平成16年2月6日 |
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海事局外航課 |
(内線43365) |
TEL:03-5253-8111(代表) |
外航海運事業者(201社)を対象に調査を行った結果、2003年の1年間に我が国関係船舶(邦船社が所有、運航、用船している外航船舶)が、受けた海賊行為、武装強盗・窃盗等(以下「海賊行為等」という。)による被害の状況は、以下の通り報告されました。
[調査結果の概要]
(参考1)過去10年の推移[別添1](PDF形式)
被害船の中に日本籍船は認められませんでした。船籍別の内訳としては、パナマ船籍11隻、香港船籍1隻となっています。
また、被害船の中で日本人が乗船していた船舶は1隻のみでした。
(参考2)世界ベースの動向
国際商業会議所の国際海事局(IMB)によれば、2003年に全世界で発生した海賊事件件数(速報値)は、445件(2002年 370件)となっており、前年に引き続き顕著な増加傾向を示しています。
世界的には、海賊行為等により乗組員が殺されたり、行方不明になっている者の数が、2003年には、前年と比べて、約3倍(IMB報告による死者・行方不明者数:2002年が34名に対し、2003年は92名)に膨れ上がっています。また、負傷した者の数も2倍以上(同 負傷者数:2002年が38名に対し、2003年は88名)になっています。
発生海域は、例年に引き続き、インドネシア周辺海域を中心に、東南アジア海域で最多の11件となっており、全体の9割以上を占める結果となりました。
特に、カリマンタン(ボルネオ)島東岸、ビンタン島(いずれもインドネシア領)沖付近での発生が目立っています。
なお、残る1件は、インド西岸で発生しています。
(参考3)海賊被害発生場所(東南アジア海域)[別添2](PDF形式)
銃器の発砲を伴う凶悪な事案が発生
白昼に港沖でパイロットの到着を待つために漂泊(航走せずに漂っている状態)していたところ、5〜6名程度が乗り込むスピードボートがいきなり船体に横付けし、自動小銃で船橋等に向けて銃撃をしてきた事案(別添3[事例1](PDF形式))や、夜間航行中に気が付かないうちに、サバイバルナイフと銃器で武装した海賊7名が乗り込み、船内で発砲して停船を要求し、船用金や船長の私物が強奪された事案(別添3[事例2](PDF形式))が認められました。これらの凶悪なケースでは、結果的に人身への被害はありませんでしたが、乗組員は、かなり危険な状況に晒されたことになります。なお、当該銃器が使用された2件のケースにおいては、被害船に日本人船員は乗船していませんでした。
また、海賊等の携行武器としては、銃器の所持が確認されているものが2件、ナイフの所持が確認されているものが5件(うち1件は銃器と両方)ありました。
日中の大胆な事案も発生
被害は、夜間に発生しているものが多くを占めています。しかし、日中に発生したことがはっきりしているケースも2件認められ、海賊側の大胆な行動が伺える状況となっています。
航行中のケースも再発
被害時の船舶の状況としては、港の沖合等で錨泊中に発生したものが8件を占める一方で、我が国関係船舶では、ここ2年ほど発生していなかった航行中を襲撃されるケースが3件報告されています。
多く見受けられる襲撃形態としては、錨泊中又は停泊中の船舶に小型ボートにより密かに接近して、錨の鎖をよじ登り、甲板上に設置された膨張式救命いかだや甲板に設置された倉庫内の船用品(ロープ、救命胴衣、塗料等)を盗むケースとなっています。
このほか、乗組員が負傷したケースも2件報告されています。一つは、乗組員(フィリピン人)が甲板上を巡視中に、侵入した海賊と対峙する形となり、その賊から石のつぶてを投げつけられ、顔に軽傷を負ったもので、もう一つは、ナイフを所持した海賊に船内に侵入され、船長(バングラディッシュ人)がこれともみ合う中で、腕に軽傷(かすり傷程度)を負いながらも撃退したものとなっています。いずれも、軽傷は負ったものの、何も盗られずに撃退に成功しています。
さらに、乗組員が甲板を巡視中に、侵入してきた海賊と遭遇し、賊に縛りあげられた事案(別添3[事例3](PDF形式))も1件発生しています。
被害船では、ほとんどの船舶において、見張りの強化や巡回監視等の措置がとられていましたが、不幸にして被害に遭っているものです。
こうした中、海賊の侵入を見事に防いだ事例も報告されています。海賊に乗船されながらも、船内から甲板上にアクセスできる出入り口を堅固に閉鎖、施錠し、かつ、左右の船外通路も途中に合板を設置して、通行できないように閉鎖していたために、海賊が甲板上には乗り込んだものの、船内に侵入することができず、そうこうするうちに乗組員に発見されて逃走したものです。
船舶側で採られていた防御措置が功を奏したものであり、自衛策として各船においても是非実践して欲しい措置の一つとなっています。
なお、被害件数には計上していませんが、これ以外にも、海賊と推量されるボートに追尾されたり、数隻のボートに囲まれるような形となり、汽笛の吹鳴やライトの点滅等により、警戒していることを誇示したところ、離れていったいわゆる未遂事例も数件報告されています。
注1)計上されている海賊行為等による被害の件数は、現に船舶に乗り込まれたり、物品を盗まれたりした事例の件数となっており、船舶に対して直接的な接触が図られなかったものについては含まれていません。
また、調査により、関係船社等から任意に提供された事案のみ件数として計上しています。
注2)国際海事局(IMB)は、国際貿易等に関する取引慣習の統一化等を行う民間団体である国際商業会議所(ICC)の専門部局であり、海賊等海事関係の犯罪に対する防止対策等について、独自に情報を収集し、その分析等を通じて、広く海事関係者に助言を行っている機関です。
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