メニューを飛ばしてコンテンツへ進む
サイト内検索

 管制業務監査報告書の概要
 −管制業務の現状と今後の安全対策について−
ラインBack to Home

平成18年2月24日
<問い合わせ先>
航空局管制保安部
管制課

(内線51212、51225)

TEL:03-5253-8111(代表)

 

 平成17年4月29日の羽田空港での閉鎖滑走路への誤指示事案、8月16日の新潟空港での管制承認伝達が遅れる事案等、管制業務の手続き面でのエラーが相次いで発生した。このようなヒューマンエラーへの取り組みについて根本的に見直しを行い、「人間が行う以上エラーはあり得る」ことを前提とした対策を行う必要があることから、昨年10月に全国の管制機関を対象に業務監査を行い、今後の安全対策全般について広く検討を行った。その概要は以下のとおり。

  1. 管制業務の現状と問題点
    (1)実地監査結果
    1管制承認の発出のあり方
     レーダー網の整備により、取扱機数が多い羽田、大阪、関西、那覇の4空港では、あらかじめ空港管制機関と管制部が管制承認の内容について調整し、国際線等を除く出発機から管制承認の要求があった際に、従来逐一行っていた空港管制機関と管制部との間の管制承認に係るやりとりを省略(下図において、AとBを省略)し、航空機毎の航空交通管制部との調整を簡素化した管制承認発出手続きを実施。
    (参考)通常の管制承認の流れ
    2管制官の連携
     エラー防止のためには管制官の連携が不可欠であるが、自分の業務や訓練監督を行いながらの他の管制官をモニターするには限界がある等、管制官同士が連携してエラーを防止する体制としては不十分な状況。
    3訓練研修体制
     管制官は、異動のたびに業務資格を取得する必要があることから、訓練を行う必要があり、18年2月1日現在、全国で254名(定員の約14%)の管制官が各現場において訓練中。
     管制官の訓練は、訓練監督の資格を有した管制官(訓練監督者)の指導、監督の下に業務を行いながら行われるが、管制官の効果的・効率的な訓練を行うために必要な訓練監督者が不足。

    (2)調査結果
     管制官の記憶や経験に基づくエラーの発生事例は次のとおり。管制官がエラーしても、直後に自ら気づいたり、パイロットからの確認や他の管制官からの指摘により、訂正または適切な措置をとっており、安全上の問題に至らず。
    • 便名/DBC(レーダー用トランスポンダーコード)の言い間違い等
    • 管制承認の伝達や管制許可の発出遅れ
    • 滑走路・誘導路番号の言い間違いや指示間違い 等
     ちなみに、米国においても、管制承認等の未発出等の手続き面でのエラーは、管制機関に対し報告を求めておらず、データの収集や公表はせず。

  2. 安全対策
    (1)業務の実施方法及び体制の見直し
    1類似した便名の解消等
     類似した便名の航空機と取り違えて誤った指示が伝達された場合は、安全上の問題につながる可能性があることから、実際に便名をつける航空会社と言い間違いの要因について分析を行い、同一時間帯の類似便名の解消する等抜本的な対策について18年度中を目途に具体化。
    2管制承認伝達業務の簡素化
     羽田等4空港において行っている簡素化した管制承認発出手続きは、未発出・発出遅れの防止や遅延軽減に寄与していると思われることから、取扱機数の多い空港から順に今後2年間で可能な限り展開。
    3飛行場支援機能の具体化
     システムによる支援が十分でない飛行場管制業務に係るエラーを減少させるため、管制承認未発出時における警告表示等の飛行場支援機能について、諸外国の実施状況も含め調査のうえ、20年度を目途に具体化。
    4各官署における業務資格取得のための訓練等
    ア.訓練監督者要件の見直し
     十分な訓練を行うための訓練監督者の不足に鑑み、業務意欲・能力の高い管制官を訓練監督者とすることで効率的・効果的な訓練実施が可能となることから、経験年数要件を見直し関係規定を改正。
    イ.航空保安大学校における研修期間の延長
     航空保安大の管制官養成課程のうち大卒程度が対象の専修科について、交通量増大・管制システム高度化に対応するため、現行6ヶ月の研修期間の延長を遅くとも航空保安大の移転(20年4月)にあわせ具体化。
    ウ.IT教育システムの活用
     厳しい要員体制の下では、管制機関に配属後、岩沼研修センターでの研修参加が困難な状況。同センターでのより効率的な要員育成のため、現地官署での十分な事前学習等と研修後のフォローアップを可能とするIT教育システムの活用について更に教育内容等の検討を進め、可能なものから順次具体化。

    (2)フェイルセーフの更なる充実
     昨年来、航空を含む運輸各部門においてヒューマンエラーが背景と見られるトラブルが相次いでいることから、安全性の向上を図り、国民の信頼を回復するため、国土交通省では今国会に「運輸の安全性向上のための鉄道事業法等の一部を改正する法律案」を提出。 
     同法案では、安全優先意識の形骸化、経営・現場間及び部門間の意思疎通・情報共有の不足等の問題意識の下、運輸事業者に対し輸送の安全を確保するための取組みの強化を求めており、安全管理規程の作成、安全統括管理者の選任等を義務化。
     航空局としても、直轄部門における安全管理体制の強化を図るため、昨年11月に本省及び現場機関に安全推進委員会を設置し、トップ主導による自律的・継続的な安全確保を最重要事項として取組み中。
     また、ICAOにおける航空安全管理制度(SMS:Safety Management System)に係る関連附属書(航空交通業務関係を含む)の改正等が予定されており、管制業務についても19年度を目途に同制度を導入すべく具体化。
    1パイロット等との交流の更なる充実
     エラー防止の観点から管制官とパイロットとの間の連携を一層強化するため、これまでの運航方式等に関する意見交換に加え、ヒヤリ・ハット等に係る合同の事例研究の実施や日常の交信における確実な意思確認の方法等意見交換を行い、ヒューマンエラーを減少させるシステム作りを促進。
    2管制官の連携強化
     他管制官の使用周波数モニター等によりエラー防止に努めているものの、限界があることから、勤務体制の見直しによる繁忙度に応じたきめの細かい要員の再配置ができないか、早急に検討を行い結論を得る。
    3TRM(Team Resouce Manegement)の充実
     管制官が連携してヒューマンエラーを防止しチーム全体の能力を高めるためのTRM研修(他人とのコミュニケーションが不可欠なゲーム・討議等を通じチームワークの重要性を認識させる研修)について、岩沼センターでのTRM研修の参加者拡大を図るためコース再編を行うとともに、将来的には、TRMの知識・経験を有する教官を養成し各管制機関に配置して各管制機関において定期的なTRM研修を可能とする等、TRMを充実。
    4「航空管制安全情報」の活用
     日本航空907便事故後の再発防止策の一環として、管制官のヒヤリ・ハット情報の共有のため導入された「航空管制安全情報」は、事例報告が十分ではなく、また発生状況等が具体性に欠け、事例研究のために活用することは難しいとの意見もあるため、管制官からのより積極的な報告を促し、また、分析内容の具体性を高め、改善策に関する提言を追加すること等により、より具体的、実効的なものとするよう早急に検討。

    (3)人事のあり方の抜本的見直し
     人事の硬直化(長期在籍)によるコミュニケーションの不足等、組織の活性化を阻む要因を解消し、意欲と能力のある者が活き活きと働けるよう、人事のあり方について18年度中に抜本的に見直し、19年度から順次具体化。
     また、安全確保のためには執務環境や健康状態も重要な要素。そのための機器・施設等の充実やメンタル面を含む健康管理のあり方についても検討。

おわりに

 国土交通省では、運輸事業者に安全への取組みの強化を求める法案を今国会に提出している。我が身を顧みるに、航空交通の安全確保は航空局に課せられた最大の使命であり、管制官の業務は公権力を行使する責任の重いものである。事業者に求めるのと同様、安全意識の浸透、安全文化の構築をこれまで以上に図っていかなければならない。
 管制業務は、レーダー、システム等最新の技術を駆使することにより管制官の負担を軽減することは可能であるものの、最終的には約1900人の管制官の判断、指示に依存せざるを得ない業務である。各管制官は強い責任感と誇りをもって、日夜職務に当たっているが、人間が行う以上エラーを皆無にすることは不可能と言わざるを得ない。このため、ヒューマンエラーをできるだけ少なくするよう努めるとともに、発生した場合であっても安全を脅かすことにならないようなフェールセーフを確立する必要がある。
 我々は、このような認識に立って、航空の安全を確保することを最優先とし、国民から信頼される管制業務を一日も早く構築するよう全力を尽くしてまいりたい。


 PDF形式のファイルをご覧いただくためには、Adobe Acrobat Readerが必要です。右のアイコンをクリックしてAcrobat Readerをダウンロードしてください(無償)。
 Acrobat Readerをダウンロードしても、PDFファイルが正常に表示されない場合はこちらをご参照下さい。

アクロバットリーダーホームページへ
(ダウンロード)

ライン
All Rights Reserved, Copyright (C) 2006, Ministry of Land, Infrastructure and Transport