国土交通省
II タクシーの現況と今後のあり方
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  1.タクシー事業の役割及び近年の状況

 タクシーは、バス・鉄道等の大量輸送機関の補完的役割を果たすとともに、ドア・ツー・ドアの機動的・個別的公共輸送機関として国民生活に定着している。
 また、近年の高齢社会の中で福祉輸送サービスに進出する事業者が増加してきており、タクシーの新たな役割として注目されている。
 さらに、介護サービスや救援事業等のタクシーの機動性を活かした関連サービスが出現するとともに、個人タクシーにおけるマスターズ制度等事業者団体が自主的に質の向上を目指す動きも始まっている。
 一方、近年の景気低迷の下で輸送量は低下傾向にある等総じて厳しい経営状況が続いているが、タクシーは、コストの約8割を人件費が占める典型的な労働集約型の産業であり、運転者の賃金体系が基本的に歩合制で事業収入が運転者の労働条件に直結していることから、他産業に比べると厳しい労働条件となっている。
 これまで、タクシーについては、一定の地域毎に需要と供給を調整して過剰な参入を規制する免許制や総括原価主義に基づく運賃の認可制がとられてきたが、このような規制は、事業運営の意欲と事業遂行の能力のある事業者の参入や事業の拡大を制限し、事業の活性化やサービスの多様化を阻害する要因となる側面もあった。
 このため、現行制度の下でも、運輸省では、事業区域の統合・拡大、最低保有車両数の縮減を行うとともに、需給調整や運賃設定の弾力化を進めており、その効果も現れつつあるが、事業全体への広がりは不十分である。


  2.タクシーの今後のあり方

 タクシーは、本来、個々の利用者のニーズに対応したきめ細かで多様なサービスを提供することが可能な事業である。近年の景気低迷により厳しい経営状況が続いているが、競争を促進することにより、事業者の創意工夫を発揮させ、サービスの向上と事業の活性化を図っていくことが重要である。
 このため、新規参入や事業の拡大が可能となるよう需給調整規制を廃止し、競争を促進することが必要である。これにより、利用者にとって利用しやすいサービスが提供され、タクシーの利用が促進されることが期待される。
 一方、タクシーにおいても輸送の安全確保は今後とも最重要の課題であり、また、タクシーは、利用者と運転者が1対1となるサービスであること、運賃は最終的には降車の際にしか明らかにならないこと等から、利用者が安心して利用できることが重要である。
 さらに、流し営業中心の大都市や車庫待ち営業中心の地方部等地域によって実情に違いがあること、また、歩合制等を背景に増車に伴う固定費が小さいため事業者の増車意欲が極めて強いといった特性があり、供給過剰になりやすいことに留意する必要がある。
 これらに十分配慮しつつ、需給調整規制廃止後のタクシー制度のあり方について、輸送の安全確保や利用者保護を中心に検討していくことが必要であり、規制の必要性と効果を十分に検討し、有効な規制のあり方を検討することが適当である。

 今後の国の関与については、事業規制は、必要最小限にとどめるものとし、かつ、できる限り明確な基準により執行すること、可能なものは事前規制から事後的チェックへの転換を図っていくことが適当である。
 また、安全対策や移動制約者対策、環境対策として事業者等が行う取組みについての支援等、現在の都市交通を巡る諸課題に対応し、タクシーサービスをより良いものとしていくための施策を講じることが適当である。

 タクシーは国民生活に必要不可欠なサービスであり、需給調整規制の廃止に当たっては、大きな混乱が生じることなく、現実に定着した制度となるよう、適切な措置を講じることが適当である。

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