国土交通省
III 今後の鉄道整備の支援方策のあり方
ラインBack to Home

3.幹線鉄道における考え方

 (1)新たな整備水準等

 幹線鉄道における新たな整備水準等については、2.(1)に述べた政策目標のあり方を踏まえ、次の通りとすることが適当である。
<幹線鉄道に関する整備水準>
1)基本的考え方
 新幹線を含む全国主要幹線鉄道は、国土の骨格的な交通軸を形成するものであり、全国一日交通圏の形成に寄与することができるような整備水準を備えることが必要。また、地球環境問題の重要性等に鑑み、自動車交通から鉄道へのシフトを促進するためには、少なくとも自動車交通と比較して遜色のない高速性能を備えることが必要
2)指標
 新幹線と在来幹線鉄道とが連携した広域的な幹線鉄道ネットワークを構築するため、整備新幹線の着実な整備を進めるとともに、旅客流動の実態等それぞれの路線の状況も勘案しつつ、五大都市(東京、大阪、名古屋、札幌及び福岡)又は新幹線駅と地方主要都市(注)とを結ぶ主要な在来幹線鉄道の最速列車の表定速度(注)を、線形改良等により少なくとも時速90km以上にまで向上させる。さらに、線形改良、踏切除却及び保安対策の強化等により最高速度時速 130km以上で走行することをめざすこととあわせて、時速100km台にまで向上させることをめざす。
 また、全国一日交通圏の形成に一層寄与する観点から、概ね3時間台での移動が可能となっている五大都市から地方主要都市までの間については、旅客流動の実態等それぞれの路線の状況も勘案しつつ、概ね3時間程度で結ぶことをめざす。

(注) 「地方主要都市」については、地方中核都市のほか、地域の生活圏や社会経済活動の中心となる人口が概ね10万人以上の都市を念頭に置いているが、都市の地理的特性にも適切に配慮するものとする。
 「表定速度」とは、営業キロを所要時間で除したものであり、時刻表に基づいた鉄道の時速を表すことになる。

<幹線鉄道に関する利用者サービスに関する指標(国が情報公開するもの)(注)
 事故件数や安全対策に関わるもの(原因別事故件数比較、各社の安全対策情報の入手先、事故調査検討会の検討結果等)
 サービスの水準に関わるもの(定時運行率比較、主要路線別等の混雑率比較、エスカレーター・エレベーター整備状況比較、身体障害者用トイレ導入率比較等)
 輸送実績に関わるもの(主要路線別の輸送人員・輸送人キロ、分野別の旅客収入等)
(注) 国が情報公開する利用者サービスに関する指標については、これらのものを例示としつつ、可能な限り公開する範囲を拡大する方向で、今後さらに検討する。

 なお、利用者サービスに関する指標が定着し、より成熟したものになれば、利用者サービスの一層の向上を図るため、地方公共団体、鉄道事業者等の関係者の意見を聴きつつ、その一部を、現状の改善に関する新たな整備水準として位置づけることも検討すべきである。

 (2)整備の基本的進め方

 整備新幹線の整備については、これまで通り、政府・与党の議論の場において、財源の確保、整備区間ごとの収支採算性の見通し等の基本条件が整えられていることを確認した上で、着工区間、優先順位等の具体的な取り扱いが検討・決定されることが適当である。
 主要在来幹線鉄道の整備については、新たな整備水準を踏まえ、必要に応じ、国が高速化等の整備に向けた可能性、課題等について調査(新幹線直通運転化事業調査等)を行うとともに、国、地方公共団体及びJR等の関係者からなる地元協議会等において、それぞれの地域の実情に即した具体的な整備方針を策定することが適当である。

 (3)支援のあり方及び整備の方式に関する考え方

 主要在来幹線鉄道の整備にあたっては、それぞれの地域の整備方針に則り推進することが適当であり、地元地方公共団体、JR等の出資により設立され、施設の整備・保有主体となる第三セクターに対する、現行の幹線鉄道等活性化事業費補助について、その見直しを図る必要がある。
 なお、民間主導による整備を推進するため、民間鉄道事業者であるJRが保有する施設の改良等に対する支援方策についての将来の課題として、無利子貸付方式の導入を検討することなどにより公的主体が適切なインセンティブを付与することができるよう、現行支援制度のあり方を見直すことも必要と考えられる。
 国と地方公共団体の具体的な支援方法等については、国が地方公共団体と共同して取り組むことが必要との基本を踏まえて、当該鉄道の性格や国と地方公共団体との役割分担等に応じて決定することが適当である。

4.都市鉄道における考え方

 (1)新たな整備水準等

 都市鉄道における新たな整備水準等については、2.(1)に述べた政策目標のあり方を踏まえ、次の通りとすることが適当である。

 
<都市鉄道に関する整備水準>
1)基本的考え方
 大都市圏鉄道については、通勤・通学混雑の緩和にあたって、これまでのような最混雑時間帯における主要区間の平均値に基づくのみならず、すべての区間のそれぞれの混雑の実態や混雑時間の長さにも配慮することにより、快適な通勤・通学輸送や高齢者等の移動制約者にもやさしい交通が実現できるような整備水準を常態的に備えることが必要。また、都市鉄道調査の結果等を踏まえ、地方公共団体、鉄道事業者等の関係者の意見を聴きつつ、通勤・通学混雑の緩和のみならず、主要区間における速達性の向上(到達時間の短縮)、望ましい都市構造等のあり方を支える鉄道ネットワーク全体としての利便性の向上等の政策目標についても、新たな整備水準を設けることを検討することが必要
 アクセス手段として鉄道を活用することがふさわしい多数の乗降客を有する空港、とりわけ我が国と海外諸国との交流の窓口となる国際的な空港に対するアクセス鉄道については、航空輸送の高速特性が十分発揮されるような整備水準を備えることが必要

2)指標
 大都市圏における都市鉄道のすべての区間のそれぞれの混雑率を150%以内とする。ただし、東京圏については、当面、主要区間の平均混雑率を全体として150%以内とするとともに、すべての区間のそれぞれの混雑率を180%以内とすることをめざす(注)

(注) 「混雑率○○%」とは、列車の混み具合を示す数値であり、輸送人員÷輸送力×100(%)で算出される。ここでは、最混雑時間帯1時間あたりのものとして記載している。
 今回の指標は、これまでのような主要区間の混雑率の平均値の低減ではなく、すべての区間のそれぞれの混雑率の低減をめざすものとなっている。
 したがって、目標値の強化ともあいまって、通勤・通学混雑の緩和を一段と図り、この結果、実質的には混雑時間の長さにも配慮したものとなっている。
 なお、中長期的には、急行、緩行等の列車の種別等にも応じた指標とすることをめざすものとする。
 国際的な空港(注)と都市圏との間を鉄道で連結することが適当である場合には、当該空港アクセス鉄道について、その所要時間の短縮に努めるものとし、空港と都心部との間の所要時間を30分台とすることをめざす。
(注) 「国際的な空港」の範囲については、空港の乗降客数、国際航空便の頻度、空港アクセス手段の現状等を勘案しつつ、今後さらに検討する。

<都市鉄道に関する利用者サービスに関する指標(国が情報公開するもの)(注)
 事故件数や安全対策に関わるもの(原因別事故件数比較、各社の安全対策情報の入手先、事故調査検討会の検討結果等)
 サービスの水準に関わるもの(定時運行率比較、主要路線別等の混雑率比較、エスカレーター・エレベーター整備状況比較、身体障害者用トイレ導入率比較等)
 輸送実績に関わるもの(主要路線別の輸送人員・輸送人キロ、分野別の旅客収入等)
(注) 国が情報公開する利用者サービスに関する指標については、これらのものを例示としつつ、可能な限り公開する範囲を拡大する方向で、今後さらに検討する。
 また、地方中核都市圏等においては、都市鉄道調査の結果等を踏まえ、バス、自家用自動車等も含めた都市交通全体に関わるサービス水準の現況についての指標を作成することを検討する。

 なお、利用者サービスに関する指標が定着し、より成熟したものになれば、利用者サービスの一層の向上を図るため、地方公共団体、鉄道事業者等の関係者の意見を聴きつつ、その一部を、現状の改善に関する新たな整備水準として位置づけることも検討すべきである。

 (2)整備の基本的進め方

 現在、東京圏、大阪圏及び名古屋圏の大都市圏においては、国、地方公共団体、鉄道事業者等の関係者が参画して精力的かつ多面的な審議が行われた上で、当該圏域における将来のあるべき鉄道網の姿が、運輸政策審議会答申という形で、いわばマスタープランとして示されてきている。
 各圏域においては、このマスタープランに沿った鉄道整備が進められてきた結果、通勤・通学混雑の緩和や相互直通運転化等の乗り継ぎ利便の向上、また、当該都市圏における望ましい都市構造等のあり方を支える鉄道ネットワーク全体としての利便性の向上等に大きな役割を果たしてきているところである。
 したがって、これら三大都市圏における都市鉄道の整備については、それぞれの圏域に関する運輸政策審議会答申に則って所要の整備を進めることが最も適切である。
 三大都市圏以外の都市鉄道の整備についても、広域的で整合性のある鉄道ネットワークの形成という観点を踏まえて推進することが必要であり、それぞれの地域の実情に精通した地方公共団体、関係鉄道事業者、国等の関係者の参画を得て、それぞれの圏域に関する地方交通審議会答申等に則って所要の整備を進めることが適当である。
 空港アクセス鉄道の整備については、新たな整備水準を踏まえ、国、地方公共団体及び鉄道事業者等の関係者からなる地元協議会等において、それぞれの地域の実情に即した具体的な整備方針を策定することが適当である。

 (3)支援のあり方及び整備の方式に関する考え方

   (ア)地域的な交通を担う都市鉄道の整備

 地域的な交通を担う都市鉄道の整備のうち、資本費負担が極めて大きく、かつ、収支採算性の確保に極めて長期間を要するため民間鉄道事業者による実施が困難であるものについての整備方式については、地方公営企業を活用するという方策がまず考えられ、現行の、地方公営企業により第一種鉄道事業として地下鉄整備を行う方式を今後とも有効活用することが適当である。また、必要に応じ、地方公営企業が第二種鉄道事業として地下鉄の運行を行う方式(名古屋圏の一部路線において予定)の活用についても検討すべきである。
 地方公営企業による地下鉄事業については、今日、その原因にはさまざまな要素が複合していると考えられるものの、いずれもが極めて厳しい経営状況の下に置かれていることも事実であるため、地方公共団体が自ら行う整備が適切に行われるよう、国として、特に次のような環境整備を行うことが必要と考えられる。
 空港アクセス鉄道の整備については、新たな整備水準を踏まえ、国、地方公共団体及び鉄道事業者等の関係者からなる地元協議会等において、それぞれの地域の実情に即した具体的な整備方針を策定することが適当である。
 鉄道事業の収支採算性を見込む上で前提となる償還期間については、鉄道施設の耐用年数を総合的に勘案し、現行の「30年」を「40年」程度に延長することが適当
 住民等の広汎な理解を得る必要があるため、整備計画案の策定の段階から、整備の費用対効果、整備財源、地方負担額、運賃水準等に関し、住民等に対する情報公開や住民意思の確認等を適切な方法で行うことを義務づけることが適当
 整備事業開始後に事業費が増嵩した場合、供用後に輸送需要が低迷した場合等における適切な対処方策を予め明確化しておくことが必要

 地方公共団体が主導して行う整備は、上に述べた地方公営企業方式を除けば、国鉄改革以降の近年の鉄道整備において特に顕著な傾向となっているが、その手法としては、第三セクター方式が多用されてきているところである。
 第三セクター方式がこのように活用されている背景には、一都市、一都道府県を超えた広域交通への対応、鉄道事業者間の調整の必要性など、さまざまな理由があると考えられる。

 いずれにしても、地域的な交通を担う都市鉄道の整備のうち、地方公共団体が中心となり、民間能力も活用した第三セクター方式により行うものについては、その整備が適切に行われるよう、地方公共団体が自ら行う整備について上に掲げたもののほか、国として、特に次のような環境整備を行うことが必要である。
 補助率が公的主体の出資比率に連動する現行の第三セクターに対する地下鉄整備事業費補助については、地方公営企業方式における支援のあり方を勘案しつつ、適切な見直しが必要
 なお、この見直しにあたっては、既往の運輸政策審議会第10号答申(大阪圏における鉄道網整備計画)及び第12号答申(名古屋圏同)はもとより、今般の運輸政策審議会第18号答申(東京圏同)において早急な整備が必要であるとしてAランクに位置づけられた路線の整備が円滑に進むようなものとすることが必要
 都市機能の向上を図る上で重要な役割を果たすことが期待できる地上鉄道の整備に対しては、地下鉄整備の場合における支援のあり方を勘案しつつ、支援制度を適切に見直すことが必要

 また、第三セクター方式による鉄道整備については、2.(4)に述べたように、個々の路線ごと(整備区間ごと)に第一種鉄道事業者が出現することを回避し、運行の効率化や通算運賃による運賃の著しい格差の発生の抑制(一種の内部補助の活用)等を通じて利用者利便の向上を図ることも検討する必要がある。

 一般的に第三セクター方式による鉄道整備は、経営の効率性や責任の所在の明確性という観点からさまざまな批判的意見もある。このため、地方公共団体が主導して鉄道整備を行うにあたり第三セクター方式を採用する場合には、地方公営企業に準ずる事業として、いわば「行政補完型」の方式により行政目的の達成をめざすものであることから、第三セクターに対する出資比率を50%以上とするなどにより、経営に関する主導的な地位を地方公共団体が確保することが必要である。また、経営に関する主導的な地位を担う地方公共団体が複数ある場合については、当該地方公共団体間の緊密な連携の確保が課題となると考えられる。

 また、民間主導による整備を推進するため、民間鉄道事業者が保有する施設の改良等に対する支援方策についての将来の課題として、無利子貸付方式の導入を検討することなどにより公的主体が適切なインセンティブを付与することができるよう、現行支援制度のあり方を見直すことも必要と考えられる。

 空港アクセス鉄道の整備については、その推進にあたり、国、地方公共団体及び鉄道事業者等が共同して取り組み、空港ごとに、その諸状況を総合的に勘案し、最も適切な整備・運行主体を確立することが適当であり、施設の整備・保有主体に対する空港アクセス鉄道整備事業費補助や空港当局からの出捐等により、所要の無償資金を確保することが必要である。

 国と地方公共団体の具体的な支援方法等については、新たな整備水準に照らし国が地方公共団体に対して支援を行いつつ共同して取り組むことが必要との基本を踏まえて、当該鉄道の性格や国と地方公共団体との役割分担等に応じて決定することが適当である。

 このほか、都市整備との連携を推進するとともに、バリアフリー化やシームレス化の推進にも資する次のような整備に対しては、道路・都市部局の協力も得つつ、支援制度の充実を図るべきである。
 都市鉄道調査の結果等を踏まえた、地方中核都市圏等におけるLRT等の整備
 駅及び駅周辺地域の総合的な改善。とりわけ、供用から相当の時日が経過し、老朽化が進む大規模ターミナル駅及び当該駅周辺地域の抜本的な改良については、高齢化社会の到来に対する対応、公共交通機関を中心とした都市交通体系の形成、限られた都市空間の有効活用などの観点から重要
 連続立体交差化事業
 踏切道の改良  等

 なお、帝都高速度交通営団については、既往の閣議決定に基づき、完全民営化を推進することが必要である。したがって、東京圏における今後の鉄道整備にあたっては、民間鉄道事業者としての経営判断に基づき、関連路線の整備が行われた際に運行事業者として乗り入れることによる運行の効率化等を通じて利用者利便の向上に貢献することや、例えばインフラ整備主体に対する受益に応じた出資を行うこと等により関連路線の整備にも関与することを強く期待する。

   (イ)広域的な交通を担う都市鉄道の整備

 こ地域的な交通を担う都市鉄道の整備であっても、旅客流動が広域にわたるプロジェクトについては、民間鉄道事業者やこれを補完する地方公共団体だけでは整備の推進が期待しがたいため、その推進にあたり、国が地方公共団体と共同して取り組むことが適当であるが、今後、次のような点について、関係都府県とともに検討を開始することが必要である。
 いずれのプロジェクトがこれに該当するかについて、広域的な旅客流動の実態、事業規模等を勘案しつつ、その具体的範囲について検討することとなるが、一例として、東京圏の都市構造・機能の再編整備等に対応し、望ましい都市構造等のあり方を支えるため、今般の運輸政策審議会第18号答申において早急な整備が必要であるとしてAランクに位置づけられており、東京圏を東西に横断することにより交通流動に大きな変革をもたらす可能性のある「JR京葉線の中央線方面延伸」等のプロジェクトが考えられる。
 この場合においては、政策的必要性の高さから整備が急がれており、かつ、収支採算性の見込みの良好な路線から順次整備を開始し、長期的(資本費用の回収後)には、その収益を密接な関連性とネットワーク効果のある新たな路線の整備に活用すること(いわゆる内部補助)や、運行事業者を当該路線と接続する既存鉄道事業者とすることで運行の効率化や通算運賃による運賃の著しい格差の発生の抑制(一種の内部補助の活用)等を通じて利用者利便の向上を図ることを検討すべきである。
 適切な整備主体、整備方式等のあり方についても、今後検討することとなるが、例えば、国の特殊法人である日本鉄道建設公団を活用し、当該プロジェクトを推進している地方公共団体との緊密な連携の下、これに所要の支援を行うとともに、自らも資金を調達する(償還型上下分離方式)といった新たな仕組みを検討することも考えられる。

ライン
All Rights Reserved, Copyright (C) 2001, Ministry of Land, Infrastructure and Transport