平成17年8月5日 |
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7月28日(木)10:00より、国土交通省会議室(3号館8階国際会議室)において開催された第3回「航空輸送安全対策委員会」において、各議題について委員及びオブザーバーから出された主な意見等は以下のとおり。
(1)安全対策に係る諸外国の動向について
- ○ 安全管理システム(SMS: Safety Management System)について
- ・安全管理システム(SMS)のPDCA(Plan・Do・Check・Act)サイクルについて、一般的に、P(立案)は可能でも、D(実施)からは事業者の負担するコストが大きな課題となり、これを定着させるためには国としての方策が必要になると思うが、この点についてどう考えるか。また、諸外国はどのように定着を図っているのか。
- ⇒一般的に、国際基準に沿った規制の強化が行われているが、このような場合、航空会社の安全対策に係る費用について国は負担しない。(航空局)
- ⇒国際基準に基づいた最低(Minimum)基準以上の取り組みであるSMSに関しては、これまで行政は積極的に求めてきたわけではなかった。今後その導入を進めるためどういう形で国が関与していくかについては、検討すべき課題と考えている。(航空局)
- ・SMSを導入することによって、航空会社がどのように変化するのか。
- ⇒SMSは、安全に携わる各部門長だけでなく、経営トップが、リソース配分を含め、安全に積極的に関与することに力点が置かれているものである。(航空局)
- ・これまで航空会社では、各安全部門では様々の対策を行っているが、経営が全体としての安全像を持っていないという印象がある。これを機に、トップが関与して事故を起こさない体制を確立していくために、安全対策の優先付けや安全投資規模など日本型SMSを作っていく必要がある。
- ⇒日本におけるSMSの導入に関しては、現在、国土交通省全体として、鉄道やバスも含めて、行政がどのように関与していくか議論しているところである。(航空局)
- ⇒当社では以前からSMSを導入していたが、最近の安全上のトラブルを受けて、これが十分に機能していなかったと反省している。今後、SMSを完全なものへ改善するよう対応していきたい。(航空会社)
- ・従来から行っている対策と整合・融合せずにSMSのような新しいものを導入すると、現場の負荷が増加してしまうという懸念があるが、諸外国で現場からそういう声が上がっているという事例はないのか。
- ⇒当局のガイドラインに沿って導入されてきているところまでは調査で判明しているが、導入後どんな問題が発生しているかについては情報がない。(航空局)
- ⇒豪州では詳しいガイドラインが策定されているが、そのなかでは、中小企業には中小なりのSMSを導入していくべきとされており、我が国にSMSを導入するに際しては、よく検討したい。(航空局)
- ・SMSでは、不安全要素を様々な手法であらかじめ把握し、それを分析し、適切に対処するという基本的な施策をしっかりやることが重要とされている。すでに航空会社ではある程度取組みを進めているものと認識しており、より良いシステムの構築について今後よく検討することが必要である。
- ○ 自発的安全報告制度について
- ・自発的安全報告制度は、アングロサクソン系の国ではうまく機能しているという印象だが、これら以外ではうまくいっているのか。
- ・米・英ではかなりの情報が集まっているが、他の欧米諸国ではまだ発展途上という印象である。民族や文化の特性で欧米諸国がうまくいっているということではなく、むしろ、ICAO等でも議論されているとおり、情報の保護や免責が重要であって、我が国でも今後十分に検討する必要がある。
- ○ ヒューマンファクター訓練について
- ・諸外国におけるCRM訓練のカリキュラムについて、我が国のものとの違いはあるのか。
- ⇒もともとCRM訓練は、NASA・大学・ユナイテッド航空などが共同で開発したものであり、それを日本の航空会社も導入したという経緯がある。「人的なもの、情報に関するものなど全てのリソースを効率的に使って事故を防止する」という点については世界的に共通であり、訓練の内容も同様のものと考えられる。(航空局)
(2)取り組むべき課題について
- ○ 課題1「航空会社の安全文化の構築」について
- ・安全文化の構築に向けた対応策が航空会社へのSMSの導入だけでは絞りすぎているのではないか。安全文化とは、国全体の取組みとして、官民共同により安全で安心して暮らせる社会を構築していくということであって、それを冒頭で明確に述べる必要があるのではないか。
- ・「安全文化の構築」という壮大なテーマに対して、解決策がSMSだけに特化している。「安全文化とは国・航空会社・利用者など航空に携わるもの全員が取り組んで確立していく」という趣旨を頭書きにした上で、課題1の対策の表題をSMSとすればよいのではないか。
- ・マスコミ等を通じて安全の重要性について利用者の理解を得るなど、業界に加え国が関与していくべきこともある。それを含めての安全文化であり、SMSは一つの手法である。
- ・客室の立場からは、安全の重要性がお客様になかなかご理解いただけないという状況がある。政府広報でのアピールなど、利用者への啓蒙活動などを強化していただきたい。
- ⇒安全文化についての表現振りについては、緊急に取り組むべき措置としてはSMSの導入とするが、それが安全文化の構築に向けた対応の全てではないいう形のとりまとめにしたい。(航空局)
- ・「中間とりまとめ」には前文が付くのだろうから、そこに包括的に航空文化の話を入れれば、違和感がないだろう。
- ・降雪時の新千歳の管制指示違反の事例などを踏まえると、安全上のトラブルの潜在的要因として挙げられている「定時性のプレッシャー」は、定時性の確保を含めた意味での「時間的な制約」という表現の方が妥当かと思う。また、パイロットや整備士などの航空従事者の大量退職が見込まれているが、予防的な安全対策を担当する間接部門の安全技術者の確保についても、要員の確保・養成が重要であることを追加すべきではないかと思う。
- ・「定時性のプレッシャー」は、現場の声として挙がっている以上、具体的要素として残しておく必要がある。また、「経営トップから現場までが組織的に取り組んでいく体制を構築」の前に「信頼関係に基づく」を追加すべき。
- ⇒「定時性のプレッシャー」という言葉は、事業改善命令に対する回答で使われている表現の引用。「信頼関係に基づく」については、書きぶりを修正したい。(航空局)
- ○ 課題2「安全情報の収集・分析の強化」について
- ・報道から一般利用者にこれだけの多くのトラブル情報が提供されているにもかかわらず、成田・羽田が旅行者で混雑しているという状況からみて、正しい報道なのかと思うことがある。例えば一発エンジンが停止しても航空機は大丈夫な設計となっており、諸外国では離陸後の引き返しなどはあまり報道されない。一般の人が正しく理解できるよう、情報提供の質を高めることが成熟した航空社会につながるのではないか。
- ・専門の記者が育っていないのも事実であるが、航空関係者からの説明も適切に行っていただきたい。どの航空会社がどの程度安全という評価が利用者に十分提供されていない。また、情報提供者の保護が必要な一方で、法令違反などの情報そのものは的確に出すことが必要である。
- ・航空局が航空会社を格付けするというのは、市場の操作になり、また、元の情報も恣意的になる恐れがあるから、別の機関がやらないと非常に危険である。また、小さな事象でも報道されているということは、ある意味で、航空安全に対する社会の関心が高く、航空業界が危機感を持って安全に取り組んでいるということかもしれない。
- ⇒「迅速」「正確」「明確」な説明という点で、情報を出す側としても反省すべき点がある。ただ、航空会社の安全性について国が評価を公表すべきかということについては、例えば、過去にも外国政府との関係で問題となったり、統計の期間の取り方で評価が変わったりするなど、非常に難しい問題である。(航空局)
- ・航空会社の格付けを、国にお願いすべきではないと思う。第三者機関として、例えば航空保険会社は比較的正確に見ているから、報道機関も注目してほしい。
- ・自発的に報告された情報については、その秘匿化について検討が必要。ヒヤリハット情報などは、制度化すると逆に出にくくなる可能性もあるので、情報の収集が安全性向上にとって重要ということをよくアピールした上で、具体的な情報の保護・秘匿化の方法について早めに検討すべきである。
- ⇒ヒヤリハット情報の数が欧米に比べて少ないのは、社外に情報を出すことに抵抗感があるなど、いろいろ困難な課題がある。今後、情報提供者に対しインセンティブを与えるなどの検討が必要である。その際、行政処分を低減すべきという考えがあるが、一方で我が国には、厳正に処すべきという意見があるのも事実で、双方のコンセンサスをとることが難しい。(航空局)
- ・行政処分の低減レベルについては、各モードで並びをとることも必要である。また、自発的報告について、ハードのモニタリング機能を使った自動収集システムのようなものが利用可能かどうか検討してはどうか。
- ・予防的対策については、ヒヤリハットの自発的報告による情報が全てではなく、事故報告、重大インシデント報告、機長報告、機材不具合報告、各種の監査・モニタリングなどによる様々な情報も活用していくことが重要である。
- ・安全情報の収集・分析について、官がより積極的に関与するにあたっては、官民の人事交流などで、より現場に近いところが行うというやり方もあるかと思う。
- ⇒米国において、FAAでなくNASAが収集するとした経緯として、行政処分当局が関与すべきではないという議論があった。安全情報の収集・分析の実施主体については、よく考えて行きたい。(航空局)
- ・客室乗務員も自発的報告の対象とすることについて検討してはどうか。
- ⇒米国のASRS(Aviation Safety Reporting System)においては、客室乗務員なども対象となっており、我が国においても、運航乗務員だけではなく、客室乗務員や整備士などにも範囲を広げることを検討していきたい。(航空局)
- ○ 課題3「訓練のあり方の見直し」について
- ・課題3「訓練のあり方の見直し」で、整備のヒューマンファクター訓練には、運航乗務員の訓練への導入が検討されているTEM(Threat and Error Management)のような概念がないが、整備の現場においては、エラーが起きそうな状況を認識する感性の向上が重要であり、そのための訓練が必要なことから、整備についてもTEMの概念の導入を進めていくことは重要なことである。
- ○ 課題4「マニュアルの見直し」について
- ・本課題のマニュアルの見直しは大切な話であるが、他の課題との並びで見ると特定され過ぎている。また、対策案として各航空会社間でのBest Practiceの共有とあるが、これはマニュアルの見直しに限定される話ではなく、他の課題でも役に立つこと。
- ⇒課題の表現を見直したい。(航空局)
- ○ 課題5「航空会社に対する監督・監査の強化」について
- ・国が航空会社に対して監督・監査を強化するにあたっては、監査担当職員の能力向上だけでは不十分であり、第1回委員会において、米国FAAとの職員数比較に関する説明があったが、質・量ともに充実が必要と言えるのではないか。
- ⇒質の向上はもちろん、量についても充実させることを検討している。文章の書きぶりは修正したい。(航空局)
なお、第4回委員会の日程については、調整の上、後日報告することとなった。
別紙
(敬称略)
第3回航空輸送安全対策委員会 出席者
(委員長) |
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河内 啓二 |
東京大学大学院工学系研究科 教授 |
(委員) |
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池羽 啓次 |
(社)日本航空機操縦士協会 専務理事 |
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金子 敦 |
(財)日本航空機開発協会 常務理事 |
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清水 信三 |
航空連合 会長 |
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首藤 由紀 |
(株)社会安全研究所 取締役 |
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ヒューマンファクター研究部 部長 |
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鶴岡 憲一 |
読売新聞 東京本社 編集委員 |
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宮澤 與和 |
独立行政法人宇宙航空研究開発機構 |
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航空安全技術開発センター長 |
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山内 純子 |
全日本空輸(株) 執行役員 客室本部長 |
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渡利 邦宏 |
(社)日本航空技術協会 講師 |
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(50音順) |
(オブザーバー) |
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松本 武徳 |
(株)日本航空 常務取締役 |
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浅野 登 |
全日本空輸(株) 総合安全推進室長 |
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井手 隆司 |
スカイマークエアラインズ(株) 取締役副会長 |
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坂尻 敏光 |
(社)全日本航空事業連合会 専務理事 |
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越智 信夫 |
(財)航空輸送技術研究センター 専務理事 |
(航空局) |
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岩崎 貞二 |
航空局長 |
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遠藤 信介 |
技術部長 |
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桝野 龍二 |
監理部総務課長 |
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宮下 徹 |
技術部運航課長 |
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高岡 信 |
技術部航空機安全課長 |
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高橋 和弘 |
技術部乗員課長 |

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