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ソロモン諸島地震津波に関する緊急現地調査報告(速報)

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 ソロモン諸島地震津波に関する緊急現地調査報告(速報)

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平成19年4月18日
<問い合わせ先>

港湾局

 国際・環境課国際企画室

(内線46552)
TEL 03-5253-8111(代表)
独立行政法人港湾空港技術研究所
 津波防災研究センター

 

  1. 調査概要
     2007年4月2日5:40頃(日本時間),ソロモン諸島沖(南緯8.6°,東経157.2°,気象庁4月2日発表)で発生したマグニチュード8.1の地震による津波はソロモン諸島に大きな被害を及ぼした.独立行政法人港湾空港技術研究所は,来襲津波や被害実態を明らかにするために,2007年4月10〜15日の間,ソロモン諸島に以下に示す緊急調査団を派遣した.
     今回の緊急調査では,震源近くにおいて大きな被害のあった,ギゾ島,シンボ島,ベララベラ島,ラノンガ島およびニュージョージア島を対象にして,津波の痕跡を測量することにより来襲した津波の高さを明らかにするともに,住民からの聞き取りから津波の来襲状況を把握した.

  2. 調査団
     独立行政法人 港湾空港技術研究所 津波防災研究センター
     上席研究官 富田孝史 (団長)
     主任研究官 有川太郎
     研究官 辰巳大介

  3. 調査行程
    4月9日(月) 日本出発
    4月10日(火) ソロモン諸島ホニアラ到着.ソロモン諸島防災管理局(NDC,National Disaster Council)と事前打ち合わせ
    4月11日(水) ニュージョージア島ムンダに到着.ムンダを調査
    4月12日(木) ギゾ島ギゾに到着
        シンボ島タプライおよびベラビリを調査
    ラノンガ島ケアラおよびピエヌナを調査
    ギゾ島サエラギおよびギゾを調査
    4月13日(金) ベララベラ島パラマタ,レオナ,イリンギラおよびボヌヌを調査
    4月14日(土) ギゾ島ティティアナ,ニューマンダおよびマラケラバを調査
    4月15日(日) ソロモン諸島防災管理局に調査結果報告と今後の協力について打合せ
    4月16日(月) ホニアラ出発
    4月17日(火) 帰国

  4. ソロモン諸島の概要
     図1ソロモン諸島の位置

     図−1にソロモン諸島の位置を示す.ソロモン諸島は,南太平洋のメラネシアにある島々(島嶼群)で構成されている.首都は,ホニアラであり,国全体では約55万人が暮らしており,今回被害の大きかったギゾ島では約7000人が住んでいた.

  5. 地震の概要
    図2震源位置

      図−2に,USGS(U.S. Geological Survey)が発表した,平成19年4月2日にソロモン諸島において発生した地震の震源を示す.震源地は,南太平洋・ソロモン諸島(南緯8.6°,東経157.2°)であり,地震の規模を示すマグニチュードは8.1であった.

  6. 数値計算
     今回の地震津波の概要を把握することを目的として,津波伝播に関する数値計算を実施した.(参考とした断層モデル:http://www.geo.tsukuba.ac.jp/press_HP/yagi/EQ/20070401/ ) 図−3および図−4は,それぞれ津波が伝わる様子および最大津波高の分布を示している.
     ソロモン諸島の中でも津波の波源から北東側に位置しているギゾ島,シンボ島およびチョイソル島などの島々では,地震発生時から数分〜十数分後には大きな津波が来襲し,甚大な被害が発生したと考えられる.
    図3計算結果

    図4計算結果
     実際に被災直後の報道等によると,ギゾ島,シンボ島で被害が著しく甚大で,インフラの復旧および食料の不足などの早急な国際支援が必要であることが報道された.

     そこで,独立行政法人港湾空港技術研究所は,来襲津波や被害実態を明らかにするために,被害が甚大であったギゾ島を中心に緊急調査団を派遣した.

  7. 調査の結果
    7.1全体の概要

    図5浸水高さおよび遡上高さの調査結果図6浸水の高さと遡上高さ

     ソロモン諸島全体における調査結果としては,以下に示すようである.

    • 図−5に津波による浸水高さおよび遡上高さをまとめた結果を示す.図中の棒グラフ上に赤線で示されているものが遡上高さを表し,青線が浸水高さを示している(図−6参照).平均の浸水高さは3〜5mであり,さらには局所的であるものの最大9mの津波の遡上高も認められた.
    • 多くの島々からなる国において,各島の住民まで津波情報を伝達するシステムが無かった.
    • 多くの人が津波から避難することができた.そのほとんどは津波を見てから避難を開始したが,前面が浅い海域で津波の進行速度が遅いこと(水深5mで時速25km)と,海岸のすぐ背後に丘があって高いところに短時間で逃げることができたことから,助かったと考えられる.
    • 住居の破壊は,地震動,津波力,引き波および地盤の洗掘(写真1)により引き起こされた
    • ソロモン諸島の伝統的な住居である高床式住居が津波被害の軽減に寄与したと考えられる.地震による損傷を免れた高床式住居は津波にも耐えて残った(写真2).ただし,高床式であっても壁部分に津波力がかかると押し流されたものもあった(写真3)

      写真1津波による洗掘で損傷した建物(ニューマンラ) 写真2津波に耐えた高床式住居(ティティアナ) 写真3津波に流された高床式住居(イリンギラ)

    7.2各調査地点の概要
     以下に,各島ごとにおける主要な調査結果を列挙する.

    • ギゾ島の南東海岸には,平均的には4m程度(津波来襲直前の海面を基準とする)の津波が押し寄せた.ただし,局所的には,6mの高さまで這い上がった場所があった.この津波により,ティティアナ村,ニューマンラ村,マラケラバ村は壊滅的な被害を受けた(写真4,5)写真4ギゾ島ティティアナ 写真5ギゾ島マラケラバ

    • シンボ島の北端のタプライ村では,5mの津波が押し寄せ,村のほとんどの家屋は押し流された.局所的には9mの高さまで津波は這い上がった(写真6)写真6シンボ島タプライ

    • ベララベラ島では,西海岸で被害が大きく,平均的には3m程度の津波が押し寄せた.イリンギラにおいては局所的に地面から3mの高さまで浸水した.
    • ラノンガ島ピエヌナでは,2mの地盤の隆起があっため(写真7),津波被害はほとんど無かった.ただし,崖崩れ(写真8)など地震被害は大きい. 写真7地盤隆起により海面上に現れたサンゴ礁 写真8地震による崖崩れ

  8. 今後の課題等
    • 今後のソロモン諸島における防災上の課題としては,津波情報の住民への伝達,高床式住居を地震に強い構造にすることなどが挙げられる.
    • 今回の調査結果をソロモン諸島防災管理局に報告し,さらに今後,港湾空港技術研究所は津波計算等に協力することとなった.
    • また,今回の津波は多くの島々に来襲しており,大きな被害があった,チョイソル島,モノ島等の調査が今後必要であると思われる.

 

謝辞
 今回の調査を実施するにあたり,ソロモン諸島防災管理局,現地在住のMr. Yukio SATO,Mr. Yoshiyuki SATO,並びに国土交通省及び外務省の関係部局に多大なる協力と有益な情報を賜りました.ここに記して謝意を表します.

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