平成15年12月9日 |
<問い合わせ先> |
政策統括官付政策調整官室 |
(内線53213、53215) |
TEL:03-5253-8111(代表) |
国土交通省では、男女共同参画社会へ向けて女性の社会進出を支える環境づくりが必要であること、交通についても利用者の視点に立ったサービスの質的向上がより一層求められていること等から、「女性の視点から見た交通サービス」の検討を進め、平成14年1月にアンケート調査を実施したところ、痴漢等迷惑行為対策として「女性専用車両」の導入に対するニーズが高いことが判明しました(注)。
このため、女性専用車両の導入を促進する観点から、女性専用車両の導入の効果や導入にあたっての課題及び解決方法等について調査・検討するため、阪急電鉄株式会社(大阪市北区、角和夫社長)、京阪電気鉄道株式会社(大阪市中央区、佐藤茂雄社長)の協力を得て、昨年10月1日から2ヶ月間「女性専用車両 路線拡大モデル調査」を実施しました。
この度、調査報告書(PDF形式)がまとまりましたので、その概要を以下のとおり発表します。
注 平成14年1月に国土交通省は、女性利用者の視点による交通サービスの質の向上を図るため、「女性の視点から見た交通サービスに関するアンケート調査」を首都圏で実施し、男女合わせて約5千人から回答を得た。女性専用車両の導入については、女性の8割弱、男性の7割弱が賛成と回答した。
表1 女性専用車両試験導入の概要
阪急 | 京阪 | |
期間 | 平成14年10月1日(火)〜11月29日(金)の平日ダイヤ運行日 | |
区間 | 京都本線(河原町⇔梅田) 上下線にて実施 |
京阪本線・鴨東線(出町柳⇒天満橋) 京都方面から大阪方面の片道のみ実施 |
列車 | 2扉車両(6300系車両)で編成された特急・通勤特急・快速特急で終日 (合計122本/日) |
出町柳発:6時31、46、58分 7時12、22、32、44、58分の特急 (合計8本/日) |
車両 | 8両編成の中間1車両 (梅田側から5両目) |
8両編成の最後尾車両 (出町柳側) |
停車駅 | 梅田、十三、茨木市(特)、高槻市、長岡天神(特)、桂(特・快)、大宮(通・快)、烏丸、河原町 注:無印 特急・通勤特急・快速特急 特…特急、通…通勤特急、快…快速特急 |
淀屋橋、北浜、天満橋、京橋、枚方市、中書島、丹波橋、七条、四条、三条、出町柳 |
(1)利用者の評価
実施期間中に利用者に対して行ったアンケート(有効回答数両社合計1,662票)によると、女性は9割近く(阪急:87%、京阪:87%)、男性も6割前後(阪急:54%、京阪:64%)が女性専用車両に賛成と回答しており、利用者の評価は良好であったと考えられる。
一方、反対は、女性は1割未満(阪急:5%、京阪:4%)、男性は2~4割(阪急:38%、京阪:22%)で、その理由は、阪急では「男女差別になる」が一番多く、京阪では女性が「迷惑行為の根本的解決にならない」、男性が「一般車両が混雑する」が一番多かった。
グループインタビュー(注)では、痴漢に付きまとわれて大きな精神的苦痛を受けた経験のある女性から、女性専用車両の導入を待ち望んでおり、ぜひとも継続してほしいとの要望が出された。阪急・京阪ともに女性専用車両の中では痴漢被害は見られず、痴漢被害に悩む女性の精神的負担を軽減し、安心して利用できる車両としての導入効果は大きいと考えられる。
注 本調査では、アンケートでは把握しきれない女性専用車両に関する利用者の意識や運用方法に対する意見等を具体的に把握するため、阪急・京阪の女性・男性利用者に参加してもらいグループインタビューを行った。
【参考】
試験導入前後の痴漢被害届出件数の推移
阪急及び京阪における女性専用車両の試験導入後の6ヶ月と前年同期における痴漢被害の届出件数は以下のとおりであり、試験導入後に若干減少している。
ただし、下記グラフの件数は、両社の全時間帯、全列車を対象としているが、試験導入は特急等一部の列車で行われ、京阪にあっては朝ラッシュ時間帯のみで導入されたことに留意する必要がある。
(2)試験導入前に懸念された課題の検証結果
国土交通省で事前に実施したアンケート調査等で女性専用車両に対するニーズが高いことが把握されていても、鉄道事業者側では、混雑率の不均衡(一般車両がより混雑する)、ホーム上が混雑し停車時間が長引くことによるダイヤの乱れ等が発生することへの懸念から、導入に踏み切れない事業者が多かった。
このため、本調査ではこれらの懸念について試験導入での検証を試みたが、以下のとおり、阪急・京阪の試験導入においては、両社の努力等により、これらの懸念される問題はほとんど生じなかった。
女性専用車両と隣接車両の混雑率比較
阪急の試験導入では、導入初日(10月1日)は、女性専用車両の乗車率が減少し、隣接車両と約1割の乗車率の差が生じているが、日を追うごとに乗車率の不均衡は解消されている。導入51日目(11月20日)には、むしろ女性専用車両の方が乗車率が高くなっている。これは、女性専用車両の認知度が高まるにつれて女性専用車両の利用者が増加したため、混雑率の差が解消に向かったものと考えられる。
定時運行の確保状況等
京阪における試験導入前後の各駅の平均停車時間の差異は下のグラフのとおりであり、女性専用車両の導入によって基本的には遅延が生じることはなく、懸念されたダイヤの乱れ等の運行面の問題は発生しなかった。
また、ホーム上の混乱による事故等の報告もなく、安全上の問題も特段なかった。
注1) 各駅の女性専用車両導入前の平均停車時間と同導入後の平均停車時間の差異を比較しています。例えば、導入後の方が導入前よりも停車時間が長くなった場合はプラスの値(秒)、逆に短くなった場合はマイナスの値(秒)を示しています。
注2) 導入前後の平均停車時間の比較では、その差異は10秒以内の範囲にありました。導入後の停車時間が長くなっている駅においても、時間調整のための停車延長等も含まれており、基本的には、列車遅延には至らずに定刻発車は確保されておりました。
男性の誤乗車対策
試験導入において、男性の女性専用車両への誤乗車が生じており、グループインタビューにおいても、女性利用者から対策を講じてほしいとの意見が出された。このため、阪急では、専用車両外側の扉付近の案内ステッカーを色・大きさともにわかりやすいものに変える等の対策を講じた。一方、京阪は、女性専用車両を車掌が乗務している最後尾車両に設定することにより、誤乗車の発見と他車両への誘導を比較的容易にする工夫を行った。現在、両社とも車掌が誤乗車を確認し次第、速やかに他車両へ誘導している。
阪急及び京阪は、試験導入の結果、女性専用車両の運営方法等について大きな問題はなく、実施期間中に明らかになった、男性の誤乗車等の課題もクリアできるものと判断されたこと、及びアンケート調査等から利用者の支持が大きいことが把握できたことから、平成14年12月2日から女性専用車両の本格導入を行うこととした。
本モデル調査に前後して、女性専用車両の試験導入や本格導入が各地の鉄道事業者で行われており、女性専用車両の導入拡大に本モデル調査が一つの契機となっていると考えられる。本年11月4日の西日本鉄道株式会社の天神大牟田線における本格導入により、関東、中部、近畿、九州の4エリアで13事業者(平成15年11月末現在)が女性専用車両を本格的に導入している。(別添資料参照(PDF形式))
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