農林水産省14農振第一四五二号
平成一四年一一月一日

関東農政局長あて

農村振興局長通知


都市計画と農林漁業との調整措置について


都市計画法(昭和四三年法律第一〇〇号。以下「法」という。)は、昭和三〇年代後半から高度成長の過程で、都市への急速な人口・諸機能の集中が進み、市街地の無秩序な外延化が全国共通の課題として深刻化していた社会経済状況を背景に、線引き制度、開発許可制度等の導入を骨格として昭和四三年に制定された。
しかし、昭和四三年の法制定後三〇年以上が経過し、近年、都市をめぐる社会経済状況は大きく変化し、少子高齢化の急速な進行により都市への人口集中が沈静化し、都市の外へ向かった開発圧力も小さくなっており、一方、交通・通信網の整備とモータリゼーションの進展等、さらには、質の高い住まい方、自然環境や景観の保全・創出に対する国民意識が高まってきている。
このような中で、都市化社会から安定・成熟した都市型社会への移行に対応するために、都市計画法及び建築基準法の一部を改正する法律(平成一二年法律第七三号)が平成一三年五月一八日付けで施行されたところである。
また、線引き制度等の都市計画制度の運用については、従来、旧建設省から「都市計画法の施行について」(昭和四四年建設省都計発第七三号建設事務次官依命通知)他、各種通知により取り扱われてきたところであるが、今回の改正に伴い、地方公共団体の制度の趣旨に則った的確な運用を支援するため、都市計画制度全般にわたっての考え方等を示した「都市計画運用指針」(平成一二年一二月二八日付け建設省都計発第九二号建設省都市局長通知)が通知されたところである。
一方、都市計画と農林漁業との調整については、都市計画が農林漁業との健全な調和を図りつつ定められるとともに、市街化区域及び市街化調整区域の区分(以下「区域区分」という。)に関する都市計画については、都市計画区域を単位として策定される基幹的な土地利用計画であることから、当該区域内における農林漁業に関する土地利用及び諸施策に直接重大な関連を有することとなるため、「都市計画法による市街化区域および市街化調整区域の区域区分と農林漁業との調整措置等に関する方針について」(昭和四四年八月二二日付け44農地C第三七四号農林事務次官依命通知)等の通知を地方公共団体に対して発出し、運用してきたところである。
また、地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律(平成一一年法律第八七号)が平成一二年四月一日から施行され、これにより都市計画制度に係る事務が自治事務化されたところである。
このような法の改正、都市計画運用指針の策定、都市計画制度の自治事務化のなかで、都市計画が、農林漁業との健全な調和を図りつつ定めるべきとする基本理念(都市計画法第二条)に基づき、また、食料・農業・農村基本法(平成一一年法律第一〇六号)や農業振興地域の整備に関する法律(昭和四四年法律第五八号)等に基づく農地の確保等に関する国の基本的考え方を踏まえ、適切に設定されるためには、都市計画と農林漁業に関する土地利用及び諸施策との十分な調整が重要である。
このため、都市計画法の改正の内容及び従来の農林漁業との調整通知の内容を踏まえ、都市計画と農林漁業との調整措置等の関係通知について見直しを行い、法第二三条第一項の農林水産大臣協議に係る調整の判断基準を含めた都市計画制度と農林漁業との調整全般について、地方自治法(昭和二二年法律第六七号)第二四五条の四の規定に基づく技術的な助言として、別紙1のとおり「都市計画と農林漁業との調整措置」を定めたので、御了知の上、今後の都市計画と農林漁業との調整措置等を行うに当たって、活用されるようお願いする。
なお、都市計画と農林漁業との調整措置の通知に伴って、別紙2に掲げる通知は廃止する。
おって、管内都府県知事に対しては貴職から通知されたい。



別紙1

都市計画と農林漁業との調整措置

目次
第一章 都市計画と農林漁業との調整の趣旨

第1 都市計画と農林漁業との調整の必要性

1 都市計画と農林漁業に関する土地利用との関係
2 都市計画と農林漁業との調整の必要性
3 農林業政策上の調整の必要性

第2 都市計画と農林漁業との調整の基本的な方針

第二章 都市計画区域マスタープランと農林漁業との調整

第1 都市計画区域マスタープランと農林漁業との調整方針

1 区域区分に関する事項
2 区域区分に関する事項以外の事項

第2 都市計画区域マスタープランと農林漁業との調整手続

1 基本的な考え方
2 調整事項
3 調整手続
4 法定協議

第3 都市計画区域マスタープランと農林漁業との調整における留意事項

第三章 区域区分に関する都市計画と農林漁業との調整措置等

第1 区域区分に関する都市計画と農林漁業に関する土地利用との調整方針

1 市街化区域に含まない土地
2 1の特例措置

第2 市街化区域の設定に伴う農林漁業関係施策等との調整措置

1 農林漁業関係施策に係る事業計画及び造成施設等に関する措置
2 土地改良事業の負担金等の徴収確保措置
3 農林漁業者の経営の安定及び周辺農林漁業への影響に対する措置

第3 市街化区域及び市街化調整区域における今後の農林漁業関係施策

1 市街化区域における施策
2 市街化調整区域における施策

第4 区域区分に関する都市計画と農林漁業との調整手続

1 基本的な考え方
2 調整事項
3 調整手続
4 法定協議

第5 区域区分に関する都市計画と農林漁業との調整措置上留意すべき事項

1 区域区分に関する都市計画の原案作成
2 市街化区域の規模の設定
3 保留フレームの設定
4 飛地の市街化区域の設定
5 市街化調整区域への編入
6 地方農政局等の事務処理上留意すべき事項

第四章 区域区分が定められていない都市計画区域の用途地域と農林漁業との調整

第1 非線引き用途地域と農林漁業との調整方針
第2 非線引き用途地域と農林漁業との調整手続
第3 非線引き用途地域と農林漁業との調整上留意すべき事項

第五章 その他の都市計画と農林漁業との調整

第1 準都市計画区域と農林漁業との調整
第2 特定用途制限地域と農林漁業との調整
第3 地区計画と農林漁業との調整
第4 その他都市計画と農林漁業との調整

第一章 都市計画と農林漁業との調整の趣旨

第1 都市計画と農林漁業との調整の必要性

1 都市計画と農林漁業に関する土地利用との関係

都市計画法(昭和四三年法律第一〇〇号。以下「法」という。)は、都市計画の内容及びその決定手続、都市計画制限、都市計画事業その他都市計画に関し必要な事項を定めることにより、都市の健全な発展と秩序ある整備を図り、国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進に寄与することを目的としている。
この都市計画は、都市内の限られた土地資源を有効に配分し、建築敷地、基盤施設用地、緑地・自然環境を適正に配置することにより、農林漁業との健全な調和を図りつつ、健康で文化的な都市生活及び機能的な都市活動を確保しようとするものである。
このためには、様々な利用が競合し、他の土地の利用との間でお互いに影響を及ぼしあうという性格を有する土地について、都市計画は、合理的な利用が図られるよう一定の制限を通じて都市全体の土地の利用を総合的・一体的観点から適正に配分することを確保するものとされている。
特に、既成市街地及びおおむね一〇年以内に優先的計画的に市街化を図るべき区域としての市街化区域と、市街化を抑制すべき区域としての市街化調整区域とに区分(以下「区域区分」という。)する都市計画にあっては、都市計画区域を単位として策定される基幹的な土地利用計画であって、地域地区に関する都市計画、都市施設の整備に関する都市計画及び市街地開発事業に関する都市計画がこれと一体的、総合的に定められ、区域区分に従った土地利用が計画的に進められることとなることから、当該区域内における現在又は将来の農林漁業に関する土地利用及び諸施策に直接重大な関連を有することとなる。

2 都市計画と農林漁業との調整の必要性

このような観点から、法は、都市計画が、農林漁業との健全な調和を図りつつ定めるべきことを基本理念として掲げており、都市計画の案の作成段階から、農林漁業に関する土地利用及び諸施策との調整を十分に行うことが望ましい。
特に、国土交通大臣が都市計画区域の整備、開発及び保全の方針(法第六条の二第二項第二号に掲げる事項に限る。)若しくは区域区分に関する都市計画を定め、若しくはその決定若しくは変更に同意しようとするとき、又は都道府県が都市計画区域の整備、開発及び保全の方針若しくは区域区分に関する都市計画を定めようとするとき(国土交通大臣の同意を要するときを除く。)は、法第二三条第一項の規定により農林水産大臣にあらかじめ協議しなければならない(以下「法定協議」という。)こととされており、農林漁業との調整を図ることとしている。
なお、都市計画制度の運用は、都道府県及び市町村の自治事務として、法令の基準に基づき各地方公共団体自らの責任によって主体的かつ自主的に取り組むものとなったが、この場合にあっても、農林漁業との健全な調和を図るための調整が重要であることに十分留意する必要がある。
また、法定協議が調って市街化区域に編入された土地に限って、農業振興地域の整備に関する法律(昭和四四年法律第五八号。以下「農振法」という。)第六条第三項並びに農地法(昭和二七年法律第二二九号)第四条第一項第五号及び第五条第一項第三号の市街化区域に関する規定が適用されることに十分留意する必要がある。

3 農林業政策上の調整の必要性

(1) 「食料・農業・農村基本法」(平成一一年法律第一〇六号。以下「基本法」という。)が平成一一年七月に公布され、平成一二年三月には、基本法第一五条に基づき政府が策定する「食料・農業・農村基本計画」(以下「基本計画」という。)が決定された。

この基本計画の第3「食料、農業及び農村に関し総合的かつ計画的に講ずべき施策」の二「農業の維持的な発展に関する施策」の(3)「農地の確保及び有効利用」の中で、農振法に基づく農業振興地域制度及び農地法に基づく農地転用許可制度の適切な運用を通じ、集団的な農地や基盤整備が実施された農地等の農地として利用すべき土地の農業上の利用の確保を図るための施策を講ずることとされたところである。

(2) さらには、農業振興地域の整備に関する法律の一部を改正する法律(平成一一年法律第一二〇号)が平成一一年八月に公布され、平成一二年三月に公表された農振法第三条の二第四項に基づく「農用地等の確保等に関する基本指針」(以下「基本指針」という。)により、農用地等の確保等に関する国の基本的な考え方が示されたところである。

この基本指針においては、農地は農業生産にとって最も基礎的な資源であり、また、集団的に存在する農地や農業生産基盤整備事業の対象地等の優良な農地については、農振法に基づき、農用地区域として設定するとともに、当該農地を良好な状態で維持・保全し、かつその有効利用を図ることが重要であり、また、農地の確保と有効利用は、国土の保全、水源のかん養、自然環境の保全、良好な景観の形成、文化の伝承等農村で農業生産活動が行われることにより生じる多面的機能の適切な発揮を図る上でも必要であることとされているところである。

(3) また、森林について、林業基本法の一部を改正する法律(平成一三年法律第一〇七号・改称)が平成一三年七月に公布され、森林・林業基本法(昭和三九年法律第一六一号)第二条で、森林については、その有する国土の保全、水源のかん養、自然環境の保全、公衆の保健、地球温暖化の防止、林産物の供給等の多面にわたる機能が持続的に発揮されることが国民生活及び国民経済の安定に欠くことのできないものであることにかんがみ、将来にわたって、その適正な整備及び保全が図られなければならないこととされたところである。
(4) 以上のように、農用地(農地及び採草放牧地をいう。以下同じ。)の確保、森林の整備及び保全並びにこれらの効率的な利用等を図る観点から、都市計画と農林漁業との調整を図ることがますます必要となっている。

第2 都市計画と農林漁業との調整の基本的な方針

1 わが国の農業を取り巻く諸情勢は、宅地への農用地の転用、耕作放棄地の増大等により農用地の減少が進むなど厳しいものとなっており、わが国農業の健全な発展を図り、食料の安定供給を確保していくためには、農業生産にとって最も基礎的な資源である農用地を良好な状態で確保し、農業振興施策の総合的かつ計画的な推進を図ることが肝要となっている。

このため、都市計画と農林漁業との調整を行うに当たっては、第1の必要性にかんがみ、農林漁業との調和が保たれているかを十分確認すべきものである。
また、第1の3を受け、今後の区域区分等の都市計画の策定又は変更等と農林漁業との調整に当たっては、集団的優良農用地、農業生産基盤整備事業の対象農用地及び保安林等を保全、確保する等の基本方針は引き続き堅持するものとする。

2 都市をめぐる社会経済状況の変化により安定成熟した都市型社会にあっては、

1) 全ての都市がこれまでのような人口増を前提とした都市づくりを目指す状況ではなくなってきていること
2) 都市の状況に応じて既成市街地の再構築等により、都市構造の再編に取り組む必要があること
3) 他の都市との競争という視点に立った個性的な都市づくりへの要請の高まりに応えつつ、幅広く環境負荷の軽減、防災性の向上、バリアフリー化、良好な景観の保全・形成等、都市が抱える各種の課題にも対応していく必要が高まっていることに十分留意するとともに、土地利用のスプロール、都市廃水の流入による農業用水の汚濁、溢水等を防止し、農山村地域における土地・水資源の利用秩序の形成を積極的に図るため、従来にまして円滑かつ適切な調整を行うことが必要である。

3 都市計画と農林漁業との円滑な適正な調整を行うに当たっては、農林漁業に関する土地利用及び諸施策の実施状況並びに、これらに関する計画等を十分把握した上で行う必要がある。

(注) 本調整措置の語尾等の表現について

本調整措置に記述されている各事項間には当該事項によるべきとする考え方に差異があることから、次のような考え方で記述している。
1) 〜べきである。〜べきではない。

法令、制度の趣旨等から記述された事項による運用が強く要請されると国が考えているもの。

2) 〜ことが望ましい。

制度の趣旨等から、記述された事項による運用が想定されていると国が考えているもの。

第二章 都市計画区域マスタープラン農林漁業との調整

第一 都市計画区域マスタープラと農村漁業との整理方針

都道府県が、法第六条の二の「都市計画区域の整備、開発及び保全の方針」(以下「都市計画区域マスタープラン」という。)の策定又は変更を行うに当たっては、同条第二項第二号に掲げる事項について法定協議を行うこととされているが、この協議に係る調整に当たっては、農林漁業との健全な調和を図るとする法の基本理念に基づき、以下の事項に留意して行うことが望ましい。
1 区域区分に関する事項

(1) 区域区分の有無

区域区分の有無を定めるに当たっては、都市計画運用指針IV―1―2の一の(3)の1)において、区域区分の有無を定めるに当たっては、市街地の拡大の可能性、良好な環境を有する市街地の形成、緑地等自然的環境の整備又は保全への配慮の視点から行うとともに、少なくとも次の項目について調査・検討するべきであるとして、都市計画区域の地形その他の地理的条件及び当該都市計画区域の人口の増減及び分布の変化並びに今後の見通し等について調査・検討するべきであるとされている。
このため、都道府県農林水産担当部局は、区域区分の有無を定めるための調整に当たっては、区域区分の有無の決定が、調査・検討の結果を十分に反映したものであるか、農林漁業に及ぼす影響等はないか等について十分検討すること。
また、都市計画区域マスタープランには、区域区分の有無と併せてその判断の根拠もあわせて記載すべきであることとされていることから、区域区分の有無の判断が妥当であるか十分検討すること。

(2) 区域区分の方針

区域区分の方針に記載すべき事項のうち、目標年次の市街化区域のおおむねの規模及び現在市街化している区域との関係については、都市計画運用指針IV―1―2の一の(3)の2)の二)において、都市計画区域マスタープランが即地的な区域界を定めるものでなく、かつ、即地的な都市計画である区域区分は法第七条に基づき別に定めるものであることとされていることから、区域区分の調整は、別途、区域区分の設定又は変更時点で行われるものであり、都市計画区域マスタープランが区域区分の設定又は変更に係る即地的な区域界を定めるものではないことに十分留意すること。

2 区域区分に関する事項以外の事項

(1) 区域区分に関する事項以外の事項である都市計画の目標及び土地利用等に関する主要な都市計画の決定の方針についても、法の基本理念のもとに、農林漁業との健全な調和を図りつつ定められているか確認すること。
(2) 都市計画区域マスタープランの見直しとあわせて区域区分の見直しを行う場合に、市街化調整区域において、人口フレーム等の範囲内で計画的な市街地整備の見通しが明らかである土地について第三章に基づいて即地的な調整を了した地区(以下「特定保留地区」という。)が、都市計画区域マスタープラン中に参考事項として記載されている場合にあっては、適正に記載されているか確認すること。

第2 都市計画区域マスタープランと農林漁業との調整手続

都市計画区域マスタープランに関する都市計画を策定又は変更しようとする場合、都市計画区域マスタープランの事項のうち法第六条の二第二項第二号に掲げる事項については、区域区分を定めるに当たっての基本的な方針を定めるものであり、農林漁業に関する土地利用及び諸施策に及ぼす影響が極めて大きいことを踏まえ、農林漁業との健全な調和を図りつつ定められるよう都市計画区域マスタープランの案の作成段階から配慮するとともに、本通知が事務の簡素化等にも配慮したものであることを踏まえ、以下により事前に調整を行うことが望ましい。
また、当該事項については、法定協議が行われることにかんがみ、都道府県は、農林水産担当部局と都市計画担当部局との連絡調整の過程において、その後の法定協議を円滑かつ迅速に行うために必要であると判断した場合には、法定協議に先立ち関係地方農政局等(北海道にあっては農村振興局、沖縄県にあっては沖縄総合事務局。以下「地方農政局等」という。)と調整することが望ましい。
なお、この事前の調整が行われず、国土交通大臣又は都道府県から法定協議がなされた場合についても、法定協議の重要性にかんがみ、農林水産省の回答は、第一の一に掲げる事項を踏まえて行うこととしている。
1 基本的な考え方

都市計画区域マスタープランに関する都市計画に係る都道府県案(以下この章において「都道府県案」という。)の作成の過程において、都道府県農林水産担当部局と都市計画担当部局との連絡調整を行う場合は、第1によること。

2 調整事項

都道府県農林水産担当部局と都市計画担当部局との間での連絡調整は、以下の事項について行うこと。
(1) 都市計画に関し説明を受ける事項

1) 都市計画の目標
2) 区域区分の決定の有無及び区域区分を定める際の方針

a 区域区分の有無に関する事項

ア 区域区分の有無を定めるに当たっての調査・検討結果
イ 区域区分の有無の判断の根拠

b 区域区分の方針に関する事項

ア 目標年次に市街化区域及び市街化調整区域に配置されるべきおおむねの人口及び産業の規模
イ 目標年次の市街化区域のおおむねの規模及び現在市街化している区域との関係

3) 主要な都市計画の決定の方針

(2) 農林漁業との調整を行う事項

1) (1)の2)のaのアについては、調査・検討結果が妥当であるか確認し、あわせて農林漁業への影響等について確認すること。
2) (1)の2)のaのイについては、区域区分の有無を判断した根拠が妥当であるか確認すること。
3) (1)の2)のbのアについては、将来の人口及び産業の規模が妥当であるか確認すること。
4) (1)の2)のbのイについては、都市計画区域マスタープランの見直しと合わせて区域区分の見直しを行う場合、この時点で即地的な調整をすべて了し市街化区域に編入を予定している地区(いわゆる即地編入)が目標年次の市街化区域のおおむねの規模に適正に算入されているか確認すること。

3 調整手続

都道府県が、必要に応じ、法第一七条の案の公告縦覧を行う以前に、国土交通省地方整備局等(北海道にあっては北海道開発局、沖縄県にあっては沖縄総合事務局。以下「地方整備局等」という。)へ意見を求め、地方整備局等が、検討可能な期間を考慮して、農林水産省に事前協議を行う場合の取扱いについては、以下によること。
なお、農林水産省における当該事前協議についての事務は、地方農政局等が処理することとする。
(1) 事前調整

1) 都道府県農林水産担当部局は、都市計画担当部局から都道府県案について連絡を受けたときは、少なくとも2の(1)に掲げる事項について関係資料及び図面によって十分説明を受けるとともに、2の(2)により都道府県案に対し必要な意見調整を行うこと。
2) 都道府県農林水産担当部局が、1)により意見調整を行う場合には、必要に応じ、次の手続を行うこと。

a 都道府県農林水産担当部局は、法定協議の重要性にかんがみ、都道府県案については、農業に係る事項にあっては地方農政局等、森林に係る事項にあっては林野庁、漁業に係る事項にあっては水産庁に必要な説明を行うこと。
b 都道府県農業担当部局は、2の(1)の2)及び2の(2)に関する事項について、地方農政局等と調整を行うこと。

なお、この調整に当たっては、別添1を参考に資料等を作成し調整を行うこと。

c 都道府県農業担当部局は、地方農政局等との調整結果を踏まえて、必要に応じて都市計画担当部局との間で調整を行うこと。
d 都道府県農業担当部局と都市計画担当部局との間で、適正な調整を了した後、都道府県は、都道府県案について公聴会等を開催し、関係市町村との調整を図ること。
e 都道府県は、dにより調整を了した後、必要に応じて、法第一七条の案の公告縦覧を行う以前に、地方整備局等に意見を求めることができるが、この場合には、都道府県農業担当部局は、都道府県案について地方農政局等に検討可能な期間を考慮して、別添1を参考に作成した資料等によって説明すること。

(2) 事前協議

1) 地方農政局等は、地方整備局等が都道府県から都道府県案について意見を求められた場合において、検討可能な期間を考慮して、地方農政局等に事前協議を行った場合は、(1)の調整結果を踏まえ、都道府県案について別添1を参考に作成した資料等によって検討・調整すること。
2) 地方農政局等は、1)により提出された都道府県案について変更意見がある場合には、地方整備局等に当該意見を述べること。
3) 地方農政局等は、地方整備局等が関係各省の意見も配慮して都道府県案について調整を行い、その結果を踏まえて都道府県に回答するため、地方整備局等からの事前協議に対する地方農政局等の回答が都道府県案の変更を内容とするものであるときは、都道府県農業担当部局に対して、必要に応じ当該変更意見に基づく再調整を行うように連絡すること。
4) 都道府県は、3)による地方整備局等からの回答に基づき必要があるときは、関係市町村との調整を図った上、都道府県案の修正を行うものとし、地方整備局等にその経過又は結果を報告する。この経過又は結果について地方整備局等から地方農政局等へ通知されるに先だって、都道府県は、地方農政局等にこの経過又は結果について2の(1)に掲げる資料等(当該変更に係るもので足りる)を添えて報告すること。

(3) 事前の協議調整に必要な図書等

3の(1)及び(2)に必要な図書その他の資料等については、以下によること。
1) 都市計画区域マスタープラン(案)
2) 都市計画区域マスタープラン設定調書(別添1)

4 法定協議

都道府県が地方整備局長等(北海道にあっては北海道開発局長、沖縄県にあっては沖縄総合事務局長。以下「地方整備局長等」という。)に都道府県案について法第一八条第三項(法第二一条第二項の規定において準用する場合を含む。)に基づく同意を求め、地方整備局長等が農林水産省に対して法定協議を行った場合は、以下により対応するものとする。
なお、農林水産省における法定協議についての事務は、地方農政局長等(北海道にあっては農村振興局長、沖縄県にあっては沖縄総合事務局長。以下「地方農政局長等」という。)が処理することとする。
(1) 地方農政局長等は、3の(1)及び(2)に定めるところにより調整を了した後、地方整備局長等から法定協議が行われた場合には、3の(1)及び(2)の結果に配慮し、できる限り速やかに地方整備局長等に対して回答すること。
(2) 地方農政局長等は、法定協議を了したときは、その旨を都道府県知事に通知すること。
(3) 法定協議に必要な図書その他の資料等については、都市計画区域マスタープラン(案)によること。
(4) 都道府県は、法第二〇条に規定する手続を了したときは、法第一四条第一項の都市計画の図書を地方農政局等に一部提出することが望ましい。

第3 都市計画区域マスタープランと農林漁業との調整上留意すべき事項

市街化区域の規模の設定に関する都市計画区域マスタープランと農林漁業との調整に当たっては、以下のことについて十分留意することが望ましい。
1 都市計画運用指針IV―1―2の一の(3)の3)において、市街化区域は、市街地に配置すべき人口・産業を適切に収容しうる規模とするべきであることとされ、また、市街化区域の規模の設定は、法第六条第一項に規定する都市計画に関する基礎調査を踏まえた、おおむね一〇年後の人口及び産業の見通しに基づき、住宅用地、商業用地、工業用地、公共施設用地その他の用地の必要な面積を算出したうえで、その範囲内において行うことが望ましいこととされていることから、市街化区域の規模の根拠となる人口・産業の見通しについても十分確認すること。
2 都市計画運用指針IV―1―2の一の(3)の3)において、市街化区域内において未利用、低利用となっている土地の区域については、望ましい市街地像を示すとともに、必要な規制誘導策を講じることにより、有効な利用を図るように努め、低未利用地を多く残したまま市街化区域がいたずらに拡大することは厳に避けるべきであることとされていることから、市街化区域内の農用地や工場跡地等の低未利用地の利活用の方針についても十分確認すること。
3 都市計画運用指針IV―1―2の一の(3)の3)における住宅用地として必要な市街地の規模の算定にあたっては、例えば、既存の住宅用地の配置及び人口密度の構成、良好な居住環境を実現するための各住宅用地の人口密度の再構成の方針及びこれによって発生する収容可能人口の増減等を検証することにより、地域の実情に即しつつ適正な人口密度を想定して行うことが望ましいとされていること等から、次の点に留意すること。

1) 住宅用地の人口密度については、土地の高度利用を図るべき区域にあっては、一haあたり一〇〇人以上、その他の区域にあっては一haあたり八〇人以上を目標とし、土地利用密度の低い地域であっても一haあたり六〇人以上とすることを基本とすること。
2) 住宅用地全域の将来人口密度として、状況の変化を反映した値を用い、あるいは、これに地域特性を反映させた値を用いる場合、当該都市計画区域における近年の社会経済情勢の変化及び地域特性を的確に把握し、かつ、当該都市計画区域における目標年次において形成される市街地の状況、人口の動向等を踏まえ、地域の実情に即しつつ適正な将来人口密度の想定がなされているか確認すること。
3) 市街化区域の密集市街地の整備、人口の空洞化が著しい中心市街地での住宅供給等に伴い、人口の再配置を行うことが適切な場合において、その結果生じる地区毎の人口の増加又は減少を適切に収容しうるよう市街化区域の規模を設定する場合、当該区域内で行われる市街地開発事業等の実施の見通し、着実に都市的土地利用に供される見込みに加えて人口等の配分計画を十分確認すること。
4) 住宅用地全域の将来人口密度として、状況の変化を反映させた値を用い、あるいはこれに地域特性を反映させた値を用いることによって、想定する人口密度が直ちに引き下げられるものではなく、既成市街地の人口密度の動向、将来の住宅供給計画及び市街地開発形態並びに地形その他の地理的条件等を勘案して、地域の実情に即して適正に想定されるものであることに留意すること。

4 都市計画運用指針IV―1―2の一の(3)の3)において、市街地開発事業等の施行中又は施行予定の区域で当該事業の完成目標年次が区域区分の目標年次を超えるような長期事業地において、想定人口は目標年次までに定着する人口としつつ、目標年次以降に人口定着が見込まれる区域の面積を加算することが考えられることとされていることから、住宅用地の将来人口密度について、このような取り扱いを行う場合にあっては、宅地化に相当の期間を要する土地の市街化に要する期間及び市街地形成を促進するための政策努力の勘案の考え方、当該土地の面積と市街化区域の規模との関係について確認すること。
5 都市計画運用指針IV―1―2の一の(3)の3)において、独立して一体的な日常生活圏を構成している大規模な既存集落などの既存の市街化区域と同程度の市街化状況にあるが、それほどの人口増加は見込まれない区域において、別枠として特別の将来人口密度を想定することが考えられるとされているが、特別の将来人口密度を想定できる区域は、特に地方都市及びその周辺部を念頭において措置されたものであるとともに、独立して一体的な日常生活圏を構成していると認められる大規模な既存集落の区域であることに留意すること。
6 都市計画運用指針IV―1―2の一の(3)の3)において、工業用地(これに関連する流通業務用地を含む。)の規模の算定にあたっては、当該都市計画区域の工業立地動向を考慮し、将来の適正な工業配置を図るため今後予想される規模の工業生産及びこれに関連する流通業務が円滑に行われるよう配慮することが望ましい。また、必要に応じ、当該都市計画区域における将来の商業その他の業務活動の規模を勘案して、商業用地、流通業務用地その他の業務用地の規模を想定することが望ましいとされていることから、当該動向等を踏まえて行われているか確認すること。

第三章 区域区分と農林漁業との調整措置等

第1 区域区分に関する都市計画と農林漁業に関する土地利用との調整方針

区域区分に関する都市計画については、令第八条第一項第二号において、おおむね一〇年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域には、優良な集団農地その他長期にわたり農用地として保存すべき土地の区域及び水源を涵養し、土砂の流出を防備する等のための保全すべき土地の区域等は、原則として含まないものとする基準が規定されているところであり、農林漁業との調整においては、当該基準に基づいて判断することとなる。
これは、都市計画が農林漁業との健全な調和を図りつつ定めるべきとして、区域区分が集団的優良農用地又は農林漁業関係施策の対象となっている農用地等、今後とも農林漁業に関する土地利用を進めていく上で必要と認められるものを避けるように定めるとの考え方に基づくものであり、その具体的な調整は次の方針によって調整を行うべきである。
なお、市街化区域に関する都市計画と農林漁業に関する土地利用との調整に当たっては、計画に係る市街化区域の規模及び配置が、都市計画区域における人口及び産業の将来見通し、これらを収容するのに必要な市街地面積、当該都市の発展動向を勘案する等法令等に定める基準に適合したものであるかどうかを確認した上、農林漁業に関する土地利用との関係の検討を行うことが望ましい。
1 市街化区域に含まない土地

令第八条第一項第二号における、おおむね一〇年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域に含まないとする土地の区域等は、次のとおりとする。
(1) 市街化区域に含まない土地

次のいずれかに該当するものは市街化区域に含まないこと。
1) 集団的優良農用地

団地規模がおおむね二〇ヘクタール以上で、高性能な農業機械による営農可能な土地条件を備え、かつ、主要作物の一〇アール当たり収量が当該農用地の所在する市町村の平均以上である農用地
なお、団地規模の判断に当たっては、道路、鉄道その他の施設、河川、がけその他の地形、地物等を境界とするが、地形、地物等であっても通作等に支障が生じないものである場合には一団の土地とすること。

2) 国の直轄又は補助による農業生産基盤整備事業の対象農用地

国の直轄又は補助による土地改良事業、草地開発整備事業等による農業生産基盤整備事業を実施中の地区内の農用地及び当該事業が完了した年度(工事完了公告における工事完了の日の属する年度)の翌年度から起算して八年を経過していない地区内の農用地
ただし、災害(石炭鉱業及び亜炭鉱業による鉱害を含む。)復旧事業及び農地防災事業その他の農業の生産性を向上することを直接の目的としない事業(農道整備事業を含む。)に係る農用地及び農業用用排水施設の新設及び変更の事業にあっては、農業の生産性の向上が相当程度図られると見込まれない農用地(現況の用水量の確保ないしは現況排水処理の確保のため、不可避的に一体として当該事業の受益地となる農用地(いわゆる不可避受益地)を除く。

3) 保安林等

森林法(昭和二六年法律第四九号)による保安林、保安林予定森林及び保安施設地区並びに保安林整備臨時措置法(昭和二九年法律第八四号)に基づく保安林整備計画において保安林の指定が計画された土地の区域(以下「保安林等」という。)
ただし、市街化区域にとり囲まれることとなる小規模な保安林等についてはこの限りでない。

4) 農林漁業の維持保全施設用地

大規模な防災ため池等農林漁業の維持保全のため必要不可欠な公共施設で、その規模、立地条件等からみて代替施設によってその機能を果たすことが困難なものの施設用地
ただし、維持保全される農林漁業の大部分が市街化区域に含まれることとなる場合の施設の用地を除く。

(2) 努めて市街化区域に含まない土地

(1)に該当しない農用地であっても、次のいずれかに該当するものは、努めて市街化区域に含まないこと。
1) 集団的農用地

団地規模がおおむね二〇ヘクタール以上で、高性能な農業機械による営農可能な土地条件を備えた農用地

2) 相当規模の農業生産基盤整備事業を、農林漁業金融公庫資金による融資単独事業として実施中の地区内の農用地又はこれを完了した地区で、当該事業に係る施設が現に良好に管理利用されている地区内の農用地
3) 野菜生産出荷安定法(昭和四一年法律第一〇三号)に基づき野菜指定産地の指定をうけている地域内で、区域を画定し、野菜集団産地育成事業を既に完了した地区で当該事業に係る施設等が現に良好に管理利用されている地区内の農用地
4) 主産地形成又は地域の農林漁業の振興等を目的とし、利用範囲(農家、農用地等)を特定して、国の補助又は農林漁業金融公庫資金若しくは農業近代化資金による融資単独事業によって農業生産基盤整備事業以外の事業を総合的集中的に実施中の地区内の農用地又はこれを完了した地区で、当該事業に係る施設等が現に良好に管理されている地区内の農用地
5) 国の直轄又は補助によるもので、土地改良事業、草地開発整備事業等による農業生産基盤整備事業が現に調査計画されている地区(土地改良区の設立認可申請のための公告を了している地区、土地改良区等が新規事業計画又は事業計画の変更につき概要の公告を了している地区、国営又は県営の農業生産基盤整備事業であって農林水産大臣又は都道府県知事が毎年度予算の範囲内で決定した調査計画地区等)の農用地

2 1の特例措置

(1) 1に該当しない農用地であっても、相当規模の団地を形成し、特に生産性が高く、特定の農産物の生産適地として保存する必要があると認められ、かつ相当期間農用地として利用されることが確実な土地の区域は、市街化区域に含めないことができるものとすること。
(2) 1に該当する農用地を市街化区域に含めないとした場合、以下の内容等について検討を行い、適正な市街化区域の設定上特段の支障があると認められるときには、当該農用地について第2の1に掲げる調整措置を了した場合又は了する見込みのある場合に限り、原則として1の(2)に該当する農用地、1の(1)に該当する農用地の順で必要最小限度の面積を市街化区域に含めることができるものとすること。

1) 市街化区域の必要規模
2) 既成市街地を含んだ一体的市街化区域の設定
3) 当該都市の発展動向及び交通施設等の配置状況
4) 計画的市街地開発の見通し

第2 市街化区域の設定に伴う農林漁業関係施策等との調整措置

農林漁業関係施策を実施中又は完了した地区内の農用地又は当該施策による造成施設等については、これらが市街化区域に含まれる場合にあっては、市街化の進展に伴い、農用地の転用による受益地の減少、開発行為による造成施設等のかい廃、都市施設への供用等が見込まれ、市街化区域周辺の農用地については、都市廃水の流入による農業用水の汚濁及び溢水等の影響が見込まれることから、これらに対しては次により農林漁業関係施策等との調整措置を講ずるべきである。
なお、都道府県の単独補助による農林漁業関係施策の取扱いについては、原則としてこの調整措置に準じて処理することが望ましい。
1 農林漁業関係施策に係る事業計画及び造成施設等に関する措置

区域区分に関する都市計画との調整に当たっては、次のような措置について、都道府県知事、市町村長、当該施策の事業主体等の間で十分意見調整を行い、事後におけるこれらの措置の実行を確保するため、基本的事項について了解(以下「了解事項」という。)を得ておくこと。
この場合、特に農林漁業者の費用負担の調整措置について十分配慮すること。
(1) 事業実施中の地区内の農用地が市街化区域に含められる場合の措置

1) ほ場整備、草地改良等の面的な事業
事業の効用が長期にわたるものについては、原則として事業計画を変更又は廃止し、市街化区域内の受益地に係る事業を打ち切ること。

ただし、事業の効用が短期なものについては、当該地域における市街化の動向等を勘案して事業計画の変更、廃止又は事業の継続の是非を判断すること。
なお、事業計画の変更又は廃止が必要であると認められる場合には、区域区分に関する都市計画につき法第二三条第一項の協議が調った後、遅滞なく市街化区域に含まれる受益地の除外に係る変更計画の作成に着手するとともに当該受益地における施工を極力中止し、可及的速やかに計画変更の手続を了すること。

2) 用排水路等の線的な事業

原則として市街化区域内の農用地を受益地としないよう1)に準じて事業計画を変更又は廃止すること。
ただし、市街化区域内の農用地の現況用水量の確保又は現況排水処理の確保のため、これら農用地を一体の受益地として取り扱うことがやむを得ないと認められる用排水路等に関する事業については、必要最少限度において当該市街化区域内の農用地に係る投資を認めること。
また、この場合において造成施設等を都市施設と共用することが見込まれるときは、都市側と適正な費用負担等の措置を講ずること。
なお、市街化区域内の農用地を受益地としない事業計画であっても、市街化区域の位置及び造成施設等の立地構造等からみて、造成施設等を都市施設と共用することが見込まれるときにおいても同様に費用負担等の措置を講ずること。

3) 共同利用施設の設置事業

a 集出荷、加工用施設等の広域的共同利用施設設置事業

事業の継続を原則とするが、市街化の動向を勘案し、事業規模等について当該施設の利用量の減少に応じた計画変更を行い、事業の効率的な実施を図ること。

b a以外の共同利用施設(農業機械を含む。)設置事業

事業の効用が長期にわたるものについては、受益地の全部又は大部分が市街化区域に含められる場合は事業を廃止すること。
また、一部のみが市街化区域に含められる場合は、事業規模等について計画変更を行い、事業の効率的な実施を図ること。
なお、事業の効用が短期なものについては、当該地域における市街化の動向等を勘案し、事業継続の是非を判断すること。

(2) 事業を完了した地区内の農用地が市街化区域に含められる場合の措置

1) 市街化の進展に伴い、受益農用地が減少し、土地改良区、農業協同組合等が施設の維持管理に当たることが困難又は不適当となった場合には、当該施設の管理方法の変更又は管理主体の変更等に係る措置を講ずること。
2) 造成施設等を都市計画事業主体又は開発許可を受けた者等に使用させる場合は、当該施設の造成及び維持管理等に必要な費用を勘案して定めた使用料等を負担させるよう必要な措置を講ずること。
3) 造成施設等が都市計画事業又は開発行為によって機能を損ない、その回復のために工事を必要とする場合又は代替施設の設置を必要とする場合にあっては、これらの者に対して原因者負担工事を行わせるのに必要な措置を講ずること。

また、造成施設等の廃用処分をする場合に必要な費用の負担についても同様に必要な措置を講ずること。

4) その他開発行為又は都市計画事業に伴って受ける影響については、法第三二条の規定に基づく同意、又は法第五九条第六項の規定に基づく意見聴取の際に、必要な措置を講ずること。

2 土地改良事業の負担金等の徴収確保措置

受益地の全部又は一部について、組合員たる資格を喪失した者は土地改良法第四三条第一項の規定に基づき土地改良区に対して通知しなければならないこととされていることから、同法第四二条第二項の規定に従い所要の措置を講ずること。

3 農林漁業者の生活再建及び周辺農林漁業への影響に対する措置

区域区分に関する都市計画が策定される都市計画区域の農林漁業者に対しては、以下による措置を行うこと。
(1) あらかじめ農業委員会その他農林漁業関係団体の活動を通じ都市計画関係法令等についての普及及び農林漁業との調整に関する意向の把握に努めるとともに、区域区分に関する都市計画との調整に当たっても、農業委員会その他農林漁業関係団体と密接な連絡をとり、生活再建の措置、特に離農者の安定した就業の方途、他の地域に移住して農林漁業を継続しようとする者に対する代替地のあっせん及びこれに伴う農用地の権利移動の調整等の措置について意見調整を行うこと。
(2) 市街化区域の配置については、都市用排水の農林漁業との競合、農業用水の汚染等周辺の農林漁業に及ぼす影響に関し、市街化区域に関する都市計画がこれと一体的総合的に定められる都市施設の整備に関する都市計画等とあいまって被害防止に必要な配慮が十分なされているか否かを検討し、その配置を調整すること。

第3 市街化区域及び市街化調整区域における今後の農林漁業関係施策

市街化区域及び市街化調整区域の区分がなされた後における農林漁業関係施策の運用については、それぞれの区域の性格に従い次の方針によることが望ましい。
1 市街化区域における施策

市街化区域は、既成市街地及びおおむね一〇年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域であって、都市施設の整備に応じ逐次市街化されることが見込まれることから、農業生産基盤整備事業その他効用の長期に及ぶ施策は行わないこととするが、当分の間はなお農林漁業上の土地利用が続けられる区域を含むことがあるので、これらの土地について経営を継続するために必要な次に掲げる施策を行うこと。
(1) 災害復旧事業等災害(石炭鉱業及び亜炭鉱業による鉱害を含む。)が発生した場合における農林漁業者の経営の再建維持を図るための事業及び農用地がなお相当規模残存する区域において必要と認められる農地防災事業
(2) 広域的集出荷加工用施設等(主たる受益地が市街化区域外に確保されているものに限る。)の設置事業
(3) 効用が短期な機械、施設等の導入又は設置事業
(4) 家畜衛生、植物防疫、病害虫防除等の事業
(5) 普及指導、研修、検査等の事業
(6) 既存施設の軽微な改修等の維持管理事業
(7) 生産緑地地区に係る事業
(8) (1)から(6)に掲げる事業に類する事業で、その他必要と認められる事業

2 市街化調整区域における施策

(1) 市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域であり、当該区域内の農用地は今後も長期にわたって農林漁業に必要なものとして確保されるべき土地であることから、耕作者の営農意欲等を尊重し、立地条件、営農類型等地域の特性に応じ、農林漁業の振興に関する施策を引き続き行うこと。
(2) 農業生産基盤整備事業は、原則として市街化区域以外の地域の受益のみを目的として行うものとし、市街化区域内の農用地は、受益地に含めないこと。

なお、基本指針の第3の(1)において、「農業生産基盤整備事業等農業経営の基盤の強化の促進に必要な施策は、原則として農用地区域を対象として行う」こととされているところである。
しかしながら、かんがい排水事業で、市街化区域以外の地域と同一用排水系統に属する市街化区域内に残存する農用地の現況用水量の確保ないし、現況排水処理の確保のため、不可避的にこれを一体として当該事業の受益地とせざるを得ない場合又は、農業の生産性を向上することを直接の目的としない事業等を行う場合には、これを受益地として取り扱うことができる。

(3) 市街化調整区域における施策の採択に当たり、その対象地区が市街化区域に連接し、市街化の動向等からみて、法第二一条の規定により当初の区域区分を変更して、市街化区域に含められるおそれのある地域を含む場合は、次の事項に十分配慮すること。

1) 第1の1の(1)の2)に掲げる施策の対象農用地については、事業完了後少なくとも八年を経過するまでは市街化区域に含めないことの確認
2) 特定保留地区として調整を了した区域については、市街地開発事業等の実施が確実になった時点で市街化区域に編入する区域であることから、第1の1の(1)の2)に掲げる施策の対象農用地に含めないことの確認

なお、特定保留地区の農用地を第1の1の(1)の2)に掲げる施策の対象農用地に含める場合には、特定保留を取りやめる等の調整が必要であること。

3) 第1の1の(2)の2)に掲げる施策に該当するものについては、施策完了後八年の範囲内で、当該施策の効用を勘案して定める一定期間内は市街化区域に含めないことの確認

第4 区域区分に関する都市計画と農林漁業との調整手続

区域区分に関する都市計画の設定又は変更については、農林漁業との健全な調和を図りつつ定められるよう区域区分に関する都市計画の案の作成段階から配慮することが望ましい。
区域区分の協議の調った市街化区域内の土地については、農業振興地域には指定できないこととなるとともに、あらかじめ農業委員会の所定の事項の届出を行えば農地転用許可は要しないこととなること等から、市街化区域の設定が農林漁業に関する土地利用及び諸施策に及ぼす影響が極めて大きいこと並びに、本通知が事務の簡素化等にも配慮したものであることを踏まえ、以下により事前に調整を行うことが望ましい。
また、区域区分の設定又は変更に当たっては、法定協議が行われることにかんがみ、都道府県は、農林水産担当部局と都市計画担当部局との連絡調整の過程において、その後の法定協議を円滑かつ迅速に行うために必要であると判断した場合には、法定協議に先立ち地方農政局等、林野庁、水産庁と調整することが望ましい。
なお、この事前の調整が行われず、国土交通大臣又は都道府県から法定協議がなされた場合についても、法定協議の重要性にかんがみ、農林水産省の回答は、以下に掲げる事項を踏まえて行うこととしている。
1 基本的考え方

区域区分に関する都市計画の都道府県案(以下この章において「都道府県案」という。)の作成の過程において、都道府県農林水産担当部局と都市計画担当部局との間で連絡調整を行う場合は、第1及び第2によること。
なお、区域区分に関する都市計画の案に地域の農林漁業者の意向が反映されるよう、案の作成段階において、都道府県農林水産担当部局は、あらかじめ農業委員会、土地改良区、農業協同組合等の地元農林漁業関係機関及び団体の意向を市町村から十分聴取すること。

2 調整事項

都道府県農林水産担当部局と都市計画担当部局との間での連絡調整は、以下の事項について行うこと。
(1) 都市計画に関し説明を受ける事項

1) 市街化区域の規模に関する事項

a 目標年次において市街化区域に収容する必要のある人口、産業の推計、関連する国土計画及び地域の整備開発計画との関係
b 必要な居住地面積、人口密度、工業用地面積、工業出荷額当たり工業用地面積、人の常住しない大規模施設用地の面積その他加算を必要とする場合の商業用地等の面積の推計及び市街化区域の規模並びにこれらの関係

2) 市街化区域の配置に関する事項

a 市街化区域の配置、配置の構想、配置に当たっての考え方及び土地利用計画
b 既成市街地の区域及びこれに接続して現に市街化しつつある土地の区域の所在、場所並びに市街化区域との関係
c 市街地開発事業等の実施状況、都市計画決定の見通し、農地転用の状況等市街地の開発見込み又は発展の動向と新市街地の配置及び区域

飛地の市街化区域については、これらに加え配置の考え方及び計画的開発の見通し等

d 既存の用途地域が指定されている区域と市街化区域との関係
e 既存の農業以外の土地利用計画と市街化区域との関係

(2) 農林漁業との調整を行う事項

1) 農林漁業上の土地利用との調整

a 市街化区域に含まれることとなる土地について、第1に掲げる農用地等の種類、位置、面積(概数)及び関係農林漁業関係施策の実施状況を確認し、これらの農用地等を市街化区域に含める都市計画上の理由と第1の2の(2)との関係を検討する。
b 第1の2の(1)によって市街化調整区域とする一団の農用地の位置、面積及び理由を確認する。

2) 農林漁業関係施策との調整

1)のaの農用地等ごとに、第2の1の(1)及び(2)に定める農林漁業関係施策との調整措置の必要性、内容及び当該調整措置を確保するための関係者間の了解事項等を検討する。

3 調整手続

都道府県が、必要に応じ、法第一七条の案の公告縦覧を行う以前に、地方整備局等へ意見を求め、地方整備局等が、検討可能な期間を考慮して、農林水産省に事前協議を行う場合の取扱いについては、以下によること。
なお、農林水産省における当該事前協議についての事務は、地方農政局等が処理することとする。
(1) 事前調整

1) 都道府県農林水産担当部局は、都市計画担当部局から都道府県案について連絡を受けたときは、少なくとも2の(1)に掲げる事項を関係資料及び図面によって十分説明を受けるとともに、第一及び第二並びに都市計画関連土地利用調整調査実施要領(昭和五七年七月二八日付け五七構改C第四九九号構造改善局長通知)に基づく調査の結果等に基づいて、2の(2)により都道府県案を検討し、都市計画担当部局と必要な意見調整を行うこと。
2) 都道府県農林水産担当部局が、1)により調整を行う場合に、必要に応じ、次の手続を行うこと。

a 都道府県農林水産担当部局は、法定協議の重要性にかんがみ、農業に係る事項にあっては地方農政局等、森林に係る事項にあっては林野庁、漁業に係る事項にあっては水産庁に説明すること。
b 都道府県農林水産担当部局は、2の(1)及び(2)について、必要に応じて地方農政局等、林野庁、水産庁と調整を行うこと。

なお、この調整に当たっては、別添二を参考に資料等を作成し調整を行うこと。

c 都道府県農林水産担当部局は、2の(2)の調整事項のうち国営の土地改良事業(水資源開発公団及び緑資源公団の行うこれに類する事業を含む。)を実施中若しくは調査計画中の地区又は完了して八年を経過していない地区の農用地を市街化区域に含める場合にあっては、aにかかわらず、あらかじめ関係地方農政局(北海道にあっては北海道開発局、沖縄県にあっては沖縄総合事務局。以下「関係地方農政局」という。)と十分意見調整を行うこと。

この場合、関係地方農政局は、aの都道府県農林水産担当部局からの説明と並行して、必要な調整を行うこと。

d 都道府県農林水産担当部局は、a〜cの結果を踏まえて、都市計画担当部局との間で調整を行うこと。

この場合、第2の1の(1)及び(2)の調整措置に係る了解事項等の措置を明らかにした上で行うこと。

e 都道府県農林水産担当部局と都市計画担当部局との間で、適正な調整を了した後、都道府県は、都道府県案について公聴会等を開催し、関係市町村との調整を図ること。
f 都道府県は、eによる調整を了した後、必要に応じて、法第一七条の案の公告縦覧を行う以前に、地方整備局等に意見を求めることができるが、この場合には、都道府県農林水産担当部局は、都道府県案について地方農政局等、林野庁、水産庁に検討可能な期間を考慮して、別添二を参考に作成した資料等によって説明すること。

(2) 事前協議

1) 地方農政局等は、地方整備局等が都道府県から都道府県案について意見を求められた場合において検討可能な期間を考慮して地方農政局等に事前協議を行った場合は、(1)の調整結果を踏まえ、(1)の2)のfにより都道府県から説明のあった都道府県案に関する資料等によって検討・調整すること。

なお、保安林等(国有林が含まれる場合を含む。)を市街化区域に含むこととしている場合にあっては、地方農政局等は林野庁と調整すること。

2) 地方農政局等は、1)により提出された都道府県案について、変更意見がある場合には、地方整備局等に当該意見を述べること。
3) 地方農政局等は、地方整備局等が関係各省の意見も配慮して都道府県案について調整を行い、その結果を踏まえて都道府県に回答するため、地方整備局等からの事前協議に対する地方農政局等の回答が都道府県案の変更を内容とするものであるときは、必要に応じ都府県農林水産担当部局に対して、当該変更意見に基づく再調整を行うように連絡すること。

また、当該回答が第2の調整措置の補充を内容とするものであるときも同様に処理すること。

4) 都道府県は、3)による地方整備局等からの回答に基づき必要があるときは、関係市町村との調整を図った上、都道府県案の修正を行うものとし、地方整備局等にその経過又は結果を報告する。この経過又は結果について地方整備局等から地方農政局等へ通知されるに先立って、都道府県は、地方農政局等にこの経過又は結果について2の(1)に掲げる資料等(当該変更に係るもので足りる)を添えて報告すること。

また、地方農政局等は、報告を受けたときは、必要に応じて(1)の2)のcに準じて処理すること。

(3) 事前の協議調整に必要な図書等

(1)及び(2)に必要な図書その他の資料については、以下によること。
1) 総括表
2) 区域区分設定調書(別添2)

4 法定協議

都道府県が地方整備局長等に都道府県案について法第一八条第三項(法第二一条第二項の規定において準用する場合を含む。)に基づく同意を求め、地方整備局長等が農林水産省に対して法定協議を行った場合は、以下により対応するものとする。
なお、農林水産省における法定協議についての事務は、地方農政局長等が処理することとする。
(1) 法第一八条第三項の国土交通大臣の同意を要する都市計画に係る協議

1) 地方農政局長等は、3の(1)及び(2)により適正な調整が了した後、地方整備局長等から法定協議が行われた場合には、3の(1)及び(2)の結果に配慮し、できる限り速やかに地方整備局長等に対して回答すること。
2) 保安林等を市街化区域に含むこととしている場合にあっては、地方農政局長等は、1)の回答に先立って林野庁長官に協議すること。
3) 地方農政局長等は、法定協議を了したときは、その旨を都道府県知事に通知すること。

なお、国土利用計画法第九条第二項に規定する森林地域(森林法第二条第三項に規定する国有林の区域又は同法第五条第一項の地域森林計画の対象となる民有林の区域として定めることが相当な地域)を市街化区域に含むこととしている場合にあっては、地方農政局等は、法定協議を了したときは、その旨を林野庁に通知すること。

4) 3の(1)2)f、(2)1)、(2)4)及び四の(1)1)に基づく説明、協議に際しては、市街化調整区域に残ることとなる用途地域に関する図書を添えること。
5) 法定協議に必要な図書その他の資料については、以下によること。

a 総括表
b 市街化区域図(案)

6) 都道府県は、法第二〇条に規定する都市計画の告示等の手続を了したときは、法第一四条第一項の都市計画の図書を地方農政局等に一部提出することが望ましい。

(2) 法第一八条第三項の国土交通大臣の同意を要しない軽易な都市計画に係る協議

1) 都道府県は、法第一八条第三項の国土交通大臣の同意を要しない軽易な都市計画に係る協議を行う場合には、地方農政局長等に対して行うこと。
2) 保安林等を市街化区域に含むこととしている場合にあっては、地方農政局長等は、1)に対する回答に先立って林野庁長官に協議すること。
3) 都道府県は、法定協議に先立ち、必要に応じて法第一七条の案の公告縦覧を行う以前に、地方農政局等に意見を求めることができる。
4) その他この調整に必要な手続については、3の(1)及び(2)、4の(1)の4)及び6)に準じて行うこと。

第5 区域区分に関する都市計画と農林漁業との調整措置上留意すべき事項

都道府県及び市町村は、区域区分の設定又は変更を行うに当たって、第一及び第二の調整措置に基づいて農林漁業に関する土地利用及び諸施策との必要な調整を行うことが望ましい。
なお、農林漁業との調整措置の具体的な運用に当たっては、以下の事項に留意して適切に対応することが望ましい。
1 区域区分に関する都市計画の原案作成

(1) 市町村は、区域区分に関する都市計画の原案を作成する場合、農業振興地域整備計画との調和が保たれるよう調整すること。
(2) 市町村が区域区分に関する都市計画の原案を作成するに当たり、都道府県が関係都市計画区域等の人口フレーム、区域区分の見直しに当たっての基本的な考え方等を基本的事項として市町村に示す場合、当該基本的事項の内容に関し、農林漁業との健全な調和を図るとする法の基本理念に基づき都道府県農林水産担当部局は、あらかじめ都市計画担当部局との間で十分な連絡調整を図ること。

また、都道府県農林水産担当部局は、都市計画担当部局との連絡調整の過程において、法定協議の重要性にかんがみ、地方農政局等に十分説明すること。
なお、市町村が作成する区域区分に関する都市計画の原案において、第1の1に該当する農用地等が市街化区域に含まれることとなる場合には、都道府県農林水産担当部局は、あらかじめ市町村から関係資料及び図面によって十分説明を受けること。
また、第1の1の(1)の2)に該当する国営土地改良事業地区内の農用地が市街化区域に含まれることとなる場合には、都道府県農林水産担当部局は、関係地方農政局に十分説明すること。

2 市街化区域の規模の設定

(1) 都市計画運用指針IV―2―1のBの一の(2)において、すでに市街地を形成している区域として市街化区域に編入する区域は、令第八条第一項第一号及び規則第八条に適合する必要があるが、この場合、国勢調査区又はおおむね二〇〜三〇haの土地の区域を標準の単位として区域を設定することが望ましいこととされていることから、建築物の連たんの状況、周辺の土地利用状況等を考慮して適切に区域区分がなされていることを確認すること。
(2) 都市計画運用指針IV―2―1のBの三において、区域区分の変更は、都市計画基礎調査の結果を踏まえて見直すことが想定されており、その見直しにあたっては、単に大規模な宅地開発その他のまとまった市街地を機械的に市街化区域に編入するのでなく、市街化区域に接する土地の区域について、土地利用の動向や基盤施設の整備状況を子細に検討し、街区単位、土地単位等の小規模なものでも、市街化しているものは市街化区域に編入することが望ましいこととされていることから、既存市街化区域の周辺の土地利用についても十分に確認すること。
(3) 市街化区域の規模等に関し、従来から行われてきた人口フレームの一部保留、計画的な市街地整備の見通しが明らかになった時点での随時変更、広域都市計画圏における人口フレームの特例等の措置について、都道府県農林水産担当部局は都市計画担当部局から連絡を受けたときは、少なくとも次の事項につき関係資料及び図面によって十分説明を受けること。

1) 市街化調整区域内の土地の市街化区域への編入

計画的な市街地整備の実施の見通し及び都市的土地利用へ着実に供される見込みに関する事項

2) 市街化調整区域に残ることとなる用途地域

用途地域として残される土地の区域及びその必要性に関する事項

3) 人口フレームの一部保留

a 目標年における人口フレームと保留される人口フレームとの関係に関する事項
b 特定保留地区については、計画的な市街地整備の実施の見通し等に関する事項

4) 随時変更

市街化区域に編入される土地の規模と人口フレームとの関係、計画的な市街地整備の実施の見通し及び都市的土地利用へ着実に供される見込みに関する事項

5) 市街化区域の規模の設定基準の改善

宅地化に相当の期間を要する土地の市街化に要する期間及び市街地形成を促進するための政策努力の考え方、当該土地の面積と市街化区域の規模との関係に関する事項
なお、宅地化に相当の期間を要する土地の存在は、直ちに具体の市街化区域を拡大する理由となるものではなく、市街化調整区域内の土地の市街化区域への編入は、着実に都市的土地利用に供される見込みがあることを検討した上で行うこととなっていることに十分留意するものとすること。

6) 広域都市計画圏における人口フレームの特例

自然的、社会的経済的な区域の一体性等から総合的に判断して一つのまとまりのある単位として考える必要がある区域について、個々の都市計画区域を超えた広域都市計画圏の範囲に関する事項

7) 住宅用地全域の将来人口密度として、状況の変化を反映させた値を用い、あるいは、これに地域特性を反映した値を用いる場合は、当該都市計画区域における経済社会情勢の変化や地域特性に係る事項
8) 密集市街地の整備による人口等の再配分を行う都市計画区域については、適用市街地の密集の状況を踏まえた整備の必要性、人口等の再配分計画、人口等の再配分によって新たに必要となる市街化区域の規模及び位置並びに地区の整備に係る事業の確実性に係る事項

3 保留フレームの設定

市街化調整区域内の土地の市街化区域への編入に当たっては、都市計画運用指針IV―2―1のBの一の(1)において、市街地として必要と見込まれる面積(単に「フレーム」という。)をそのまま即地的に割り付ける方式(いわゆる「人口フレーム方式」)において、市街化区域の設定又は変更にあたり、全てのフレームを具体の土地に割り付けることなく、その一部を保留(以下「保留フレーム」という。)した上で、市街化調整区域内の特定保留地区、又はいずれかの土地の市街地の状況が整った時点で市街化区域とする方法(以下「一般保留」という。)も考えられるとされている。
また、この場合にあっては、第1及び第2の調整措置に従い農林漁業に関する土地利用及び諸施策との調整を行うこと。
なお、区域区分の設定及び変更に当たって、都市計画運用指針IV―2―1のBの1の(1)において、「当該土地の区域に割り付けるフレームと当該フレームを割り付けた後の保留フレームを明らかにして区域区分の変更を行うべきである」とされていることに留意すること。
(1) 特定保留

1) 市街化調整区域内において計画的な市街地整備の実施の見通しがある程度立っている具体の土地に保留フレームを割り付ける区域においては、区域区分の見直しを行う場合に、第1に基づく即地的な調整を行うこと。

この場合、農林漁業との即地的な調整を了した特定保留地区のうち、一部に市街化区域への編入に長期間を要したものも見受けられることから、今後の調整に当たっては、農振法第八条第二項第一号に規定する農用地区域(以下「農用地区域」という。)、農林漁業関係施策の対象農用地など今後とも農林漁業に関する土地利用を進めていく上で必要と認められる土地については、第一及び第二の調整措置を適切に運用する観点から、当該区域における計画的な市街地整備の見通しを十分確認した上で対応すること。

2) 都市計画の図書に参考事項として記載されている特定保留地区のうち、その種類、位置、規模に変更がないものについて市街化区域に編入する場合には、第一の調整を了したものとみなして差し支えないものとすること。

この場合、計画的な市街地整備の見通しが明らかであること及び農林漁業に関する諸施策等との調整措置を確認の上、円滑かつ迅速な対応がなされるよう十分に配慮すること。

(2) 一般保留

一般保留の位置の選定について、即地的に調整し得ない場合においても、可能な限り早期の段階から計画的な市街地整備の実施の見通し等について意見交換を行うこと。

4 飛地の市街化区域の設定

(1) 都市計画運用指針IV―2―1のBの一の(3)の3)において、既成市街地と連続しない新市街地(計画的開発の見通しのある住宅適地、工業適地等と一体の周辺既存集落等を含む。以下「飛地」という。)は、一つの独立した市街地を形成するに十分な規模の区域とし、その規模はおおむね五〇ha以上であり、周辺における農業等の土地利用に支障のない区域とすべきである。ただし、次に掲げる土地の区域については、一つの住区を形成する最低限の規模である二〇ha以上を目途として飛地の市街化区域を設定することができる。

1) インターチェンジ、新たに設置される鉄道の新駅又は大学等の公共公益施設と一体となって計画的に整備される住居、工業、研究業務、流通業務等の適地。
2) 鉄道既存駅周辺、温泉その他の観光資源の周辺の既成市街地で計画的市街地整備が確実に行われる区域。
3) 役場、旧役場周辺の既成市街地で計画的市街地整備が確実に行われる区域。
4) 人口減少、産業停滞等により活性化が特に必要な地域で計画的市街地整備(既存集落を中心とするものを除く。)が確実に行われる区域。
5) 効率的な工業生産、環境保全を図る必要がある場合の工場適地。
とされていることから、飛地を市街化区域に編入する場合には、市街化区域へ編入する区域と同様に、第1及び第2の調整措置に従い、当該都市の発展動向等を十分踏まえた市街化区域の設定がなされるよう調整を行うこと。

なお、当該区域の核となるインターチェンジ、鉄道新駅、大学等の公共公益施設については、当該施設に係る農林業等の土地利用との調整の状況について十分留意の上調整を行うこと。
また、都市計画運用指針IV―2―1のBの一の(3)の3)において周辺における農業等の土地利用に支障のない区域とするべきであることとされていることから、飛地の市街化区域の調整に当たっては、当該区域周辺の優良農用地等の確保及び環境の保全並びに計画的な農業農村整備の推進にも十分配慮すること。

(2) 役場周辺及び旧役場周辺に係る飛地を市街化区域に設定しようとする場合には、市街地や周辺農用地の状況によって集落地域整備法(昭和六二年法律第六三号)の適用が望ましい場合があることから、必要に応じて集落地域整備法の活用についても検討すること。
(3) 飛地の市街化区域を設定する場合については、以下の事項についても説明を受けること。

1) 当該市街化区域の核となる都市施設等と飛地の市街化区域との関連性に係る事項
2) 人口減少、産業停滞等により活性化が特に必要な地域等で計画的市街地整備(既存集落を中心とするものを除く。)が確実に行われる区域において、飛地の市街化区域を設定する場合には、活性化を図ることが特に必要であるとする考え方、市街化区域の規模の妥当性、当該市町村の総合的な土地利用計画における位置付け並びに当該区域の市街地整備及び周辺の優良農用地の保全に対する配慮を内容とする活性化方針に係る事項

(4) 都道府県農林水産担当部局は、飛地の市街化区域の設定においては、特に次の事項について十分留意すること。

1) (3)の2)の活性化の方針については、例えば、単に宅地が造成されることのみをもって活性化が図られるとするものではなく、当該開発区域における市街地の活性化の必要性や活性化を推進するための取組にも十分留意して、農林漁業との調和の図られた合理的な土地利用の実現を通じて活性化が図られるものになるよう調整を図ること。
2) 市街化区域としての設定が可能な規模等の条件を備えた開発行為であって、すでに完了したもの又は実施の見通しがある程度立っているものについては、当該開発行為に係る他法令の手続の進捗状況を勘案しつつ、努めて区域区分制度による対応を行うよう都市計画担当部局と意見交換を行うこと。
3) 市町村が飛地の市街化区域の設定の原案を作成する場合にあっては、当該市町村の定める農業振興地域整備計画との調和が保たれるよう市町村農林水産担当部局と都市計画担当部局との連絡調整が行われるように配慮すること。

5 市街化調整区域への編入

(1) 都市計画運用指針IV―2―1のBの三において、市街化区域内の土地であっても、現に市街化されておらず、当分の間営農が継続することが確実と認められるなど、本来市街化区域に含めないことが望ましい土地の区域については、市街化調整区域に編入することが望ましいこととされていることから、市街化区域内の農用地の市街化調整区域への編入(いわゆる「逆線」)についても十分調整を図ること。

また、農家の営農意欲、その営農の継続性及び地域の実態等から判断して、適当と認められる土地については、農業振興地域の指定及び農用地区域の設定を行うように努めること。

(2) 都市計画運用指針IV―2―1のDの一の(2)において、法第一三条第一項第七号において「市街化区域については、少なくとも用途地域を定めるものとし、市街化調整区域については、原則として用途地域を定めないもの」とされているが、市街化区域から市街化調整区域へ編入する土地の区域の用途地域のうち、無秩序な市街化が進むおそれがある場合で、用途地域による実効ある土地利用規制が期待できる場合は、取り消さないことが望ましい場合もあることとされているが、市街化調整区域内に存置される用途地域(いわゆる「暫定逆線」)は、第四章第二の調整措置が既にとられているものとして存置されるものであること。

ただし、既定の市街化調整区域内で存置された用途地域の区域が変更される場合にあっては、第四章の第二の調整措置を講ずること。

(3) 都市計画運用指針IV―2―1のDの一の(2)において、市街化調整区域に存置した用途地域については、都市的土地利用の可能性が失われるなど都市的土地利用の規制が必要なくなった時点で速やかに廃止することが望ましいこととされていることから、用途地域が廃止された場合には、農家の営農意欲、その営農の継続性及び地域の実態等から判断して、適当と認められる土地については、農業振興地域の指定及び農用地区域の設定を行うよう努めること。

6 地方農政局等の事務処理上留意すべき事項

市街化区域内の土地を市街化調整区域へ編入するに際して、法第三四条第九号の開発行為等により無秩序な市街化が進むおそれがある場合等土地利用の規制の観点から特に必要がある場合には、都市計画運用指針IV―2―1のDの一の(2)において、市街化区域から市街化調整区域へ編入する土地の区域の用途地域の内、無秩序な市街化が進むおそれがある場合で、用途地域の存置による実効ある土地利用規制が期待できる場合は、取り消さないことが望ましい場合もあることとされているところであるが、この場合において、地方農政局等は都道府県農林水産担当部局を通じて都道府県又は市町村の都市計画担当部局とあらかじめ十分な調整を行うこと。
また、都市計画運用指針IV―2―1のDの一の(2)において、存置した用途地域については、都市的土地利用の可能性が失われるなど都市的土地利用の規制が必要なくなった時点で速やかに廃止することが望ましいこととされていることに十分留意すること。

第四章 区域区分が定められていない都市計画区域の用途地域と農林漁業との調整

第1 非線引き用途地域と農林漁業との調整方針

用途地域は、市街地における土地利用規制の基本となるものであり、地域における住居の環境の保護又は業務の利便の増進を図るため、市街地の類型に応じた建築規制を行うものである。
用途地域のうち、区域区分が定められていない都市計画区域における用途地域(以下「非線引き用途地域」という。)の指定又は変更(以下「指定等」という。)を行うに当たっては、農林漁業に関する土地利用との調整が調って定められた非線引き用途地域内の農用地は、市街地化の傾向が著しい区域内にある農用地として、農地法第四条又は第五条に基づく農地転用の許可が原則として可能としていること等を踏まえ、農林漁業との健全な調和を図る観点から、農林漁業に関する土地利用との調整を行うことが望ましい。
なお、この調整を行うに当たっては、非線引き用途地域が、優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域として定められた市街化区域とは異なるものであることに留意し、地域の実情に十分配慮し、農林漁業に関する土地利用との適正かつ円滑な調整が図られるよう、以下の事項に留意することが望ましい。
1 都市計画運用指針IV―2―1のDの一の(2)において、農業振興地域など農業上の土地利用が図られるべき地域、保安林等の森林として保存すべき地域などにおいては、用途地域を指定するべきではないとされていることから、農業振興地域の区域、保安林等の土地の区域(非線引き都市計画区域の用途地域に囲まれることになる小規模な保安林等についてはこの限りではない。)は、非線引き用途地域に含まないよう調整すること。

ただし、農業振興地域の区域以外の土地の広がり及び地形等からみて、農業振興地域の区域の一部を含めて用途地域を設定せざるを得ず、かつ、それにより当該農業振興地域における一体的な農業の振興が阻害されるものではない場合には、当該農業振興地域の一部を変更して非線引き用途地域を指定することがあってもやむを得ないが、この場合における取扱いについては、以下によること。
(1) 当該農業振興地域における一体的な農業の振興が阻害されるものにならないように十分に調整を図ること。
(2) 農業振興地域の一部をやむを得ず変更し、用途地域の指定等を行う場合にあっても、令第八条第二項の規定により農用地区域及び農地法第五条第二項第一号ロに掲げる農地又は採草放牧地の区域並びに保安林等の区域は、原則として含まないとする都市計画基準に基づき用途地域に農用地区域等は含まないよう調整すること。

また、農振法第一〇条第三項の規定に基づき農用地区域として定める土地に該当するものについては、原則として非線引き用途地域に含まないよう調整すること。

(3) 非線引き用途地域は、都市計画基準により、原則として農用地区域は含まないこととされているが、これは、農用地区域が、今後相当長期(おおむね一〇年以上)にわたり農業上の利用を確保すべき土地として農業振興地域整備計画に定められた優良な農用地等であり、保全する必要性が高く、用途地域による規制が必要な建築物の建築等が見込まれないことによるものと考えられる。

しかし、市街地の周辺において、農林漁業に関する土地利用との調整が図られ、かつ、農振法による農用地区域の変更基準に適合し、用途地域による規制が必要な建築物の建築等が確実と見込まれる場合には、地域の合理的な土地利用を図る観点から、非線引き用途地域の指定等の必要性に配慮すること。

(4) 非線引き用途地域を指定するに当たって、農林漁業に関する土地利用との調整を了して農業振興地域を変更する場合には、都市計画法及び農振法による手続を同時に完了することを原則とするが、暫定的に時期がずれることがあってもやむを得ない。
(5) 第二章において区域区分を無しとした都市計画区域の場合、既定の市街化区域内で定められた用途地域は、第2の調整措置が既にとられているものとして存置されるものであること。

ただし、既定の市街化調整区域内で定められた用途地域が存置される場合、又は区域区分の全面的な変更と併せて用途地域の区域が変更される場合にあっては第2の調整措置を講ずること。

2 農業振興地域が指定されていない市町村の区域において、非線引き用途地域の指定等を行う場合にあっては、第三章の第1に準じて調整を行うこと。この場合、用途地域に関する都市計画を定めるに当たっての資料の作成等の作業については、当該地域の市街地化の進度を勘案し、必ずしも区域区分に関する都市計画を定める場合と同様の水準で処理することを要しない。
3 非線引き用途地域の変更により用途地域外となった農用地については、今後の土地利用の方針を検討の上、必要があると認められる場合には、速やかに農業振興地域の指定及び農用地区域の設定を行うよう努めること。
4 非線引き用途地域の指定等を行うに当たって、土地の農業上の効率的な利用を図る観点から以下の事項について確認すること。

(1) 用途地域に含まれることとなる農用地を当該用途に供する見込みがあること。
(2) 用途地域に含まれることとなる農用地を農用地以外のものにすることにより、周辺の農用地に係る営農条件に支障を生ずるおそれがないこと。

5 非線引き用途地域が指定される場合における農林漁業関係施策等との調整措置及び今後の農林漁業関係施策との調整については、第三章の第2及び第3に準じて行うとともに、当該地域の市街化の動向等を勘案の上、適切に取扱うこと。

第2 非線引き用途地域と農林漁業との調整手続

非線引き用途地域の指定等による農林漁業に関する土地利用との調整を行うに当たっては、都市計画と農林漁業との健全な調和を図る観点から、以下により行うことが望ましい。
1 非線引き用途地域の指定等を行うに当たって、当該区域の農用地が含まれるときには、都市計画と農林漁業との健全な調和を図るとともに、農地転用許可事務と相互の事務処理の円滑化を図る観点から、非線引き用途地域に関する都市計画の案を作成する段階において、関係市町村の都市計画担当部局と農地転用担当部局との間において十分に連絡調整を行うとともに、市町村農地転用担当部局は、都道府県農地転用担当部局と十分な連絡調整を行うこと。
2 1の連絡調整に当たって、当該区域内に四ヘクタールを超える農地が含まれる場合には、1の連絡調整の過程において、都道府県農地転用担当部局は地方農政局等と十分な連絡調整を行うこと。
3 都道府県は、法第一九条第三項により市町村から協議を受けた場合には、都市計画担当部局と農地転用担当部局との間において十分な連絡調整を図ること。
4 三の連絡調整に当たって、当該区域内に四ヘクタールを超える農地が含まれる場合には、三の連絡調整の過程において、都道府県農地転用担当部局は地方農政局等と十分な連絡調整を行うこと。
5 二及び四の連絡調整に当たっては、別添三を参考に資料等を作成し、第一に基づき行うこと。

第3 非線引き用途地域と農林漁業との調整上留意すべき事項

第2による調整が行われない場合には、市街地化の傾向が著しい区域内の農用地として、原則農地転用の許可が可能となるほか、宅地分譲も認められるという農地転用許可基準の特例の対象とならないことに十分留意すべきである。

第五章 その他の都市計画と農林漁業との調整

第1 準都市計画区域と農林漁業との調整

準都市計画区域は、積極的な整備又は開発を行う必要はないものの、一定の開発行為及び建築行為がある区域で、そのまま土地利用を整序することなく放置すれば、用途の混在や農地転用に対する無用な圧力による不適切な農用地の浸食等が生じる蓋然性が高い場合にこれらの問題を避けるため、土地利用の整序のみを行う制度として創設されたところであり、準都市計画区域の指定における農林漁業との調整に当たっては、次の事項に十分留意して行うことが望ましい。
1 準都市計画区域の指定に当たっては、法第五条の二第一項において「農振法その他の法令による土地利用の規制の状況を勘案して」とされていることから、農振法のほか農地法、森林法等による規制の状況についても十分確認して行うこと。
2 都市計画運用指針IV―2―1のAの(2)において、準都市計画区域には農用地区域及び保安林等は含めるべきではないとされていること。
3 都市計画運用指針IV―2―1のAの(2)において、2のほか農地及び採草放牧地並びに森林については、準都市計画区域に含めないことが望ましいとされていること。

なお、この場合において、準都市計画区域に例外的に含まれうるものは、農用地にあっては市街地の区域内又は市街化の傾向が著しい区域内にあるもの、森林にあっては宅地に介在するもののみとするべきであるとされていること。

4 準都市計画区域は、法第五条の二第一項で当該区域の自然的及び社会的条件並びに農振法その他の法令による土地利用の規制の状況を勘案して指定することができることとされていることから、準都市計画区域と農業振興地域は重複することも考えられるが、準都市計画区域が指定されたことをもって当該区域に係る農業振興地域の変更は必要がないこと。

また、準都市計画区域における用途地域の設定を行う場合においても、当該制度の趣旨から、当該地域に係る農業振興地域を変更する必要はないこと。

5 準都市計画区域を指定する際に、当該区域に農用地が含まれる場合には、農林漁業との健全な調和を図り、農地転用許可事務と相互の事務処理の円滑化を図る観点から、市町村の都市計画担当部局と農地転用担当部局の間において十分な連絡調整を行うとともに、都道府県知事は、法第五条の二第二項の規定により市町村から協議を求められた場合には、都市計画担当部局と農地転用担当部局の間において十分な連絡調整を行うこと。

また、当該区域内に四ヘクタールを超える農地が含まれる場合には、都道府県農地転用担当部局を通じ地方農政局等との間において十分な連絡調整を行うこと。

6 準都市計画区域を指定する際に、当該区域における既存の土地改良施設等の維持管理、更新、改修等に支障が生じないよう、市町村の都市計画担当部局と土地改良事業等の担当部局及び土地改良施設の管理者との間において十分な連絡調整を行うこと。

また、準都市計画区域の指定が農業農村整備事業等農林水産省所管事業の計画策定及び事業実施に影響を与えないように十分に配慮すること。

第2 特定用途制限地域と農林漁業との調整

特定用途制限地域は、用途地域が定められていない土地の区域(市街化調整区域を除く。)内において、その良好な環境の形成等を行うため、例えば、多数人が集中することにより周辺の公共施設に著しく大きな負荷を発生させる建築物や、騒音、振動、煤煙等の発生により周辺の良好な居住環境に支障を生じさせる、あるいは良好な居住環境にそぐわないおそれのある建築物などの建築を制限する必要がある場合に定めることが考えられるとして創設されたところであり、特定用途制限地域の設定における農林漁業との調整に当たっては、都道府県農林水産担当部局は、次の事項に十分留意して行うことが望ましい。
1 都市計画運用指針IV―2―1のDの三の(2)において、農用地区域、保安林等、農地法第五条第二項第一号ロに掲げる農地又は採草放牧地の区域及びその他の法令等により土地利用規制が行われている区域は、特定用途制限地域を定める必要がある状況が発生しないものと予想され、当該地域を指定すべきではないとされていること。
2 特定用途制限地域の区域を設定又は変更する場合には、市町村の農林水産担当部局と都市計画担当部局との間において十分な連絡調整を行うこと。
3 特定用途制限地域において、制限すべき特定の建築物等の用途を定める場合には、土地改良施設、林道その他農林漁業関係の施設の維持管理、改修、更新、新設等に支障が生じないよう、農林漁業との調整を図ること。

第3 地区計画と農林漁業との調整

地区計画は、主として当該地区内の住民等にとっての良好な市街地環境の形成又は保持のための地区施設及び建築物の整備並びに土地利用に関する一体的かつ総合的な計画で、街区単位できめ細やかな市街地像を実現していく制度であり、用途地域による都市全体での用途の配分や、土地区画整理事業による基盤の整備等とあわせて、都市計画が目指す望ましい市街地像を実現するために行われることから、当該地区計画を定めるに当たっての農林漁業との調整については、次の事項に十分留意して行うことが望ましい。
1 都市計画運用指針IV―2―1のGの一の(1)の4)において、地区計画は、街区単位での土地利用計画を念頭に作成されるものであり、農振法及び森林法等に基づく規制により、都市的土地利用が制限されていることが明らかな土地については、地区計画を策定する積極的な意味はないこととされていること。
2 市街化調整区域内において地区計画を定める場合にあっては、市街化を抑制すべき区域であるという市街化調整区域の性格を変えない範囲とすべきであること。
3 都市計画運用指針IV―2―1のGの二の(2)の4)において、用途地域が定められていない土地の区域における地区計画の区域には、農用地区域、集落地域整備法に規定する集落地域、農地法による農地転用が許可されないと見込まれる農用地は含まれるべきではないとされており、例外的に含まれる場合であっても、市街地の区域内又は市街地化の傾向が著しい区域内にある農用地であること。

さらに、用途地域が定められていない土地の区域における地区計画の区域には、原則として、保安林等についても含めるべきでないとされており、含める場合にあっても、保安林等の指定の目的に反する制限は定めないこと。
また、用途地域が定められていない土地の区域における地区計画の対象となる森林は、街区に介在する森林に限られるものとすることが望ましいとされていること。

4 地区計画を定める場合には、市町村の都市計画担当部局と農林水産担当部局及び農林水産関連企業担当部局との間において十分な連絡調整を行うこと。
5 用途地域の定められていない土地の区域で地区計画を定める場合において、都道府県が当該地区計画に同意を行う場合には、都道府県農林水産担当部局と都市計画担当部局との間で十分連絡調整を行うとともに、地区計画を決定しようとする土地の区域内に四ヘクタールを超える農地が含まれる場合には、都道府県農林水産担当部局は地方農政局等と十分に連絡調整を行うこと。
6 農林水産担当部局及び農林水産関連企業担当部局と都市計画担当部局との連絡調整に当たっては、法第一二条の五第一項第二号の要件に適合するかどうか判断できる資料により行うこと。
7 農林漁業及び農林水産物の処理、貯蔵若しくは加工の事業の円滑な実施に配慮し、これらの事業の継続に支障をきたさないようにするとともに、その事業を営む者の意見を十分に聞くこと。
8 用途地域の定められていない土地の区域における地区計画は、周辺の土地の農業上の利用に支障を及ぼすおそれがないように定めること。
9 用途地域の定められていない土地の区域における地区計画は、環境の保全に十分配慮するとともに、営農条件及び農村の生活環境の向上のための計画及び事業に影響を及ぼさないよう十分配慮すること。
10 都市計画運用指針IV―2―1のGの三の(2)の3)において、用途地域の定められていない土地の区域における地区計画に係る地区整備計画の土地の利用に関する計画には、計画内容として、農用地に関する事項、令第七条の六に規定する事項以外の森林に関する事項を定めるべきではない。また、森林法第五条の地域森林計画対象民有林並びに国有林野及び公有林野等官行造林地について、令第七条の六に規定する事項を定めるべきではないこととされていること。

第4 その他の都市計画と農林漁業との調整

1 「都市計画法及び建築基準法の一部を改正する法律の施行について」(平成一三年五月一四日付け国都計第七九号、国総民第二号国土交通省都市・地域整備局都市計画課長、総合政策局宅地課民間宅地指導室長)の記のIIの四「新都市計画法第一三条関係」の(4)において、法第一三条第一項第八号、第一二号、第一三号に「区域区分が定められていない都市計画区域」が定められるのは、附則第三項の改正に伴う技術的修正であって、従来の都市計画の範囲を何ら変更するものではなく、また、第一〇条の二第一項各号、第一二条第一項各号及び第一二条の二第一項各号に掲げる事項並びにこれらの関係法律に関する解釈、運用を何ら変更するものではないこととされていることに十分留意することが望ましい。
2 「都市計画法及び建築基準法の一部を改正する法律の施行について」(平成一三年五月一四日付け国都計第七九号、国総民第二号国土交通省都市・地域整備局都市計画課長、総合政策局宅地課民間宅地指導室長)の記のIIの四「新都市計画法第一三条関係」の(5)において、法第一三条第一項第一一号に「区域区分が定められていない都市計画区域」が定められるのは、附則第三項の改正に伴う技術的修正であって、従来の都市計画の範囲を何ら変更するものではなく、また、区域区分が定められていない都市計画区域においては、市街地の現況及び将来の発展動向を勘案し、必要に応じて道路、公園及び下水道に関する都市計画を定めるものであることとされていることに十分留意することが望ましい。



別添1
<別添資料>



別添2
<別添資料>



別添3
<別添資料>



別紙2 略


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