国土交通省
 自動車運送事業に係る交通事故要因分析(平成15年度)の
 結果がまとまりました

 〜運輸支局を通じた事業用自動車の事故情報の収集並びに運行管理上の
 背後要因を含む多角的な分析及び対応策の検討〜

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平成16年9月21日
<問い合わせ先>
自動車交通局総務課安全対策室

(内線41172、41173)

TEL:03-5253-8111(代表)


 

 自動車交通局では、平成14年度に全国の運輸支局において事業用自動車の事故情報の収集(156件)を実施し、その結果を基に、平成15年度、学識経験者等で構成する「自動車運送事業に係る交通事故要因分析検討会」において、自動車運送事業に特徴的な要因を含むと考えられる事故事例16事例を選定するとともに、「運転者面」、「運行管理面」等について詳細な要因分析と対応策の検討を行いましたので、別添のとおり公表します。


自動車運送事業に係る交通事故要因分析事業

自動車運送事業に係る交通事故要因分析事業の概要図


「自動車運送事業に係る交通事故要因分析検討会」委員

(順不同・敬称略)

座長   堀野 定雄   神奈川大学工学部助教授
委員   池田 康二   日本通運株式会社作業管理部広域自動車輸送兼品質保証・教育・安全管理専任部長
 〃   榎元 紀二郎   東日本交通株式会社取締役社長
 〃   大野 祐司   独立行政法人自動車事故対策機構企画開発室長
 〃   小沼 清敬   財団法人日弁連交通事故相談センター事務局長
 〃   小野 古志郎   財団法人日本自動車研究所主席研究員兼財団法人交通事故総合分析センター主任研究員
 〃   酒井 一博   財団法人労働科学研究所常務理事
 〃   小林 正和   損害保険料率算出機構損害調査部長
 〃   本多 利男   西武バス株式会社運輸事業本部管理部長
 〃   中西 光彦   全日本交通運輸産業労働組合協議会事務局長
 〃   柳生 宜秀   社団法人日本自動車整備振興会連合会理事
 〃   山ノ井 利美   社団法人日本自動車工業会安全部会長


【検討結果概要】

 事故事例の詳細分析結果(別添 事故分析詳細分析結果一覧参照)を横断的に概観し、考察することにより、次の対策の必要性が明らかになった。

  1. 高齢者特性の理解 運転者に対し、高齢者の行動特性及び身体特性を理解させ、それらを踏まえた運転行動を徹底させる必要がある。

     乗合バスの車内事故では、負傷者の多くを高齢者が占めているが、高齢者は、行動がゆっくりであったり、他の乗客への遠慮から早めに席を立って降りる準備をしたりなどの行動特性に加え、身体能力の低下により車両の動揺で転倒しやすい、あるいは、転倒や座席にぶつかった場合に負傷しやすいなどの身体特性を持っている。
     したがって、自動車運送事業者は、運転者に対し、高齢者の行動特性及び身体特性を理解させ、それらを踏まえた運転行動を徹底させる必要がある。

  2. 二輪車・自転車特性の理解 運転者に対し、二輪車及び自転車の行動特性を理解させ、それを踏まえた運転行動を徹底させる必要がある。

     事例によると特にハイタクにあっては、空車時における進路変更時及び右左折時に二輪車又は自転車との衝突事故が多く発生している。
     したがって、自動車運送事業者は、運転者に対し、対視認性がよくない、安定性がよくない、すり抜けを行う、一時停止を怠る場合がある等々の二輪車及び自転車の行動特性を理解させ、それを踏まえた運転行動を徹底させる必要がある。

  3. 指導の個別対応、ヒヤリハット調査の活用 個々の運転者の運転特性を踏まえたきめ細かな指導を行う必要がある。

     多くの調査事例に共通していることであるが、個々の運転者の運転特性を踏まえたきめ細かな指導が十分でないと思慮される。例えば、適性診断結果で動態視力に問題があることや判断・動作のタイミングについて留意すべき点等が指摘されているにもかかわらず適切な指導をしていなかった等の事例が見受けられる。
     したがって、自動車運送事業者は、個々の運転者の運転特性を踏まえたきめ細かな指導を行う必要がある。その際には、適性診断結果の活用も効果的であると考えられるが、独立行政法人自動車事故対策機構ではカウンセリングの実施者に対する指導も行っているので利用するとよい。

  4. 安全確保できる運行計画・指示の徹底 実態に合った運行計画を策定するとともに運行指示を徹底し、合わせて運行経路の調査を充実させて必要な情報を運転者に提供する必要がある。

     トラックの事例は、いずれも運行指示が徹底されていなかったか又は全く指示していなかったもの等のケースが見受けられた。
     したがって、自動車運送事業者は、実態に合った適正な運行計画を策定するとともに運行指示を徹底し安全運行を確保する必要がある。

  5. 厳正な点呼の徹底・充実 点呼執行体制を確立し、点呼の意義を踏まえた厳正な点呼を実施する必要がある。

     多くの調査事例において、対面でなく電話等により点呼を行ったものが見受けられた。対面で行うことにより健康状態等が客観的に判断することができ、運行上の指示も具体的、また、かつ、詳細に行うことができる。
     したがって、自動車運送事業者は、出庫・帰庫の時間帯をカバーできるよう運行実態に応じた点呼執行体制を確立し、運行管理者及び運転者の双方が点呼の意義及び重要性を認識して安全運行に関する指示、健康状態の把握、車両の点検状況の確認等を徹底するため、形骸化させない厳正な点呼を実施する必要がある。

  6. 過労防止 運転者の過労防止を考慮する必要がある。

     調査事例の中には、日頃の睡眠不足から運転中に眠気を催していたケースや長時間の拘束が影響して居眠り運転に陥ったと判断されるケースも散見されている。
     また、高速道路での多重衝突により甚大な被害が発生した事例などで過労運転であったことが認定されており、最近では事故に至らなくても過密スケジュールで速度超過を繰り返している運転者の所属事業者を警察が摘発したケースも見受けられている。
     したがって、自動車運送事業者自らが、安全確保のために遵法意識を高めて適切な運行計画・乗務割を定め、さらに、適切な運転者指導を行っていく必要がある。

  7. IT技術の活用 IT技術の進展による運行管理支援システムの効果的活用が期待される。

     例えば、運転状況を詳細に記録することができるデジタルタコグラフは既に普及しつつあるが、これを活用することにより、運転者の労働時間の管理が確実かつ効率的に行えるほか、個々の運転者の運転特性を踏まえたきめ細かな指導が効果的に実施できる。


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