賃により参入し、これに大手航空会社が割引運賃等を設定して対抗する例が見られるが、それ自体は競争上通常見られる行為であり、この結果、当該路線における全体的な運賃レベルが低下し、多くの利用者に利益がもたらされてきている。しかしながら、個別の状況に照らし、略奪的な運賃の設定等競争制限的な運賃設定が行われていると判断される場合には、適切な対応措置をとる必要があり、このため、新規航空会社が就航する路線の運賃について、以下のとおり注視を行っていくこととする。

    •  新規航空会社が就航する路線の運賃動向を注視し、不当な競争を引き起こすこととなるおそれがある場合には、適切な対応措置をとることとする。

    •  利用者利便に適う運賃設定を行う航空会社とこれに追随して対抗運賃を設定する航空会社があるが、これらの行動を明らかにするため、航空局への運賃の届出時期の順番等を明示した運賃設定状況を3ヶ月ごとに行っている「航空輸送サービスに係る情報公開」などにおいて明らかにすることとする。

     これまで、我が国においては、運送約款上、適用運賃は「旅客が航空機に搭乗する日において有効な運賃」とすることとし、収受した運賃が異なる場合には、差額を払い戻し又は徴収することを原則としてきたが、旅客の予約状況に応じて機動的に運賃を設定できるよう、「発券をした日において有効な運賃」を適用運賃として、収受運賃との差額を払い戻し又は徴収しないことについても、その適否を検証していく必要があると考えている。なお、この場合においても、普通運賃や回数券など発売日から搭乗日まで常に同額の運賃の設定やこれまでの通りの「搭乗する日において有効な運賃」と並存させることもできるものである。
     この検証については、全国の路線で適用する前に、一定期間、利用者利便に資する多様な運賃が存在しうる路線において試行することが適切であると考えられる。

    •  当分の間、新規航空会社の参入している路線について新規航空会社及び大手航空会社に対して「発券をした日において有効な運賃」の導入を提案し、当該航空会社の対応及び利用者の反応を見守ることとする。

    (6)予約販売体制
     新規航空会社は、後発企業であるため、大手航空会社と比べて知名度が低く、利用者への浸透を図り、大手航空会社に伍していくためには、営業力の強化、魅力ある商品の開発等の努力を行うとともに、予約販売体制の整備・強化を行っていく必要がある。このためには、実際に航空券の販売、旅行商品の開発等を行う旅行会社との協力関係の構築が欠かせない。したがって、新規航空会社による予約販売体制の整備・強化を支援するため、以下の措置をとることとする。

    •  (社)日本旅行業協会及び(社)全国旅行業協会において、新規航空会社との連絡体制を設け、航空券の販売、旅行商品の開発、コンピューター予約システムの接続等の課題について随時意見交換が可能な体制を整えることとする。

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