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平成14年度観光の状況に関する年次報告

第2章 観光をめぐる課題 ~訪日外国人旅行者倍増に必要なこと~

第2節 訪日外国人旅行者の行動と受入れ体制の実態

2 外国人旅行者から見た日本の観光の問題点


ここでは,国土交通省観光部が平成14年に行った「ワールドカップサッカー大会を契機とした地域における受入体制整備促進検討調査」をもとに外国人旅行者が行った日本の評価等について,分析・記述する。この調査は,ワールドカップサッカー大会期間中に成田及び関西国際空港において,日本出国前の外国人(計676人)に対して調査員が面接調査により実施したものである。

  (1) 日本のイメージについて

外国人に訪日前の日本の具体的なイメージを自由に述べてもらったところ,「きれい,清潔」を挙げた人が7.8%,「親切,礼儀正しい」が6.7%,「先進国,経済大国」が5.9%,「物価,料金が高い」が3.3%,「混んでいる」が2.2%いた。このほか,着物,侍,富士山などを挙げる者もわずかにあった(図2-2-3)

図2-2-3 訪日前のイメージと訪日後の評価



訪日後の日本の評価については,訪日前に上位だった「親切,礼儀正しい」(11.8%),「きれい,清潔」(10.5%)がいずれも増え,一方,「先進国,経済大国」(2.5%)は訪日前より大幅に減少した。なお,「物価,料金が高い」(3.8%),「混んでいる」(2.4%)はほぼ横ばいであった。

  (2) 外国人旅行者が感じる日本の問題点

1)宿泊施設の訪日前の心配と訪日後の評価
宿泊施設に関して,「言葉」,「設備」,「食事」,「料金」の面で訪日前に心配していたことがあるか聞いたところ,「言葉」(22.3%),「料金」(16.0%)の面での心配を挙げた者が多くみられた。訪日後の評価でも,問題(不便)を感じた回答者は「料金」(21.9%),「言葉」(19.4%)で多く,5人に1人がこれらの点に問題を感じたと回答している(図2-2-4)

図2-2-4 宿泊施設に関する訪日前の心配と利用後の評価



2)交通機関の評価
利用した交通機関の「良かった点」や「不便・不満を感じた点」を自由に記入してもらったところ,新幹線(長距離列車を含む)については(利用率36.1%),プラス評価(良かった点)を挙げた者が18.9%,マイナス評価(不便・不満を感じた点)が8.1%と,プラス評価を挙げた者が2倍以上であった。具体的には,プラス評価としては,「便利」,「時間に正確」及び「清潔・きれい」,マイナス評価では,「運賃・料金が高い」,「標識・表示がわかりにくい」,「外国語表記案内がない」などがみられた(図2-2-5)

図2-2-5 主な交通機関に対する評価



また,地下鉄(近距離電車を含む)(利用率71.3%)は,プラス評価が38.3%,マイナス評価が20.6%と新幹線同様にプラス評価が高かった。具体的意見はプラス・マイナス評価とも新幹線と同様であるが,マイナス評価には「混んでいる」,「路線が複雑」との意見もあった。
タクシーについては(利用率42.8%),プラス評価が15.4%,マイナス評価が9.6%で,プラス評価としては,「親切」,「清潔・きれい」,マイナス評価では,「運賃・料金が高い」,「言葉が通じない」が多かった。
これらの結果から,交通機関は時間に正確など機能の面からは高く評価されているが,料金,多言語対応の面などで改善が求められていることが分かる。
3)観光施設の評価
観光施設の評価として,「施設までの標識」,「施設内の案内板」,「パンフレットの設置」について記入してもらったところ,施設までの標識は,プラス評価を挙げた者が36.7%いたが,「わかりにくい」「○○語表示がなく不便」といったマイナス評価を挙げた者も17.0%いた(図2-2-6)

図2-2-6 観光施設等に関する評価



施設内の案内板は,プラス評価29.9%,マイナス評価11.4%であり,また,パンフレットについては,プラス評価25.4%,マイナス評価10.4%という結果であった。いずれもプラスがマイナスを上回ったが,これらは相対的に捉えるべきではなく,英語以外の言語が不十分など明確に不便を感じた者が1割以上いたという事実を重視し,改善を要するものと考えられる。
4)その他の問題点
今回の調査では,この他にも,1)両替やクレジットカードを使用できる施設が少ない,2)国際電話やインターネットなど通信手段に対する不便,3)店の閉店時間が早い,4)入国審査に時間がかかる,5)物価が高いなど様々な問題点が挙げられた。
このように外国人旅行者へのアンケート調査により多くの課題が浮き彫りになったが,本調査は第3章第7節で述べるように様々な対策を講じたワールドカップサッカー大会期間中に実施した調査であることに留意すべきであり,これらの課題はますます看過できないものと認識すべきである。したがって,今後,訪日外国人旅行者を飛躍的に増大させるためには,受入れ体制の更なる整備・推進が重要なテーマの一つであると考えられる。
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