国土交通省
 住宅金融に関する消費者教育・情報提供に関する
 研究会の最終報告について
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平成15年3月14日
<問い合わせ先>

住宅局住宅資金管理官室

(内線39715)
TEL:03-5253-8111(代表)

 

  1. 趣旨
     平成13年12月の特殊法人等整理合理化計画に基づき住宅金融公庫(以下「公庫」という。)の融資業務が段階的縮小されるなか、民間金融機関による多様な住宅ローンの提供と積極的な貸出し姿勢が見られています。従来の公庫融資を中心とした資金計画の検討から民間ローンの比重が高まる中、消費者においても、多様なローンから適切な選択を行う目を養うことが必要とされ、住宅ローンに関する情報を効率よく入手し、正しく理解するための環境整備が必要とされています。
     また、公庫においては、民間金融機関による住宅ローン債権の買取り等を行い、証券化する証券化支援業務を平成15年度より実施することとしており、証券化支援対象ローンについても、消費者に対する適切な情報提供が求められています。
     これまでも、「市場機能を積極的に活用した住宅金融のあり方懇談会」の報告(平成14年4月)や「自由民主党政務調査会住宅土地調査会住宅金融小委員会」の提言(平成14年7月)において、住宅金融に関する消費者教育や情報提供の必要性が指摘されているが、平成14年10月に、有識者、消費者団体、マスコミ、弁護士、FP、関係業界、関係省庁等からなる「住宅金融に関する消費者教育・情報提供に関する研究会」が設置され、平成15年2月までに計4回開催され、今般、その最終報告が取りまとめられました。
     国土交通省においては、本研究会の発足の呼びかけを行うとともに、オブザーバーとして参加したところであり、研究会の成果の周知を図っていくとともに、今後は、各関係主体が一体となって、住宅金融の消費者教育・情報提供に取り組みながら、フォローアップを行いつつ、継続的に検証していくことが必要と考えています。

  2. 開催経緯
     第1回:平成14年10月29日
      (1)研究会の設置について
      (2)アンケート調査について

     第2回:平成14年11月27日
      (1)委員からの説明
      (2)事務局からの説明

    1民間住宅ローンの商品説明等における情報提供について
    2公庫融資を返済中の利用者に対する周知状況について
    3住宅ローンに関する消費者教育・情報提供の必要性に関する視点

     第3回:平成14年12月17日
      (1)住宅金融公庫の証券化支援業務について
      (2)研究会の取りまとめについて

     第4回:平成15年2月25日
       研究会の取りまとめについて

  3. 報告書の骨子
     (1)最近の住宅金融の動向と消費者教育・情報提供の必要性
    1はじめに
    2最近の住宅ローンの動向

     (2)住宅金融に関する消費者教育・情報提供の取組み

     (3)住宅金融に関する消費者教育・情報提供の方向性

    1住宅取得に係る資金計画・返済計画に関する消費者教育・普及啓発
    2住宅ローンに関する比較可能な情報提供
    3住宅ローンの広告表示の取扱い
    4住宅ローンの金利の取扱い
    5民間金融機関の住宅ローンの融資状況の把握

     (4)住宅金融公庫の証券化支援ローンに係る情報提供

     (5)住宅金融公庫融資利用者の不安解消等に向けた情報提供

     (6)まとめ

    ※詳細は別紙参照

  4. 委員等(※は座長)
    ○委員
    原   早苗   埼玉大学経済学部非常勤講師・青森大学社会学部非常勤講師
      渡辺 房枝   主婦連合会住宅部長
      阿曽 香   (株)リクルート住宅情報首都圏版編集長
    犬塚 浩 弁護士(鹿内・上田・犬塚法律事務所)
    紀平 正幸 NPO法人日本ファイナンシャル・プランナーズ協会常務理事
    高橋 祥郎 (社)住宅生産団体連合会技術管理部長
    小野塚 実 (社)不動産協会マンション建替委員会小委員長
    小川 達也 UFJ銀行リテール業務部部長
    ○オブザーバー
    大藤 俊行 金融庁総務企画局企画課長
    大澤 真 日本銀行金融市場局金融市場課長
    御崎 良雄 全国銀行協会企画部広報室長
    金森 章宣 住宅金融公庫総務部参事役
    伊藤 淳 国土交通省住宅局住宅資金管理官
    ○事務局
    (株)日本総合研究所


(別紙)

住宅金融に関する消費者教育・情報提供に関する研究会報告書(概要)

 

  1. 最近の住宅金融の動向と消費者教育・情報提供の必要性
     1はじめに
    •  特殊法人等整理合理化計画に基づく住宅金融公庫の融資業務の段階的縮小と証券化支援業務の導入。
    •  民間金融機関による多様な住宅ローンの提供と積極的な貸出し姿勢。
    •  公庫融資を中心とした資金計画の検討から民間ローンの比重が高まる中で、多様なローンから適切な選択を行う目を養うことが必要。
    •  住宅ローンの借入れは、生涯に何度も経験するものではなく、住宅ローンに関する情報を効率よく入手でき、正しく理解するための環境整備が必要。

     2最近の住宅ローンの動向

    •  個人向けの安定的な収益が見込まれる商品として、民間金融機関は住宅ローンの貸出しに積極的な姿勢。
    •  変動金利型(29%)のほか、5年以内の固定金利期間選択型(61%)が中心。10年超の長期固定金利型は1.7%。
    •  民間金融機関に係る資金調達面の制約のほか、長期にわたる低金利の継続、当面の返済額の抑制を図ろうとする消費者の姿勢が窺える。
    •  金利優遇を行うキャンペーン商品の提供や繰上返済、保証料、提携ローン等に係る多様なローンも出現。

  2. 住宅金融に関する消費者教育・情報提供の取組み
     各機関の取組みについて、今後、一層の取組みの強化が期待されるところ。
    • 日本銀行
      • 住宅ローンを含む金融商品等のハンドブックの作成
      • 金融アドバイザーによる金融広報活動
      • ホームページ上での住宅ローンの情報、資金計画のシュミレーション、学習ツールの提供

    • 銀行協会
      • 全国54の各地銀行協会の「銀行よろず相談所」における相談・照会と苦情・要望の各行への仲介
      • 全国銀行協会による一般向けのパンフレット・ビデオの作成・制作と高校等への配布・寄贈や各種セミナー等に対する講師の派遣

    • 個別民間金融機関
      • 住宅ローンセンターや支店窓口における一般的な融資相談、返済困難者への相談、資金計画に関する相談

    • 金融トラブル連絡調整協議会(消費者行政機関、消費者団体、業界団体・自主規制機関、弁護士会及び金融当局の任意の自主的な協議会)
      • 金融分野の相談を含む苦情・紛争解決に係るモデル規約の作成や消費者アクセスの改善

    • 住宅金融公庫
      • 住情報相談センターや支店の相談セクションにおける融資相談、条件変更・資金計画等に関する相談

    • NPO法人日本ファイナンシャル・プランナーズ協会
      • 社会教育推進室における学校教育、一般家庭、企業における消費者教育の実施

    • 国民生活センター・消費生活センター
      • 住宅ローンを含めた相談受付

    • 消費者団体
      • 優良な広告事例の紹介、相談・苦情事例の収集

    • 国土交通省
      • 関係団体、地方公共団体等と連携した住宅金融に関する情報提供・普及啓発の充実

    • 住宅生産者・不動産販売業者
      • 住宅展示場・不動産販売等における媒体の活用、営業担当者等に対する教育・情報提供の充実

  3. 住宅金融に関する消費者教育・情報提供の方向性
     1住宅取得に係る資金計画・返済計画に関する消費者教育・普及啓発
    •  住宅の取得に際し、住宅ローンに関する基礎的知識を習得するとともに、自己資金の計画的な積立て等に努めることが必要。
    •  住宅ローンに関する金利の種類、返済方法等のほか、保証料、団体信用生命保険料、繰上返済、借換え、返済困難時の対処等に対する理解を深める環境整備も必要とされるところ。

     2住宅ローンに関する比較可能な情報提供

    •  住宅ローンも多様化・複雑化し、消費者自らが比較しながら選択することは容易ではない。
    •  住宅ローンの情報が一元的に集約化され、消費者がワンストップでアクセスできる仕組みが整備されると利便性が高い。
    •  民間による情報提供サービスも活発であるが、NPO等の中立的な第三者機関の役割も考えられる。
    •  消費者から住宅ローンに関する個別相談を受けられる専門家の体制も必要。
    •  米国ではモーゲージ・ブローカーが住宅ローンを紹介するビジネスを実施。こうしたビジネスの動向にも注目。

     3住宅ローンの広告表示の取扱い

    •  住宅ローンの広告表示については、「不当景品類及び不当表示防止法」に基づく「銀行業における表示に関する公正競争規約」により、通則的な事項を規定。
    •  全国銀行公正取引協議会においては、広告事例に関して定常的に監視を実施しており、適切な広告表示の励行が今後とも重要。
    •  消費者団体・NPOにおいて、住宅ローンを含む金融商品の広告事例を収集・公表する例も見られ、各方面の活用が望まれるところ。

     4住宅ローンの金利の取扱い

    •  固定金利型と変動金利型のそれぞれの特性・リスクを理解することが必要。
    •  民間金融機関の変動金利型等の場合は、金利上昇時の返済額の増大や未払利息の発生の可能性。
    •  商品説明書・パンフレットのほか、販売場面においても、変動金利型に係る金利変動リスク等について消費者に十分な注意を与えることが必要。具体的には、返済額が将来的に確定されたとの誤解を与えないこと、固定金利期間選択型に関して期間満了後の金利の取扱いを明確にすること等が必要。

     5民間金融機関の住宅ローンの融資状況の把握

    •  民間金融機関による長期・固定金利型の住宅ローンは全体の1.7%。
    •  公庫融資の段階的縮小のなか、民間金融機関による住宅ローンの供給が十分か、長期・固定金利のニーズが充足されているか、審査基準の内容等も継続的に注目。
    •  政府としても、合理化計画に沿い、民間金融機関による住宅ローンの提供及び消費者による住宅ローンの選択の状況等について、民間金融機関等の協力を得ながら、今後、その状況を把握。その際、消費者に対する情報提供の状況の把握にも努めるべき。

  4. 公庫の証券化支援ローンに係る情報提供
    •  新法人が証券化支援業務を行うことを知っているのが2割、証券化支援業務の内容を知っているのが数%と、一般の認知度は必ずしも高くない状況。
    •  直接融資と証券化支援ローンとの間の商品性、返済条件等の共通点・相違点の周知が必要。
    •  証券化支援ローンに係る標準的な商品説明書が作成され、民間金融機関の窓口等において商品性に関する一貫した説明が必要。
    •  事務経費(サービシング・フィー)の違いに応じて民間金融機関により金利水準が異なることが想定され、こうした情報提供も求められる。

  5. 公庫融資利用者の不安解消等に向けた情報提供
    •  公庫融資の既往債権は新法人に承継されるが、公庫自らもその旨と返済条件の変更がないことの周知を実施。
    •  利用中の公庫ローンの将来的な取扱いに対する不安感、住宅ローンを利用する予定者からは、融資選別、金利上昇、長期・固定金利が利用困難になるといった不安感も提示。
    •  公庫改革に関する正確な情報の周知徹底・情報提供を拡充して継続的に実施する必要。

  6. まとめ
    •  公庫の直接融資の段階的縮小、民間金融機関による多様な住宅ローンの提供、来年度からの証券化支援対象ローンの導入等、住宅金融にも大きな変化。
    •  住宅ローンに関する商品性、リスク、資金計画等を十分に考慮しながら、自己責任の下、住宅ローンを適切に選択できる環境整備が必要。
    •  公的機関、消費者団体、事業者、専門家、マスコミ等の各主体が一体となって、住宅金融の消費者教育・情報提供の充実に向けた対策が総合的・計画的に取り組まれることが重要。また、今後の動向を見据えながら、継続的な検証が必要であり、本研究会においても、適宜フォローしていく予定。

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