平成16年10月27日 |
<問い合わせ先> |
航空局航空企画調査室 |
(内線48173、48174、48186)
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TEL:03-5253-8111(代表)
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- 日時
平成16年10月26日(火)15:30〜17:30
- 場所
国土交通省11階特別会議室
- 出席者
<懇談会メンバー>(敬称略)
秋山喜久、飯島英胤、井手隆司、大橋洋治、リチャード・クー、佐藤友美子、椎名武雄、新町敏行、寺島実郎、鳥海巌、松田英三、吉野源太郎
<国土交通省>
岩崎航空局長、鈴木航空局次長、谷山監理部長ほか
- 議事概要
○ 今回は航空機の運航の安全と効率性の確保などについて議論が行われた。
○ 椎名座長の進行により、事務局から「航空技術安全行政の現状と課題」、「大都市圏拠点空港の最近の取組」、「オリエントタイ航空機による都心上空飛行」、「中越地震による航空への影響」について資料説明が行われた後、意見交換があった。
○ メンバーからの主な意見等は、以下の通り。
- 操縦士について2007年頃から団塊の世代が大量退職するとなると、操縦士の補充を短期間で達成するための考え方が必要になる。
- 中国を中心とした物流・人流の動きに大変化が起きており、今年1月から8月の日本の貿易総額に占める米国の割合が2割を下回る一方、中国を中心に台湾、香港、シンガポールを加えたグレーターチャイナの比重が3割を超えている。航空の物流・人流については大型機で一度に輸送する方式からシャトル便のように例えば100〜150席の小型機で地方空港からアジアの諸都市をきめ細かく結ぶような空港間の整備が必要になってくる。このアジア大移動時代を迎えて、空港基盤の整備と日本の国産旅客機の生産体制の充実を両輪として進めていくような航空行政が必要になることを強調したい。
- 最近、コンピューターのシステムダウンで羽田空港がブラックアウトしたが、情報セキュリティの確保が航空行政にとって非常に重要。香港新空港開港時の混乱についてもサイバー・アタック説があるように、情報セキュリティ確保の視点を重視すべきだと思う。
- 本日の説明にはなかったが、航空事故調査について最近、事故調の資料を刑事責任を問う裁判に活用するか否かで問題があった。ICAOでは事故調査の目的は再発防止にあるとして他に流用しない原則があるが、日本では業務上過失の事故について刑事責任を問うのが習慣化するなど、世界標準と日本標準は少し違っている。
- 操縦士退職者の補充について、外国人の活用があるが、これは検討すべき程度の問題ではなく、必須の課題である。しかも外国人操縦士のリクルートだけでなく、外国人操縦士の養成まで考えなくてはとても間に合わない。操縦士に限らず、整備士も含めた労働力確保の観点から、その見通しと労働条件について、どのような問題点があるのか。
- 先日、松山から羽田に到着した途端にエンジンから火が出た飛行機に乗り合わせた。比較的早い時点で機長から事態の説明があり、火は消えているので心配はないという話だったので、すぐに降りられると思ったが、結果的に40分から50分くらい地上に止まった。スチュワーデスの方が業務に非常に忠実な余り、トイレに席を立つにも機長に電話して了解を取らなければならない状況だった。そこまでやると逆に心配になってくる。あのような事態であれば、もう少しフレキシブルに客室内で対応してもらっても良かったと思った。
- 海外では、着陸して地上走行の状態に入ったら乗り継ぎで時間のない人など、ドアまで機内を移動し始める。皆がシートベルトをして着席しているに越したことはないが、厳しくやりすぎて、かえって不安をあおるようなところがあるのではないか。
- 今回の中越地震に関して、日本はあまりヘリコプターを活用したがらないところがあるように思える。米国では事件や災害があるとすぐにヘリコプターを活用するし、人の移動でも日常茶飯事のように活用している。日本ではヘリコプターの運航が規制されているのか。
- 阪神大震災の時もヘリポートをつくってからでなければヘリコプターによる救援作業はできないとの発言が当時の責任者からあった。ヘリコプターはヘリポートがないところでもいくらでもおりられるから便利なわけで、被害者を目の前にして、ヘリポートをつくってからでなければ使えないという発言に大変ショックを感じた。もう少しヘリコプターの運用をフレキシブルに考えてもいいのではないか。今回の地震も神戸の時も、マスコミのヘリコプターは何十機も飛びまわっているのに、救難ヘリコプターは来ない。被災者の心情を察すると、緊急時には一部報道用を除き、国が各社のヘリコプターを接収して救援作業に使うとかができてもいいのではないか。
- シートベルトの件は、待ち時間を減らすように改善されてきている。もたもたしているということではなく、安全を確認してシートベルトのサインが消える。その点はご理解いただきたい。
- アジア・ダイナミズムの物流の問題について、全世界の航空物流はバリューベースでは40%が空輸で動いており、アジアを中心とした物流がさらに増加傾向にある。現在、航空貨物専用機を10機所有しているが、2006年度までに13機ぐらいに増やし、中型の貨物専用機を含めることも検討している。アジア間、アジアから米国など、日本をスキップした物流を含め、積極的に準備している。例えば中部空港開港時には、アジアから中部空港経由で米国へ、又はアジアから直接米国へ飛ぶというバリエーションも検討している。
- シートベルトの件は、地上走行の間も航空機が早急に移動する場合を想定するなど、航空会社としては厳しくやっている。シートベルトのサインを消すタイミングは早い会社と遅い会社があり、欧州は比較的早い。日本の航空事情では、安全性に関するハードルを低くすることはできない。万一のことも考えた機長の状況判断が最優先されるべきだが、乗客への伝え方については、不安を与えないようにソフト面の改良を行いたい。
- 日本の航空事業は羽田を中心として行われ、羽田発着枠をどうするか、第4滑走路の2009年の完成により発着枠が40%以上広がり、日本の航空事業も大きく変化する。航空機材はダウンサイズが進み、路線毎のマーケットのボリューム、レジャーかビジネスかによって機材選択が広がるので、航空機材も増加すると思われる。一方、パイロットは2007年頃から枯渇してくる。新規会社が最も苦労しているのは操縦士であり、安全面のハードルは絶対に低くしたくない。外国人パイロットの場合でも十分に経験を積んだパイロットが必要になる。日本ではパイロットの養成機関が少なく、高品質なパイロットを養成する機関が唯一、航空大学校であるが、その再評価が必要ではないか。もう少し大量に高品質の教育が行われる機関をどのようにこれから、国、民間を含めサポートしていくかを考えることが必要。大手は全く経験のない人を自社養成で育てていくが、新規会社としてもパイロットの自社養成に取り組み、副操縦士、機長の養成は現在順調にいっているが、大手航空会社の自社養成と異なり、航空大学校の卒業生を入社させて、そこから短期間で養成できる仕組みをつくっている。航空大学校卒業生の年間70名程度では、肝心の根っこが枯渇してしまう。これをどうしたらいいか、大きな課題と認識している。我々もいよいよ基礎課程まで自社養成に入らなければならない時代、短期的にまず外国人の雇用や、加齢乗員をどうするか、もう一つは中長期的に、根っこのところをどうするか、しっかりと2009年の羽田発着枠の増枠に向けて明確にしていくことが重要であると考えている。
- 一つ疑問なのは、国産ジェット機の開発で30〜50席の小型機を想定しているのはなぜか。
- 以前に開発された飛鳥のように、本気になれば100〜200席の高性能機を開発するポテンシャルは日本にはある。
- 100席クラスの小型機はブラジルとカナダにおさえられている。
- 公共事業と国家事業には違いがある。公共事業は生活インフラを高めて国民の生活水準をいかに高めていくかだが、羽田再拡張の第4滑走路整備は、まさに国家事業であり、そこにはマーケットがある。これからはモノの国際輸送の拡大だけではなくて、人の国際交流がもっと活発化する。国家事業と決めて、財源をどう調達するかを考えないと事業に遅れが生じてしまう。国民に対してだけでなく国際信用の失墜にもなりかねない。これは計画通り、あるいは最低限の計画のデッドラインと捉えて、是非、実現の方向で進めていただきたい。コスト縮減委員会では、値下げに知恵を出していきたい。再拡張事業と航空機の安全性を考えた場合、技術革新をどのように導入するのかが大事であると感じた。技術革新を伴ったメガフロート工法が提案されたが、その評価をどうするか、また、航空機の新素材、複合材料の話があったが、日本の素材メーカーも米仏に生産拠点をおいてタイアップして、軽量化に対応している。技術革新を今後どのように空港建設や航空機開発に結び付けていくかが非常に重要であると思う。
- パイロットの育成については、今後どうするかの具体案が述べられていない。51歳から55歳までのところが第1のヤマで、これから養成しても間に合わない。その間をどうするのかの対策がないと、言葉だけでは確保できない。30歳から35歳のところの第2のヤマは今後、採用計画の中で対応できると思うが。第1のヤマと第2のヤマに対応したパイロットの確保をどうするのか。パイロットは高度な専門職であり、国際的に自由に動くので、国内だけのパイロットの需要予測だけでなく、国際的な需要予測の中で海外のパイロットをどのように育成し、雇用していくかの観点をもたなければならない。グローバルな視点からのパイロットの需要予測の中で国内のパイロットをどのように養成するのか、外国人をどう使うのか、長期的なマスタープランが必要である。
- 関西空港について、下モノは当初1兆1000億円から9000億円に縮減し、さらに8400億円に減らして、600億円原資を浮かして、上モノを整備しようということ。総予算としては以前からの金額は増えない。しかも暫定利用なので建物はつくらない。埋め立てはほぼ完成しているので、あとは滑走路を敷いてもらえれば良い状況になっている。2007年には1本目の滑走路が13年になるので、総張替えをしなければならない。現在でも週3回夜中に3時間使って補修しているが、その意味でも2本ないと国際空港として機能しない。是非2本目をつくらせていただきたい。財務、運輸大臣間の2つの申し入れのうち、1つ目の需要は、国際線はポート・キャンペーンや、航空局の指導のおかげで、1年で週100便増えて現在、週700便になっている。目標の週800便にあと2年間で達成することは、名古屋その他へ若干いくとしても十分達成可能と思う。国内線について、1日当たり40便が伊丹へシフトしてしまった。その分を取り返して、1日当たり24便増やさないと目標達成ができない。各都市からから関西空港に飛んできてもらい、関西空港から各地域へ飛んでいけるように、ハブ空港としての機能を強化しようと考えている。今、ウズベキスタンからの乗継ぎ利便が悪く、全部で5000人くらいが仁川経由で行っている。関西空港から折角、直行便があるのに利用されていないので、際内研究会で乗り継ぎ利便をどのように良くするか、各都市から関西空港に飛んできてもらい、関空空港の利便性を高めていくことにより、今後、1日当たり24便の増加を確保し、目標の年間13万回は十分達成できるだろうと思っている。現在でも既に11万回であるが、24時間運用のうち5時間は満杯で、IATAから混雑空港に指定されるほどである。財政審の結論に拘わらず、2本目の滑走路をつくらせてもらいたい。2つ目の収支については、今年度はじめて償却後単年度黒字になる見込みであり、大臣間の2つの申し入れの需要と収支についてはクリアできる見込み。関西地域の523社が関西空港利用宣言をして、出張時は関空を利用することにした。これから利用増加が期待できるので、航空会社も是非、関西空港に便を結んでほしい。
- 航空の自由化で行政側によるスケジュールの割当ては非常に難しくなったが、航空会社も空港利用者の乗継ぎ利便を良くすることは重要なこと。鉄道、道路、飛行機、船も含めた交通ネットワーク全体を国土交通省を挙げて、誰もがdoor to doorで安全に早く行けるような観点から、計画を立てていただきたい。
- A380は航続距離が長くなる。現在でも航続距離の長い航空機でハノイから直接米国へ行くような日本パッシングが始まっている。今後は余程利便性のある安い空港でなければ利用されなくなる。国家事業として、人の流れを日本に取り込む観点が必要であり、単に公共事業としてではなく、国の繁栄の基礎としての空港整備の観点から検討してほしい。
- アウトソーシングが効率性の面から推進されているが、最近の企業事故などでもアウトソーシング先から、またアウトソーシングが行われる事態で、いろいろな問題が生じている。非常に当たり前なことが見逃がされたりしているので、チェックの強化が必要である。
- 団塊の世代の問題について、東京都の教員も6万人が60歳になり退職者が増える。専門職の育成が課題。再試験で65歳まで延長が可能になるが、教育者を育成する大学が減っており、質が低下している。民間が手を出さないのは採算が合わないからだが、民間には良いソフトがそろっており、官から補助しながら、官民で力を合わせて質と量を高める検討が始まっている。航空も同様の考え方が適用できるのではないか。
- 操縦士の問題は大きい。次の懇談会の機会に対策について報告してほしい。
- 都心上空飛行について、悪意をもって飛行する場合も考えられる。米国はホワイトハウスに向かう航空機は撃墜するくらいセンシティブになっているが、日本も今回のように逸脱する飛行についてはテロ対策の視点が必要ではないか。
以上
(この要旨は速報版であり、後日、さらに詳細な議事概要を改めて国土交通省航空局のホームページで公表いたします。)
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