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平成13年度観光の状況に関する年次報告

第2章 21世紀における持続可能な観光に向けて ~WTO大阪総会の開催~

第4節 ●持続的発展可能な観光地づくりの取組み

2 観光まちづくり


国土交通省においても,(財)アジア太平洋観光交流センターが設置した「観光まちづくり研究会」(主査:西村幸夫東京大学教授)に参画して内外の事例研究を行い,その成果として,地域が主体となって「観光資源」,「地域の定住環境」,「来訪者の満足」の三者を調和させる総合的なまちづくりである「観光まちづくり」の手法を整備した。(平成12年3月)
この「観光まちづくり」は,WTO大阪総会「ミレニアム観光サミット」において紹介され,参加各国の支持により大阪ミレニアム宣言に反映されたところである。
「観光まちづくり研究会」でも取り上げられた「観光まちづくり」の成功例である京都府美山町と宮崎県綾町の取組みを紹介する。

  (1) 京都府美山町

京都府のほぼ中央に位置し,豊かな緑と清流に恵まれた自然豊かな農山村地域である。
美山町は単独の町としては日本最大の約250棟の茅葺民家が残存しており,この歴史的な建造物群の環境保全等まちづくりのため,様々な取組みを行っている。
例えば,土産物販売の売上金を一括管理して保全資金の一部に充当しているほか,京阪神在住の美山ファンによる「美山町かやぶきの里保存基金」の積立て,「美しい町づくり条例」の制定,同町への移住希望の窓口として,土地・建物の斡旋や就職相談まで引き受ける第三セクター「美山ふるさと株式会社」の設立,特産物の生産体験等地域の特産を生かした地域住民主体のイベント等,官民が一体となった環境保全,町並み保全等に取り組んでいる。これらの取組みの結果,美山町の人口約5,600人に対して,平成12年の観光入込客総数は約50万人弱と,大きな成果を上げている。

京都府美山町




  (2) 宮崎県綾町

宮崎県のほぼ中心部,宮崎市の西北20キロに位置し,全国一の規模を誇る照葉樹林(常緑広葉樹林)を中心とした広葉樹の天然林や野鳥等の野生動物に恵まれた地域である。
綾町では,原生照葉樹林を生かした伝統工芸品づくりを進めるとともに,産業観光を目指す取組みの一環として,世界規模の大吊橋,中世山城を復元した綾城,官民の協力によるお酒のテーマパーク等を整備,また,花いっぱい運動等,「自治公民館」を活用した,まちの魅力を高めるための様々な取組みを進めている。
これらの取組みに当たっては,町民の雇用と食材等の町内調達を原則としており,観光客の集客に伴う付加価値をできるだけ町内に還元する工夫を取り入れている。その結果,昭和60年代には40~50万人であった観光入込客総数が平成12年には約111万人を超え,さらに,綾町の人口も昭和55年以降着実に増加しているなど,同様の規模と立地条件の自治体が人口減に悩むなか,全国的にも珍しい例となっている。

綾町の大吊橋(宮崎県)



我が国では,各地に美しい自然環境や古の時を体感させる文化財等が存在しており,画一化した地域づくりではなく,こうした地域のよさを資源として活かすことが地域の活性化に重要となってきている。過疎化に悩む中山間地域でも空洞化が進む中心市街地でも事情は同じであり,来訪者(交流人口)を増やすべく,資源の掘り起こしと活用を進める取組みが必要である。同時に,この貴重な自然,歴史的資源,地域のよさの持続的な利用を進めるため,一部の観光関係者だけでなく一般の住民の参加をまとめ,資源,地域の定住環境,来訪者の満足度のバランスをとりつつ,地域の持続的発展を目指す取組みが必要である。

綾城(宮崎県)



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