平成16年2月13日 |
<問い合わせ先> |
河川局河川環境課 |
(内線35432、35443) |
電話:03-5253-8111(代表) |
国土交通省では、河川環境の整備と保全を適切に推進するため、河川における生物相を定期的、継続的、統一的に把握することを目的として、河川、ダムにおける生物調査等を行う「河川水辺の国勢調査」を平成2年度より実施しています。
今回は、平成14年度に実施した1級水系109水系(130河川)、2級水系24水系(24河川)と、管理中の94ダムにおける生物調査の結果がまとまりましたので概要を発表いたします。
なお、詳細な調査結果については、今年度中に水情報国土ホームページ(http://www. mlit.go.jp/river/IDC/index.html)にて公開する予定です。
全国の一級水系109水系(130河川)、二級水系24水系(24河川)及び管理中の94ダム(遊水地、調節池を含む。)において生物調査を実施。 |
河川水辺の国勢調査では、全国の一級水系及び主な二級水系の河川及び国土交通省、水資源機構管理のダムを対象に、「魚介類」、「底生動物」、「植物」、「鳥類」、「両生類・爬虫類・哺乳類」、「陸上昆虫類等」、「動植物プランクトン(ダム湖のみ)」の各項目の生物調査を概ね5年間で1巡するように実施しており、平成14年度調査は、第3巡目の2年目にあたります。
今回発表する資料は、平成14年度に実施した一級水系109水系(130河川)及び二級水系24水系(24河川)並びに管理中の94ダムにおける生物調査結果を取りまとめたものです。
今回とりまとめを行った調査項目ごとの河川及びダム数は下表のとおりです。
表 平成14年度調査河川及びダム
項目 | 魚介類 | 底生動物 | 植物 | 鳥類 | 両生類 爬虫類 哺乳類 |
陸上 昆虫 類等 |
動植物 プラン クトン |
合計 | |
河川 | 1級水系数 | 24 | 22 | 37 | 18 | 26 | 21 | 109 | |
(河川数) | (35) | (25) | (43) | (18) | (27) | (21) | (130) | ||
2級水系数 | 24 | − | − | 6 | − | − | 24 | ||
(河川数) | (24) | (−) | (−) | (6) | (−) | (−) | (24) | ||
合計 | 48 | 22 | 37 | 24 | 26 | 21 | 133 | ||
(河川数) | (59) | (25) | (43) | (24) | (27) | (21) | (154) | ||
ダム | ダム数 | 21 | 18 | 29 | 26 | 24 | 12 | 15 | 94 |
平成14年度調査において、河川で「日本産野生生物目録」掲載種の約6割の魚類、ダムで約4割の両生類を確認。 |
平成14年度の調査において確認された種数は下表のとおりです。
魚類のうち、淡水魚・汽水魚(「日本産野生生物目録」掲載種)の58%の種が河川で確認されています。
また、鳥類の43%、33%、植物の35%、39%の種がそれぞれ河川、ダムで確認されており、河川、ダムという限られた空間が多様な生物の生息・生育の場となっていることが分かります。
表 平成14年度調査における確認種数
調査項目 | 確認種数 | 「日本産野生生物 目録」等掲載種数 |
確認率 / |
|
河川 | 魚類(淡水魚・汽水魚) | 239(115) | 200 | 58% |
底生動物 | 860 | − | − | |
植物 | 2,822 | 8,118 | 35% | |
鳥類 | 244 | 568 | 43% | |
両生類 | 22 | 59 | 37% | |
爬虫類 | 16 | 87 | 18% | |
哺乳類 | 53 | 188 | 28% | |
陸上昆虫類等 | 5,963 | 33,220 | 18% | |
ダム | 魚類(淡水魚・汽水魚) | 70 | 200 | 35% |
底生動物 | 565 | − | − | |
植物 | 3,148 | 8,118 | 39% | |
鳥類 | 187 | 568 | 33% | |
両生類 | 25 | 59 | 42% | |
爬虫類 | 16 | 87 | 18% | |
哺乳類 | 55 | 188 | 29% | |
陸上昆虫類等 | 6,147 | 33,220 | 19% | |
動物プランクトン | 336 | − | − | |
植物プランクトン | 171 | − | − |
注)
多くの外来種が河川に定着し、その生育域が拡大。特に、ブタクサハムシについては近年急速に分布を拡大。 |
外来種は、人間が意図的・非意図的に本来の生息域とは違うところに持ち込まれた種で、生物多様性を保全する上で最も大きな脅威の一つと考えられています。
下表に、主な外来種の確認河川数の割合の推移を示しました。在来の魚類を捕食することで問題となっているブルーギルやオオクチバスをはじめとして、多くの外来種が定着し、生息域が拡大している傾向が見られます。
特に、ブタクサ、オオブタクサ、ヒマワリなどを食草とするブタクサハムシは、河川水辺の国勢調査では平成9年度に多摩川で初めて確認されて以来、多くの河川で確認されており、急速に生息域が拡大しています。
表 外来種の確認河川数の割合
調査項目 | 種和名 | 確認河川数の割合(%) | ||
第1巡目 (H2〜7) |
第2巡目 (H8〜H12) |
第3巡目 (H13,14) |
||
魚類 | ブルーギル | 39% | 54% | 66% |
オオクチバス | 54% | 66% | 74% | |
コクチバス | 0% | 2% | 4% | |
底生動物 | スクミリンゴガイ | 16% | 24% | 20% |
植物 | ハリエンジュ | 73% | 75% | 82% |
アレチウリ | 55% | 65% | 72% | |
ブタクサ | 79% | 82% | 82% | |
オオブタクサ | 47% | 66% | 75% | |
シナダレスズメガヤ | 74% | 86% | 90% | |
両生類 | ウシガエル | 72% | 75% | 70% |
爬虫類 | ミシシッピアカミミガメ | 30% | 46% | 44% |
陸上昆虫類等 | ブタクサハムシ | 0% | 24% | 55% |
オオブタクサを食べるブタクサハムシ
(写真:甲府河川国道事務所)
これまで調査を行ってきたダムのうち、約60%のダムでクマタカを確認。ダム湖周辺において良好な自然環境が保全されていることが示唆。 |
クマタカなどの猛禽類は、ノウサギ等の中型哺乳類やヘビ類、他の鳥類を主な餌とし、食物連鎖の上位に位置することから、下位に位置する生物を含めた生態系の指標として用いられています。クマタカは環境省のレッドデータブックで絶滅危惧TB類に指定されており、自然環境の保全という観点からしばしば注目されている種です。
現在管理中の100ダムのうち、平成14年度までに鳥類調査を行った90ダム中、56ダムにおいてクマタカが確認されています(全国の管理ダムにおけるクマタカの確認状況については別紙参照)。このことより、多くのダム湖周辺において、クマタカが生息できる良好な自然環境が保全されていることが分かります。
揖保川(兵庫県)ではじめて正式にキセルハゼを確認。 |
現地調査において確認された種のうち、確認された22種類の環境省レッドリストの絶滅危惧TA類※(ごく近い将来における絶滅の危険性が極めて高い種)に指定された種のうち、揖保川(兵庫県)においてキセルハゼが、猪名川(大阪府・兵庫県),日野川(鳥取県),佐波川(山口県)においてシルビアシジミがそれぞれ確認されるなど、良好な自然環境が残されていることが分かります。
シルビアシジミは、関東地方以南から種子島にかけて分布する小型のシジミチョウで、河川の堤防等を主な生息地としていますが、1970年代半ばから急速に姿を消したと言われています。今回の調査では、近畿地方の猪名川、中国地方の日野川、佐波川の3河川で確認されました。このうち、猪名川と日野川では前回調査に引き続き確認されており、安定した生息地と考えられる一方、前回調査で確認された四国地方の仁淀川においては、今回の調査では確認できませんでした。
※底生動物と陸上昆虫類等についてはTA類とTB類の区別がないため、絶滅危惧T類の種数を加えた。
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