平成17年7月15日 |
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航空機安全課 |
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7月11日(月)10:00より、国土交通省会議室(3号館8階国際会議室)において開催された第2回「航空輸送安全対策委員会」において、各議題について委員及びオブザーバーから出された主な意見等は以下のとおり。
(1)安全上のトラブルの詳細分析
・ 高度計のトラブルに関しては、実際には存在しない第3の系統に接続していたと誤解するなど、パイロットの資質や教育の問題が見受けられる。実際の高度が計器に表示された高度と異なっていたとしても、操縦特性などで違和感があったのではないか。パイロットの資質・教育について見直す必要があるのではないか。
⇒ 本トラブルについては、機長が冷静に判断すれば、問題がある状況に気付くことができたと思われる。また、副操縦士についても、計器表示に疑問を持ったにもかかわらず、確信が持てず適切に対応できなかったことから、コミュニケーションの問題もあったと思われる。これらの問題を大いに反省し、教育・訓練や業務のあり方についても検討していきたい。(航空会社)
・ マニュアルについては、パイロットがシステムを十分理解していることを前提(Knowledge Based)に作成されていることから、システムが複雑になるほど正常な状態から逸脱したときの対応が困難になるのではないか。どの程度、マニュアルについてKnowledge BasedからRule Based(手順をきめ細かく規定する方法)にしていくか、マニュアルのあり方を考えていくべき。
⇒ 正常な状態から逸脱したときには、まず、パイロットは自分たちの置かれた状況を正確に認識する必要があり、乗員訓練の基本的な部分である。マニュアルについては、細かな事まで規定してしまうと弊害があり得るので、そのような面からも手順が適正なのか検討していきたい。(航空会社)
・ 公共交通にとって、定時性は追求すべきことだと思うが、それを過度に追求した場合、安全性に影響が出てJR西日本のような事態につながるおそれがある。航空会社でも、定時性を追求したため安全性に影響が出ているという認識があるのか。
⇒ 定時性は大事だが、安全が確保されていることが大前提であり、エアラインの最大のサービスであるという認識。そのような教育を社内でも行ってきていることから、定時性確保による安全性への影響はないと考えている。(航空会社)
⇒ 当社も定時性は重要と考えているが、安全性が大前提であるという認識。定時性と安全性は通常は両立するが、極端に定時性が優先された場合に安全性が低下するおそれがあるため、再度「安全性が大前提である」ことを末端まで再確認した。なお、本委員会の資料において、幾つかのトラブルについて分析が行われているが、「客室乗務員の非常口操作忘れ」のトラブルについて、客室乗務員自体については、「定時性のプレッシャー」というよりも、お客様優先ということに気が取られ、その対応に追われたことによる「時間的ストレス」があったものと認識している。また、新千歳の管制指示違反についても、「定時性のプレッシャー」というよりも、天候不良等による「時間的プレッシャー」があったものと認識している。(航空会社)
・ 定時性確保に関し、積み重ねている作業工程に無理が生じていないかは、これを機に航空会社として改めて検証すべき。現場の最終判断を経営から営業まで含めて尊重する社内風土になっているのか。乗客に対しても理解を得る努力をしているのか。遅延・欠航の部署だけを責任追及するような社内風土になっていないのか。他社と同時刻出発が現場のプレッシャーになるなら、調整してはどうか。
⇒ 便間の作業工程が問題なく行われていることの点検を行った。今後も内部監査等の仕組みの中で点検していく。定時性に関するデータを取っているのは、無駄な遅発が起きないような仕組み作りや再発防止に繋げるためのものであり、責任部署を追及するためではない。また、上記のような観点から正確なデータを把握する必要があり、もし定時性のために作業に無理を生じていることがわかれば、業務のあり方やダイヤについても必要に応じて変更しており、今後も継続していく考えである。(航空会社)
⇒ 事業改善命令を受けたあと、対策の一つとして役員を中心に安全キャラバンを展開し、現場と話し合う場を設けたが、その際、現場からの意見の一つに定時性の問題があったことから、現場の意見に沿う形で見直しを行っている。(航空会社)
(2)最近の航空会社を取り巻く環境・現場が認識する問題点
・ 米国同時多発テロ以降、業界としての自助努力が求められ「安全」への認識が結果として希薄化したのではないか。業績目標やコスト削減の数値にくらべ、安全施策や投資は職場に浸透しなかったのではないか。
・ 現場から情報が出にくくなっているというのは、社内の処罰・不利な扱いに繋がるのではないかという懸念や先輩・後輩との職場の関係などの影響があるのではないか。また、最近のマスコミによる報道を受け、情報を出すことに対しセンシティブになっているのではないか。
・ 航空会社の安全に関する情報は乗客の関心が高いことから、情報開示は重要であり、処罰の問題とは別の問題である。ただ、最近のマスコミの報道については、本来であれば大々的に取り上げるまでもないものまで取り上げているなど、価値判断を誤っている場合もあるかもしれない。
(3)各航空会社の現状の取組み
・ 感覚的ではあるが、海外に行くのに日本の航空会社を選んでしまうのは日本の航空会社は安全だと感じているからだ。前回、日本の航空会社における機材不具合の発生割合は海外航空会社に比べて低いという説明があったと思うが、比較論としてパイロットの資質についてはどうか。米国では自家用、ジェネアビ、軍、リージョナル、大手エアラインというパイロット階層による競争があるが、日本ではそれがない。運航乗務員の資質・教育・採用は、欧米に比べてどうか、考察しておわかりだったら教えていただきたい。
⇒ 我が国のパイロットの養成体系は欧米に比べて脆弱であり、米国で500、欧州主要国で各国100程度のパイロットスクールがあるのに対し、日本では数ヶ所しかなく、そのうち航空局が指定養成施設として指定しているのは一つだけである。従って、競争しながらパイロットを選んでいくというメカニズムは我が国では働かない。このため、高い倍率のもとで選抜した人に対し航空大学校や航空会社の自社養成を通じて高度の教育を与えている。単純な比較はできないが、パイロットの資質が低いとは考えていない。また、航空大学校・自社養成ともに、落とすべき人は落とし、適性のない者をふるいにかける仕組みとなっている。(航空局)
⇒ 我が国の航空会社の事故率は、長い期間で見れば大型機も小型機も北米と同等である。この結果から見れば、パイロットの資質が北米に比べて落ちるとは思わない。ただし、最近の一連のトラブルについては、事故に至らないようにしっかり対応していきたい。(航空局)
・ 航空会社の自発的報告制度とはヒヤリハットのようなものを報告するのだろうが、説明のあった年間20件というのは少なすぎるのではないか。他分野の事業所の例では、年間数千件もの報告があって多すぎるから困るということを聞く。本人がヒヤリハットに気付かない場合と、気付いていても報告できない場合があるだろう。気付いたら報告して下さいという仕組みだけでなく、本人が気付く能力を持たせるための教育などが必要ではないか。
⇒ 処分につながるという懸念や報告様式を作成することが面倒という理由で報告が出ないということはあっても、運航乗務員等はきちんと教育されていることから気付かないということは考えづらい。(航空会社)
・ 組織事故を防ぐため、多重防護システムを機能させる必要がある。要因・背景を分析し、防護壁に穴を開けるものを排除するよう、予防的安全確保が必要である。そのためには、安全文化、特に報告する文化を構築するとともに、自発的報告制度を機能させることが重要であり、そのための免責についても検討が必要。
(4)今後の検討課題
・ 航空局の航空会社に対する監視体制の充実、監査能力の向上を図るととともに、一方、運航の当事者である航空会社も自らの状態を監視することが重要であり、航空会社としても引き続き社内監査の体制を充実していく必要がある。
・ 「航空会社に対する監査・監督のあり方」について、海外の事例の調査やICAO等外国とのコミュニケーションを強化するといったことを追加してはどうか。
・ 「航空会社の安全文化の構築」について、安全文化の構築とは、安全に対する価値・意識の向上ということだけでなく、企業内の風通しを良くするとか、コミュニケーションを良くするということを入れるべき。
・ 「航空会社の安全文化の構築」に定時性へのプレッシャーの話を入れるべき。
・ 「安全情報の収集・分析の強化」に情報収集を行える環境(情報の出しやすさ)を入れるべき。
・ 航空会社における業務は、そもそも時間との戦いであり、運航・整備ともにプレッシャーを感じないということはないはず。時間的プレッシャーを感じながらどのように正確に仕事をするかが重要であり、そのための訓練のあり方についても検討が必要。
なお、次回委員会の日程については、調整の上、後日報告することとなった。
本委員会資料につきましては、航空局ホームページ内に掲載いたします。アドレスは以下のとおりです。
http://www.mlit.go.jp/koku/04_outline/08_shingikai/13_anzentaisaku/index.html
別紙
(敬称略)
(委員) | ||
池羽 啓次 | (社)日本航空機操縦士協会 専務理事 | |
金子 敦 | (財)日本航空機開発協会 常務理事 | |
河内 啓二 | 東京大学大学院工学系研究科 教授 | |
清水 信三 | 航空連合 会長 | |
首藤 由紀 | (株)社会安全研究所 取締役 | |
ヒューマンファクター研究部 部長 | ||
田中 敬司 | 独立行政法人宇宙航空研究開発機構 評価・監査室長 | |
鶴岡 憲一 | 読売新聞 東京本社 編集委員 | |
宮澤 與和 | 独立行政法人宇宙航空研究開発機構 | |
航空安全技術開発センター長 | ||
山内 純子 | 全日本空輸(株) 執行役員 客室本部長 | |
渡利 邦宏 | (社)日本航空技術協会 講師 | |
(50音順) |
(オブザーバー) | ||
松本 武徳 | (株)日本航空 常務取締役 | |
大前 傑 | 全日本空輸(株) 代表取締役副社長 | |
井手 隆司 | スカイマークエアラインズ(株) 取締役副会長 | |
坂尻 敏光 | (社)全日本航空事業連合会 専務理事 | |
越智 信夫 | (財)航空輸送技術研究センター 専務理事 |
(航空局) | ||
鈴木 久泰 | 航空局次長 | |
谷山 將 | 監理部長 | |
遠藤 信介 | 技術部長 | |
桝野 龍二 | 監理部総務課長 | |
宮下 徹 | 技術部運航課長 | |
高岡 信 | 技術部航空機安全課長 | |
高橋 和弘 | 技術部乗員課長 |
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