国土交通省
II 乗合バスの現況と今後のあり方
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  1.乗合バス事業の役割及び近年の状況

 乗合バスは、通勤、通学、通院、買物等の地域住民の日常生活を支える公共交通機関として重要な役割を果たしてきているが、乗合バス事業は、マイカーの普及、地下鉄の整備、自転車の利用の進展や、渋滞等走行環境の悪化等により、昭和40年代半ばをピークに利用者が恒常的に減少しており、現在85%の乗合バス事業者が経常赤字である等厳しい経営状況が続いている。
 しかしながら、乗合バスは、引き続き地域住民の日常生活を支える交通手段としての役割を果たすことが期待されており、また、都市部を中心として、自動車事故の防止、交通渋滞の解消、移動制約者の移動手段の確保及び環境問題への対応の観点からも、その役割は今後ますます重要になると見込まれる。
 一方、地方部においても同様に重要な役割を果たしていく必要があるものの、過疎地域を中心に、乗合バスが営利サービスとして成り立たなくなっている現状から、生活交通を全体としてどのように確保していくかが大きな課題となっている。


  2.乗合バスの今後のあり方

 乗合バスの輸送需要は全体的には減少しているが、高速バスや空港連絡バス、都市中心部のバス等の乗合バスの事業特性が発揮でき、今後需要が伸びると考えられる分野も多く、競争を促進することにより事業者の創意工夫を発揮させ、より良いバスサービスの提供が行われるようにすることが重要である。
 このため、新規参入等が可能となるよう需給調整規制を廃止し、競争を促進することが必要である。これにより効率的で利便性の高いサービスが提供され、バスの利用が促進されることが期待される。
 その際、新規参入については、競争促進の観点から認めていくことが基本であるが、乗合バスは安定的にサービスの提供が行われることも重要であり、新規参入のあり方については最低限のルールを設けることが適当である。
 一方、地方部にあっては、これまでの需給調整規制を背景とした制度的な内部補助ではバス路線の維持は限界となっており、生活交通として必要なサービスが効率的かつ多様な形で提供できるような新たなシステムの確立を図ることが重要である。
 このため、地域の生活交通について、内部補助を前提としない形で確保するための新たな仕組みが必要である。
 その際、地域のニーズに応じた生活交通を確保することが必要であり、また、地域の行政がより積極的に生活交通の確保のための施策を講じていくことが適当である。

 これらの課題へ的確に対応するため、生活交通の確保方策を明らかにした上で、需給調整規制の廃止後における参入・退出規制のあり方を検討していくことが適当である。
 この他、輸送の安全の確保や利用者保護については、需給調整規制廃止後においても十分な措置を講じていくことが必要である。
 なお、これらの規制のあり方を検討していくに当たっては、事業規制は、必要最小限にとどめるものとし、かつ、明確な基準により執行すること、可能なものは事前規制から事後的チェックへの転換を図っていくこと、また、規制の必要性と効果を十分に検証し、利用者に対する安全性やサービス内容に関する適切な情報の提供等と相まって効果の高いものとしていくこと、等に留意する必要がある。

 乗合バス事業を活性化し、地域交通をより良いものとしていくためには、行政としても、上記のような需給調整規制の廃止による競争の促進や生活交通の確保方策を確立することと併せて、1.で述べたような諸課題に対応する観点から、バス利用の促進のための環境整備を図ることが必要であり、バス利用を促進するための交通システム等の整備に対する支援や走行環境を改善するための施策等を推進する必要がある。

 生活交通の確保方策と需給調整規制の廃止後における制度等のあり方については、III、IVに述べるような方向を基本に、制度を新たに構築していくことが必要である。
 この際、乗合バスは、国民生活に密着したサービスであることを踏まえ、需給調整規制の廃止に当たっては、大きな混乱が生じないよう、現実に定着しうる制度となるよう、適切な措置を講じることが適当である。

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