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平成13年度観光の状況に関する年次報告

第4章 国内観光振興の施策

はじめに


近年,内閣府等の調査でも示されるとおり,国民が物質的豊かさから心の豊かさを求めるようになり,レジャー・余暇,とりわけ旅行への国民の潜在需要は大きい。しかしながら,海外旅行の伸びに比較して国内旅行,特に宿泊観光旅行の伸び率は低迷を続けている。これは海外旅行との同一市場化,長期化する景気の低迷も一因であるが,国内旅行市場での供給側と需要側のミスマッチも主要な原因である。
国民の国内旅行の形態は,団体から個人・家族旅行に変化し,旅行先での行動も参加体験型の志向が高まるなど多様化,個性化してきている。同時に,旅行者は旅行商品の価格に敏感になってきており,価格に対するサービス等の満足度の評価が厳しくなってきている。
これに対して,国内観光地,観光産業は多様化,個性化,高質化する旅行ニーズへの対応が遅れ,この結果観光地の混雑,料金の高さに加えて観光地,旅行商品の魅力に対する不満が大きくなっている。
他方,近年における産業構造の変化等により国内各地域において地域の活力の低下が指摘されている。地域が活性化に取り組む中で,地域それぞれの豊かな自然や歴史,文化,伝統の相違に基づく地域の特徴,個性を観光資源として交流人口をひきつけ,産業・雇用の確保・拡大を図るという,観光を活かした地域づくりの動きが盛んになってきている。観光に関連する産業の裾野は広く,その波及効果は大きいことから,いわゆる旅館などの狭い観光関係者だけでなく,地域の様々な関係者が参加して,既存の人的・物的資源,施設を活用しながら,地域の個性を活かした魅力ある地域づくりを実現して行こうとしている。
このような,「地域の住民が住んでみたいまちが観光客が訪れてみたいまち」という認識の下での,観光産業中心に偏らない地域住民主体での地域づくりの取り組みを支援していくことが重要である。また,それぞれの地域は,当該地域のもつ自然,文化,歴史,産業等のあらゆる観光資源を最大限に活用する一方で,地域に住む住民の満足度,住環境に関わる観光資源の保全等に配慮することにより,地域住民としての連帯の強化,アイデンティティの確立も実現して行く,地域づくり,即ち持続的に発展できる観光地づくりを推進する必要がある。
本章では,国内観光の振興のため魅力ある観光地づくりに関する施策とともに,幅広い関係者の連携,工夫による魅力ある旅行商品づくりの動きを記述する。
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