国土交通省
 港湾の防災に関する研究会(第3回)議事概要及び提言
 について

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平成15年8月21日
<問い合わせ先>
港湾局海岸・防災課

  (内線46294)

TEL:03-5253-8111(代表)

 

 

  1. 研究会の概要
    • 日時:平成15年7月30日(水) 13:30〜15:30

    • 場所:虎ノ門パストラル5階 ミモザ

    • 研究会の目的
       近年、東海地震や東南海・南海地震等の大規模地震の発生が切迫性を有しており、このような大規模地震への対応は緊急の課題となっている。
       阪神・淡路大震災等の過去の大規模地震災害では、大規模地震に対応した施設整備の遅れや国及び港湾関係者の即応体制の不備等が課題となった。その後、対策が進められてきたが、各種課題に十分に対応されたとはいえない状況にある。
       一方、国土交通省では、公共事業関係長期計画を一本化し、平成15年度を初年度とする新たな長期計画を策定しているところである。この時期に合わせ、港湾局では、防災に関する施策の再構築を図ることとしている。
       こうした中で、本研究会では今後の港湾における大規模自然災害対策について、港湾における安全の確保、物流機能の確保、地域の復旧・復興の支援、港湾利用者や市民等との関わり等の観点からハード・ソフトの各課題について検討することとした。

    • 委員
      座長   黒田 勝彦 (神戸大学教授)
      委員   家田  仁 (東京大学大学院教授)
      委員   石黒 一彦 (神戸商船大学講師)
      委員   小幡 純子 (上智大学教授)
      委員   片田 敏孝 (群馬大学助教授)
      委員   黒川 和美 (法政大学教授)
      委員   重川希志依 (富士常葉大学教授)
      委員   中林 一樹 (東京都立大学教授)
      委員   荻原征三郎 (産経新聞解説委員)
      委員   小嶋 富男 (NHK報道局気象・災害センター長)
      委員   川合 正矩 (日本通運株式会社取締役)
      委員   関根  博 (日本郵船株式会社安全・環境グループグループ長)
      委員   中野  格 (前兵庫県港湾協会専務理事)
      委員   松本 忠雄 (花王株式会社取締役)
      その他、地方公共団体の防災関係者、港湾関係者が委員として参画

    • 過去の開催日
        第1回 平成15年4月16日
        第2回 平成15年6月10日

  2. 議事概要
     これまでの2回の研究会において行ってきた議論を集約して、今後の港湾の防災に関して必要な施策やその進め方など提言(案)について議論を行った。以下のような委員からの指摘事項を踏まえて、座長一任のもと、提言のとりまとめを行った。 提言の概要は別添のとおり。

    • 各委員からの指摘事項

      • 提言1の「(1)港湾機能の早期回復のために必要な施策」と「(2)港湾の効果的な防災機能の発揮のために必要な施策」を入れ替えた方がよいのではないか。機能発揮がメインであり、早期回復はその手段に過ぎないし、抜本的な回復は困難。

      • (反対の意見として)早期回復が重要で、こちらが先。現在も阪神・淡路大震災の影響が続いている。

      • 港湾内に港湾で働いている人々等が避難できる耐震性の高いビル等が必要。そのことが「(b)津波に対する避難地の確保と情報伝達」の記述では分かりづらい。

      • 買取請求制度とはなにか。別の表現に改めた方がよいのでは。

      • これらの施策を全て行うとすれば、財源が不足するが、費用負担は誰がするのか。

      • 「(1)国の果たすべき役割の明確化」において、国が主体的な役割を果たすべきことが書いてあるが、平常時、非常時における港湾間の広域連携、遠隔地同士の連携も重要。

      • 地震調査研究推進本部において、来年度地震危険度マップを作成する予定。ハザードマップと重ね合わせて戦略的に投資順序等を考えることが必要。

      • 阪神・淡路大震災のときは、東から西へ緊急物資を運んだ後カラ輸送するなど、陸上輸送による無駄が多かった。被災地の中に物資集配拠点を位置付け物流の円滑化を図る等戦略地図が必要。

      • 総合的、広域的な準備体制が重要。防災に限らず、港湾の重要性を改めて認識(アメリカ西海岸のロックアウトの影響等)。港湾は国民経済に直結するという認識を広げるため、「(3)防災に関する意識の醸成」を「(3)港湾の役割と防災に関する意識の醸成」としたらどうか。

      • オープンスペースの確保は重要。ただし、「耐震強化岸壁等の施設と一体的に機能する緑地・広場等」という表現は、耐震強化岸壁の裏のオープンスペースだけと限定されてしまうおそれがあるので表現を変えた方がよい。

      • 「(b)津波に対する避難地の確保と情報伝達」の中に放置小型船舶対策があるが、伊勢湾台風のときに原木による被害が大きかったように、貯木場対策が必要。

      • 国全体の経済産業活動、国民生活への影響の大きさをきちんと事業評価の中に反映されるべき。一度どこかの港でモデルとしてやってみて、費用対効果の実証を行うべき。

      • 提言の最後に、SOLAS条約対応の必要性をコメントしてほしい(これについては、本提言は、自然災害を対象とするとの整理)。

      • 提言の個々の事項の順序等をもう一度見直し整理し直した方が良い。


別添

【提言の概要】

  1. 港湾の防災に必要な施策

     国民の生命、財産を地震、津波、高潮等の大規模自然災害から守り、経済産業活動等への影響を極力軽減できるよう災害に強い港づくりを進める必要がある。また、大規模災害が発生した場合、港湾は、被災直後から緊急物資輸送や住民の避難、移動等において所要の役割を果たすとともに、 地域の復興にも貢献できるようその機能を早期に回復する必要がある。そのため、地域防災計画や港湾計画に、大規模地震対策として当該港湾に必要な施設やその役割等を明確化し、以下の施策を実施すべきである。

    (1)セーフティ機能(港湾及び港湾背後地を防護する機能)の発揮
    1防波堤による津波被害の防止・軽減
     港湾の資産や物流機能並びに港湾で働く人々や市民の生命を津波から守るため、防波堤の津波に対する被害の防止・軽減効果について検証し、効果的な防波堤の計画とする。

    2津波に対する避難地の確保と情報伝達等
     津波の来襲に対して緊急に避難できる高台等の避難地とそこまでの避難ルートを確保するとともに、関係者や市民に対して日頃から十分に情報提供を行う。また、港湾で働く人々や市民を避難地等へ迅速に誘導するための情報伝達システムを構築する。 さらに、港内の放置艇対策を進める。

    (2)ゲートウェイ機能(被災地への輸送拠点となる機能)・バイパス機能(被災地を迂回・代替輸送する機能)の発揮
    1情報収集・伝達の迅速化
     国と港湾管理者との間の防災情報ネットワークシステムを構築し、併せて民間企業や港湾利用者との情報交換につとめ、災害時は被害情報の迅速な収集と関係者への適切な伝達をはかる。

    2基幹的な物流機能の確保(物流ネットワークの再構築等)
     港湾EDI等の情報通信システムを活用して、港湾利用者に被災港の被害状況や代替港に関する情報を適切に提供し、円滑な代替港での利用を図る。国は、港湾管理者やコンテナターミナル等を運営する埠頭公社等の関係者と協力して利用者の誘導を図る。
     また、耐震強化されているコンテナターミナル(地域のコンテナターミナルの約3割)の能力を最大限に活用し、被災地域の経済産業の早期回復を図るため、、被災時のターミナルの運営方法について関係者間の合意形成を図っておく。

    3耐震強化施設空白地域の早期解消
     大規模地震の切迫性の高い地域等において耐震強化岸壁の整備や臨港道路の耐震強化を重点的に行い、概ねの目標年次としている2010年までに耐震強化岸壁の空白域の解消を図る等、より具体的な政策目標を掲げて取り組む。

    4老朽化した耐震強化岸壁等の改良
     老朽化した耐震強化岸壁等の改良に当たって、補強工法について施工の簡便性やコストの削減など技術開発を進め、計画的な事業推進を図る。

    5応急復旧の進め方
     応急復旧工事の優先順位の考え方や国と港湾管理者の協力・連携の在り方をあらかじめ検討しておき、被災時には情報を共有化し迅速に対処する。

    (3)スペース機能(災害復旧支援の場を提供する機能)の発揮
     耐震強化岸壁の整備や臨港道路の実施と併せて、これら施設の防災機能をより効果的に発現させるため、緊急物資の仕分けや一時保管、ヘリポート等に対処できるオープンスペースや非常用電源等ライフラインを確保する。 その際、臨海部の企業用地の活用や河川行政、都市行政との連携により効率的かつ効果的な防災体制を整える。
     また、被災時の瓦礫の迅速な処分が可能となるよう必要に応じて事前に処分計画を港湾計画に位置付ける。

  2. 今後の港湾の防災に関する施策の進め方

    (1)国の果たすべき役割の明確化
     大規模・広域的な災害に対しては、国が主体的に対応していく。国は、通常時から港湾施設の情報に加え、全国的な港湾の利用状況の把握に努め、災害時には被災情報の一元的把握・情報提供と併せて、利用状況について関係港湾管理者や利用者に情報提供を行う。 また、緊急物資の輸送や幹線物流の維持のために道路行政や海事行政と連携を図りながら緊急輸送道路や代替港を指定する等全国的な交通ネットワークの観点から対処する。

    (2)防災の観点からの港湾行政の確立
     津波防止機能を重視した防波堤や防災を主目的とした耐震強化岸壁の整備等防災の観点から事業評価が可能となる仕組みを確立する。また、被災時の情報収集・伝達システムの構築とともに、防災に対応した人材育成を図る。

    (3)関係者が連携した総合的な取り組み
     東京湾、大阪湾等のように、異なる港湾管理者により管理された複数の港湾が隣接している地域においては、港湾の計画、利用、環境の保全等とともに、防災の観点からも国及び港湾管理者が相互に連携して取り組む。更に、国、港湾管理者、 立地企業等の関係者からなる協議会等を設置し、情報の共有、研修・訓練の実施等大規模自然災害に備える。

    (4)市民の自助意識の向上
     地域住民やNPO等市民の参加によるみなとづくり、海辺づくりを進めて行くと同時に、港や海辺における津波の危険性と津波からの避難方法等防災に対する意識の向上を図る。また、地震発生時に適切な行動がとれるように避難地や避難ルートについての広報活動を展開する。

     本提言は、防災について、港湾において取り組むべき課題を中心にまとめたものであるが、港湾の防災に関しては、国、港湾管理者、関係地方公共団体、民間企業、一般市民等様々な関係者が存在している。 このため、防災の施策をより効果的に進めるため、今後、これら関係者と積極的に協力・連携を図り、施策を実施していくことが重要である。

    ※提言全文については、以下の連絡先までご連絡願います。

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