平成16年度において講じようとする観光政策
第3章 観光交流空間の形成に向けた取組み
第1節 観光地の魅力の向上
1 総合的,広域的な観光地づくり支援
地域の個性を活かした魅力ある観光交流空間づくりのための自主的な取組みを国土交通省がハード・ソフトの両面から総合的,重点的に支援する「観光交流空間づくりモデル事業」を実施し,新たにモデル地域を選定するとともに,選定された地域において,各種事業・施策を重点的に実施する。
(2) 都市再生・構造改革特区と一体になった観光振興 |
観光振興は都市再生の有力な手段の一つであることから,引き続き,全国都市再生の一環として,観光をテーマにしたものなど都市再生活動を支援する。
構造改革特区では,引き続き,定期的に地方公共団体や民間事業者等から,提案を募集することとしている。観光振興に関するものについても提案がなされれば,更なる規制改革の実現に向け,対応する。また,地方公共団体から観光振興に向けた計画の認定申請について相談があれば,積極的に支援,助言する。さらに,15年7月に特区の規制改革を全国的に広げるための評価委員会を設置したが,同委員会において問題がないとされた規制の特例措置については速やかに全国化するよう努める。
地域再生に向けた取組みとしては,本年5月に,地域再生計画の認定申請を受け付け,6月に認定を行い,6月以降も地方公共団体や民間事業者等から,地域再生のための支援措置についての提案を募集することとしている。観光振興に資するものについても提案がなされれば,更なる支援措置の実現に向け,「実現するためにはどうすればいいか」との姿勢で対応する。また,地方公共団体から観光振興に向けた計画の認定申請について相談があれば,積極的に支援,助言していく。
地域がそれぞれの持つ魅力を自主的に発見し,高め,競い合う一地域一観光づくりを推進するため,観光カリスマ塾の開催による人材育成,観光交流空間づくりモデル事業のうちNPO等が行う観光戦略の核となる先進的な取組みの推進を図る。
従来型の個性のない観光地が低迷するなか,各観光地の魅力を高めるためには,観光振興を成功に導いた人々の類まれな努力に学ぶことが極めて効果が高く,各地で観光振興にがんばる人を育てていくため,その先達となる人々を「観光カリスマ」として選定し,国土交通省のホームページ(http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/kanko/top.htm)に掲載するなどして公表する。
魅力ネットサイト事業については,インターネットで公開しているサイト「発見!観光宝探しデータベース」掲載内容の多言語化(英語)を図るとともに,適宜更新を行っていき,内容の充実を図る。
地域の住民等の多様な主体が,地域の個性や魅力の発見,理解,再評価を行い,地域の魅力を伸ばす空間整備に関する改善提案を行っていく活動等を「観光プラスワン大作戦」として支援するため,模範となる地域の取組事例の収集整理の他,住民等の多様な主体による地域点検を通じた地域の魅力づくり提案に対し,ケーススタディを通じた評価手法を検討するとともに,そのような提案を取り入れた計画策定手法の検討を行った上で,実施のためのマニュアル等を取りまとめ,提示していく。
ルート周遊・広域観光に対応するため「広域観光テーマルート整備事業」に対して支援する。
(9) グリーン・ツーリズムの推進による地域づくり |
農山漁村において余暇活動を楽しむグリーン・ツーリズムについては,1)共生・対流の推進に向けた国民運動の一環として,都市住民の潜在的需要を踏まえたグリーン・ツーリズムの新たなスタイルを提案・普及,2)都市部での農山漁村情報提供の充実強化及び都市側と受入側とのマッチングの推進,3)グリーン・ツーリズムビジネスの起業家,体験指導員等の人材の育成・確保,4)地域ぐるみの受入システムや交流空間の整備等を総合的に推進するとともに,これら施策と一体的に外国人旅行者等も訪れる農山漁村資源を活用した「一地域一観光」の取組み(「観光立村の推進」)に対して支援を実施する。
地域資源の保全・活用や地域振興などに役立つエコツーリズムの普及・定着を図るため,モデル事業を実施し,エコツーリズムの運営体制づくりを推進するとともに,引き続きエコツーリズムの推進方策を検討する。
フィルムツーリズムの振興を図るため,映像製作者とロケ地が情報交換等を行う「旅フェア2004-メディア懇談会」を支援する。また,全国の野外撮影地に関する情報データベースを構築するなどフィルムコミッションの行う各地でのロケーション(野外撮影)誘致への取組を支援することとしている。
地域の魅力をゆっくりと堪能する新しいツーリズム(サイクルツアー)を普及し,地域の活性化を図ることを目的に,サイクリングロードと観光施設,川の親水施設,港湾緑地等との連携を強化する各種施策を総合的に推進していく。
平成16年度は,各地区において推進計画を策定し,その計画を踏まえ施設整備と各種ソフト施策を一体的に実施していく予定である。
北海道では,「北海道の観光を考える百人委員会」が来道観光客数1,000万人構想を提唱するなど,北海道の観光産業の飛躍的発展のための様々な取組みが活発化しており,国においても関係機関と連携を深めそれらを支援していく必要があることから,道路整備,空港・港湾整備,都市環境整備,河川・海岸の整備や観光情報システムの充実等の観光基盤の整備を図るため,各種の措置を講じる。
平成16年度においては,沿道環境の整備や地域資源の保全と活用により,美しく個性的なドライブ環境や地域環境づくりを目指す「シーニックバイウェイ北海道」の本格展開を推進するほか,活力に満ちた農山漁村の形成に資する「わが村は美しく-北海道」運動を推進する。また,火山災害遺構を保存するとともに自然,防災を学ぶ「洞爺湖周辺地域エコミュージアム構想」の支援を行う。
北海道の豊かな田園風景(北海道美瑛町)
沖縄振興特別措置法,沖縄振興計画及び沖縄県観光振興計画に基づき,多様なニーズに対応した通年・滞在型の質の高い観光・リゾート地の形成に向け,沖縄観光の一層の振興を図ることとしている。
平成16年度においても,新たにバリアフリー観光の推進などの支援に取り組むとともに,観光振興地域等の整備,観光情報の共通プラットホームの構築,観光人材の育成等を支援する施策を引き続き実施する。
このほか,沖縄の豊かな自然,歴史,文化等を生かし,エコツーリズムの推進や,世界遺産の周辺整備,体験滞在型交流の促進等,観光客の多様なニーズに対応するための施策の推進に努めることとしている。
世界的規模を誇る「沖縄美ら海水族館」に続き,平成16年1月には「国立劇場おきなわ」が開場したところであり,新たな観光拠点として活用を図っていく。
バリアフリー観光の様子
豪雪地帯における観光・レクリエーション産業の振興のため,豪雪地帯対策基本計画に基づき,雪国の地域特性を活かした利雪・親雪交流等に必要な施設整備を支援するとともに,観光情報を含めた雪関連情報提供システムの構築等を推進する。
観光により離島地域経済の活性化を図ることを目的に,観光資源の開発が不十分な離島における魅力的な観光資源の開発,観光ルートの設定とともに,モニターツアーによる検証を行う「離島ツアー交流推進支援事業」を実施する。
奄美群島における,観光拠点としてのレクリエーション施設や自然,伝統文化を体験するための施設の地方公共団体が行う整備に対する支援を実施するとともに,群島内外との交流を促進するために地方公共団体が行う体験交流推進事業に対して支援する。また,観光客に奄美群島の歴史,自然,文化について案内できる人材の育成に取り組む。
小笠原諸島においては,世界的にも貴重な固有の野生動植物が多数生息しているためエコツーリズムの取組をより一層進めていくとともに,観光を中心とした島内産業の活性化を図るため,東京都が行う自然公園施設等の整備や小笠原村が行う観光客の需要に応じた体験型観光交流プログラムづくりに対する支援を行う。
観光を通じた半島地域の活性化を図るため,半島地域と都市間等において,NPOや地域住民等が主体となって行う交流・連携の促進方策を検討するほか,ワークショップ等を通じて,半島地域の観光を考える「半島ツーリズム大学」を開催する。
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