50国土地第四号
昭和五〇年一月二〇日

土地対策担当部長あて

国土庁土地局地価調査議長通達


国土利用計画法の施行に伴う土地価格の評価等について


標記については、「国土利用計画法の施行について」(昭和四九年一二月二四日付け49国土利第六〇号及び同日付け49国計総第六六号、四九国土利第六一号)によるほか下記の事項に十分留意し、その運用に遺憾のないようにされるとともに、速やかに貴管下市町村に周知方取り計らわれたい。

第一 基準地の標準価格についての周知措置について

都道府県知事は、国土利用計画法施行令(以下単に「令」という。)第九条第一項の規定により基準地の標準価格を判定したときは、次の周知措置を講ずるものとする。
一 基準地の所在、基準地の単位面積当たりの価格、価格判定の基準日、基準地の地積及び形状、基準地及びその周辺の土地の利用の状況並びに基準地についての土地の客観的価値に作用する諸要因に関する事項で都道府県知事が必要と認めたものを、都道府県の公報等で公告すること。
二 関係市町村(都の特別区の存する区域にあっては特別区、地方自治法第二五二条の一九第一項の指定都市にあっては当該市の区)の長に対して、一の公告事項を記載した書面及び当該基準地の所在を表示する図面を送付し、これらの図書を当該市町村の事務所において一般の閲覧に供すること。

第二 基準価格の算定に関する事務について

令による基準価格の算定については、次に定めるところに留意するものとする。
一 固定資産税評価額倍率方式(固定資産税評価額を採用する方法をいう。以下同じ。)について

地価公示の対象となる区域以外の区域において、許可申請に係る土地が市街地を形成している区域のうち土地の利用状況が安定していると認められる一帯の地域で基準地を含むものの内に所在し、かつ、当該土地の利用価値が当該基準地の利用価値に類似している場合については、宅地の所有権の相当な価額は、固定資産税評価額倍率方式により算定されることになる。

この場合、

ア 土地の利用状況が安定していると認められる一帯の地域とは、過去及び近い将来にわたって土地の利用の変動が少ない建物が連たんしている市街地をいうものである。したがって、区画整理、再開発、新規開発等による土地利用の変動が進行している地域又は住宅地化が進んでいる市街地周辺地域は該当しない場合が多いと思われる。
イ 土地の利用状況が安定していると認められる一帯の地域であっても、面積が基準地の面積に比較して著しく異なる土地、高圧線下若しくは高架の道路の路面下の土地、袋地、無道路地、不整形地、分合筆若しくは地目の変換等により評価替を行うべき土地又は付近の土地に比べて環境条件等により価格水準に差がある土地等特殊な態様の宅地については適用が除外される。
ウ 基準地の固定資産税評価額の倍率(当該基準地に係る指定時標準価格を当該基準地の固定資産税評価額の単位面積当たりの価格で除して得た値)を一率に適用できる宅地であるか否かは、現地における適確な状況判断が必要である。このため、土地の利用状況が安定していると認められる一帯の地域及び固定資産税評価額倍率方式を適用できると思われる宅地の範囲をあらかじめ調査しておくことが望ましい。
エ 基準地の固定資産税評価額及びその倍率は公表しないものとする。
オ 固定資産税評価額倍率方式を適用した場合であって不許可処分(法第一六条)又は勧告(法第二七条の五又は法第二七条の八)を行う場合には、さらに念のため二の標準地比準方式及び三の独自評価による方法を援用して基準価格の検証を行うことが望ましい。

二 標準地比準方式及び土地価格比準表について

一が適用される宅地以外の宅地及び森林の土地については、その基準価格は地価公示の対象となる区域の内外にわたり標準地比準方式(許可申請に係る土地とこれに類似する利用価値を有すると認められる地価公示に係る標準地又は基準地との位置、地積、環境等の土地の客観的価値に作用する諸要因についての比較を行い、その結果に基づき、当該基準地等の指定時標準価格に比準して価格を求める方法をいう。)により算定されることとなる。
ア 標準地比準方式により価格判定を行う場合には、宅地及び宅地見込地については、住宅地域、商業地域、工業地域及び宅地見込地域の区分に応じて、別添一の土地価格比準表を原則として適用するものとする。この場合における概略試算については、後述(第三)するところに留意されたい。また、森林の土地については、別添三の林地価格比準表を原則として適用するものとする。
イ 許可申請又は届出に迅速に対処するため、あらかじめ土地価格比準表の比較項目の判定資料として市町村ごとに、都市計画、土地利用、公共施設整備状況、用途地域とその細別等の一覧図を整備するものとする。
ウ 規制区域を指定する場合には、局長通達第五の四の(三)に示すところにより、当該規制区域の指定の公告の時における現況を把握するものとする。

三 独自評価について

固定資産税評価額倍率方式及び標準地比準方式によらない土地については、取引事例比較法、収益還元法、原価法等を適用することにより独自に基準価格の評価がなされることになる。
ア 鑑定評価手法を完全に行使することは専門家としての不動産鑑定士または不動産鑑定士補に期待せざるを得ないが、鑑定評価書の審査及び相当な価額≠フ最終的判定は、貴職の責任であるので、鑑定評価手法の要点については、十分の理解を深めておく必要がある。
イ 公共用地取得価格、農地取引価格、林地取引価格等を公共事業施行者、農業委員会、森林組合等から取引事例資料として収集し、地価水準及びその推移に関する分析資料を整備するものとする。
ウ 田、畑等の用途別の農業収益及び用材林、薪炭林等の用途別の林業収益について、農業部等関係部局との協調体制のもとに調査し、その結果を整備するものとする。
エ 独自評価を行う場合における取引価格等からの比準に当たっては、対象地の種別等により、土地価格比準表、林地価格比準表及び借地権価格比準表のほか、別添四の農地価格比準表を参考とするものとする。

四 地上権及び賃借権等の評価及び借地慣行調査について

地上権及び賃借権の価格は、直接その権利の価格の審査の対象となるほか、他の土地に関する使用及び収益を目的とする権利の価格とともに、これらの権利の目的となっている土地の所有権(底地)の審査と関連して把握する必要が生ずる。
ア 権利の評価は、取引事例比較法及び収益還元法により求めるものであるから、国税における評価、公共用地取得における評価等を参考とするとともに用地関係部局との協調体制を整えるものとする。
イ 借地権の評価は借地取引が慣行として成熟している地域においては借地権割合による評価が実務上有効であるので、別記一の調査表に準じ、市町村ごとに借地権の取引慣行、更新料、名義書換料の慣行等の借地権慣行を調査し、その結果を整備するものとする。

なお、借地権の価格の判定を行う場合には、別添五の借地権価格比準表を原則として適用するものとする。

五 地上物件評価の取扱いについて

(1) 土地を建物及び工作物等と一体として取引する場合等の許可の申請又は届出に係る土地については、まず建物、工作物等のうわ物の評価を行い、その結果により当該土地の価格を判定することとなる。

ア 建物、工作物等の評価には、建築技術面における専門的な知識が必要とされるので関係部局との連携体制のもとに、建築工事歩掛り、労賃等の評価資料、金融、損害保険等の各機関における建物価格資料等を整備し、評価の適正を期するものとする。
イ 土地と新築の建物を一括譲渡する場合の当該建物の譲渡価額相当額の算定については、別記二により算定した額を基準とすることができるものとする。

(2) 許可申請又は届出に係る土地に関する権利の移転又は設定をする契約と一体とみなされる契約(営業補償、移転料等その名目のいかんを問わず土地に関する権利の移転又は設定をする契約に附随し又は権利の移転又は設定と相当因果関係を有すると認められる支払を内容とする契約)が行われていると認められる場合には、許可申請書、届出書又は確認申請書の「その他参考となるべき事項」欄に記入させるとともに必要な調査を行う等の方法により当該契約が適正なものであるか否かの審査を行い、許可申請又は届出に係る土地に関する権利の予定対価の額の適確な判断を行うものとする。

六 相当規模の土地を一括取得する場合の取扱いについて

局長通達第五の三の(4)に示すとおり、令第七条第二項の規定による相当規模の一団の土地の価額の算定は、相当規模の土地の区域を類似地区に分け、それぞれの地区ごとに標準的な土地(以下「代表地」という。)を選定し、当該代表地について令第七条第一項第一号から第三号までの各規定により算定した価額を基準として当該地区内のすべての土地の価額を求めることができるものである。
(1) 相当規模の一団の土地とは、国土利用計画法施行規則(以下単に規則という。)第九条に規定するとおり、面積が一ヘクタール以上であり、かつ、土地の形状等が一団の土地として有効な利用を図るために適当と認められるものでなくてはならないが、当該相当規模の一団の土地の認定は実現が確実と認められる事業計画により判断してさしつかえないものである。
(2) この取扱いは、当該規模の一団の土地の所有者のうち相当数の者が同時に許可申請をした場合に適用される。この場合相当数の者とは、(1)の事業計画により設定された一団の土地のうち、あわせておおむね面積一ヘクタール以上となる土地に係る土地所有者として運用するものとする。
(3) 代表地の基準価格の算定は、取得の目的が住宅用地等宅地開発を目的とするものである場合には、通常令第七条第一項第三号(令第一八条により準用する場合を含む。)の規定により宅地見込地としての評価を行うことになる。

また、相当規模の一団の土地とは、住宅用地等宅地開発を目的とするものだけをいうものではなく、その他を目的とするものであっても、(1)及び(2)の条件に該当するものであれば適用されるものであるが、この場合における代表地の基準価格の算定はその用途に応じそれぞれ令第七条第一項第一号から第三号までの各規定に基づき評価することになる。

(4) 以上の前提のもとに、住宅用地等の宅地開発を目的とする場合の相当規模の一団の土地の評価方法を例示すれば、おおむね、次のとおりである。

この場合、実現可能と認定される事業計画が一五ヘクタールで、第一回目の許可申請又は届出が五ヘクタール、第二回目が二ヘクタール、第三回目が四ヘクタール、第四回目が最終回であると仮定する。
ア 実現可能と認定される事業計画が一五ヘクタールであるから、(1)の条件を充たすことになるので、各回の許可申請又は届出の規模を問わず、代表地価格による評価を行うことができる。また、各回の許可申請又は届出に係る土地が相当規模の一団の土地と認定されなくても、一五ヘクタール全体について相当規模の一団の土地と認定されるものであれば足りるものである。ただし、各回の規模は少なくとも一ヘクタールを超えるものでなくてはならないとともに、最終回の申請又は届出により一団の土地としての形状が実現されるものであることの確認ができるものでなくてはならない。
イ 相当規模の一団の土地の個々の土地の算定は、地区割りに基づくそれぞれの地区ごとの代表地の基準価格に基づき算定された価額が当該個々の土地の相当な価額になるものであるが、「適正を欠く」又は「著しく適正を欠く」の判断は許可申請又は届出に係る予定対価の額の総額が、相当な価額の範囲内に納まっているものであるか否かにより行うことができるものである。この場合上記例については、第一回目から第三回目までは、それぞれ五ヘクタール、二ヘクタール、四ヘクタールの宅地開発がなされるものとして(3)による土地の評価を行い、それぞれについて上記総額の判断がなされるが、最終回の第四回目の総額の判断は一五ヘクタールの宅地開発がなされるものとして(3)による土地の評価を行い、当該最終回の四ヘクタールの土地の相当な価額の判定を行い、かつ、「適正を欠く」又は「著しく適正を欠く」の判断は、第四回目の時点における相当な価額の一団の土地全体の総計から第三回目までに取得された土地の予定対価の額の合計額を第四回目の価格時点に修正したものを控除して得た額の範囲内に当該最終回の予定対価の額の総計が納まっているか否かにより判断して差しつかえないものである。

(5) 法施行時前一団の土地の大半の取得が終了し、残りの土地をまとめて許可申請又は届出をする場合において、当該残りの土地を併合することにより相当規模の一団の土地となると認定出来るものであるときは、経過措置として以上の取扱いに準じた扱いとしてさしつかえない。
(6) 局長通達第七による事前指導において地区割り、それぞれの地区の代表地の決定、代表地及び個別の土地の相当な価額の判定を行うことになるが、これらの指導結果は都道府県での手持資料として正式の許可申請又は届出審査の場合に備えて保存しておくものとする。

七 事情変更の取扱いについて

令第七条第三項及び規則第一〇条及び第一一条に規定するいわゆる事情変更の取扱いについては、局長通達第五の三の(5)によるほか、次によるものとする。
ア 事情変更に該当する事項は地目変換、法令に基づく措置、土地の区画形質の変更、土地に関する所有権以外の権利の設定、消滅又は内容の変更、水道、道路その他の公共施設又は学校その他の公益的施設の整備のほか、これらに準ずると認められるものが含まれ、土地価格比準表中の価格形成要因項目がこれらに該当するものである。事情変更を認めた趣旨は土地の実質的な効用増又は減を価格に反映せしめる趣旨であるから、令第七条第三項に規定するとおり、事情変更として認められるものはこれらの事情の変更が著しい場合に限られるとともに、これらの事情変更が現に確実に実現されている状態でなければならない。したがって計画段階、造成段階のものは含まれないものである。
イ これらの事情変更があったものとして算定される規制区域の指定の公告の時における基準価格には、令第七条第三項後段の規定により宅地の造成等のための費用は算入されないことに留意されたい。地目変換、区画形質の変更等宅地の造成等が行われる場合の当該費用は令第一一条の規定により後に加算されることになる。
ウ 規則第一一条の規定により、以上の事情のうち都市計画その他の法令により制限が課せられ、かつ、当該法令の規定により当該土地を取得することができる者が当該土地を買い取る場合が除かれているので、公共事業の起業者が都市計画制限等により起業損失を与えた場合の当該土地を買い取る場合にはその制限がないものとして評価することができるものである。このことは規制区域指定前からこのような事情があった場合及び法令によらない制限例えば公共事業としての嫌悪施設の制限による起業損失が生ずる場合にも類推して適用されると解してさしつかえない。

八 物価の変動に応ずる修正率の算定方法について

物価の変動に応ずる修正率の算定については、局長通達第五の三の(2)において示したところであるが、その具体的な計算例は次のとおりである。なお、算定にあたって用いるべき全国総合消費者物価指数及び投資財指数は、これらの指数の双方が公表されている月の指数を用いることとされているので特に留意する必要がある。
(計算例)
昭和五〇年一月一日に規制区域の指定の公告がされ、昭和五〇年一〇月一日に許可申請があったものとする。また、物価の変動は、別表のとおりであったとする(昭和四九年一二月以後の指数は架空のものである。)。
(1) PcPiは、昭和四九年一二月、昭和五〇年一月及び二月の三カ月の指数の相加平均であるから、

Pc=(166.1+167.8+169.5)×1/3
Pi=(148.1+148.9+149.7)×1/3

(2) Pc′Pi′は、昭和五〇年一〇月一日現在でこれらの指数が公表されている最近の三カ月の指数の相加平均、すなわち、昭和五〇年六月、七月及び八月の三カ月の指数の相加平均であるから、

Pc′=(176.3+178.1+179.9)×1/3
Pi′=(155.7+157.3+158.9)×1/3

(3) これらを用いて

Pc′/Pc=((176.3+178.1+179.9)×1/3)/((166.1+167.8+169.5)×1/3)=534.3/503.4=1.061
Pi′/Pi=((155.7+157.3+158.9)×1/3)/((148.1+148.9+149.7)×1/3)=471.9/446.9=1.056

(4) 規則第二十五条第一号の(Pc′/Pc″)n/60において、Pc″は、Pc′の数値を算定する基礎となった三カ月に対応する五年前の三カ月の指数の相加平均であるので、昭和四五年六月、七月及び八月の全国総合消費者物価指数の相加平均である。したがって、

Pc′=(176.3+178.1+179.9)×1/3
Pc″=(99.3+99.2+98.9)×1/3
ゆえに Pc′/Pc″=(534.3×1/3)/(297.4×1/3)=1.797

(5) つぎに、nは、Pcの数値を算定する基礎となった三カ月の第二月目の月、すなわち昭和五〇年一月からPc′の数値を算定する基礎となった三カ月の第二月目の月、すなわち昭和五〇年七月までの月数であるから、nは値は六である。したがって、

(Pc′/Pc″)n/60=1.797(n/60)

ここで、対数表を用いて計算すると

(Pc′/Pc″)n/60=1.797(6/60)=1.060<1.061=Pc′/Pc

ゆえに、Pc′/Pcに替えて、(Pc′/Pc″)n/60=1.059の数値を用いることとする。

(6) 同様に、

(Pi′/Pi″)(n/60)=(((155.7+157.3+158.9)×1/3)/((99.8+100.2+100.5)×1/3))6/60=(471.9/300.5)6/60=1.570(6/60)=1.046<1.056=Pi′/Pi

(7) 以上により本件の場合の物価の変動に応ずる修正率は、

1.059×0.8+1.046×0.2=0.848+0.2092=1.0564


別表

年月
全国総合消費者物価指数
投資財指数
四五・六
九九・三
九九・八
九九・二
一〇〇・二
九八・九
一〇〇・五
四九・一二
一六六・一
一四八・一
五〇・一
一六七・八
一四八・九
一六九・五
一四九・七
一七一・二
一五一・二
一七二・九
一五二・七
一七四・六
一五四・二
一七六・三
一五五・七
一七八・一
一五七・三
一七九・九
一五八・九

九 宅地の造成等に要する費用の算定方法について

(1) 宅地の造成等に要する工事費について

ア 宅地の造成等に要する工事費とは、本工事費、附帯工事費その他の造成に直接必要とする工事費のほか建物その他の工作物の移転費、除却費及び当該造成に伴い当然発生する道路、公園等の敷地に提供される用地取得費を含むものである。

宅地の造成に直接必要とする工事費の範囲は、別記三に掲げるとおりである。

イ 工事費の適正額の判定は「土木請負工事工事費積算要領」(建設省官技第三四号、昭和四二年七月二〇日)、「土木請負工事工事費積算基準」(建設省官技第三五号、昭和四二年七月二〇日、一部改正建設省官技第四四号、昭和四四年五月九日)、「昭和四九年度建設省建設工事積算資料について」(建設省官技第二〇九号、昭和四九年九月一一日)等に準じ設計書、積算明細書等により行うものとする。

(2) 公共公益施設負担金について

いわゆる公共公益施設負担金とは、宅地の造成に伴う公共施設又は公益的施設に係る負担(現物による提供を含む。)のことであるが、この取扱いは法の趣旨からして当該宅地の造成に必要とされる範囲に限られるべきものと考える。したがって、知事はこの額の認定にあたっては的確な判定が必要であるとともに、場合によっては公共公益施設負担金を課している市町村等の調整を行い最終的な額の認定をすることも必要となるものである。

(3) 販売費及び一般管理費について

宅地の造成及び販売段階における販売費及び一般管理費に該当する費用項目は、別記四に掲げるところであるが、現実の積算においては、各年ごとの標準的投下費用(土地取得費及び造成費)に当該年に対応する保有等期間を乗じて得た額の合計額に四パーセントを乗じて得た額を基準とすることができるものとする。

(4) 宅地の造成等に充当する資金に要する費用

この費用に該当するものは、以上の宅地の造成等に要する費用を調達する借入れ資金に対する利子相当額及び自己資金に対する報酬相当額であり、いわゆる適正利益として扱われる範囲のものである。適正利益は、各宅地造成によりそれぞれ異なるものであるが、現実の積算においては、原則として(1)から(3)までの合計額に別記六により算定した宅地の造成等に要する資金に対する適正利益率を乗じて得た額を基準とすることができるものとする。

一〇 土地の管理に要した費用について

遊休土地の買取り価格は、法第三三条の規定により、令第二二条の算定方式による基準価格を基準とし、当該土地の取得の対価の額及び当該土地の管理に要した費用の額を勘案して算定することとされている。この趣旨は、遊休土地の買取りが結果的に投機的取引の容認につながることのないよう、基準価格そのものではなく、当該土地の原価を考慮した価額とするものであり、したがって、土地の取得の対価の額及び土地の管理に要した費用の額を勘案する場合とは、当該土地の原価が当該土地の基準価格を下回るときに限られるものである。
土地の管理に要した費用とは、草刈り、除草、囲障の新設補修見廻り、防災工事等の直接的な費用及び公租公課、出張費等の間接的な費用である。
なお、当該土地について宅地の造成等のための費用を負担した場合には、当該費用を土地の管理に要した費用として勘案することとなる。

第三 その他

一 価格審査における実務上の手続について

価格審査は、局長通達第五、第七及び第八並びに本通達第二により行うべきものであるが、実務上の手続としては、おおむね次の方法により価格審査事務を進めることとしてさしつかえないものである。
(1) 届出の場合

ア 固定資産税評価額倍率方式を適用して価格を算定すべき場合にあっては、第二の一による算定を行い、著しく適正を欠くおそれがないものと認められる場合には勧告又は価格修正指導をしない。
イ 標準地比準方式を適用して価格を算定すべき場合にあっては、別添二の住宅地及び商業地の価格の簡便算定方法による概略試算を行い、著しく適正を欠くおそれがないものと認められる場合には勧告又は価格修正指導をしない。この場合において、アに準じて行う試算も参考になるものと思われる。
ウ 独自評価により価格を算定すべき場合にあっては、相続税評価に係る倍率、鑑定評価先例、精通者意見等を参考としてその地域のおおよその価格水準を把握し、著しく適正を欠くおそれがないものと認められる場合には勧告又は価格修正指導をしない。
エ 大規模取引に係る届出又は事前確認については、鑑定評価書が添付されている場合においても、原則として、アからウまでの方法による審査を行うものとする。ただし、添付された鑑定評価書の内容について、標準地又は基準地の公示価格又は標準価格に比準して適正に価格算定が行われているか否か、取引事例比較法、収益還元法、原価法等が適切に適用されているか否か等の検証を行い、当該鑑定評価書の内容から基準価格が判定できる場合にあっては、これにより審査を了して差し支えない。
オ 届出価格が著しく適正を欠くおそれがあると認められるときは、第二において述べたところにより、基準価格の判定を慎重に行ったうえ、勧告又は価額修正指導を行うか否かを判断するものとする。この場合において、勧告又は価額修正指導を行うときは、原則として、一又は二以上の鑑定評価書を徴し、基準価格の判定を行うものとする。

(2) 許可申請の場合

ア (1)のアからウまでに準じる方法による審査を行い、適正を欠くおそれがないものと認められる場合には許可する。
イ アの審査により、許可申請価格が適正を欠くおそれがあると認められる場合には、(1)のオに準ずる方法により、許可するか否かを判定するものとする。

二 価格審査における窓口事務について

許可申請書又は届出書は市町村長を経由し、都道府県知事に当該市町村長の意見とともに送付されることとなるが、この場合において、市町村は次に掲げる事項を調査し、併せて報告するものとする。
(1) 基準価格の算定方法として、固定資産税評価額倍率方式、標準地比準方式又は独自評価による方法のうち妥当と認められるもの。
(2) 固定資産税評価額倍率方式を用いて基準価格を算定することが妥当であると認められる場合、許可申請又は届出に係る土地の単位面積当たりの固定資産税評価額並びに適用すべき倍率及び当該倍率の算定方法。
(3) 標準地比準方式を用いて基準価格を算定することが妥当であると認められる場合、許可申請又は届出に係る土地と類似の利用価値を有すると認められる標準地又は基準地の公示価格又は標準価格並びに価格比準のための各比較項目の調査。
(4) 許可申請又は届出に係る土地に関する権利が土地に関する地上権又は賃借権である場合は近傍類地に関する当該権利と同種の権利に係る地代又は借賃、権利金、権利の存続期間その他の契約内容並びに慣行借地権割合。
(5) 許可申請又は届出に係る土地が、規則第九条に規定する要件に該当する一団の土地の区域内に所在し、かつ、当該一団の土地に係る土地の所有者のうち相当数の者が同時に許可申請又は届出をした場合、(局長通達第七の事前指導に依る場合を除く。)令第七条第二項(令第八条第二項、及び第一八条において準用する場合を含む。)の規定により相当な価額を算定することとなるが、この場合における状況類似地区の区分及び代表地の選定の適否。

三 限定価格について

隣地買収等に関係して求められる限定価格については、政令における基準価格とは認められないこととなったが、限定価格に係る取引により現に行われている土地利用の単位が拡大されること等により土地の効用が増大する場合においてはその経済価値の増加すると認められるものを「適正を欠く」又は「著しく適正を欠く」の運用上特に配慮することができるものである。
この場合において運用上特に配慮することができると考えられる経済価値の増加分の取扱いについては、次によるものとする。
(1) 借地権と底地との併合を目的とする取引のうち、借地人が底地を買い取る場合の経済価値の増加分は、賃貸借契約等による使用方法の制約(例えば堅固な建物の建設が可能な地域で非堅固な建物の借地権が設定されている場合)等が併合により解除され、その結果、当該制約等による減価部分が回復されることとなるので、当該回復部分に相当する額を考慮して判定する。また、地主が借地権を買い取る場合の経済価値の増加分は、当該経済価値の増加分のうち適正と認められる額を借地権へ配分するが、この配分額の判定にあたっては名義書替料の額を考慮しなければならない。
(2) 隣地買収等の隣接地の併合を目的とする取引に係る経済価値の増加分は、当該経済価値の増加分のうち、併合される土地が併合後の土地の効用の増大に寄与する割合を標準として適正と認められる額を当該土地への配分とする。

四 消費税額の取扱いについて

価格審査において、消費税の課税対象となるものの額については、消費税額(消費税額と地方消費税額を合わせた額)に相当する額を含む額とする。



附 則 (平成元年一月二六日 元国土利第六号、元国土地第一七号)

1 改正後の規定は、平成元年四月一日以後の届出及び事前確認申請について適用する。ただし、4、5又は6に該当する同年四月一日以後の届出及び事前確認申請については、この限りでない。
2 平成元年三月三一日までの間に、同年四月一日以後に引渡しを行うため、予定対価の額に消費税額に相当する額が含まれることとなる届出又は事前確認申請を行おうとする場合には、下記によるものとする。

(1) 届出書又は確認申請書に同年三月三一日以前に引渡しを行う場合の額を下段に、同年四月一日以後に引渡しを行う場合の額を上段に( )書きで記載させること。
(2) 同年四月一日以後にのみ引渡しを行う場合は、届出書又は確認申請書にその場合の額のみを( )書きで記載させること。
(3) 届出書又は確認申請書に( )書きで記載された予定対価の額については同年四月一日以後に引渡しを行うものに限って有効である旨を不勧告通知書及び確認書に附記すること。
(4) 同年三月三一日以前に勧告を行う場合には、勧告書に同年三月三一日以前に引渡しを行う場合の勧告事項と同年四月一日以後に引渡しを行う場合の勧告事項を併記すること。

3 平成元年二月一八日以前に届出又は事前確認申請が行われ、審査中であるが、同年四月一日以後に引渡しが行われるため、消費税の転嫁のみにより当該届出又は事前確認申請に係る予定対価の額を増額して契約を締結しようとする場合には、新たな届出又は事前確認申請が行われることとなるが、この場の届出又は事前確認申請の取扱いについては、下記によるものとする。

(1) 従前の届出又は事前確認申請を取り下げたうえで、新たな届出又は事前確認申請を行わせること。
(2) 届出書又は確認申請書に同年三月三一日以前に引渡しを行う場合の額を下段に、同年四月一日以後に引渡しを行う場合の額を上段に( )書きで記載させること。
(3) 同年四月一日以後にのみ引渡しを行う場合は、届出書又は確認申請書にその場合の額のみを( )書きで記載させること。
(4) 不勧告通知書及び確認書には、当該不勧告通知又は確認に係る届出書又は確認申請書に( )書きで記載された予定対価の額については同年四月一日以後に引渡しを行うものに限って有効である旨を附記する。
(5) 同年三月三一日以前に勧告を行う場合には、勧告書に同年三月三一日以前に引渡しを行う場合の勧告事項と同年四月一日以後に引渡しを行う場合の勧告事項を併記すること。
(6) 事務処理については、従前の届出又は事前確認申請との関連において可及的速やかに了するよう努めることとし、手続についても簡素化に努めること。
(7) 添付図書については、既に提出されたものをもって代えることができるものとすること。

4 不勧告通知がなされ、かつ、当該不勧告通知に係る契約における引渡しが平成元年四月一日以後に行われるため、消費税の転嫁のみにより当該不勧告通知に係る予定対価の額を増額して契約を締結しようとする場合には、新たな届出が行われることとなるが、この場合の届出の取扱いについては、下記によるものとする。ただし、昭和六三年一二月二九日以前又は平成元年二月一九日以後に当該不勧告通知に係る契約が締結された場合については、この限りでない。

(1) 届出書の記載事項のうち、同年四月一日以後に引渡しを行う場合の額については、( )書きで記載させること。
(2) ( )書きで記載された箇所以外については、従前の審査結果を活用できるものはこれを用いること。
(3) 新たな不勧告通知書には、当該不勧告通知に係る届出書に( )書きで記載された予定対価の額については同年四月一日以後に引渡しを行うものに限って有効である旨を附記すること。
(4) 事務処理については、可及的速やかに了するよう努めることとし、手続についても簡素化に努めること。
(5) 添付図書については、既に提出されたものをもって代えることができるものとすること。

5 確認を受けて締結しようとする契約における引渡しが平成元年四月一日以後に行われるため、消費税の転嫁のみにより当該確認に係る予定対価の額を増額して分譲を行おうとする場合には、新たな事前確認申請が行われることとなるが、この場合の事前確認申請の取扱いについては、下記によるものとする。ただし、新たな事前確認申請を行おうとする日の翌日から起算して従前の確認に係る有効期間の満了日の日までの期間が一〇日間に満たない場合については、この限りでない。

(1) 確認申請書の記載事項のうち、同年四月一日以後に引渡しを行う場合の額については、( )書きで記載させること。
(2) ( )書きで記載された箇所以外については、従前の審査結果を活用できるものはこれを用いること。
(3) 新たな確認書には、当該確認に係る確認申請書に( )書きで記載された予定対価の額については同年四月一日以後に引渡しを行うものに限って有効である旨を附記すること。
(4) 新たな確認の有効期間については、従前の確認に係る有効期間の満了日をもってその満了日とすること。ただし、同年三月三一日以前の申請に基づき従前の確認の有効期間が延長された場合には、当該延長された有効期間の満了日をもって、新たな確認の有効期間の満了日として取り扱うこと。
(5) 事務処理については、可及的速やかに了するよう努めることとし、手続についても簡素化に努めること。
(6) 添付図書については、既に提出されたものをもって代えることができるものとすること。

また、確認を受けて締結された契約における引渡しが平成元年四月一日以後に行われるため、消費税の転嫁のみにより対価の額を増額し、当該確認に係る予定対価の額を超えて新たに契約を締結しようとする場合には、新たな届出が行われることとなるが、この場合の届出の取扱いについては、4の(1)、(2)、(3)、(4)及び(5)を準用することとする。ただし、昭和六三年一二月二九日以前又は平成元年三月一日以後に当該確認に係る契約が締結された場合については、この限りでない。

6 勧告がなされ、かつ、当該勧告に基づき締結しようとする契約における引渡しが平成元年四月一日以後に行われるため、消費税の転嫁のみにより当該契約に係る対価の額が勧告事項に記載された許容上限価額を超える場合には、当該勧告に従わないことになり、公表される場合があるため、あらかじめ、その転嫁された消費税額に相当する額が適正であるか否かを判断することが必要であるので、都道府県又は政令指定都市の担当課において勧告を受けた者から相談を受け付けるものとする。

また、勧告がなされ、かつ、当該勧告に基づき締結された契約における引渡しが平成元年四月一日以後に行われるため、消費税の転嫁のみにより対価の額を増額し、当該勧告事項に記載された許容上限価額を超えて新たに契約を締結しようとする場合には、新たな届出が行われることとなるが、この場合の届出の取扱いについては、4の(1)、(2)、(3)、(4)及び(5)を準用することとする。この場合においても、都道府県又は政令指定都市の担当課において当該届出を行う者からの相談を受け付けるものとする。ただし、昭和六三年一二月二九日以前又は平成元年二月一九日以後に当該勧告に係る契約が締結された場合については、この限りでない。

7 2、3、4及び5に係る価格審査並びに6の取扱いに当たっては、適正な消費税額に相当する額を勘案するものとする。



附 則 (平成八年八月二六日 八国土利第一九一号、八国土地第二六三号)
1 改正後の規定は、平成九年四月一日以後の届出及び事前確認申請について適用する。
2 平成九年三月三一日までの間に、同年四月一日以後に引渡しを行うため予定対価の額に消費税と地方消費税を合わせた税率五%が適用される場合の税額に相当する額が含まれることとなる届出又は事前確認申請を行おうとする場合には、下記によるものとする。

(1) 届出書又は確認申請書の予定対価の額の欄に、消費税率三%が適用される場合の額を下段に、消費税と地方消費税を合わせた税率五%が適用される場合の額を上段に( )書きで記載させること。
(2) (1)のうち、平成八年一〇月一日以後にのみ契約の締結を行い、かつ、平成九年四月一日以後にのみ引渡しを行う場合は、届出書又は確認申請書の予定対価の額の欄に、消費税と地方消費税を合わせた税率五%が適用される場合の額のみを( )書きで記載させること。
(3) 届出書又は確認申請書に( )書きで記載された予定対価の額については、消費税と地方消費税を合わせた税率五%が適用される場合に限って有効である旨を不勧告通知書及び確認書に附記すること。
(4) 平成九年三月三一日以前に勧告を行う場合には、勧告書に消費税率三%が適用される場合の勧告事項と消費税と地方消費税を合わせた税率五%が適用される場合の勧告事項を併記すること。



別記一
<別添資料>



別記二 土地と建物を一括譲渡する場合の建物の譲渡価額相当額の算定について
<別添資料>



別記三 宅地の造成等に要する工事費
<別添資料>



別記四 販売費及び一般管理費
<別添資料>



別記五 販売費及び一般管理費の積算例
<別添資料>



別記六 適正利益率の算定方法について
<別添資料>


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