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平成13年度観光の状況に関する年次報告

第1章 観光の現状はどうなっているか

第1節 ●観光の経済に与える影響

1 旅行消費の波及効果


旅行に伴う直接消費は関連する産業の裾野が広いという特徴がある。旅行業,交通産業,宿泊業,飲食産業,アミューズメント産業のほか,土産品産業(農林水産業,食料品,繊維製品,化学・石油石炭製品,窯業製品産業など)から多様な財やサービスが直接購入される。更に,これらの旅行者の直接購入先である飲食産業等が原材料を購入することを通じて,農林水産業,製造業等の生産を誘発する(第一次生産波及効果)。またこれらの産業の就業者の所得の増加,家計による消費の増加を通じて,更に多くの他産業から購入が行われ,生産を誘発する(第二次生産波及効果)。このように,観光消費は我が国の産業や雇用の創出に幅広く,大きな経済波及効果を及ぼしている。
国土交通省が行った調査によれば,平成12年における観光消費額総額は22.6兆円,この旅行者の支出による直接の雇用創出効果は193.7万人と推計される(図1-1-1)。

図1-1-1 観光消費の我が国経済への貢献(推計)



旅行者の支出による直接の生産効果(売上高)及び誘発された生産効果(上記第一次及び第二次生産波及効果による生産高の計)の合計は,国内の全産業で53.8兆円であり,またこれにより422.2万人の雇用を創出すると推計される。これは,それぞれ我が国の国内生産額(約931兆円(平成12年推計))の5.7%,全雇用者数(約6,700万人(同上))の6.3%に及んでいる(図1-1-1)。
各産業への経済波及効果は図(図1-1-2)に示すとおり,広い裾野をもっている。

図1-1-2 旅行消費による他産業への波及効果



観光産業は近年世界的に急成長しており,WTO(国際観光機関)によれば全世界の観光による消費額は2020年に1995年の約5倍の規模に拡大すると見込まれている。我が国の観光消費に係る直接の付加価値額(旅行者の支出に係る売上高から原材料等の購入額を除いた額)は11.2兆円,これによる雇用創出効果は193.7万人(再掲)と推計され,我が国の国内総生産(GDP。約509兆円(同上))の2.2%,全雇用者数の2.9%を占めていると推計されるが,国際的に比較すると,これらは低い水準である(図1-1-3)。特に,我が国の観光消費における外国人旅行者のシェアが低いことがその要因の一つであると考えられる(図1-1-4)。

図1-1-3 世界各国の観光産業の規模・雇用




図1-1-4 主要国旅行・観光消費の国内・外客比率



観光の振興は他産業の振興を牽引し,我が国経済全体の底上げをもたらすものとして,観光産業は21世紀のリーディング産業としてその振興が期待されている。
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