国土交通省
 平成15年度「河川水辺の国勢調査」結果の概要について
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平成17年1月27日
<問い合わせ先>
河川局河川環境課
(内線35442、35443)

電話:03-5253-8111(代表)


 

 国土交通省では、河川環境の整備と保全を適切に推進するため、河川における生物相を定期的、継続的、統一的に把握することを目的として、河川、ダムにおける生物調査等を行う「河川水辺の国勢調査」を平成2年度より実施しています。
 14年目となる今回は、平成15年度に実施した一級水系105水系(123河川)、二級水系14水系(14河川)と、管理中の94ダムにおける生物調査の結果がまとまりましたので概要を発表いたします。
 なお、詳細な調査結果「平成15年度 河川水辺の国勢調査結果の概要」については、当省のHPに掲載するとともに、今年度中に水情報国土ホームページ(https://www.mlit.go.jp/river/IDC/index.html)にて公開する予定です。


  1. 調査実施状況

     全国の一級水系105水系(123河川)、二級水系14水系(14河川)及び管理中の94ダム(遊水地、調節池を含む)において生物調査を実施

     河川水辺の国勢調査では、全国の一級水系及び主な二級水系の河川及び国土交通省、水資源機構管理のダムを対象に、「魚介類」、「底生動物」、「植物」、「鳥類」、「両生類・爬虫類・哺乳類」、「陸上昆虫類」、「動植物プランクトン(ダム湖のみ)」の各項目の生物調査を概ね5年間で1巡するように実施しており、平成15年度調査は、第3巡目の3年目にあたります。
     今回発表する資料は、平成15年度に実施した一級水系105水系(123河川)及び二級水系14水系(14河川)並びに管理中の94ダムにおける生物調査結果を取りまとめたものです。
     今回とりまとめを行った調査項目ごとの河川及びダム数は下表のとおりです。

    表 平成15年度調査河川及びダム

    項目 魚介類 底生動物 植物 鳥類 両生類
    爬虫類
    哺乳類
    陸上
    昆虫
    類等
    動植物
    プラン
    クトン
    合計
    河川 1級水系数 24 24 6 28 26 25   105
    (河川数) (29) (25) (6) (31) (31) (27) 123
    2級水系数 14 14
    (河川数)  (14) (−) (−) (−) (−) (−) 14
    合計 38 24 6 28 26 25 119
    (河川数) (43) (25) (6) (31) (31) (27) 137
    ダム ダム数 18 17 20 29 22 29 9 94

    ※複数の項目について調査を実施した河川(水系)、ダムがあるため、各項目ごとの河川(水系)数、ダム数の和は合計と一致しません。

  2. 生物の確認種数の状況

     河川とダムで「日本野生生物目録」等掲載種の約7割の魚類、約5割の鳥類を確認

     平成15年度の調査において確認された種数は下表のとおりです。
     河川とダムで、「日本野生生物目録」等掲載種のうち、淡水魚・汽水魚で71%、鳥類で52%、両生類で46%の種がそれぞれ確認されています。河川、ダムという限られた空間が多様な生物の生息・生育の場となっていることが分かります。

    表 平成15年度調査における確認種数

      調査項目 確認種数1 「日本産野生生物
    目録」等掲載種数2
    確認率
    12
    河川・ダム 魚類(淡水魚・汽水魚) 142(282) 200 71%
    エビ・カニ・貝類 177
    底生動物 1,075
    植物 2,730 8,118 34%
    鳥類 298 568 52%
    両生類 27 59 46%
    爬虫類 16 87 18%
    哺乳類 73 188 39%
    陸上昆虫類等 9,487 33,220 29%
    植物プランクトン 398
    動物プランクトン 144

    注)

    • 植物と鳥類を除く各調査項目は、環境庁「日本野生生物目録」の種数を掲載しています。
    • 植物は、環境庁「植物目録1987」の維管束植物の種数を掲載しています。
    • 鳥類は、「日本産鳥類目録改訂第6版」の種数を掲載しています。
    • 魚類の「日本野生生物目録」の200種は淡水魚、汽水魚が対象。確認種数1には「日本野生生物目録」に掲載されている淡水魚・汽水魚数を示し、括弧内には海水魚を含む全確認種数を示します。
    • 底生動物と動植物プランクトンは、掲載されていない分類群があるため、種数の比較は行っていません。

  3. 外来種の確認状況

     多くの外来種が河川とダムに定着し、その生息域が拡大

     外来種は、人間によって意図的・非意図的に、本来の生息域とは違うところに持ち込まれた種で、生物多様性を保全する上で最も大きな脅威の一つになると考えられています。
     下表に、河川とダムを合わせた外来種の確認種数と主な外来種※1の確認河川・ダム数の割合の推移を示しました。繁殖力が強いため、在来の魚類への影響が問題になっている雑食性のブルーギルと魚食性の強いオオクチバスをはじめとして、イネの害虫として知られるイネミズゾウムシなど多くの外来種が定着、あるいは生息域を拡大している傾向がみられます。
     外来種は、競争、捕食、病害あるいは環境の改変を通じ、在来種の存続を脅かす大きな要因となることが知られています。そのため、今後も河川水辺の国勢調査により、モニタリングを続けていくことが必要です。

    表 平成15年度調査における外来種の確認種数

      調査項目 外来種確認種数1 現地確認種総数2 外来種確認率
    12
    河川・ダム 魚類 16 282 6%
    エビ・カニ・貝類 14 177 8%
    底生動物 21 1,075 2%
    植物 294 2,730 11%
    鳥類 14 298 5%
    両生類 1 27 4%
    爬虫類 1 16 6%
    哺乳類 8 73 11%
    陸上昆虫類等 106 9,487 1%

     ※1:日本の侵略的外来種ワースト100に掲載されている種

     

    • 外来種の確認河川・ダム数の割合の推移
       平成15年度調査を実施した河川・ダムについて、主な外来種の確認河川・ダム数の割合の推移は以下の通りです。

      外来種の確認河川・ダム数の割合の推移

      ※確認河川・ダム数の割合=外来種確認河川・ダム数/調査河川ダム数

      主な外来種の確認河川数の割合

      主な外来種の確認ダム数の割合

      【コクチバスの分布状況】

       七北田川(ななきたがわ)、荒川、宮ヶ瀬(みやがせ)ダムにおいて新たに確認

       コクチバスは、1990年代に持ち込まれ、放流によって各地に分布域を拡大している種です。オオクチバスよりも低水温、流水環境を好むため、河川に生息する在来種への影響が懸念されています。今回の調査では、東日本の七北田川、荒川で新規に確認されました。七北田川では繁殖も確認されています(河北新報, 2004年10月27日)。ダム湖では、同じく東日本の宮ヶ瀬ダムで確認されました。平成13年度に矢木沢ダムにおいて確認されて以来、水辺の国勢調査のダムにおける2例目の確認となります。
       今後東日本において分布を拡大することも懸念されるため、河川水辺の国勢調査によりモニタリングを続けていく必要があります。

      確認河川数(※1)・ダム数(※2)の比較

      種類 前々回調査(※3) 前回調査(※4) 今回調査
      コクチバス 0河川 0河川 2河川
      0ダム 0ダム 1ダム

      ※1:平成15年度に調査を実施した河川のうち、平成2〜7年度の間に調査を実施している28河川における確認状況を示します。
      ※2:平成15年度に調査を実施したダムのうち、平成2〜7年度の間に調査を実施している13ダム及び平成13〜15年度の間に調査を実施した5ダムにおける確認状況を示しています。
      ※3:おおよそ平成2〜7年度に実施した調査を示します。
      ※4:おおよそ平成8〜12年度に実施した調査を示します。

      コクチバス
      コクチバス

      コクチバスが確認された河川およびダム

  4. 特定種等の確認状況

     沖縄のダムで国の特別天然記念物であるノグチゲラを確認。

     ノグチゲラは国の特別天然記念物のほか、環境省のレッドデータブックで絶滅危惧IA類(ごく近い将来における絶滅の危険性が極めて高い種)に指定されている中型のキツツキです。沖縄島北部の照葉樹林にのみ生息し、大木の幹に自分で穴を掘り、巣をつくります。枯木や倒木、地上で昆虫類などを食べ、夏〜秋にはアカメガシワ、ヒメイタビ、ハゼなどの果実を食べます。
     沖縄振興策の一環として、この地域の森林伐採、農地開発およびダム建設が実施され、生息地である天然林が減少し、分断化されてしまいました。現在は米軍北部訓練基地を中心とする地域に200つがいに満たない個体が生息していると考えられています。また、現在は従来の捕食者であるハシブトガラスのほか、外来種であるネコ、マングースが生息域に進入しており、影響が懸念されています。
     今回調査が行われた沖縄のダムのうち、安波(あは)ダム、普久川(ふんがわ)ダム、新川(あらかわ)ダム、福地(ふくじ)ダム、辺野喜(べのき)ダムでノグチゲラが確認されました。

    ノグチゲラ
    ノグチゲラ 

    【天然記念物オジロワシの確認状況】

     水辺の食物連鎖の上位種であり、また国の天然記念物でもあるオジロワシを、今回とりまとめを行った北海道、東北地方、北陸地方の一級河川・ダムのほとんどで確認。良好な水辺環境が保全されていることを示唆。

     オジロワシは、魚や水鳥を主な餌とする大型の猛禽類で、北海道で繁殖し、海岸や湖沼周辺、河川流域の大木に営巣します。冬季には越冬のため本州北部や中部にも飛来します。最近は、人間の活動圏近くで営巣するつがいが増え営巣地はやや増加傾向にありますが、反面、人為的影響も大きく繁殖は必ずしも安定していません。オジロワシは、国の天然記念物(文化財保護法)および国内希少野生動物種(種の保存法)に指定されており、また、環境省レッドデータブック(2002)により絶滅危惧IB類に指定されています。
     オジロワシは、今回とりまとめを行った河川・ダムのうち、主な生息域である北海道、東北地方、北陸地方のほとんどで確認され、良好な水辺環境が保全されていることが示唆されました。

    オジロワシ
    オジロワシ
    オジロワシの確認された地域

  5. その他のトピックス

    【分布を拡大するチョウ類の確認状況(地球温暖化)】

     ナガサキアゲハを中部地方の天竜川と矢作川で初めて確認。地球温暖化の影響による分布拡大の可能性を示唆。

     ここでは、近年の地球温暖化に伴い分布域を拡大していると考えられている昆虫類のなかでも、大型で目に付きやすく、追跡確認の比較的容易な暖地性のチョウであるナガサキアゲハを取り上げ、その分布動向を整理しました。
     河川水辺の国勢調査によって、ナガサキアゲハが中部地方から確認されたのは今回が初めてで、天竜川と矢作川の2河川で記録され、調査結果からは、ナガサキアゲハが分布を拡大する傾向が認められました。文献による国内の記録では、本種は1920年代までは四国南部、九州以南に分布していたものが、1980年代初頭には近畿地方、1997年には静岡県浜松市まで生息域が拡大し、2000年までに神奈川県、埼玉県内でも目撃されるなど、この20年あまりで急速に北上を始めたことがうかがい知れます。なお、近年の研究では、本種の北上の経過と各地の気温の相関関係を分析し、年間の平均気温が15度程度に上昇すると、ナガサキアゲハの分布がみられるようになると報告されています。(山梨県環境科学研究所,2001)

    確認河川数の比較 (対象河川:27河川)

    種類 前々回調査(※1) 前回調査(※2) 今回調査
    ナガサキアゲハ 9河川 5河川 12河川

    ※1:平成4年〜7年、※2:平成8年〜12年

    • ナガサキアゲハ
       ナガサキアゲハは、開(翅)長約94〜113mmの大型のアゲハチョウで、幼虫は栽培ミカン類各種を好んで食草とし、ときにカラタチやヒラミレモンを食すこともあります。成虫は食草の関係もあって人家周辺に多く生息し、ツツジ類やユリ類、ネムノキなどの花で吸蜜します。九州以北では通常蛹越冬で、蛹は食草の枝、付近の塀や軒下などで見られます。近年、国内では分布域の北進拡大が最も顕著な昆虫類のひとつといえます。

      ナガサキアゲハ
      ナガサキアゲハ(♂,沖縄本島産)

      ナガサキアゲハの確認された地域


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