前(節)へ   次(節)へ
平成16年度 観光の状況に関する年次報告

第5章 観光交流空間の形成

第4節 世界遺産の保存と観光への活用

2 日本の世界遺産の状況と観光への活用


平成17年1月末現在、我が国では、10件が文化遺産として世界遺産に登録されている(表5-4-1)
各々の世界遺産においては、案内板や説明板の設置等観光客に世界遺産としての価値をわかりやすく伝えるための整備を行っている。
自然遺産としては、「屋久島」、「白神山地」の2件が登録されており、これらについては、管理計画に基づき、入山者の増加に対応した保全対策を実施する等、保護・管理を行った。また、それぞれの世界遺産センターにおいて、遺産地域の管理、調査研究を行うとともに、普及啓発等を実施した。

表5-4-1 世界遺産一覧表に記載された日本の文化遺産



  COLUMN 17 賑わう熊野古道  

古くから黄泉の国、常世の国と呼ばれた熊野への参詣の道。平安時代の後期から江戸時代にかけて熊野信仰が広がり“伊勢へ七度、熊野へ三度、愛宕山へは月まいり"と里謡に歌われるほど、上皇から、武士、庶民まで多くの人々が聖地熊野を目指した。熊野参詣のルートはいくつかあったが、一番ポピュラーだったのが、京・大阪からの紀州路。京都から船で淀川を下り、大阪の窪津王子から始まる熊野九十九王子をたどりながら熊野を目指す道である。熊野権現の御子神を祀った王子社は、熊野詣の道標であり、また、旅の疲れを癒す憩いの場所でもあり、時には、歌会なども催された。そして現在、文化遺産として平成16年7月に世界遺産に登録され、和歌山県下の登録された地域、高野町、九度山町、中辺路町、本宮町、那智勝浦町、新宮市など1市10町の平成16年7月から12月までの入込客は、およそ626万5千人で、一昨年同期の496万1千人に比べて130万4千人も増加した。特に熊野三所権現(熊野本宮大社、熊野那智大社、熊野速玉大社)の中核をなす「熊野本宮大社」が在する本宮町の平成16年の入込客は、115万1千人、一昨年に比べ54万9千人の増加となり、俗に「蟻の熊野詣」と呼ばれた賑わいを彷彿させる勢いで、旅人をサポートする語り部の方々も大活躍の今日である。
熊野には、日本サッカー協会のシンボルにもなっているヤタガラスの伝説や蘇りの伝説、崇拝の対象となった滝や山々等の自然とその歴史や文化でいっぱいである。さらには、熊野詣という苦行の末、たどり着いたすべての民を受け入れてきた温泉、海辺の食文化、山や川の四季それぞれの旬の味、語りきれない魅力が沢山ある。単に訪れるだけでなく、体感、体験を通じ、いにしえの人々があこがれの旅をした祈りの道、「紀伊山地の霊場と参詣道」がたどってきた役割や荘厳な景色、自然、それを支えてきた地元の人とのふれあいから新しいものの発見につながることを期待している。
前(節)へ   次(節)へ
All Rights Reserved, Copyright (C) 2003, Ministry of Land, Infrastructure and Transport