平成17年8月16日 |
<問い合わせ先> |
海事局国内旅客課 |
(内線43402、43432) |
TEL:03-5253-8111(代表)
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- 8月12日(木)14時より、国土交通省海事局10階会議室において、第3回「旅客船事故原因分析検討会」が開催された。議事は次のとおり。
(1)有識者委員プレゼンテーション
伊藤 耕二 |
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川崎汽船株式会社研修所主任講師(船長) |
小林 弘明 |
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東京海洋大学海洋工学部海事システム工学科教授 |
野尻 良彦 |
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独立行政法人海技大学校教授 |
吉田 公一 |
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独立行政法人海上技術安全研究所研究統括主幹 |
(2)中間とりまとめイメージ(案)審議
- 議事概要
有識者委員4名のプレゼンテーションが行われた。要旨は以下のとおり。
また、事務局から第2回検討会で提示した※「中間とりまとめイメージ(案)」を審議した。
※)「中間とりまとめ」については、事務局の取りまとめ案をもとに委員およびオブザーバーから意見をいただいて整理を行うこととしており、議事概要は公表せず、整理終了後の対応とさせていただきます。
なお、次回は、8月24日(水)14時より開催の予定。
○ 有識者委員プレゼンテーションの要旨
- 〔伊藤 委員〕「BRM/BTMへの取組み」
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- BRM(ブリッジ・リソース・マネジメント)は操船指揮者が船橋において入手可能なすべての資源を適切に管理し、船舶の安全運航のために有効に活用しパフォーマンスを高めるシステム。
- BTM(ブリッジ・チーム・マネジメント)は船橋内でともに操船に携わるスタッフがチームメンバーとしてトータルパフォーマンスを高め、安全運航を達成するシステム。
- パフォーマンスを高めるためにはメンバーが職務の目標、価値観、判断基準、情報を共有し、連携、補完、状況監視しながら、分担された機能を完遂することが必要。
- 安全管理システムへBRM/BTMを取入れ、手順書、指示書等で具体的に明示することが必要、現場に具他的に示すことでヒューマンエラーの防止に役立つ。
- 輻輳海域や視界制限等、航海の難易度が高くなりヒューマンエラーが発生しやすい状況でBRMが必要となる。
- BRM/BTM研修では、意識改革、自己確認に重点を置き、各自の役割、チームのパフォーマンスを確認し不足点、補強点等を知ることができる。これにより、船員の知識技能等の質的相違を連携・補完し、エラーを誘発する要因を除去し安全の向上を図ることが出来る。
- 研修には自社の安全管理システムに精通したインストラクターの確保が必要で、操船シミュレーターの活用、自社の訓練目的にあったシナリオの開発、実際の船橋要員でのチーム構成による反復訓練が有効。
- 〔小林 委員〕「船舶の安全運航とヒューマン・ファクター−海技者の役割の視点からー」
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- 船舶運航の安全性は、船舶の運航条件が与えられた時、その環境を安全に航行するために必要とされる技能と海技者の発揮し得る技能との大小関係で安全性の度合いが決定。
- 近年安全運航の実現のためにBRM/BTMの必要性が指摘されている。大洋中における単独当直の状況では、安全な航行が達成されているが、船舶が輻輳し航行の困難度が増加すると安全な航行が単独当直では維持できない状況となる。このような時船長はチームを組んで当直にあたり安全を確保する。
- BRM/BTM訓練の目的はチームが発揮する技能を維持するための技能習得にある。
- 研究結果によれば、海技者に要求される技能は、見張り、船位測定、操縦、機器取扱、情報交換、法規遵守、計画、非常事態対応、管理の9項の要素技術に分類される。
- ヒューマンファクターが議論の対象となる時、不注意とか疲労・居眠りあるいはヒューマンエラーがたびたび指摘される。これらの事項は前述の海技者の取得すべき技能とは異なり、技能を発揮するためのベースの問題である。
- 疲労・居眠りは肉体的健全性の不完全性に該当し、不注意とヒューマンエラーは精神的健全性の不完全性に大きく依存すると考えられる。
- 船舶運航システムは多くの要素により成立。その総合体が必要とする機能を全てカバーし安全が担保される。安全を担保する上で必要な機能とは何か、そして各機能はどのサブシステムが分担することが合理的であるかを議論することが重要。
- 船舶の運航環境は、他の交通機関に比べ自由度が大きいために安全運航に果たす海技者の機能が占める割合が多く、海技者への依存度が高い。海技者の技能即ち達成可能な機能範囲で安全が担保できる環境造りと、海技者の技能を明確にすることが必要。
- 船舶の安全運航を探求する時、その真の原因を求めることが重要。それと共に現在行われている対策がどの原因についての対応であるかを明確に把握することも重要。
- ヒューマンファクターに関する議論は事故と災害の発生に起因して行われる。そのために、ヒューマンファクターの議論は事故原因調査と密着し、結果としてヒューマンエラーに関する議論へ進むこととなる。しかし、真に事故や災害の防止を探求するためには、事故原因の究明は交通システムとしての機能の完全性を確認することが必要。
- 〔野尻 委員〕「船舶でのヒューマンエラー防止について−特に教育訓練について−」
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- 事故を契機に安全性が重視されるがやがて効率が優先される。
- 単一の故障やエラーで事故は発生せず、深層防御の壁の穴を抜けて事故は起こる。壁の穴が発生する背景要因がある。
- 「モニタリング⇒問題解決⇒実行⇒モニタリング⇒」といったオぺレーションサイクルは、航空機・自動車等の運動系のものに比べて、原子力・船舶機関部等のプラント系は比較的ゆっくり回転している(船橋での操船はこの中間と考えられる)。従ってこの特性を有効に活用すべきである。例えば、スキルベースの行動をルールベースの行動に立ち返って実施することも安全性確保のための一方法である。
- ヒューマンエラーを「うっかり型」と「確信型」エラーに分類すると、過去の事例から確信型エラーが重大な事故を引き起こしている。
- うっかり型エラーは、目標構造をシンプルにする、環境を改善する、自己モニタリングの習慣をつける、要所要所で確認作業をする等の目標と行為のズレを少なくすることで防ぐことができる。
- 確信型エラーは、認知不安状況(わけのわからない状況)に陥らないために知識を整理し統合できる能力を養うこと、状況を理解するための情報を得やすい環境を作り複数の運転員でその状況を共有することで防ぐことができる。
- 確信型エラーにはまったら、自力での脱出は不可能、チームワークの修正能力を使う。
- ETM(エンジンルーム・チーム・マネジメント)訓練は、グループパフォーマンスを向上させ、誤り訂正機能を強化し、協調作業のメリットを生かす能力を養う訓練である。
- 船員安全教育・訓練については、教育機関に安全教育の専門家を配置、育成し、繰り返し教育訓練することなどが重要。
- 〔吉田 委員〕「旅客船の安全−IMO〔国際海事機関〕の動向からの考察−」
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- 1980年代から1990年代のタンカー事故、バルカー事故、客船事故を受け船舶の設備要件、運航要件だけでは不十分で安全管理体制が必要とのことからISM〔国際安全管理〕コードが導入された。
- ISMコードによる安全管理システムは、管理する船舶の実態、その運航形態にあわせて作られる。安全管理のための手順・方法を文書化し、安全運航を文書化したものに従って確認する。システムを絶えず確認・評価し、向上させる。船舶の安全確保は船上の職員と陸上の職員との共同作業である。
- ISMコードの導入による安全管理システムは、船舶の実際の運航形態や運航会社の実態に見合って確立すればよい。画一的な内容のものではない。
- IMOでは、船上の職員の疲労やニヤミスへの対応について人的要因に対する考慮をしている。
- IMOではさらに、強制・非強制の規則等を検討する際、人的要因に対する考慮を確認するためのチェックリストを導入、IMOの人的要因に関する戦略・プランの確立など、人的要因を取入れるための様々な検討を行っている。
- 客船の安全運航については、安全の達成は、運航会社、船員、造船者、管海官庁、乗客、荷主の共同作業。
- 安全文化(safety culture)は、安全へのゆとり、経済活動との調和の上に成り立つ。
- 安全文化のプロモーションは管庁の責務であろう。
○当検討会の構成
座長 |
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村山 義夫 |
財団法人海上労働科学研究所主任研究員 |
有識者委員 |
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伊藤 耕二 |
川崎汽船株式会社研修所主任講師(船長) |
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小林 弘明 |
東京海洋大学海洋工学部海事システム工学科教授 |
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野尻 良彦 |
独立行政法人海技大学校教授 |
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吉田 公一 |
独立行政法人海上技術安全研究所研究統括主幹 |
関係団体委員 |
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馬越 洋造 |
全日本海員組合沿海局長 |
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笠木 義男 |
社団法人日本旅客船協会労海務部長 |
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高松 勝三郎 |
日本長距離フェリー協会副会長・業務委員長(代理) |
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田中 護史 |
独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構技術支援部長 |
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堤 義晴 |
社団法人日本外航客船協会 |
オブザーバー |
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外航課長 |
永松 健次 |
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国内旅客課長 |
岡田 光彦 |
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安全基準課長 |
安藤 昇 |
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安全基準課安全評価室長 |
池田 陽彦 |
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検査測度課長 |
澤山 健一 |
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船員政策課長 |
村上 玉樹 |
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船員労働環境課長 |
後藤 洋志 |
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海技資格課長 |
羽尾 一郎 |
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首席海技試験官 |
富倉 邦彦 |
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海上保安庁交通部安全課長 |
露木 伸宏 |
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高等海難審判庁海難分析情報室長 |
西村 敏和 |
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事務局 |
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国内旅客課運航監理官 |
矢野 秀樹 |
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国内旅客課課長補佐 |
片山 敏宏 |

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