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 第2回「不動産の証券化に係る鑑定評価とデユー・ディリジェンスの
 あり方に関する検討委員会」の結果について

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平成18年7月6日
<問い合わせ先>
土地・水資源局
地価調査課

(内線30362、30323)

TEL:03-5253-8111(代表)


 

 第2回「不動産の証券化に係る鑑定評価とデユー・ディリジェンスのあり方に関する検討委員会」が平成18年6月29日(木)に開催されました。
  議事要旨は以下のとおりです。

デュー・デリジェンスとは、投資家が投資判断を行うに当たって必要となる調査全般を指し、対象不動産に関する法的調査、経済的調査、物理的調査を包括するものですが、本検討委員会では特に鑑定評価とエンジニアリング・レポートに焦点をあてます。

<委員等>
 座長 緒方瑞穂   不動産鑑定評価部会長・(株)緒方不動産鑑定事務所代表取締役
 委員 磯尾隆光 (株)谷澤総合鑑定所東京事務所副所長
  北山慶 ムーディーズ・ジャパン(株)代表取締役
  楠浩一 (株)竹中工務店FM部デユー・ディリジェンス担当副部長
  角南基亮 アジア航測(株)土壌・水環境事業部長
  野口咲也 あおぞら銀行信用リスク管理部鑑定部長
  野村修也 中央大学法科大学院教授
  町山公孝 (株)イーアールエス専務取締役
  松村徹 (株)ニッセイ基礎研究所金融研究部門不動産投資分析チーム上席主任研究員
  山下誠之 (財)日本不動産研究所東東京支所兼研究部参事
 専門委員 廣田裕二 「アスベストと鑑定評価に係る検討委員会」座長
(財)日本不動産研究所環境プロジェクト室長

<第2回委員会の主な内容>

  1. 議事

    (1)第1回委員会で指摘された論点の整理(事務局)
    (2)個別論点の検討
     以下3つの論点に関連して、まず、楠委員、松村委員、野村委員から発表があり、これをもとに意見交換が行われた。
    論点1 鑑定評価書とERの責任の範囲――専門家はどこまで責任を果たすことができるのか
    論点2 鑑定評価等の適正性を担保するための方策
    ――地価上昇局面でデュー・ディリジェンスの中立性維持のために何が必要か
    論点3 証券化に関わる専門家の連携の可能性
    (3)質疑・討論

  2. 主要な指摘事項

     委員からの論点に関わる主な指摘事項は以下のとおりである。

    (1)鑑定評価書とERの責任の範囲――鑑定評価書、ERに求められるものは何か。

    (ERに対して求められるもの)

    • この2年間、回転ドアからエレベーターまで、実物不動産に関する一連の事故があった。不動産は見えないリスクの集合体である。ERの精度を向上させ、見えないリスクを見えるようにしてもらいたい。

    (鑑定評価書に求められるもの)

    • 最近、かなり強気の鑑定評価書もあるが、100人いれば100通りの評価もあり得る。高額鑑定も見解の相違とは言えるが、一概に悪いとはいえない。「速い(仕事が)、安い(フィーが)、高い(評価額が)」が求められ、保守的評価をする鑑定業者は仕事をとれなくなる構造も否定できない。
    • 鑑定評価が依頼者の影響を受けるのはむしろ当然であり、その上で評価書に期待することは、第一にどのような前提で評価したものか、第二にERをどのように反映させたのか、明記することである。例えば違法建築について、鑑定士に細かいことは分からない場合もあるが、コストにどのように反映したのか等、記載されていない評価書も多い。ERを参考にしていない場合は、その事実を記載してほしい。
    • 証券化のスケジュール上、最終版の鑑定評価書で判断することは少ないが、暫定版であっても、価格決定のプロセスは重視しており、全てチェックしている。
    (鑑定評価書の責任の範囲に関連して)
    • 鑑定評価に際しては、ER等他の専門家の調査結果から事実確認をし、さらに市場の情報を検証し、最終的な価格意見を形成するが、事実確認をどこまで行えるか、というと限界がある。依頼者である運用会社等から資料を入手するしかない。また、例えば過去の賃料等価格に影響のある情報であっても、依頼者が持っていないものもあり、事実確認ができた範囲で適正な価格を出すことが基本となる。
    • 実際、鑑定評価は、完全な情報を得た上で、ではなく、「一定の」調査結果によって行われている。
    • 物件取得競争が過熱している状況で、不動産取引は、全ての事情が明らかにならなくとも行われる。例えば、土壌汚染調査は、物件取得後に行う場合も多い。このように鑑定時点で専門家の調査結果がない場合、鑑定評価書として出せるのか、という問題もある。
    • 金融機関内部の担保評価においては、不明なことがあれば利回りで考慮し、その要因が除かれればこれを除くが、このような対応が鑑定評価一般に適用できるかどうかは、議論の余地がある。

    (2)鑑定評価等の適正性を担保するための方策
       ――地価上昇局面でデュー・ディリジェンスの中立性維持のために何が必要か

    1)鑑定評価書とERに求められる品質実現のための基礎条件(実務ルール、業者の内部管理体制等、情報へのアクセス等)に関連して

    (ガイドライン等の実務ルール)
    • ERに関する(社)建築・設備維持保全推進協会等のガイドラインは、調査項目は示したが、調査の方法論は統一していない。例えば地震リスクについてみると、各社のデータベース等の違いにより、結果は異なってくる。
    (データベース等の必要性)
    • 鑑定評価の品質を向上させるためには、多数の鑑定評価の結果から賃料やキャップレート等のデータベースを構築し分析・検証すれば、恣意性も排除でき、鑑定評価書の説明能力も向上させることもできる。ERについても同様に、再調達原価等コストに関わる情報は重要であり、これを分析し、ERを検証することも重要である。
    • 価値の評価の本格的なチェックは誰にでも出来るものではない。そのために信託銀行等はデータベースに投資しているが、これはトップ企業でないと不可能であり、同じ業界内でもレベルは一様でない。
    (鑑定業者のガヴァナンス体制)
    • 鑑定業者として、データベースの他、実務上、社内のコンプライアンスを強化し、評価書作成、審査、決裁等の、社内ルールを徹底することも重要である。
    (専門家による情報へのアクセス)
    • 土壌汚染については、守秘義務の制約から情報開示できないことも多く、データベース構築も困難である。CSR (Corporate Social Responsibility)の認識の向上と、強制的にでも引き出す方法の検討が必要である。
    • 米国では国や自治体が汚染情報をもっており、誰でもアクセスできるときく。土壌汚染情報が公開されていないのは、日本人の国民性ではないか。
    • 日本でも変わってきてもおかしくない。特に健康被害に関わるような情報は公開されるべきである。

    2)問題のある鑑定評価書、ER等を市場からいかに排除するか
    (専門家の不正行為の監督)
    • 専門家の不正行為については様々なパターンがあるが、例えば公認会計士の不正のように、多数の被害者が存在しても被害者が必ずしもバーゲニングパワー(交渉力)をもたず市場規律が働きにくい場合、行政による制度的な封じ込めが必要である。証券化における鑑定士やER作成者の場合も、この類型に当たる。
    • 専門家の民事責任の強化は、自己規律強化のインセンティブにはなるが、不正の排除には不十分である。REITを組成するプレーヤーは、皆、鑑定士等の専門家が作成したものを基礎にしており、市場の中に専門家の責任を追求するようなステークホルダーがいないのではないか。
    • ER作成者全体を監督対象とすることは過剰規制になると考えるが、例えばREIT関連業務に関与するためには、公共的な団体に登録し、品質管理状況をチェックし勧告を行う、といったことは考えられないか。当該団体はER作成に関する準則を設け、同時に、ER作成者は自ら品質保証システムを構築し、それを年次報告書のように開示すること等も考えられる。
    (情報開示と市場による監視)
    • REITに関しては、鑑定評価書もERもウエブでみられるようにすることが望ましい。その際、その「有効期限」も開示すべきである。
    • 鑑定評価書等の全面開示は難しいにしても、鑑定評価に関する開示情報を多くする必要がある。担当鑑定士名を公開すれば、不当鑑定の抑止力にもなるのではないか。
    • 裁判等において事件性がある場合、個人名を伏せることはありうるが、一般の場合は、鑑定士名の公開の検討も可能ではないか。開示の一要素として、業者のガヴァナンス体制といった周辺情報の開示も重要だ。
    • 内部データベースを作成していても、生情報については守秘義務があり、公表可能なのは加工情報となる。
    • 国土交通省には、是非(不動産に関わる)データベースをオープンにしてほしい。ただ、生データを出すのは難しいのではないか。
    (投資家保護と投資家の自己責任)
    • 一般投資家は、仮に情報が開示されても判断できないということを大前提にしているからこそ、一般投資家に代わる行政が必要となり、証券取引等監視委員会はいわばこの役割を担っている。この委員会でもプロ対プロの世界は度外視し、REITのようなものについての方策を検討対象とすべきではないか。
    • 日本では投資家保護目的で規制を強化する意見もあるが、米国では、ERの作成について特に参入資格はなく、ER作成者の選定は、依頼者の考え方をよく理解しており信頼できるところに発注するのが、リスクが少ないとの考え方のようである。投資家保護は、専ら金融市場監督機関の担当分野である。
    (依頼者・利害関係者の意識とリテラシーの向上)
    • 米国でERの質に関心を有するのは、融資銀行・保険会社や、物件取得者、投資家、所有者等の利害関係者である。このような利害関係者は、米国材料試験協会(ASTM)の基準等に関わらず、関心の高い項目については詳細調査を要求しERの項目にも追加するが、それに見合う費用と時間も負担する。不動産証券化協会(ARES)ではERに関する講座も設けているように、日本ではプレーヤーを教育し、彼らのERに対する要求水準をはっきりさせる必要がある。
    (金融行政との関係)
    • 不動産は既に金融商品化されており、金融庁や日銀の方で不動産の評価にも重点をおき、金融機関等の指導を強化していただきたい。また、REITについては、常にどこかのREITに検査に入っているぐらいに検査を行ってほしい。
    • 鑑定評価をよく見ている金融機関のチェック体制、受益権を扱う信託銀行を厳格に指導すると効果がある。
    • 「信託検査マニュアル」は、鑑定評価書やERを見ているか、ということは問うているが、それらの中身をひとつひとつ検証し直すようなことまでは要求していない。
    • 投信法上重要な位置づけになっている「特定資産の価格調査」において、形式的な確認手続きではなく、評価の中身や鑑定評価の発注の仕方等もチェックするなど、機能するようにできないか。公認会計士による監査上のインタビューを強化すれば、鑑定評価の適正化に有用ではないか。

    (3)証券化に関わる専門家の連携の可能性

    (不動産鑑定士とER作成者のコミュニケーション)

    • 鑑定士とER作成者が直接会う機会を作ることは重要である。通常、依頼者にも頼みにくく、そのような機会がない方が多いが、ER等を読んで想像で結論を出すのは危険であり、鑑定士は依頼者に煙たがられても粘り強く必要な確認を行うべきだと思う。
    • 例えば土壌汚染等については、価格に大きな影響を及ぼす場合もあるが、調査に時間と費用がかかるため、何らかの調査は行っても完全な調査は行なわれない状況で鑑定評価を行うことが多い。このため、評価に当たっては、調査を行った他の専門家とのコミュニケーションの場があることが望ましい。
    (依頼者とのコミュニケーション)
    • 鑑定士とER作成者ともコミュニケーションも必要であるが、むしろ依頼者とのコミュニケーションも図る必要がある。物件を買いたい人、目利きがつける値段と、不動産鑑定士が第三者の中立的意見として示す鑑定評価額が食い違うことは当然ありうる。依頼者との見方の違いについても、十分な情報開示のもと、よく議論する必要がある。実際、真摯に鑑定士といっしょに議論が進められる場合もある。

<今後の検討の進め方>
 次回委員会は8月下旬―9月に予定しております。詳細が決まり次第、お知らせ致します。

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