平成17年8月3日 |
<問い合わせ先> |
総合政策局建設業課 |
(内線24754)
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TEL:03-5253-8111(代表) |
瑕疵保証のあり方に関する研究会(座長:金本良嗣東京大学大学院経済学研究科・公共政策大学院教授)においては、昨年6月の設置以来、6回にわたって検討を行い、このほど報告書を取りまとめました。
<メンバー>
金本 良嗣(座長) |
東京大学大学院経済学研究科・公共政策大学院教授 |
卯辰 昇 |
株式会社損害保険ジャパンコンプライアンス統括部主任法務調査役 |
大森 文彦 |
東洋大学法学部教授、大森法律事務所弁護士 |
嵩 英雄 |
工学院大学工学部建築学科教授 |
北居 功 |
慶応義塾大学大学院法務研究科(法科大学院)教授 |
草苅 耕造 |
関東学園大学法学部教授 |
源長 哲司 |
三井住友海上火災保険株式会社火災新種保険部保証信用保険室課長 (※第1回〜第5回) |
柴田 哲男 |
同上 (※第6回) |
小林 康昭 |
足利工業大学教授 |
関口 潤一 |
東京海上日動火災保険株式会社財務サービス部次長 |
<開催経緯>
平成16年 6月 7日 |
第1回開催 |
平成16年 7月30日 |
第2回開催 |
平成16年10月13日 |
第3回開催 |
平成16年12月13日 |
第4回開催 |
平成17年 3月17日 |
第5回開催 |
平成17年 6月24日 |
第6回開催 |
報告の概要
<はじめに>
- 近年、ダンピング受注の横行、建設会社の厳しい経営状況等を背景に、建設工事の品質について懸念を抱かざるを得ない状況が生じているが、建設工事の品質を確保し、発注者を保護するためには、技術力のある建設業者の選定、適切な監督・検査はもとより、目的物引渡し後の担保手段として、必要十分な期間、瑕疵担保責任を問えることが必要。
- 現在の公共工事における瑕疵担保期間は、請負者の故意・重過失による瑕疵については10年、これ以外の場合は2年となっているが、発注者を保護する上で、必ずしも十分な期間ではないとの指摘もあり、瑕疵担保期間の延長について検討を行う必要。
- 建設業者の倒産が高い水準で推移している状況においては、建設業者の倒産等により、瑕疵担保責任を果たせなくなることが懸念されるため、発注者を保護するためには、第三者である金融機関等によって瑕疵担保責任の履行を確保するための保証制度を検討する必要。
- 瑕疵保証制度については、付保の段階で保証人による審査が行われることから、信用力、瑕疵発生の可能性等を審査することにより建設業者の評価、選別が行われ、ひいては、不良不適格業者の排除にも資するものと考えられるため、こうした観点からも瑕疵保証のあり方を検討する必要。
<瑕疵担保期間の延長について>
- 民法上の瑕疵担保期間(10年)、住宅における瑕疵担保期間(10年)、公共約款制定後の施工技術の進歩等に鑑みれば、ダンピング受注の増加等公共工事の品質に懸念のある今日、公共約款の瑕疵担保期間が妥当であるか検討することが必要。
- 瑕疵担保期間を延長するとした場合には、工事目的物の基本的な性能に関する瑕疵については、瑕疵担保期間を10年に延長することが適当であるが、これに影響のない部分については、従来どおりの瑕疵担保期間とすることが適当。この場合、性能に影響する部位を特定し、当該部位に応じた瑕疵担保期間を延長すべき。
- しかしながら、発注者と請負者の責任関係が明確でなく、ともすれば請負者の負担とされやすいとの指摘がある現状では、公共約款を改正して延長を一般化すると請負者に過度の負担のおそれ。
- 延長の前提としては、明確かつ客観的な瑕疵の定義付け、瑕疵の判断基準の整備、中立的な第三者機関による瑕疵の認定スキームといった条件が整うことが必要であり、これらについては、引き続き検討が必要。
- 発注者と請負者の責任関係を明確にしやすい事案等については、発注者と請負者の合意により、瑕疵担保期間の延長を検討し、実施することも可能。
<瑕疵保証制度について>
- 瑕疵保証制度は、請負者の瑕疵担保責任の履行を確保することで発注者を保護するとともに、付保時の審査により請負者を選別することで、不良不適格業者の排除につなげることも可能。
- 瑕疵保証を制度化するとした場合に考えられる制度設計は次のとおり。
- 保証対象となる瑕疵は目的物別に範囲を明確化し、基本性能的なものに限定
- 請負者が保証料を負担
- 瑕疵が発生し、かつ、請負者が倒産している場合に保証を限定
- 請負者の故意・重過失により発生した瑕疵も保証の対象とする
- 第三者による瑕疵の認定を求めた上で保証金を支払う
- 保険会社が保証主体となる制度とすることを基本とする
- 瑕疵保証期間は、例えば、当初2年間程度とし、段階的に延長
- 付保割合については、1/10を目安とする。
- 現状では、瑕疵保証のリスク、瑕疵の発生確率、瑕疵の規模、責任の所在の決まり方が不明確であるため、保証主体としても、今すぐに本格的な瑕疵保証制度を立ち上げることは困難。
- 当面は、既存の瑕疵担保特約付履行保証制度を利用し、請負者の瑕疵を認定しやすい設計施工一括発注方式の案件等において実績を積み上げていくことが現実的。
<おわりに>
- 瑕疵担保期間の延長と瑕疵保証制度の創設を実現するためには、対象となる瑕疵を工事目的物に求められる性能に応じて特定することが前提。
- 発注者と請負者の甲乙関係の片務性が広く見られるとの指摘がある中で瑕疵担保期間の延長や瑕疵保証制度の創設を行うことについては、請負者の負担の増大について懸念が多く示されたため、甲乙の責任関係の明確化と瑕疵担保責任を判断する客観的な基準の整備のための調査・検討が必要。また、真に甲乙関係が対等なものとなるよう、双方の意識改革と協議手続の明確化等の取組みを図るべき。
- 本研究会における議論を通じて、我が国における瑕疵担保責任をめぐる現状が明らかとなり、今後、発注者と請負者が明確な責任関係のもと、対等な関係で工事の品質確保に向けて取り組むべき課題が明らかに。また、直ちに制度化することは困難であるにしても、瑕疵担保期間の延長や瑕疵保証制度の創設を行う際の制度設計の概要を明らかにすることができ、これが今後の制度化に当たっての基本。
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