1.問題の所在とこれまでの取り組み
- 従来、空港における環境の視点としては、主としてその空港周辺における航空機騒音問題への対応、即ち低騒音機の導入や住宅防音対策等の空港周辺対策がクローズアップされてきた。また、新空港整備にあたっては環境アセスメントを行い、海上空港等騒音対策を考慮した計画を立案するとともに、環境にやさしい建設工法の採用、工事中の環境保全管理等、周辺環境に配慮した空港整備を進めてきた。
一方、循環型社会の実現等、より広い地球環境問題への取り組みの強化が求められており、空港においても、建設段階のみならず、施設の改良や維持管理・運用段階を含めた環境配慮型の施策の実現が求められている。
- (1)新東京国際空港
- 新東京国際空港公団では、平成10年5月に、「エコ・エアポート基本構想」を発表、地球的視野にたった循環型の空港づくりの基本構想をまとめた。
1. | 水循環の実現(中水・雨水利用、雨水の地下浸透など) |
2. | 省エネルギーと大気質改善(コージェネレーション、低公害車導入、太陽光発電、地上動力装置等) |
3. | 自然環境の創出(百万本の植樹等緑化の推進等) |
4. | 廃棄物再利用等(ゴミの再資源化、再生資源の利用、刈り草の提供) |
- (2)関西国際空港
-
1. | 水循環の実現(中水利用) |
2. | エネルギーと大気質改善(コージェネレーション、低公害車導入、地上動力装置等) |
3. | 自然環境の創出(空港内の緑化事業の推進、緩傾斜石積護岸構造の採用) |
- (3)東京国際空港
-
1. | 既設舗装のリサイクル |
2. | 水循環の実現(中水利用) |
3. | エネルギーと大気質改善(低公害車導入、地上動力装置) |
4. | 廃棄物再利用等(ゴミの再資源化、刈り草の処分方法の検討) |
- その他の空港においても、周辺地域の状況や運営状況に応じ各種対策を実施しているところである。
2.2010年における環境制約要因となるか否か
- これからの空港における環境対策は、航空機の騒音対策のみならず、あらゆる面における環境負荷を低減させることが求められてくると考えられ、空港活動においても2010年に向けた取り組みが必要になると考えられる。
3.今後の施策の方向性
- (1)「循環型の空港整備・管理に関するガイドライン(仮称)」の作成
- 現在、新東京国際空港等において先行的に進められている「エコ・エアポート基本構想」などを参考にしつつ、各空港においても、循環型の空港整備・管理の実現に向けて、さらなる取り組みの強化が必要である。取り組みにあたっての視点、取り組むべき施策等について、国として「循環型の空港整備・管理に関するガイドライン(仮称、以下ガイドライン)」等の作成について検討することが必要である。ガイドラインには、空港の計画、建設及び運用面の総合的観点から、以下の各諸点等が盛り込まれることが期待される。
1. | 空港計画における視点 |
| ・ | 自然環境への影響軽減(海生生物に優しい緩傾斜石積み護岸構造等) |
| ・ | 環境負荷軽減(空港アクセス鉄道の整備等) |
| ・ | 効率的な施設の配置(施設の共同化等) |
2. | 空港建設における視点 |
| ・ | 工事で発生する建設副産物の再資源化(コンクリート殻、アスファルト殻の再生利用) |
| ・ | 工事材料としての再生材の利用(舗装材料としての再生アスファルト材利用) |
3. | 空港運用における視点 |
| ・ | 水循環の促進(中水利用等) |
| ・ | エネルギー消費量の抑制(コージェネレーションシステムの導入等) |
| ・ | 大気質の改善(空港内の低公害車利用促進、太陽光発電の導入等) |
| ・ | 廃棄物の減少(ゴミの減量、再資源化、着陸帯芝の堆肥化等) |
このガイドラインを参照に、各空港において循環型の空港整備・管理の実現に向けて、取り組みを強化することが必要である。
- (2)空港関連事業者等の取り組み
- 空港は、空港管理者である国、地方自治体、空港公団、空港会社等のみならず、空港ターミナルビル会社、航空会社、関連事業者等多くの空港関連事業者によって、複合的に管理・運営される特徴を有している。したがって、「循環型の空港の整備・管理」の実現には、これらの空港関連事業者の主体的な取り組みが不可欠であり、関係者へのPR、啓蒙の他、空港関連事業者等が定期的に協議する場の設定等について検討する必要がある。
特に、空港管理者以外の者が空港ターミナルビルを運営している場合にあっては、循環型空港の整備・管理の実現に当たって、空港管理者と密接に協力していく必要がある。

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