事業マネジメントの推進
下水道事業における事業マネジメントとは、地方公共団体の実情や財源・人的資源の制約条件を踏まえ、避けて通ることができない施設の老朽化対策を起点として、強靭化、脱炭素化、肥料利用等の各施策の目標と優先度を定めて、効率的に事業を実施し、下水道事業を将来にわたり継続させるための取組をさします。
(1)老朽化施設の増大
・令和4年度末における、全国の下水道管渠の総延長は約49万km。
・標準耐用年数50年を経過した管渠の延長約3万km(総延長の約7%)が、10年後は約9万km(約19%)、20年後は約20万km(約40%)と今後は急速に増加します。
・令和3年度末で約2,200箇所ある下水処理場でも、機械・電気設備の標準耐用年数15年を経過した施設が約2,000箇所(全体の90%)と老朽化が進行しています。
・持続的な下水道機能確保のため、計画的な維持管理・改築事業の実施が必要です。
(2)下水道事業における主要な施策
下水道事業を取り巻く環境として、老朽化施設の増大以外にも以下に示すさまざまな課題を抱えています。
・災害リスクの増大
・脱炭素・資源利用への貢献
・地方公共団体における下水道担当職員の減少等の執行体制の脆弱化
・人口減少等による使用料収入の減少
加えて、下水道事業をめぐる社会情勢及び求められる施策(役割)は、以下に示すようなものを含め、大きく変化しています。
・令和4年9月 閣議決定された「バイオマス活用推進基本計画」を受けた下水汚泥資源の肥料利用拡大
・令和5年6月 民間ノウハウの一層の導入により持続可能性の確保等を図る観点から、「PPP/PFI推進アクションプラン(令和5年改定版)」に位置づけられたウォーターPPPの推進
事業マネジメント促進に向けた取組
事業マネジメントは新たに計画を策定するものではなく、下水道事業に係る方向性や運営方針、目標を明確にしてCAPDサイクルを回す取組であり、これらの取組は、組織全体で共有することが重要です。
なお、事業マネジメントは、常に実施するものであるが、事業計画、ストックマネジメント計画や各種計画の見直しの際に反映します。必要に応じて、人口や汚水量などの計画フレームを見直し、施設規模の適正化を図ることも有効です。
以下に、事業マネジメントの実施手順を示します。
[1]現状評価と課題抽出【C:評価】
下水道事業の運営状況について、客観的指標を用いたギャップ分析や、現有施設規模に対する実績を比較することにより、現状評価を行います。また、現状評価の結果を踏まえ、課題を抽出します。
[2]目標設定【A:改善】
課題を解決するために実施すべき施策の設定を行います。下水道事業の基本理念(下水道事業の方向性)、基本方針(下水道事業の運営方針)を明確にした上で、各施策のアウトカム(成果目標)とアウトプット(取組目標)を設定します。なお、目標は各施策の優先度を考慮して設定しますが、各施策の優先度は施策相互の調整を図りながら設定します。
[3]施策相互の調整【P:計画】
目標を達成するために、各施策の優先度を設定した上で、施策相互の調整を図ります。また、施策実施に対する効果と未実施に対するリスクについて把握します。
[4]各施策の実施および進捗管理【D:実施】
整理した各施策に係る計画に基づき、施策(事業)を実施します。併せて、設定した目標に基づき、各施策の進捗を管理します。
<事業マネジメントの実施フロー>
ガイドライン
下水道事業における事業マネジメント実施に関するガイドライン-2024年版-
【本編】
下水道事業における事業マネジメント実施に関するガイドライン-2024年版ー
【事業マネジメント実施のための活用ツール】
事業マネジメント実施のための簡易セルフチェックリスト
参考
事業マネジメント実施に関するガイドライン策定委員会