- 1.問題の所在とこれまでの取り組み
- (1)環境基準等の国の施策
- 昭和50年7月、環境庁から「新幹線鉄道騒音に係る環境基準について」が告示された。
地域の類型 | 基準値(単位:dB) |
I | 主として住居の用に供される地域 | 70以下 |
II | 商工業の用に供される地域等
I 類型以外の地域であって通常の生活を保全する必要がある地域 | 75以下 |
昭和51年3月に、騒音対策の基本事項を定めた「新幹線鉄道騒音対策要綱」が閣議了解され、政府が一体となって問題解決に当たり、環境基準の早期かつ円滑な達成を図るべく発生源対策、建物に対する障害防止対策、沿線地域の土地利用対策の諸施策を推進することとされた。
一方、その後の環境基準の達成状況を踏まえて、暫定的な対策として、住宅密度の高い地域から積極的な発生源対策の実施により、騒音レベルを当面75デシベル以下とする「75ホン対策」を実施することとした。
- (2)発生源対策
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発生源対策は騒音の防止又は軽減を図る上で最も基本的な施策であることから、レール削正、防音壁、低騒音車両等の技術的研究・開発に努め、新幹線に求められる高速性の社会的ニーズに応えつつ、その開発技術の採用により従来80デシベル以上であった騒音レベルの低減を図り、また、「75ホン対策」の進捗により沿線の広範囲な地域において騒音の軽減が図られてきているが、発生源対策のみでは現在の環境基準の達成は技術的に極めて厳しい状況にある。
図 新幹線騒音の変遷
- (3)対策の実績
- 上記の方針のもと、東海道・山陽・東北・上越・北陸新幹線の環境対策(騒音・振動対策)として、平成10年度末までに約1,900億円を投じて約850kmの防音壁等の設置・改良をはじめとする発生源対策や、約40,000戸の障害防止対策を実施してきている。
- 2.2010年における環境制約要因となるか否か
- 上記のように、新幹線の騒音対策として「75ホン対策」が暫定的な目標として進められてきたが、現在の技術においては発生源対策として75デシベルを達成することが限度であるため、現状の発生源対策としての取り組みのみでは環境基準の達成という観点では十分なものではない。
このことから、2010年においても新幹線の騒音問題は環境制約要因として考慮する必要があると考えられる。
- 3.今後の施策の方向性
- (1)環境基準
- 新幹線騒音に係わる環境基準については、昭和50年の制定当時より騒音の計量単位に最大値(LAmax)が用いられてきているが、平成11年4月1日より施行されている道路交通騒音等の新たな環境基準をはじめ、平成7年の「在来鉄道の新設又は大規模改良に際しての騒音対策の指針」のように、近年において定められた騒音の基準値や指針値については、間欠的な騒音を始め、あらゆる種類の総曝露量を正確に反映し、また、国際的に多くの国や機関で採用されていることから国際比較が容易である等の利点を有する等価騒音レベル(LAeq)が計量単位として用いられている。これらの最近の動向を勘案すると、新幹線の騒音対策に対する評価方法についても、現在の環境基準に基づいて、これまでに進められてきた騒音対策の進捗や成果等も踏まえつつ、今後、いかなる方法がより適切であるか等の検討も必要である。
- (2)騒音対策
- 今後新たに建設される新幹線については、平成11年6月に施行された環境影響評価法に基づき、計画段階での環境アセスメントを適切に行うこと等により、開発・設計・工事・製造等の各実施段階で、防音壁等の施設面における各種の騒音低減対策の充実やさらなる低騒音型車両の開発等の発生源対策を進める必要がある。
また、新幹線とその沿線地域の土地利用との調和や新幹線沿線への公共施設の有機的かつ適切な配置・整備等の方策による沿線地域の適切な土地利用について、沿線自治体との密接な連絡・調整の場を設けるなど、その的確な推進を図ることにより、新幹線騒音に係わる環境基準の達成に向けた総合的な対策をより一層強力に進めていくことが必要である。
さらに、既存の新幹線については、現在までに実施された騒音対策の現状を踏まえた上で、今後さらなる高速化等のニーズや輸送需要の動向を考慮しつつ、引き続き低騒音車両や防音施設の技術開発等を行い、可能な限りの発生源対策の推進を図るとともに、沿線地域の適切な土地利用についても、当該沿線地域の開発計画や土地利用計画の策定・見直し時等の機会を捉えて沿線自治体との円滑な調整を行っていく等の努力を行っていく必要がある。
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