国土交通省
 平成15年度第2回下水道事業における
 排出枠取引制度検討委員会の開催結果について

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平成16年3月22日
<問い合わせ先>
都市・地域整備局下水道部
流域管理官付

(内線34312)

TEL:03-5253-8111(代表)


 

 国土交通省では平成14年度より、(社)日本下水道協会に「下水道事業における排出枠取引制度検討委員会(委員長:植田和弘京都大学大学院経済学研究科教授)」を設置し、東京湾流域における下水道の高度処理を対象とした汚濁負荷排出枠取引について検討を行ってきたところです。
 平成15年度は昨年度の検討結果を踏まえ、より実態に則した排出枠取引制度について検討を深めてきたところですが、このたび、平成16年3月16日に本年度第2回目の委員会を以下のとおり開催致しました。 

第2回下水道事業における排出枠取引制度検討委員会 議事要旨(速報版)

  1. 日時:平成16年3月16日(火) 13時00分〜15時30分
  2. 場所:東京ジョンブル ロベリアルーム(朝日東海ビル28階)
  3. 出席者:

    委員長 植田 委員長 (京都大学教授)
    委員 花木 委員 (東京大学大学院教授)
    新澤 委員 (神戸商科大学教授)
    只友 委員 (滋賀大学助教授)
    酒井 委員 (日本下水道事業団技術開発部長)
    中條 委員 (三菱総合研究所資源・循環研究部長)
    山口 代理 (埼玉県県土整備部下水道課主幹)
    行木 代理 (千葉県都市部下水道計画課副課長)
    玉本 代理 (東京都下水道局計画調整部計画課次席)
    笠原 代理 (神奈川県県土整備部下水道課技幹)
    後藤 委員 (岐阜県都市整備局上下水道課技術課長補佐)
    尾関 代理 (愛知県建設部下水道課主幹)
    中瀬 代理 (三重県県土整備部下水道チーム主幹)
    石崎 委員 (さいたま市建設局下水道部下水道計画課長)
    君塚 代理 (千葉市下水道局建設部下水道計画課主幹)
    木村 委員 (川崎市建設局下水道建設部計画課長)
    渡邉 委員 (横浜市下水道局総務部次長兼経営企画課長)
    関戸 代理 (名古屋市上下水道局下水道建設本部計画課係長)
    特別出席 池内下水道企画課長 (国土交通省都市・地域整備局下水道部)
    小林下水道事業課長 (国土交通省都市・地域整備局下水道部)
    藤木流域管理官 (国土交通省都市・地域整備局下水道部)
    春田下水道管理指導室長 (同 下水道部下水道企画課)
    西畑流域下水道計画調整官 (同 下水道部流域管理官)
    森田町村下水道対策官 (同 下水道部下水道事業課)
    石井課長補佐 (同 下水道部流域管理官)
    伊藤建設専門官 (国土交通省関東地方整備局企画部広域計画課)
    臼田地方計画係長 (国土交通省中部地方整備局企画部広域計画課)

  4. 議題:
    (1)本年度の検討経緯
    (2)排出枠取引のモデル検討について
    (3)制度化に向けた検討について
    (4)その他

  5. 配布資料
     資料−1 検討委員会 委員名簿
     資料−2 第1回検討委員会 議事録
     資料−3 本年度の検討経緯
     資料−4 排出枠取引のモデル検討
     資料−5 制度化に向けた検討


議事:

  1. 本年度の検討経緯(事務局)

  2. 議事
     事務局より資料4に基づき「排出枠取引のモデル検討」についての説明を行った。

    • 資料p48に示されている昨年の検討結果との相違点が生じた原因は?

      →昨年はベースラインとして当初負荷量配分を採用しており、今回は都県流総計画をベースとしている。負荷量配分後、時間をおいて都県流総計画が策定されるため、水量が減少傾向にある。今回の検討で、ベースラインの設定によって異なる結果が得られることが分かった。均衡価格も条件により大きく変化する。感度分析を行う方法もあるが、時間的に困難であった。

      →当初負荷量配分の調整は平成8年度に実施され、都県に許容負荷量の配分を行っている。p8の目標水質を見ると神奈川県が一番厳しい水質となっているが、これは当初負荷量配分と県流総計画の水量差が小さいためである。排出枠取引の問題というよりも、まず初期配分を行いその後に流総計画を策定するという現行の方法に課題があることがわかった。
       基金からの支出も費用だから、費用削減率は47%が正しい。また、現行方式の設定において、汚濁負荷量の削減が達成されているか、あるいは削減しすぎということはないのかを確認頂きたい。削減しすぎであれば、47%という費用削減率は過大評価となる。

    • 条件により結果が大きく変化するとなると、47%という削減率の信憑性にも疑問が残る。確実といえる削減率はどの程度なのか?

      →p32に示された図で、ひとつの「棚田」は同一の処理方式(建設パターン)を示しており、建設パターンについては変わらない。また、売り買いの関係についても変わらないと思われる。すなわち、同じ「棚田」は基金の支出を最小化するために形成されているのであり、事業費全体に大きな影響を与えるものではない。ただし、目標水質の設定は結果に大きく影響する。

    • 言葉の問題ではあるが、検討されている制度を「取引」と呼ぶことに違和感を覚えた。

      →通常の取引とは異なり、基金が介在するシステムを想定している。

    • p31で県全体の売買傾向というのは各処理場の売買傾向と同様なのか? →p35に示すように、処理場ごとにまちまちである。これは、高度処理の技術的方法や用地の確保の可否等、個々の処理場の特性が表れた結果である。ただし、目標が厳しい所では、「買い」になる傾向が見られる。

    • 時間的扱いはどうなのか。削減負荷量を積分するのか。難しいかも知れないが、時間的な要素は考慮する必要があると思われる。

      →今回の検討では、「20年後に施設ができあがるとしたら、どれだけ払う必要があるのか」という検討を行っている。すなわち、最終形での検討である。時間的要素は、今後の課題と認識している。

    • 神奈川県は、昨年度検討では「売り」であったものが、今年度は「買い」に変わった。初期配分によって、経済的にこれだけ変わるということである。改めて、公平な初期配分の考え方というものの難しさを感じた。

    • 県流総計画の実現を前提とすれば、「買い」だからといって損をする訳ではなく、神奈川県も取引によって安上がりに済むはずである。

    • 下水道は長期を要する事業であり、途中での変更が困難な事業であるから、外的条件の変化によって結果が変わりやすいというのは問題ではないか。例えば、流総計画の施策が完了し、さらに東京湾をよくしようという時、状況が全く変わってしまうおそれがある。投資はしたが買ってもらえないという事態も問題だ。そのような下水道の融通性のなさを考えていく必要がある。

      →今の流総計画の方法が必ずしもよいとは考えていない。東京湾に関しては負荷量の配分もそろそろ見直しの時期かと思う。取引の考え方を導入していく場合には当然、流総計画における初期配分も見通すことになるだろう。

      次に国土交通省より資料5に基づき「制度化に向けた検討」についての説明を行った。

    • p2「なぜ下水道事業が流総計画どおりに進まないのか?」の意図は?

      →高度処理に関しては財務当局から抵抗を受けるケースが多いと聞いている。流域全体で協力するための経済的インセンティブがないと進まないということを示している。

    • p5「取引方式」とは資料4における排出枠取引と同義か?

      →同じ意味である。

    • P6にある「補助金方式」の場合、全ての事業者が負担することになり、これで高度処理を行うとなると、相当な負担となってしまうのではないか。少し、定量的な検討をする必要があるのではないか。また、小規模な処理場は対象外とするなど、現実的な方策も必要ではないか。

      →さまざまな課題は認識しているので、今後検討していきたい。小規模な処理場については、維持管理の効率化等によって処理水質を向上させることが考えられ、この場合には負担金が減るのでインセンティブになると考えられる。

    • 制度の適用範囲は(国全体、流域、県別など)?

      →すべての処理場を対象とすべきか、小規模処理場は控除すべきか、低普及地域を対象とするかなど、制度化にあたっては課題が出てくると思われる。

    • 補助金の出し方は?

      →従来通り建設を行う事業者に出す方法、あるいは基金に投入する方法など、いろいろな方法が考えられる。負荷量取引の場合、対象とする閉鎖性水域の水質保全のみに重点がおかれることとなってしまい、流域内の水域が相対的に軽視される恐れがある。そこで「補助金方式」を提案した。フランス、オランダの政策も参考にした。「補助金方式」は、取引方式にくらべ、地域特性に対する配慮がより行き届くと考えられる。

    • 補助金は、維持管理費も対象とするのか? 取引方式の場合、参加者が限定されるが、補助金方式の場合、全ての事業主体が売り続けたり買い続けたりすることになるのではないか。

      →今のところ、建設費(年価)と維持管理費のトータルで考えている。

    • 負担金の料率はどのように決まるのか?

      →補助金の総必要コストを定め、負荷量比で按分する。負担金がわかると、各処理場ごとの最適行動が変わるので再度見直し、こういった作業を幾度か繰り返して決めていくことになると考えられる。

    • 補助金方式は、どこで処理するのかといった配置を考慮できる。取引は全体での検討となる。「補助金方式」の場合、現行施設の評価が難しいのではないか。

      →補助金方式の場合、水質をよくすれば負担金が軽減されるので、改善努力のインセンティブになる。流総計画は処理施設の配置計画であり、その性格は継続したまま、調整配分の考え方を盛り込みたい。補助金方式は、施設計画が「絵に描いた餅」とならないよう、実現に向けたインセンティブを働かせ、しかも地域的な条件を細かく配慮できる方式である。財源調達の手段としての見方もある。

    • ノンポイントや農業分野での対策に施策を拡大していくことを考えると、取引方式の方が適切なのではないか。

      →おっしゃる通りで、将来的には環境行政の一環として実現化を検討すべきだと思うが、下水道行政においては、下水道以外で講じられる施策による負荷削減の分、ベースラインを上げることによって、下水道以外の施策にも経済的インセンティブを付与できると考えられる。これらは次のステップの課題と考える。

    • 補助金方式については、計算を厳密にやる必要があると思う。今年度はどこまで対応するのか。

      →取引方式と解が一致する補助金方式というものが存在すると考えている。解の存在が確かめられれば、自己費用を取引方式とこれに対応する補助金方式について比較してみたいと考えている。

    • 今後、過疎地域などで人口が減少すると、排出負荷量が減り、高度処理を行わなくても分配金を受け取り続けるといった事態も想定される。地域の皆さんに理解頂けるようなベースラインの設定方法を今後議論していく必要がある。

    • 制度というものは、広がりを持っているのが望ましいという側面もある。そのような視点も含め、ベースラインの設定方法などを煮詰めていく必要がある。

    • 本検討委員会の結果は、今後、どのように制度化に向かっていくのか。

      →下水道政策研究委員会流域管理小委員会等において審議頂く予定である。下水道法の改正も視野に入れつつ、制度化について考えていきたい。

  3. 今後の予定
    • 今年度分については、来週中に御意見を賜り、後日それを反映した形で報告書をまとめたい。
    • 来年度は伊勢湾の作業が残っていることもあり、引き続きこの委員会で議論をお願いしたい。ただし、委員会名の「排出枠取引制度」という表現については再考させて頂きたい。
    • また、(社)日本下水道協会の都道府県委員会でも議論をお願いしたいと考えている。
    • 今年度分の報告書については、委員長に一任とさせて頂きたい。

    ※本議事要旨は速報版であり、正式版では一部修正を行う可能性がある。

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