国土交通省
 我が国関係船舶における海賊被害状況調査の結果(2002年)
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平成15年2月6日
<問い合わせ先>
海事局外航課

(内線43365)

TEL:03-5253-8111(代表)

 

 2002年の1年間に我が国関係船舶(邦船社が所有、運航、用船している外航船舶)が、受けた海賊行為、武装強盗・窃盗等(以下「海賊行為等」という。)による被害の状況を把握するため、既に発生時に速報を受けているものを含め、本年1月、国土交通省海事局外航課において、再度、各外航海運事業者(214社)を対象に状況調査を行った結果、以下のような状況が確認されました。

[調査結果の概要]

(1)被害件数
 2002年に我が国関係船舶の中で、海賊行為等の被害(単に船舶に乗り込まれたものを含む)を受けた船舶は、16件ありました。
 一昨年(2001年)は10件だったので、件数としては前年と比べて6件増加した形となりますが、それ以前の2000年には31件、1999年には39件が確認されているので、これらの件数と比較すると、2年続けて発生件数が抑えられたことになります。
 因みに、国際海事局(IMB)が発表した2002年に全世界で発生した海賊事件件数の速報値では、370件(同2001年は、335件)となっており、前年よりも1割程度の増加が認められる状況となっています。

(2)被害状況
 被害は、いずれも港内の岸壁に着岸中、又は港付近で錨泊中に発生しています。錨泊中では、夜間に小型のボートで接近し、錨の鎖をよじ登って侵入するなど、乗組員が気付かないうちに乗船され、甲板上に設置されたライフラフト(膨張式救命いかだ)や甲板倉庫等の船用品(ロープ、救命胴衣等)が、いつのまにか盗まれているといった事例も多く見られました。
 また、賊が銃器を所持していた事例が2件、ナイフや蛮刀を所持していた事例が6件(うち1件は銃器と両方)ありました。
 人身の被害は、暴行を受けて負傷した事例が1件(中国人の船長)あったほか、結果的に人身の被害はなかったもののナイフ等で脅されたり、縛られるなどした事例が4件認められました。

(3)発生海域
 発生海域は、例年に引き続き、インドネシア周辺海域を中心に、東南アジア海域で最多の12件となっており、全体の7割以上を占めています。
 ほか、アフリカ海域が2件、中南米海域及び中東海域が各1件となっています。

(4)その他参考
 被害船の中に日本籍船は認められませんでした。
 また、被害船の中で日本人が乗船していた船舶は2隻のみでした。
 世界的には、シージャック事例や身代金要求事例が増えつつある中、我が国関係船舶については、比較的軽微な被害に留まっていると言えます。
 被害は、時間がはっきりしているものについては、いずれも夜間(主に深夜)に発生しています。
 被害船は、ほとんどの船舶において、見張りの強化や巡回監視等の措置がとられていましたが、不幸にして被害に遭っているものです。
 被害の中には、船内には侵入せず、船体の船尾(外板外側)の水没部に取り付けられている保護亜鉛の塊(船体の電気的な腐蝕を防止するためにボルト等で固定されている亜鉛の金属塊)を海中に潜って盗むという変わった窃盗事例も見られました。
 このほか、機関の制御室に侵入した賊に乗組員が縛られたものの、その時、偶然にボイラーの低水位を知らせる警報が鳴ったため、これを侵入者を知らせる船内の非常警報と勘違いした賊が、驚いて何も取らずに逃げ出し、事なきを得た事例もありました。

注1)
 計上されている海賊行為等による被害の件数は、現に船舶に乗り込まれたり、物品を盗まれたりした事例の件数となっており、船舶に対して直接的な接触が図られなかったものについては含まれていません。
 また、調査により、関係船社等から任意に提供された事案のみ件数として計上しています。
注2)
 国際海事局(IMB)は、国際貿易等に関する取引慣習の統一化等を行う民間団体である国際商業会議所(ICC)の専門部局であり、海賊等海事関係の犯罪に対する防止対策等について、独自に情報を収集し、その分析等を通じて、広く海事関係者に助言を行っている機関です。


日本関係船舶に係る海賊及び船舶に対する武装強盗等に関する調査結果
海賊行為発生件数(件) 負傷等(うち日本人)(人) 発生海域別 運航区分 海賊行為の類型別
東アジア (東南アジア) インド洋 アフリカ 中南米 その他 航行中 錨泊中
沖待中
着岸中 不明 強盗等 窃盗等 不明
89 1    1 (1)         1        

 

   
90 4 1(1) 4 (4)         3 1    
91 8    8 (8)         4 3   1
92 7   7 (7)         2 4   1
93 2 1(1) 1 (0)   1       2    
94 8    6 (6) 1   1   4 4     4 4  
95 8 1 5 (2) 1   2   2 5 1   2 6  
96 11 2 10 (8)   1     2 6 3   2 7 2
97 18 1 12 (12) 1 2   3 5 9 4   9 9  
98 19 16(1) 14 (14) 1 4     6 5 6 2 12 7  
99 39 1 28 (27) 6 1 1 3 6 24 8 1 15 24  
00 31 1 22 (22) 5   3 1 5 16 10   12 18 1
01 10 1 4 (4) 3   3     7 3   3 7  
02 16 1 12 (12)   2 1 1   8 8   5 11  
182 26(3) 134 (127) 18 11 11 8 40 94 43 5 64 93 3
※東南アジアの件数は、東アジアの内数


日本関係船舶に係る海賊及び船舶に対する武装強盗等の発生件数の推移

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