平成16年11月22日 |
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新潟県中越地震において、被災した下水道施設について適切な本復旧を行うための技術的緊急提言を行うとともに、現行の地震対策の内容について、被害の実態を踏まえ様々な角度から検証するために、学識経験者等からなる「下水道地震対策技術検討委員会」(委員長 田中和博 日本大学教授)を設置し、第1回委員会を11月9日に、第2回委員会を11月20日に開催したところ。
第2回委員会では、「管路施設の本復旧にあたっての技術的緊急提言」(別紙)をとりまとめた。国土交通省では委員会でのとりまとめを受けて下水道部下水道事業課企画専門官通知として新潟県に提言を本日発出した。
平成16年11月22日
下水道地震対策技術検討委員会
管路施設の本復旧にあたっての技術的緊急提言
はじめに
10月23日に発生した新潟県中越地震は、兵庫県南部地震(平成7年1月17日発生)以来ともいえる大規模な被害を下水道施設にもたらした。特に、マンホールの浮上がり等が1,400箇所以上発生するなど、管路施設が大きな被害を受けていることが明らかとなった。本委員会は、今回の地震の特徴をとらえ、今回被災した下水道施設に対する適切な本復旧を行うために必要な検討を行うとともに、これまでの地震対策の内容について様々な角度から検証すること等を目的に設置された。
現在、被害状況の把握と原因究明に向けて、現地調査や検討を進めているところである。一方で、重要なライフラインの1つであり住民の生活に与える影響が非常に大きい下水道は早期復旧が切に望まれ、復旧工事が始まっている。この為、現在までの調査で判明している被災状況と原因に加えて平成15年十勝沖地震による調査報告等過去の地震調査結果を踏まえ、本復旧に役立つ技術的提言となる部分を緊急にとりまとめた。
本助言は、現在までに得られた知見に基づいたものであり、必ずしも管路施設の耐震対策の総てを網羅しているものではない。本委員会では、今後さらに調査検討を進め、今後の下水道施設の地震対策のあり方について提言していく予定である。
(1)地震動
今回の平成16年新潟県中越地震については、平成7年兵庫県南部地震等過去に発生した地震と比較すると、最大加速度が1700galを超えるなど遥かに大きな地震動であった。また、震度5弱以上の余震が繰り返し発生していることも特徴となっている(資料−参照)。
(2)地震直前の降雨状況
地震直前の降雨量は、7月に月450mmの集中した降雨があった後、平年並みの降雨量が続くものの、地震発生の3日前に日降雨量100mm前後の降雨が観測されている。
(3)被害状況
新潟県内全域を対象とした被害調査結果によると、下水処理場については魚野川流域下水道堀之内浄化センター等に被害が比較的限定されているが、管路施設では多数の「埋戻し部の路面沈下」、「マンホールの浮上がり」、「マンホール内の滞水」が長岡市、小千谷市などで生じている(資料−参照)。
埋戻し部の地盤沈下やマンホールの浮上がりによって、道路上に大きな段差が生じ、道路交通障害を引起こしている。また、管路の浮上がりや破損に伴う閉塞によると考えられるマンホール内の滞水も生じている。
(4)想定される管路被害の原因
数多く発生したマンホールの浮上がりと埋戻し部の地盤沈下については、以下のように管路敷設埋戻し部での液状化現象によるものと考えられる。
今回観測された地震動は、平成7年兵庫県南部地震を含めた過去の記録を上回るものである。また、地震発生直前にあった100mm前後の日降雨量も影響し、地下水位が高い状態にあった可能性が高い。この強い地震動が地下水で飽和した地盤に作用して液状化を起こし、管路施設に被害をもたらしたものと考えられる。
マンホールの浮上がりや地盤沈下が発生した箇所で調査したところ、粘性土等による透水性の悪い原地盤に開削工法で布設して、砂等で埋戻している状況がみられた。これは、十勝沖地震で被災した箇所でも見られ、埋戻し部が液状化したものと考えられる。
被害の再発防止も考慮し、本復旧の埋戻しにあたっては、マンホール周辺を含め、地盤の特性、施工条件等現地特性、管材、工期等を勘案して、原則として以下のいずれかの対策を行うことが望ましい。
(1)埋戻し部の締固め
埋戻し部の締固め度が90%程度以上であれば、一般的に浮き上がり等の被害が生じにくいことから、埋戻し部の締固めに関しては、埋戻し土を最適含水比に近い状態にしたうえで、タンパ等による念入りな転圧を行い、現場測定での締固め度が90%程度以上に保たれるように施工管理する。なお、90%程度以上でも液状化した事例もあることから、地盤の特性、施工条件等現地の特性に留意する必要がある。
(2)砕石による埋戻し
砕石埋戻しに用いる材料としては、道路橋示方書の液状化判定の項目で液状化する可能性がある土の粒度分布の上限値を参考として、平均粒径(D50)が10mm以上かつ10%粒径(D10)が1mm以上の砕石を用いるのがよいと考えられる。また、砕石による締固めに際しては、締固め度90%程度以上を確保する。
(3)埋戻し部の固化
埋戻し土にセメントあるいはセメント系固化剤を添加することにより、液状化の発生を防止することができる。セメント添加量は、一軸圧縮強度(28日強度)が100kPa〜200kPaとなる量を目安とし、現場強度として50kPa〜100kPaを確保する。なお、採用に当たっては再掘削の必要性も合わせて検討する。
本復旧の埋戻しにおける技術的緊急提言
埋戻し方法 | 埋戻し材料 | 施工管理 |
埋戻し部の締固め | 良質な砂 | 締固め度で90%程度以上 なお、90%程度以上でも液状化した事例もあることから、現地の特性に留意することが必要 |
砕石による埋戻し | 平均粒径(D50)が10mm以上かつ 10%粒径(D10)が1mm以上の砕石 |
締固め度90%程度以上 |
埋戻し部の固化 | セメントの添加量は一軸圧縮強度が 100kPa〜200kPa |
現場強度として 50kPa〜100kPa |
下水道地震対策技術検討委員会 設置要領
下水道は重要なライフラインの1つであり、都市の下水を常に適切に排除、処理する役目を負っている。大地震等により下水道がその機能を果たすことができなくなった場合には、各家庭のトイレが使用できないなど住民の生活に与える影響は非常に大きく、このような事態を回避するために、下水道施設機能の信頼性を高めることが強く求められている。
下水道における地震対策は、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、2段階の設計対象地震動を設定するなど技術的考え方を整理するとともに、対策の強化に努めてきた。
このような中、10月23日に発生した新潟県中越地震は、阪神・淡路大震災以来ともいえる大規模な被害を下水道施設にもたらした。特に、地盤液状化によると思われるマンホールの隆起・沈下が1,300箇所以上発生するなど、管渠施設が大きな被害を受けていることが明らかとなった。これらの施設については、今回の地震の特徴をとらえ、適切な本復旧を行うため必要な検討を行うとともに、これまでの地震対策の内容について、被害の実態を踏まえ様々な角度から検証することが必要である。
また、今回の地震の応急・復旧対策のうち、関係省庁の連携の下に重点的に実施すべき課題について、省庁横断的なプロジェクトチーム(新潟県中越地震関連被災者支援プロジェクト)を内閣府が発足させたが、この中では「下水道・トイレ」プロジェクトチームが立ち上げられるなど、下水道をはじめとする汚水処理施設全体の被害に対しても注目が集まっている。
これらのことを踏まえ、下水道における地震対策を適切に推進するため、学識経験者、国土交通省、地方公共団体、関係団体が参画する「下水道地震対策技術検討委員会」を設置するものである。
本委員会の審議を踏まえ、総合的かつ計画的な下水道地震対策を推進するとともに、地震対策に係る技術指針についても、適宜見直しを行っていく。
氏名 | 所属・役職 | |||
委員長 | 田中和博 | 日本大学理工学部土木工学科教授 | ||
委員 | 濱田政則 | 早稲田大学理工学部社会環境工学科教授 | ||
委員 | 藤田昌一 | 長岡技術科学大学環境・建設系環境制御工学教授 | ||
委員 | 安田 進 | 東京電機大学理工学部建設環境工学科教授 | ||
委員 | 岡久宏史 | 国土交通省都市・地域整備局下水道部 下水道企画課下水道事業調整官 |
||
委員 | 木谷信之 | 国土交通省北陸地方整備局建政部長 | ||
委員 | 清水俊昭 | 国土交通省国土技術政策総合研究所下水道研究部下水道研究官 | ||
委員 | 松尾 修 | 独立行政法人土木研究所耐震研究グループ長 | ||
委員 | 村井禎美 | 新潟県土木部都市局長 | ||
委員 | 若木 仁 | 長岡市土木部長 | ||
委員 | 仲村清美 | 札幌市下水道局建設部長 | ||
委員 | 佐伯謹吾 | 東京都下水道局計画調整部長 | ||
委員 | 尾崎昭彦 | 神戸市建設局下水道河川部長 | ||
委員 | 石田 貴 | 日本下水道事業団事業統括部次長 | ||
委員 | 谷口尚弘 | 日本下水道協会技術部理事兼技術部長 | ||
委員 | 渡部春樹 | 社団法人日本下水道管路管理業協会専務理事 | ||
委員 | 曽小川久貴 | 財団法人下水道新技術推進機構専務理事 |
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