国土交通省
 送電線への航空障害標識設置に関する改善方策について
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平成17年2月15日
<問い合わせ先>
航空局管制保安部保安企画課
航行視覚援助業務室

(内線51173)

TEL:03-5253-8111(代表)


 

 航空局においては、平成16年3月長野県南木曽町で発生したヘリコプター墜落死亡事故を踏まえ、学識経験者等からなる「送電線等の航空障害標識のあり方検討会」を設置し、送電線への航空障害標識設置に関する改善方策について検討してきました。
 今般、検討会の審議結果を受け、別添の「送電線への航空障害標識設置に関する改善方策について」をとりまとめ、今後これに基づき所要の措置を講じてまいります。


別添

送電線への航空障害標識設置に関する改善方策について

  1. はじめに
     平成16年3月7日長野県南木曽町でヘリコプターが昼間障害標識が設置されていない送電線に接触して墜落し4名が死亡する事故が発生した。(参考資料1参照)
     当該事故の重大性に鑑みて、安全当局として今後の送電線への航空障害標識(航空障害灯及び昼間障害標識の総称、以下同じ。参考資料2参照)の適切な設置指導を進めていくため、「送電線等の航空障害標識のあり方検討会」(参考資料3参照)を設置し、送電線や小型機の実態調査等を行い、送電線への航空障害標識設置の改善方策についての検討を進めてきた。

  2. 検討結果
    (1)航空障害標識を設置すべき送電線の特定
     小型機の運航実態を把握したうえで、パイロットが航空障害物件として意識するものの特徴と把握方法等についてヒヤリングし、その結果に基づき、送電線への航空障害標識の設置が必要な地区及び送電線を特定した。
    1)送電線への航空障害標識の設置が必要な地区
    1山間部
    1 運航実態調査結果によれば、小型機が選択する飛行経路のうち悪天候時にも飛行する谷間・峠については、雲高が低下した等の場合には雲とのクリアランスを確保するため低い高度で飛行する。
     このため、これらの谷間・峠を含む飛行経路下にある全国100箇所余りの地区(別添1)に昼間障害標識を設置することが適当である。
    2 山間部では、特別なミッションの場合を除き一般的には谷間を夜間飛行することはなく、また、夜間に飛行する場合の峠越えにあたっては峠との間に十分なクリアランスを確保した高度で飛行するため、山間部の送電線には夜間に視認できる航空障害灯の設置は必要としない。

    2海上部
     海上部は、
    1 山間部・平坦部と異なり騒音等の制約もないことから飛行高度を下げやすいこと。
    2 海岸部は天候不良時の代替経路として利用することが多いこと。
    3 パイロットは、飛行中に上下左右の感覚を失うことを恐れ、島を目標に飛行すること。
     等の特徴があり、また飛行空間として自由に選択し昼夜を問わず飛行することから、海上部は、送電線への航空障害灯及び昼間障害標識の設置が必要な地区とすることが適当である。

    (参考)
     平坦部は、送電線への航空障害標識の設置は必要としない。
    1 山間部と異なり見通しのよい視界が開けた地区に送電線及び送電鉄塔が設置されていること。
    2 小型機は基本的には鉄塔の上空を飛行すること。
     から主要な鉄塔に設置されている航空障害灯及び昼間障害標識により送電線の存在を認識できる。

    2)上記各地区の航空障害標識の設置が必要な送電線
    1山間部
    1 小型機が有視界飛行方式で山間部を飛行する場合には地上目標物である主要な道路(高速道路を含む。)、主要な河川、主要な鉄道等(以下、「主要道路等」という。)沿いを飛行することから、パイロットは主要道路等と交差している送電線を障害物と感じている。(パイロットは主要道路等と平行方向に架設されている送電線は障害物としてあまり意識していない。)
     よって、上記の特定された地区において小型機の航行の障害となると考えられる主要道路等のいずれかと交差している送電線(586件)には、原則として昼間障害標識を設置することが適当である。
    2 但し、峠越えの地区では、山に接近しやすい峠頂部付近を除き送電線より高 いところを飛行するため、峠周辺の裾野等低いところに位置する送電線については、昼間障害標識の設置を省略することができる。
    3 また、複数近接している送電線への昼間障害標識設置については、送電線の立地条件等も踏まえた運航関係者等の判断により、一部を省略することができ る。

    2海上部
     海上に架設されている送電線が小型機の航行の障害となることから、陸域と沖合いの島を結ぶ送電線及び島から島へ渡っている送電線(67件)には、原則として航空障害灯及び昼間障害標識を設置することが適当である。
     但し、複数近接している送電線への標識設置については、送電線の立地条件等も踏まえた運航関係者等の判断により、一部を省略することができる。

    (2)代替措置を含む航空障害標識の標示方法
     昼間障害標識及びその代替措置について、視認性評価実験等を踏まえ分析検証を行った結果に基づき、次によることが適当である。
    1 送電線への昼間障害標識(球形標示物)の設置方法は赤と白又は黄赤と白の交互設置とする。
    2 送電線への昼間障害標識の代替措置として、別添2のとおり鉄塔に航空障害灯(高光度または中光度白色の灯火)または昼間障害標識(黄赤と白の塗色)を設置する。

    (3)送電線等の航空障害物件情報の提供方法
     小型機の航行の安全を確保するために、各電力会社等は航空障害標識の設置を促進するとともに、航空局はパイロットが必要とする送電線に関する情報(位置、海抜高、標識の有無、径間長)の提供を行っていくこととする。

    (4)航空障害標識設置調整会議(仮称)の設置
     次の事項について検討及び調整等を行う場として学識経験者、運航関係者、物件設置者、行政当局等で構成する「航空障害標識設置調整会議(仮称)」を常設することが適当である。
    1 今後の飛行経路の変更、パイロットからの気になる物件情報の提供に対応した航空障害標識設置の必要性、標識の設置方法等
    2 今回特定した送電線への航空障害標識設置の進捗状況等の報告

  3. 今後の取り組み方針
    (1)航空法施行規則改正等
     上記検討結果に基づき、今後速やかに標識の設置が必要な地区の指定及び設置困難な場合の代替措置を基準化する航空法施行規則の改正等を行う。

    (2)航空障害標識の設置指導方針
    1 小型機の航行の安全を早急に確保する観点から、各送電線等の設置者に対して、航空障害標識を速やかに設置するよう指導し、該当物件への設置計画を4月末までに報告するよう指導する。
    2 設置工事期間は、概ね3年以内にほぼ完了すると想定している。但し、超高圧送電線鉄塔に航空障害灯を設置する場合には、近傍の低圧配電線から電力を供給する必要があるため、給電経路を確保するための地元説明・用地買収等に不測の期間を要することもあり得る。

    (3)情報提供
     各電力会社等から報告があった送電線に関する基礎データ(位置、海抜高、標識の有無、径間長)について、運航関係者団体を通じて速やかに提供し、傘下のパイロットに周知徹底を図り、航空の安全に万全を期すよう要請する。

    (4)航空障害標識設置調整会議(仮称)の設置
     今回特定した送電線への航空障害標識設置の進捗状況等の報告・周知を行うために、平成17年度から航空障害標識設置調整会議(仮称)を設置し、適切な対応を図る。


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