国土交通省
 「中国物流をめぐる日中シンポジウム」の開催について(結果報告)
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平成16年11月22日
<問い合わせ先>
総合政策局複合貨物流通課

(内線25402、25423)

TEL:03-5253-8111(代表)

 

 社団法人日本インターナショナルフレイトフォワーダーズ協会(JIFFA)と国土交通省の共催により「中国物流をめぐる日中シンポジウム」(以下シンポジウム)」が11月18日(木)に東京(第一ホテル東京)にて開催されましたので、その結果をご報告致します。
 なお、本シンポジウムは財団法人シップ・アンド・オーシャン財団海外交流基金補助事業として実施されました。

  1. シンポジウムの趣旨
     近年、中国経済は生産力や消費力を顕在化させてめざましい発展を見せており、世界各国から多くの企業が中国市場に進出するようになっている。そのような中で、今後中国において競争力の高い経営モデルを構築するカギとして「物流ロジスティクス」が注目され始めているところである。そこで、本シンポジウムは、日中両国の官民の関係者による議論を通じて「中国におけるサプライチェーンマネジメント(SCM)の推進に向けたロジスティクス最適化」のあり方とその課題を提言することを目的として開催された。

  2. シンポジウムの概要
     シンポジウムは、主催者挨拶(岩井國臣国土交通副大臣、入江通JIFFA会長)、来賓祝辞(橋本龍太郎日本国際貿易促進協会会長(中田理事長代読)、呂淑雲中国駐日大使館公使参事官)に続いて、基調講演、ワークショップの結果発表(プレゼンテーション)及びパネルディスカッションの順で進められた。
     シンポジウムの開催にあたっては、物流事業者をはじめ、荷主企業、学術研究機関等幅広い分野より約340名の聴衆の参加を得ることができた。

    1基調講演
     中谷 巌 (株)UFJ総合研究所理事長・多摩大学学長が「SCM構築に向けたロジスティクスの重要性について」をテーマに基調講演を行い、ロジスティクス革命の背景、ロジスティクス革命が変えるビジネスモデル、ロジスティクス革命を実践している企業のビジネスモデル、中国物流へのインプリケーション等を紹介した。

    2ワークショップの結果発表
     本シンポジウムの総合コーディネーターである松本順一 三井物産(株)執行役員物流本部長が、17日(水)に開催された官民有識者による検討会(ワークショップ)の結果を発表した。

    3パネルディスカッション
     ワークショップの結果を踏まえたパネルディスカッションを行い、その最後に本シンポジウムからの「提言」を発表した(別添参照)。

     

    <参考>
     ワークショップ及びパネルディスカッションにおけるコーディネーター、パネリスト及びアドバイザーは以下のとおり。

    (1)総合コーディネーター
       松本順一 三井物産(株)執行役員物流本部長
    (2)中国側コーディネーター
       葉偉龍 中国遠洋物流有限公司総経理
    (3)パネリスト
       徐 源  江蘇小天鵝集団有限公司副総裁
       劉占芳 中国国際貨運代理協会副会長
       賀来紀久男 山九(株)顧問
       小山 彰 日産自動車(株)VP SCM本部長
       佐藤和久 (株)セブン-イレブン・ジャパン 執行役員物流管理本部長
       田中純夫 (株)フレームワークス代表取締役社長
    (4)アドバイザー
       尹 虹  中国商務部商業改革発展司現代流通発展処副処長
       張金提 中国交通部水運司国際航運管理処助理調研員
       伊澤 透 国土交通省総合政策局複合貨物流通課長 


2004年11月18日

「中国物流をめぐる日中シンポジウム」提言

 

 本シンポジウムは、中国におけるロジスティクス環境の改善について、以下のとおり提言する。

  1. 中国におけるロジスティクス環境の改善の意義
    • SCM(サプライチェーンマネジメント)構築のためのロジスティクス最適化は、消費者ニーズを優先した「プル型」経営の実現を促すものである。中国企業の中には、未だ企業の都合を優先した「プッシュ型」経営が見られるが、「プル型」経営への転換を促すためにもロジスティクス最適化が求められる。
    • 「プル型」経営を意識している日中の企業は、中国においてSCM構築のためのロジスティクス最適化の方策を模索しているが、さまざまな阻害要因から中国の実情に合わせて対応していることが現状であり、これらの要因を解決することにより中国における企業経営の効率化を実現することができるとともに、中国経済はもとより、アジア経済・グローバル経済の発展に大きく貢献することが期待できる。

  2. 中国におけるロジスティクス環境の改善の方向性
    (1)ロジスティクスパートナーの有効活用と育成
     ロジスティクスパートナーは、企業のSCM構築の柱となる重要な存在。中国企業の発展のためにもロジスティクスパートナーの有効活用が必要である。
     他方、物流事業者は、多様化する荷主のニーズに応えるため、「運送」のみを請け負う存在から、荷主企業に対して提案ができる存在(ロジスティクスパートナー)となるべきである。
    (2)ロジスティクス高度化への理解の促進
     ロジスティクスは、社会・産業・生活を支える「ライフライン」であり、温度帯管理、トレーシング等の技術導入や、IT技術との融合によるロジスティクス高度化は、より豊かで安全な社会を提供するものであるとともに、省エネルギー、CO2削減などの地球環境問題の解決に貢献するものであることから、その付加価値について企業、消費者の理解を深めることが重要である。
    (3)インフラの改善
     中国におけるインフラ整備は、飛躍的に進みつつあるが、利用者の視点に立った施設の「使い勝手」という観点から見ると、未だ改善の余地がある。
     ロジスティクス最適化を推進する上では、「共同配送センター」のような施設が有効であると考えられ、行政の主導による整備促進が求められる。
    (4)中国固有の商慣習
     現存する中国固有の商慣習は、ロジスティクス最適化を阻害する要因となり得ることから、透明性の向上が求められる。
    (5)人材育成
     ロジスティクス最適化を実現するためには、専門知識を身につけた人材の確保・育成が不可欠である。中国では、特に現場長クラスの人材育成が急務である。
    (6)規格、システム、制度の標準化
     中国では、ロジスティクスに関する規格、システム、制度が地域ごとに違う場合があり、ロジスティクス最適化を阻害する一因となっている。ロジスティクス最適化を推進するためには、規格、システム、制度の標準化が有効であり、早期からの透明性の高い情報開示が求められる。

  3. 中国におけるロジスティクス環境の改善に向けた関係者の取り組み
     上記2.を実現するため、日中両国の官民及び関連業界団体が協力して、以下の諸件についてスピード感をもって取り組むべきである。
    (1)日中官産学共同による人材育成方策の検討
     ロジスティクスは、総合的な学問であり、技術的、経済的、実務的側面から幅広い知識が求められるため、企業レベルのみならず、行政、大学等学術研究機関の協力によるインターンシップの受け入れ、相互講師派遣、研究等人材育成方策の検討が求められる。
    (2)ロジスティクス高度化の意義、メリットについての積極的アピール
     中国においてロジスティクスパートナーの有効活用を促すため、ロジスティクス高度化の意義、メリットを積極的にアピールすべきである。
     また、企業レベルにおいても、日々のビジネスを通じた日中両国企業のパートナーシップ関係の構築により、相互のレベルアップが図られるべきである。
    (3)当局間による継続的な情報交換・意見交換と民間へのフィードバック
     日中両国のロジスティクス環境の改善を図るため、両国の物流当局は、それぞれの施策について情報交換・意見交換を継続的に行い、更なる協力関係を構築することが求められるとともに、その成果を民間にフィードバックすべきである。

  4. 将来展望と期待
    (1)経済のグローバル化の進展による国際分業体制の確立により、中国における近隣諸国との国際的なSCM構築を求める動きが加速しており、今後、近隣諸国との連携によるSCM構築のための環境整備が必要となる。
    (2)ロジスティクス環境の改善がグローバルな課題であることを踏まえると、将来的には、ロジスティクス最適化の取り組みが日中間のみならず周辺のアジア地域に広がっていくことが望まれる。

    中国物流をめぐる日中シンポジウム

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