国土交通省
第2章 低燃費自動車の一層の普及促進への今後の取組みの方向
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 低燃費自動車の普及促進を図るための施策は、規制的手法と経済的手法に大別される。

  規制的手法の限界
 低燃費自動車の普及促進を図る規制的手法としては、自動車を保有する事業者に対して新燃費基準の数値を満たす自動車を一定割合以上導入することを義務付ける等の措置がありうる。しかし、燃費基準という一定の規制的手法が既に導入されている状況を踏まえれば、市場メカニズムの働きを通じて、消費者の自主的な選択を誘導する経済的手法を導入することが、少なくとも追加的な施策としては適切である。さらに経済的手法の導入は、低燃費自動車を開発するインセンティブを生産者の側に与えるという効果をも期待される。また、市場経済社会においては、規制的手法と経済的手法が同じ効果を発揮するのなら、消費者の「選択の自由」を保証するという意味で、経済的手法の方が望ましい。

  経済的手法の比較
 経済的手法の一つとして、一定の基準を満たす低燃費自動車の取得に対する補助金がある。しかし、我が国で毎年販売される自動車が約6百万台程度であることを勘案すれば、二酸化炭素排出削減に効果のある水準に達する規模の対象台数は膨大となり、補助金の金額、補助金を交付するためのコスト、及び現下の厳しい財政事情を考えると、大量普及のためには取得に当たっての補助金だけでは不十分である。
 したがって、全販売車両を対象とする自動車関係諸税を、低燃費自動車の一層の普及促進のための政策手段として活用すること、すなわち、税額を燃費に応じて変化させることにより、低燃費自動車を購入するインセンティブを消費者に与える「自動車関係諸税のグリーン化」が適切である。自動車関係諸税のグリーン化は、低燃費自動車の購入を消費者に動機づけると同時に、自動車ユーザーの行動を、低燃費自動車に乗ることを選好するという環境保全の方向へと転換させる効果を持つ点からも望ましい。
 しかしながら、現下の厳しい財政事情を考慮すれば、自動車関係諸税のグリーン化を実施するに当たっては、可能な限り税収中立(税制の変更により税収が変化しないこと)に配慮することが望ましい。
 なお、新燃費基準の達成により自動車単体対策のみで350万トンの二酸化炭素排出削減は達成可能である点、自動車関係諸税の現行の税負担が国際的に見て極めて重い点、さらに自動車ユーザーの合理的な車種選択を過度に阻害しないよう配慮を施す必要がある点等を勘案すれば、環境改善に係る税制施策については、税収中立ではなく優遇措置を中心とするべきであるとの意見もあった。

  自動車関係諸税のグリーン化の妥当性
 自動車が与える環境負荷に係る社会的コストを、何らかの形で自動車ユーザーが負担するべきであることについては、外部不経済の内部化という観点からも、また汚染者負担の原則に基づいて、社会的な合意が形成されていると言って差し支えない。こうした社会的要請に応えるべく、自動車関係諸税の公正の基準に、環境の観点を新たに導入すること、なかでも、二酸化炭素排出削減のために低燃費自動車の普及促進を図ることをねらいに、二酸化炭素排出の指標となる燃費を公正の基準の一つに採用することが妥当である。
 また、COP3の開催国であるとともに、世界の二酸化炭素排出量の約5%を占める我が国は、自ら率先して地球温暖化対策に取り組むことが求められており、ドイツ、フランス等の欧州諸国において、地球温暖化防止のための施策として自動車関係諸税のグリーン化を既に導入していることも強く認識すれば、国際社会に貢献する意味でも早期に自動車関係諸税のグリーン化を導入するべきである。

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