「21世紀の国土のグランドデザイン」 第1部 第3章 第1節


第3章 計画の実現に向けた取組



第1節 「参加と連携」による国土づくり



 各地域において個性的で魅力的な地域づくりを実現するためには、地域住民、ボランティア団体、民間企業等の多様な主体による地域づくりを全面的に展開していくことが求められる。このような多様な主体の参加は、従来の行政では十分に対応しきれなかった分野を補完するのみならず、多様な要請に対応するきめ細かいサービスの提供とその質の向上を可能とする。

 また、人口減少・高齢化や国境を越えた地域間競争の中で、国土管理を始め多様な国民の要請にこたえ、質の高い自立的な地域社会を形成していくためには、既存の行政単位の枠を越えた広域的な発想が重要であり、関連する地域の主体的な取組としての連携による施策の展開が求められる。このような地域連携は、新たな地域発展の機会を創出し、地域が提供するサービスの高度化と効率的な基盤整備を可能とし、また、地域に共通する広域的な課題の解決等に効果を発揮し得るものである。

 この計画においては、「参加と連携」による国土づくり、地域づくりを推進することとする。


 1 多様な主体間での役割分担

 「参加と連携」により国土づくりを進めるに当たっては、公的主体と民間主体の間、そして公的主体内における国と地方の間の適切な役割分担が不可欠である。

 公的主体と民間主体の役割分担については、公的主体は、国民の意見を広く求めつつ、国土づくり、地域づくりに関する計画を提示し、これに関する調整を行うこと、国土づくり、地域づくりに関する制度的な枠組みを整備すること等の役割を果たし、民間主体は、自らの創意工夫に基づき、国土づくり、地域づくりに参加することが原則である。国土基盤整備やサービスの提供については、国または地方公共団体は、民間主体に委ねた場合には質や量において国民生活上必要に足るだけの供給を期待できない国土基盤整備やサービスの提供を行い、民間でできるものは民間に委ねる。

 次に、公的主体内における役割分担については、国は、国家的見地から「参加と連携」を支援するという基本的な考え方の下、基幹的な基盤の整備を進めるとともに、各地域の有する情報を集約し他の地域に提供するなど、広域的なサービス提供の観点から地域連携を支援することとし、都道府県、市町村は、地域的視点から地域づくりへの多様な主体の参加を支援、調整、活用するとともに、地域連携においては、主体的な役割を担う。

 国土づくり、地域づくりを進めるに当たっての費用負担については、現在世代と将来世代が適切に負担を担うよう世代間の公平性に配慮しつつ、適正な受益者負担の考え方の下に、各施策ごとに公的主体と民間主体、国と地方の役割に応じた費用負担により行う。


 2 多様な主体の参加を推進するための方策

 国土づくり、地域づくりに当たって、多様な主体の責任ある参加を推進するための環境整備として以下の取組を行う。

  (国民参加の基礎となる情報の公開)

 国民が地域づくりに積極的に参加できる環境を整備するためには、国民が自らの選択と責任に基づいて行動するための基礎となる情報の公開が必要である。このため、国、地方を問わず、行政の持つ国土づくりに関する情報を広く開示、提供し、国民が容易に利用できる体制を整備する。また、国土基盤投資に係る事業採択の基準や基盤投資に関する費用対効果分析等の公開を進めることにより、国土基盤整備の推進に係る意思決定の客観性及び透明性の向上に努める。
 さらに、二酸化炭素等の排出抑制等、国民が自ら率先して環境の保全に取り組むことが求められている現状を踏まえ、国及び地方公共団体は、個々の国民が環境保全にかかわる手法等に関する情報をより積極的に公開するとともに、広報の充実等、国民の理解を得るための方策を整える。


  (民間主体の能力や資金の活用に向けた取組)

 国土基盤整備や住民サービスの提供に関して、民間主体の資金や能力を適切に活用する観点から、行政改革の積極的な推進と併せて、民間主体の積極的参加に向けた諸規制の緩和を推進する。また、民間のノウハウ、資金力を活用した事業の推進方式を検討する。
 地域づくりの国民参加の主要な手法となり得るボランティアやNPOの活動については、その一層の推進を図るため、関係機関等と連携、協力して、ボランティア休暇制度の導入、ボランティア団体等NPOへの法人格の付与を含め、これらの活動の支援策を推進する。


  (積極的な地方分権の推進)

 地域住民の積極的な参加の下、地域が自らの選択と責任で地域づくりを行うためには、その基礎として、地域づくりに必要な事業を行うに足るだけの権限や財源を地方公共団体が有していることが不可欠である。このため、地方分権を積極的に進め、地域づくりや住民サービスに関する諸権限の地方への委譲、必要な地方一般財源の確保、補助金等の整理合理化、国の関与の整理縮小等を行うことにより、地方公共団体が主体となって基盤整備等を行うことができる環境の整備について検討し、順次その実現を図る。


  (地域づくりにおける住民参加と合意形成のシステムの整備)

 地域づくりへの住民の参加意識の高まりにこたえ、地方公共団体が中心となって、地域づくりにおける住民参加と合意形成のシステムを整えることが重要である。特に、地域づくりに係る土地利用や基盤整備については、国及び地方公共団体は、計画段階から住民意見を広く求める体制を整備する必要がある。その際、住民の責任ある参加が可能となるよう、基盤投資の効果、所要資金とその負担、環境への影響、地域の災害危険度等についての情報提供の仕組みの構築を図る。


 3 地域間の連携を推進するための方策

 地域連携を推進するに当たっては、その基礎として連携意識の醸成を進めるとともに、地域間の連携の主体の円滑な形成が図られることが重要であり、また、地域の取組を踏まえた国による支援策も必要である。このような観点から次のような取組を行う。

  (連携意識の醸成と連携主体の形成)

 地域連携の促進を図るためには、その基礎として、連携を行う地域の住民同士が交流し、互いの地域への理解や共感を深め、協力や連携を進めるという意識の醸成が重要である。従って、地方公共団体は、自ら積極的に他の地方公共団体と連携、協力する意識を持ち、住民意識の醸成を図るための交流事業の実施や、共同利用施設の整備等を行うなど、地域間の連携を着実に進めることが求められる。
 多自然居住地域の創造、地域連携軸の展開等の地域連携によって推進されるプロジェクトにおいては、その主体の形成が重要である。このため、広域連合や一部事務組合等既存の広域行政制度を活用するとともに、地域間の連携の主体となる協議組織等について、その支援方策を検討する。また、地域間の連携を効果的なものにするためにも、基礎的な地方公共団体である市町村の自主的合併を積極的に推進する。


  (国による地域連携の支援策)

 地域連携を実効あるものとするため、地方分権の積極的な推進と併せて、国は既存の行政区域を越えた多様な地域間の連携を支援、促進する。すなわち、各地において進められている地域連携軸構想、多自然居住地域の創造等を推進する観点から、これらの先導的な地域における連携施策の展開手法や事業内容等の体系化と普及を行うとともに、地域の取組を踏まえつつ、基幹的な基盤の整備や複数の地方公共団体が共同して作成する計画に基づき行う共同事業に対する支援を含め、国として講ずるべき支援策の早期の具体化を図る。この一環として、国は、地域間の連携や交流の基礎となる情報の提供や地方公共団体への助言を行う。さらに、国と地方公共団体の連絡や調整をより円滑に進める観点から、必要な方策について検討する。


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