地方航空路線活性化プログラム

地方航空ネットワークの安定的な確保を図るため、地域主体(地方公共団体、観光協会、商工会議所、エアライン等からなる協議会)が航空路線の維持に向けて実施した取組事例について、ご紹介します。

1.実証調査の分析方法

冬ダイヤの実証調査(平成26年度実施)及び夏ダイヤ実証調査(平成27年度実施)における有識者からの評価結果を基に、協議会が改善した取組について平成28年度に実施、計測したデータ等から、目標の達成度、地域活性化への貢献度、旅客便の改善状況等について分析する。

分析に際しては分析視点を設定し、定量的又は定性的なデータを分類し整理する。なお、取組の評価の際には、取組目標に対する達成度や経済効果など効率性基準だけではなく、客観的な視点から利用者の利便向上の声など多様な要素についても整理、分析を行う。

分析作業に当たっては、協議会からも必要なデータの取り寄せやヒアリング等を実施し内容確認をしながら整理を行った。

(1)各協議会における取組の分類

各協議会から提案のあった取組は、大きく2つのパターンに分類され、1つは各航空路線における旅客ターゲットを定め、複数の取組要素(旅行商品造成、PR事業、二次交通の対応等)による利用の促進を図る取組(山形空港や能登空港等)、もう1つは当該航空路線の利用促進に向けた課題に対応した個別の取組要素により利用促進や旅客利便性の向上を図る取組(釧路空港や但馬空港等)となっている。

本調査では、各取組が成功したかどうかを分析するために、各取組による旅客数の変化等と各取組を構成する個々の取組要素による効果との関係を明らかにする必要があり、取組種別を下表のように分類する。

取組種別の分類

取組種別 主な取組内容
旅行商品の開発・造成 ・旅行商品の企画・造成・販売を狙った旅行会社向けPR、ファムツアーの実施
・旅行商品の魅力向上、定着化を狙ったモニターツアーの実施
情報発信・PR事業 ・航空を利用した旅行や旅行商品の購入促進を狙ったPR事業
・地域・路線の認知度・イメージ向上を狙ったPR事業
航空運賃助成 ・航空運賃が高いために利用しない層の取り込みを狙った運賃助成・キャッシュバック施策
二次交通 ・集客地域の拡大を狙ったレンタカー、タクシー、広域バス等の運行、低廉化実験。
・発着空港のアクセス不便解消、イメージアップを狙った二次交通の低廉化実験。
利便性向上(運航情報の提供等) ・航空利用の安定化、イメージアップを狙った利便性向上施策

(2)分析の視点

各協議会から提案のあった取組の各種別に対して必要となる主な分析の視点を、以下のとおり整理した。

各取組を構成する個々の取組種別による効果が旅客数の増加に対して直接的な効果を期待できるか、間接的な効果に留まるかに分類し、直接的な効果が期待できる取組による旅客数の変化等を定量化する。

取組種別と分析の視点

取組種別 分析の視点 旅客増加への効果
旅行商品の開発・造成 ・旅行商品の魅力により、当該地域への旅行の動機付けになっているか。 直接的効果
情報発信・PR事業 ・情報発信・PRが当該地域への航空を利用した旅行の動機付けになっているか。 直接的効果
・地域・路線の認知度・イメージの向上に繋がったか。 間接的効果
航空運賃助成 ・航空利用の安定化、他の交通モード利用からの転換に繋がっているか。
・地域間交流の増加に繋がっているか。
直接的効果
二次交通 ・集客地域の拡大や他の交通モード利用からの転換に繋がっているか。 直接的効果
・利用者の利便性向上に繋がっているか。 間接的効果
利便性向上(運航情報の提供等) ・航空利用の安定化、他の交通モード利用からの転換に繋がっているか。
・利用者の利便性向上に繋がっているか。
間接的効果

(3)分析の方法

分析に当たっては、定量的又は定性的なデータに分類して整理する。

各取組による旅客数の変化等と各取組を構成する個々の取組要素による効果との関係を明らかにするため、まず旅客数の変化等について過去のトレンドとの比較により、取組効果による路線利用者数の増加がみられたかを把握する。


取組と旅客数の変化

本調査では、直接的な効果が期待できるものは、新たに開発した旅行商品の利用者数や新たな地域からの利用者数、他モードからの転換利用者数等をアンケート調査により定量的に把握した。

対象航空路線の現状のインバウンド・アウトバウンド、観光・ビジネスの割合等の旅客特性は、航空旅客動態調査の活用や各協議会の共同提案者である航空会社の協力を得てデータを取得する。観光やビジネス旅客等、ターゲットを明確にした取組の効果を把握するためにも、旅客特性毎の利用者数の変化を把握することが重要となる。


取組の効果の分析方法の考え方

また、間接的な効果についても取組の実効性を評価するための指標(KPI)として活用することから、アンケート調査により認知度や満足度、利用意向等の変化を定量化し、HPのアクセス回数等、その他定量的に把握できる項目も含め、組み合わせて評価する方法について検討を行い、本調査以降の継続的な評価指標の参考値を設定した。


取組の効果の分析イメージ