「21世紀の国土のグランドデザイン」 第2部 第3章 第1節 4

4 地方都市の戦略的整備

 (1) 地方都市の戦略的整備の基本的方向

 地方圏においては、地方中枢・中核都市圏を中心に都市機能の集積が着実に進んでおり、特に、地方の中枢拠点都市圏における集積は地方ブロック全体に効果を波及させている。しかしながら、これらの都市圏でも、中枢管理、研究開発、情報、国際交流等の高次都市機能については依然として集積が不十分である。また、地方中心・中小都市圏は、その多くが産業構造の変化等により活力が低下しており、地域の拠点としての役割が果たされていない。さらに、道路、下水道、公共交通機関等の都市・生活基盤の整備の状況をみても、地方中心・中小都市のみならず、地方中枢・中核都市においても立ち遅れている。

 このため、次のような基本的方向に基づき、地方都市の戦略的整備を積極的に推進する必要がある。

中枢拠点都市圏及び地方中核都市圏は、適切な機能分担と連携を図りながら、地域特性を生かした高次都市機能の強化を図ることにより、地方ブロックレベル、あるいは県レベルにおける地域の自立的発展の拠点としての役割を果たす。地方中心・中小都市は、多自然居住地域の拠点として、地方中核都市圏や他の地方中心・中小都市圏との連携により、都市的サービス機能を始めとした機能の充実や身近な就業機会の提供を図り、地域の自立の基礎を形成する。
各都市において、豊かな自然、特色ある歴史、文化、産業等を生かしながら、個性と魅力ある都市づくりを推進する。また、大都市にはないゆとりある快適な生活環境を形成するため、特に、整備が遅れている道路、下水道、公共交通機関等の都市・生活基盤の整備を促進する。
 (2) 地方都市の戦略的整備のための対策

  (中枢拠点都市圏)

 地方の中枢拠点都市圏においては、地域の自立的発展のための拠点の形成を図る観点から、地方ブロック全体のニーズ、連携の可能性等を踏まえながら、中枢管理、研究開発、情報、国際交流等の高次都市機能の充実を図る必要がある。特に、国際交流機能については、地球時代に対応し、世界に開かれた地域づくりを促進する観点から広域国際交流圏の拠点としての機能を果たすことが求められる。

 このため、各中枢拠点都市圏において、その規模や機能に応じて適切な役割分担と連携を図りつつ、国際交流機能を強化するよう、地域のニーズや個性を踏まえながら、質の高い国際空港、港湾、高規格幹線道路網やこれらへのアクセスのための道路・公共交通機関、国際会議場・展示場、情報通信基盤等の国際交流基盤の整備を図るとともに、国際会議、イベントの誘致やこれらを企画する組織、人材の育成を行う。また、高次都市機能の受皿となる良好な拠点市街地の整備を行うとともに、既存ストックの有効活用と併せた商業業務施設、公益施設等の集約、再配置を通じた中心市街地の活性化を推進する。さらに、地方における産業の発展を先導するため、大学等を核とした知的な蓄積を活用した研究学園都市、リサーチパーク等の整備を推進するとともに、研究開発機能を担う人材の育成、確保を図るため大学、研究開発機関等の充実や地域企業との連携強化を図る。

 また、都市圏を構成する他の都市、あるいは地方中核都市圏等との機能分担と連携を図るため、質の高い交通、情報通信基盤の整備を促進し、広域的な都市圏ネットワークの形成を推進する。

 さらに、中枢拠点都市圏は、今後も相対的に高い人口増加とこれにともなう都市圏の拡大が見込まれることから、大都市問題の発生を未然に防止しつつ、都市圏レベルでの都市・生活基盤の一体的かつ先行的な整備やTDM施策の実施、良質な住宅の供給を推進する。

  (地方中核都市圏)

 県庁所在市または人口が概ね30万人以上の都市である地方中核都市を中心とする都市圏においては、地域の自立的発展に向けた道県レベルでの拠点の形成を図る観点から、道県レベルでのニーズを踏まえながら、業務管理、情報、高次の教育・文化、医療・福祉等の高次都市機能の充実を図る必要がある。また、国際交流機能については、中枢拠点都市圏との適切な機能分担と連携を図りながら広域国際交流圏の副次的な拠点としての機能を果たすことが求められる。

 このため、地方中核都市圏において、中枢拠点都市圏と同様、高次都市機能の受皿となる拠点市街地や国際交流基盤の整備を図るほか、地方定住を促す魅力的な就業機会を提供できるよう、高度な生産・研究開発基盤やサービス産業基盤の整備を推進する。

 また、産業構造の変化への対応の遅れ等により活力が低下している都市においては、低未利用地を活用した大規模な土地利用転換や街区の再編等を通じて中心市街地の活性化を推進するとともに、高次の業務、商業・サービス、文化等の機能の導入を行い、都市の活性化を図る。

 さらに、ゆとりと利便性を兼ね備えた居住環境を実現するため、自然環境の豊かさや職住の近接性といった特性を生かしながら、良質な住宅の供給や道路、河川、下水道等の都市・生活基盤の整備を推進するとともに、特に都市交通については、TDM施策の実施、公共交通機関の整備等を図る。

  (地方中心・中小都市圏)

 人口が概ね30万人未満の都市である地方中心・中小都市においては、多自然居住地域の拠点として、都市的サービスを提供するとともに、個性あるまちづくりを通じた都市の魅力と活力を創出することにより、地域の自立の基礎を形成することが求められる。また、特に、産業構造の変化への対応が遅れている重化学工業等を基盤とする都市、停滞がみられる国内観光を基盤とする都市等については、既存の集積の有効利用を図りながら、新たな産業基盤の確立や集客能力の向上を図ることが重要である。

 このため、地方中心・中小都市において、基礎的な医療・福祉、教育・文化、消費等の都市的サービスや身近な就業機会を提供するとともに、周辺地域からの円滑なアクセスを確保できるよう圏域内の交通、情報通信基盤の整備を図り、地方中心・中小都市圏の一体的整備を推進することとし、特に、地方拠点都市地域については、地域の自立に向けて拠点性の向上を図る。財政上、利用効率上の観点からこれらの都市圏単独では整備できないような高度医療、文化等の高次都市機能については、アクセス条件の向上による地方中核都市圏における機能の享受や他の地方中心・中小都市圏等との連携による整備を図る。

 また、近年空洞化がみられる中心市街地においては、地域の個性を生かしながら商店街等の再生を行うとともに、文化施設、交流拠点、駐車場等の整備や道路、公共交通機関によるアクセスの向上、電気通信の高度化を一体的、総合的に推進することにより、都市的魅力を創出し、その活性化を図る。生活の質的向上のニーズに対しては、自然環境や農業的土地利用との調和を図りながら、遅れている道路、河川、下水道等の都市・生活基盤の整備や良質な住宅の供給を積極的に推進し、快適な居住環境を形成する。

 (3) 多自然居住地域の創造に向けた中小都市等の整備

 多自然居住地域の拠点としての役割が特に期待される中小都市等については、21世紀型のライフスタイルが実現できる新しい都市のあり方を実践するフロンティアとして、画一的でない個性あるまちづくりを推進する。このため、UJIターン者を含む多様な人材、地域固有の歴史的・文化的資源、豊かな自然環境、特色ある地域産業等を活用して、観光・リゾート都市、芸術・文化都市、伝統産業都市等、地域の魅力ある個性の創出や文化の香り高いまちづくりの推進を図る。これら個性あるまちづくりの中から、その成果を全国、さらには世界に向かって情報発信することにより、国内外と活発に交流する「小さな世界都市」が形成される。


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