住指発第一二五号
昭和六二年四月三〇日

特定行政庁建築主務部長あて

建設省住宅局建築指導課長通知


高度情報化建築物(インテリジェント・ビル)整備事業融資制度の運用について


高度情報化の進展に対応した良好な建築物整備の促進を図るとともに、都市機能の更新等に資するため、昭和六一年度より、政府系金融機関の日本開発銀行、北海道東北開発公庫及び沖縄振興開発金融公庫による高度情報化建築物(インテリジェント・ビル)整備事業融資制度が創設されたところである。
本制度の運用に当たっては、別添のとおり融資推薦基準及び融資推薦運用指針を定めるとともに、事業者から建設事務次官あての融資推薦申請は、特定行政庁を経由させることとしたので通知する。
貴職におかれては、本制度の趣旨を了知のうえ、融資推薦申請書が提出されたときは、当該申請書二部を建設事務次官あて速やかに進達されたい。
また、貴管下関係機関に対し、本制度の趣旨及び内容の周知徹底を図られたい。

高度情報化建築物(インテリジェント・ビル)整備事業融資推薦基準

1 目的

本基準は、日本開発銀行、北海道東北開発公庫、及び沖縄振興開発金融公庫における高度情報化建築物(インテリジェント・ビル)整備事業融資制度に係る融資推薦審査を行うに当たって、必要な事項を定めることを目的とする。

2 対象事業

3に掲げる要件に該当する建築物(以下「高度情報化建築物」という。)を新築し、又は既存建築物を増築、改築若しくは改修することにより、当該建築物を高度情報化建築物とする事業

3 対象建築物

高度情報社会の進展に対応し得る二一世紀を展望した良好な建築ストックの確保に資するとともに、都市機能の更新、都市構造の再編又は地域開発に資する建築物であって、次の各号のすべてに該当するもの

(1) 高度な情報通信設備・システムが導入され、又は将来確実に導入されるものであるとともに、当該設備・システムが導入可能なようにあらかじめ必要な措置が講じられていること。
(2) 高度な管理制御機能が導入されていることにより、空気調和設備、照明設備、防災・防犯設備等について、省エネルギー化、省力化等が図られているとともに良好な室内環境が確保されていること。
(3) 情報通信設備・システムを安全に稼動させるための対策が適切に措置されていること。
(4) 当該建築物と他の建築物とが、高度情報通信ネットワークにより結合され得ること。

高度情報化建築物(インテリジェント・ビル)整備事業融資推薦運用指針

高度情報化建築物(インテリジェント・ビル)整備事業融資推薦運用指針(以下「運用指針」という。)は、高度情報化建築物(インテリジェント・ビル)整備事業融資推薦基準(以下「基準」という。)を運用するために必要な事項を定め、もって融資推薦審査を的確に行うことを目的とする。なお、対象建築物は建築基準法令及び関係法令を遵守して新築、増築、改築又は改修され、適切に維持保全されなければならない。
一 基準(1)について

(1) 情報通信設備・システム

高度な情報通信設備・システムとして、次に掲げる設備・システムが必要に応じて適切に導入され、又は将来確実に導入されるものであること。
1) デジタルPBX
2) LAN
3) テレビ会議システム
4) 衛星通信システム
5) 共同利用のコンピュータ
6) 共同利用の専用回線、CATV等
7) その他データベース、VAN、電子メール等高度な情報通信サービスに対応するための設備・システム

(2) 電源設備

1) 電源容量

1) 電源設備は、高度な情報通信設備・システム及び多数のOA機器(以下「高度な情報通信設備・システム等」という。)の導入並びにこれらに伴う空気調和負荷の増大による電力需要量の増大に対応した電源容量を有していること又は電気室は電力需要量の増大に対応可能な電源設備の増設スペースを有していること。
2) 一般事務室等の単位有効床面積当たりのコンセント電源容量は、二〇VA/m2以上有していること。

2) 無停電対策等 高度な情報通信設備・システム等を導入する場合には、その取り扱う情報の重要性並びに電圧変動及び周波数変動の許容値に応じて無停電電源装置並びに定電圧装置及び定周波装置が設置されていること。
3) 分電盤・幹線 高度な情報通信設備・システム等への分電盤は、空気調和設備、エレベーター等(以下「ノイズ発生源設備」という。)の分電盤と独立させること、また当該設備・システム等への幹線は、ノイズ発生源設備の幹線と独立させることが望ましい。
4) 高調波障害対策 高度な情報通信設備・システム等を導入し、かつ高調波発生源が多い場合には、当該設備・システム等の許容電圧歪率に応じて適切な高調波障害対策が措置されていること。
5) 接地 高度な情報通信設備・システム等を導入する場合には、外来ノイズ防止のための接地及びコンピューターの論理回路用の接地は、良好な接地がそれぞれ独立に確保されていることが望ましい。

(3) 配線・配管設備

1) シャフト

1) シャフトの位置及び数は、電源設備、高度な情報通信設備・システム等の建築物全体の配線源及び各フロア内の配線源の位置に対応して適切に計画されていること。
2) シャフト内の配線は、高度な情報通信設備・システム等の導入による電力需要量及び電気通信需要量の増大、変動及び偏在に対応した配線容量及び本数を有していること。
3) シャフト断面積は、収納する配線の容量・材料・敷設方法及び設置される各種機器の寸法、点検スペース並びに配線容量及び本数の増設のための余裕スペース等を考慮して適切に計画されていること。
4) シャフト内の区画貫通部及びシャフトからフロア内配線へ横引きするためのシャフト壁貫通部の処理は、防火・防煙上支障のなく、かつ、消火に用いた水が流れ込まないように行うこと。
5) シャフトの扉は施錠付とする等十分な安全性確保対策を行うこと。

2) 配線方式 水平方向の配線方式は、高度な情報通信設備・システム等の導入及びレイアウトの変更に対応可能なフレキシビリティ(拡張性、追加変更の容易性)を有したものであること。
3) 通信配線 高度な情報通信設備・システム等の通信配線は、必要に応じて、ノイズ発生源設備との間に十分な距離をとる、電磁シールドを行う等の適切な措置を講ずること。

(4) 情報通信設備・システムへの対応

1) 設置スペース デジタルPBX等の高度な情報通信設備・システムの設置が想定される場合には、予め必要な設置スペースが確保されていること。
2) 大規模アンテナ 大規模な建築物の場合にあっては、将来の無線系電気通信需要量の増大に対応し大規模アンテナの設置が可能なように予め必要な措置が講じられていることが望ましい。

(5) 構造強度 高度な情報通信設備・システム等を導入する場合には、必要に応じて当該設備・システム等の荷重に対応した積載荷重が想定されていること。

二 基準(2)について

(1) 管理制御機能

別紙一に掲げる管理制御機能が、要求されるサービス水準に応じて適切に導入されていること。

(2) 環境

1) 内部発熱対応 空気調和設備は、高度な情報通信設備・システム等の導入時期、位置及び稼動時間を考慮し、内部発熱量の増大、変動及び偏在に対応した冷暖房容量、システム編成、稼動時間等を有すること又はこれらに対応可能なように予め必要な措置が講じられていること。
2) 室内環境水準 高度な情報通信設備・システムを導入する室においては、建築基準法施行令第一二九条の二の二第三項に規定する左記室内環境水準を確保すること。

(1)
浮動粉じんの量
空気1につき0.15mg以下
(2)
一酸化炭素の含有率
10/1,000,000以下
(3)
炭酸ガスの含有率
1,000/1,000,000以下
(4)
温度
1 17度以上28度以下
2 居室における温度を外気の温度より低くする場合は、その差を著しくしないこと。
(5)
相対湿度
40%以上70%以下
(6)
気流
0.5m/s以下

3) 天井高さ 天井高さは、フリーアクセスフロア等の配線方式に対応するために、二、六〇〇mm以上あることが望ましい。
4) 床面積 一人当たりのOA機器使用台数の増加に対応するため、一般事務室等の一人当たりの有効床面積は、八m2以上確保されていることが望ましい。
5) グレア防止 CRT画面上に高輝度の照明器具、昼間の明るい窓等の光源が映り込まないようにするために、照明方式、家具レイアウト等の選定に関する適切な配慮がなされていることが望ましい。
6) 水平照度等 全般照明方式の場合の水平照度は、原則としてJISZ九一一〇(照度基準)を満足していること又は全般照明方式の場合の水平照度と同等以上の快適性を有する照明方式が採用されていること。
7) リフレッシュ空間 執務者等の精神的緊張を和げるために、植物、自然光等が取り入れられた空間が適宜設けられていることが望ましい。

三 基準(3)について

別紙二に掲げる措置が必要に応じて適切に講じられていること。

四 基準(4)について

(1) 自社ビルにあっては、デジタルPBXを備え得ること。テナント・ビルにあっては、共用のPBXを備え得ること、又は、各テナント設置のPBXがネットワーク化され得る管路及び機器の設置スペースを有していること。
(2) 建築物への引き込み管路・ケーブルの容量及びスペースは、電気通信需要量の増大、新規第一種電気通信事業者の参入等に対応可能なように予め必要な措置が講じられていること。
(3) 情報通信設備・システムは、必要に応じて、地域内又は遠隔地の他の建築物の情報通信設備・システムと結合し得ること。

五 その他

運用指針は、その予想しない特殊の情報通信設備・システム等を導入する建築物については、当該設備・システム等が運用指針によるものと同等以上の効力があると認められる場合においては、適用しない。
(注) 基準及び運用指針の表現

基準及び運用指針においては、高度情報化建築物(インテリジェント・ビル)が、基本的に取り入れる必要のある事項については、「……こと。」、必要に応じて取り入れるべき事項については、「……に応じて……こと。」、必要に応じて取り入れることが望ましい事項については、「……望ましい。」と表現している。



別紙1
<別添資料>



別紙2
<別添資料>



(参考1)事業の流れ
<別添資料>



(参考2)
<別添資料>


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