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平成16年度 観光の状況に関する年次報告

第8章 観光に係る安全対策

第1節 日本人海外旅行者の安全対策

2 政府の事故・事件への対応と安全対策



  (1) 迅速かつ適切な援護と積極的な情報提供・広報活動

事件・事故に遭った日本人に対して、迅速かつ適切な援護に努める一方、事故防止のため外務省海外安全相談センター等より情報提供、広報活動を行った。
1) 政府では「渡航情報(危険情報等)」の提供を行っている。危険情報は、渡航・滞在に当たって特に注意が必要な国・地域について、4つの区分(表8-1-2(注)を参照)で治安情勢と安全対策の目安を表記し、外務省「海外安全ホームページ」を通じて情報提供を行ったほか、国内旅行業界や都道府県旅券担当窓口を通じ、一般国民に広く周知を図った。平成16年1月~12月までの危険情報発出数は263件に上り、うち主なものは表8-1-2のとおりである。
2) 「スポット情報」として、各国・地域の治安情勢や事件・事故の詳細を速報的に発出するとともに、国際テロの動向など複数の国にまたがる広い範囲で注意が必要な情報を「広域情報」として発出した。平成16年1月~12月までの「スポット情報」発出数は512件、「広域情報」発出数は43件に上り、主なものは表8-1-3、表8-1-4のとおりである。
3) 各国の一般的な犯罪状況や出入国に関する注意事項等を取りまとめた情報(「安全対策基礎データ」)や、各国のテロに関する情報(「テロ概要」)を、「海外安全ホームページ」をはじめ、「海外安全FAXサービス」等を通じ提供した。
4) 海外旅行中の安全・防犯のためのポイントを紹介したビデオの作成・貸出を行った。また、海外旅行のトラブル防止のポイントを取りまとめた小冊子の作成・配布を行った。
5) 国民一人一人の海外安全意識を高めるため、夏休みの渡航シーズンを前にした7月に「海外安全キャンペーン」を実施した。平成16年度は、白石美帆さんをキャラクターに起用し、ポスターやチラシを作成して全国に配布するとともに、雑誌やインターネット等を活用し、集中的な広報活動を行った。
6) 海外修学旅行安全対策として、都道府県等からの依頼を受けて、安全対策に関する資料を学校に送付するとともに、事前に旅行先を管轄する在外公館に旅行計画書を送付した。(平成16年の届出件数は1,195件)

表8-1-2 主な危険情報発出一覧




表8-1-3 主なスポット情報発出一覧(平成16年1月~12月)




表8-1-4 主な広域情報発出一覧(平成16年1月~12月)




  (2) 旅券に関する広報啓発

パスポートの紛失・盗難が後をたたない現状を踏まえ、紛失・盗難件数の減少を図るべく、
2月20日「旅券の日」を中心に2月から3月の2ヵ月間、全国旅券事務所および関係省庁と協力し、パスポートおよびその管理の重要性についての「旅券の日」キャンペーンを行った。
今年度は、タレントの石川亜沙美さんをパスポートのイメージキャラクターに起用したポスターおよびチラシを作成し、国内においては全国の旅券事務所の他、旅行団体等に配布し、また国外においては各在外公館に配布し、広く国民に注意を呼びかけた。
また米国が、平成16年10月26日以降、機械読み取り式でないパスポートを所持して米国に入国する外国人に対して査証(ビザ)を求めることとしたことから、政府公報を利用し、右事実の周知を図ると共に希望により機械読み取り式パスポートのへの切替を案内する事前広報を行った。

平成16年度「旅券の日」ポスター




表8-1-5 一般旅券再発給および渡航者発給数




  COLUMN 22   

スマトラ沖地震への対応
平成16年12月26日に発生したスマトラ沖大地震とそれに伴うインド洋の津波は、多数の死者・行方不明者を出す空前の大惨事となり、死亡が確認された日本人も34人にのぼっている(平成17年3月31日現在)。
発生以来、外務省及び在外公館には国民から3,300件以上の安否照会の電話が寄せられた。
このように安否確認には高い関心が寄せられ、在外公館では、在留邦人については、現地日本人会、日系企業団体等の協力を得て安否確認を行った他、これらの組織に属していない方は在外公館に提出されている在留届を基に個別に安否確認に努めた。また、旅行者については、国土交通省、(社)日本旅行業協会(JATA)の協力を得て団体旅行者及び個人旅行者の実態把握に努めるとともに、在外公館より現地の旅行代理店、宿泊施設、医療機関、警察等に個別に連絡を行い、邦人被害者の有無に関する情報収集を行った。更に、家族等関係者から寄せられた情報を基に、在外公館員が現地の医療機関、遺体安置所を訪問し、邦人の安否確認に努めた。
他方で、3,300件以上の安否照会には、極めて不確かな情報に基づくものが多数含まれており、家族が旅行中の親族の日程を把握しておらず、そもそも津波発生時に当該人物が被災地に滞在中であったのか否か不明なケースも多く見られた。それを踏まえ、政府からは、東南アジア、南西アジアを旅行中の日本人旅行者に対して留守家族に無事である旨の連絡を行うよう呼びかけ、その後は日本人旅行者から留守家族に連絡がなされ、無事が確認される例も相次いだ。
また、今回の津波により、インド洋沿岸諸国で被害が拡大した要因としてインド洋における国際的な津波早期警戒メカニズムがなかったことが挙げられている。
平成17年1月に兵庫県神戸市で開催された国連防災世界会議において、インド洋における国際的な津波早期警戒メカニズムの構築が重要であることが確認された。
気象庁は、同メカニズムが構築されるまでの間の暫定的な措置として、インド洋沿岸諸国の求めに応じて、津波監視情報を提供することとした。同情報の正式な提供を目前にした平成17年3月29日、再び「スマトラ島付近でマグニーチュード8.5の地震が発生し、津波の発生するおそれがある」旨の情報をFAXで提供した。
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